DLOM(流動性ディスカウント)とは? 水準の目安・根拠となる研究と、非上場株式評価での実務
最終更新: 2026-09-12
DLOM(Discount for Lack of Marketability)は、日本語では非流動性ディスカウント、流動性ディスカウント、マーケタビリティ・ディスカウントなどと呼ばれる調整です。いずれも「その株式がすぐに市場で売れない(換金しにくい)こと」を理由に、算定した価値を一定割合だけ割り引くという同じ考え方を指しています。非上場株式の割引をめぐる論点の中でも、最終的な金額へのインパクトが大きく、評価書の説得力を左右する部分です。
本稿では、DLOMの定義となぜ必要かという出発点から、実務で使われる水準の目安、その根拠として参照される研究の型、DLOC(支配権の欠如によるディスカウント)との違い、どの評価手法の結果に適用するのか、コントロールプレミアムとの二重計上の回避、税務上の評価との違い、そして実務のチェックポイントまでを順に整理します。非上場株式の評価方法の全体像とあわせて読むと、DLOMがどの工程で登場する調整なのかがつかみやすくなります。
DLOM(非流動性ディスカウント)とは:市場で売れないことによる価値の割引
DLOMとは、対象となる株式に換金性(マーケタビリティ)が乏しいことを反映して、他の手法で算定した価値から一定割合を差し引く調整のことです。ここでいう「換金性が乏しい」とは、単に値段がつかないという意味ではなく、売ろうと思ったときに買い手を探すところから始めなければならず、交渉・調査・手続きに時間と費用がかかり、しかもいくらで売れるかが事前には分からない、という状態を指します。
上場株式であれば、保有者は取引所で数日以内にほぼ市場価格で現金化できます。一方、非上場株式は同じ利益を生む事業を裏づけに持っていても、買い手候補の探索、秘密保持契約、デューデリジェンス、契約交渉、譲渡承認手続きといった段階を経る必要があり、換金まで数ヶ月から年単位を要することも珍しくありません。投資家の立場では、この「出口の不確実さ」は明確なマイナス要因です。同じ将来キャッシュフローを生むなら、いつでも売れるほうに高い値段を払い、売りにくいほうには安い値段しか払わない。この差を評価額に織り込む仕組みがDLOMです。
重要なのは、DLOMが会社の稼ぐ力そのものを否定する調整ではないという点です。事業の収益力は変わらないまま、その持分を保有・売却する立場から見た使い勝手の悪さを価格に反映しているにすぎません。だからこそ、DLOMは「何%引くか」ではなく「なぜその率なのか」を説明できるかどうかが勝負になります。
DLOMとDLOC(支配権の欠如)の違い
非上場株式の評価では、DLOMとよく並んで登場するのがDLOC(Discount for Lack of Control=支配権の欠如によるディスカウント/マイノリティ・ディスカウント)です。両者は「価値を割り引く調整」という点では同じですが、割り引く理由がまったく違います。混同すると調整を重複させたり、逆に必要な調整を落としたりする原因になるため、最初に整理しておきましょう。
| 観点 | DLOM(非流動性ディスカウント) | DLOC(支配権の欠如によるディスカウント) |
|---|---|---|
| 割り引く理由 | すぐに売れない・換金しにくいこと(流動性の欠如) | 会社の意思決定をコントロールできないこと(支配権の欠如) |
| 着目する対象 | 株式の売りやすさ・出口の確保しやすさ | 保有割合と、それによって行使できる権利の範囲 |
| 100%取得の場合 | 非上場である限り論点になりうる(会社ごと売る難しさは残る) | 支配権を取得するため、原則として不要 |
| 少数株式の場合 | 買い手がさらに限られるため大きくなりやすい | 配当や役員選任などを左右できないため適用が検討される |
| 上場株式の場合 | 市場で自由に売買できるため原則0% | 少数持分であれば市場価格自体が少数株主ベースの価格 |
| 裏返しの概念 | 流動性が高いことによるプレミアムはあまり議論されない | コントロールプレミアム(支配権に対する上乗せ) |
少数株主が持つ非上場株式は、「売りにくい」うえに「経営に口を出せない」という二重のハンデを負うため、DLOMとDLOCの両方が検討対象になり、結果として大きな割引になりやすい傾向があります。支配権側の考え方はコントロールプレミアムとはで詳しく整理しています。少数株主の権利内容そのものについては議決権とはもあわせてご覧ください。
DLOMの水準の目安:実務では10〜30%程度が使われることが多い
実務でよく見かけるDLOMの水準は、10〜30%程度のレンジに収まることが多いとされます。中小企業の非上場株式では20%前後を出発点として、対象会社や株式の性質に応じて上下させるという置き方もよく用いられます。ただし、これはあくまで目安であり、法令や通達で決まった率が存在するわけではありません。同じ会社でも、評価の目的、対象となる持分の割合、想定する売却シナリオが変われば、妥当な率は変わります。
この感応度の大きさこそが、DLOMが「恣意的になりやすい調整」と批判される理由でもあります。だからこそ実務では、率そのものよりも、その率をどう導いたかの説明が重視されます。次節では、その根拠として参照されることの多い研究の型を見ていきます。
根拠として参照される研究の型:3つのアプローチ
DLOMの水準を裏づける材料としては、大きく分けて3つの実証・理論アプローチが知られています。いずれも「流動性のある株式と、流動性のない(または制限された)株式の価格差を観察・推定する」という発想で、それぞれ長所と批判点があります。ここでは特定の論文や著者、確定的な数値を挙げることは避け、手法の考え方として整理します。
| アプローチ | 考え方 | 長所 | 指摘される批判点 |
|---|---|---|---|
| 制限株式(Restricted Stock)研究 | 上場企業が発行する、一定期間市場での売却が制限された株式の価格と、同じ銘柄の市場価格との差を観察し、流動性の欠如による割引幅を推定する手法があります。 | 同一銘柄・同一時点の比較なので、事業内容や業績の違いという撹乱要因が入りにくい。 | 売却制限の期間は数ヶ月〜数年と限定的で、出口の見えない非上場株式とは前提が異なる。制度変更で制限期間が変わると水準も変わる。 |
| IPO前後の取引価格の比較(Pre-IPO)研究 | 上場前に行われた株式取引の価格と、上場後の市場価格を比較し、その差を流動性の欠如による割引とみなす手法があります。 | 非上場の状態から流動性を得るまでの変化を、直接的に価格差として観察できる。 | 上場に至った企業だけを見ることになる選別の偏りがある。取引時点と上場時点の間の業績成長や市況変化が価格差に混入する。 |
| プット・オプションによる理論モデル | 「一定期間、その株式を今の価格で売れる権利(プット・オプション)」の理論価値を、流動性を確保するためのコストとみなして割引率を導く手法があります。 | 会社ごとの株価変動性(ボラティリティ)や想定保有期間を入力できるため、個別事情を反映しやすい。 | 入力するボラティリティや期間の置き方で結果が大きく動く。オプションで守れるのは価格下落であり、換金の手間そのものではないという指摘もある。 |
評価書でこれらを引く場合は、「◯◯という研究で△%とされているから△%を採用した」と機械的に結びつけるのではなく、どのアプローチの考え方を参考にし、対象会社の事情をどう加味して率を決めたのかを書くほうが説得力が出ます。研究はレンジの目安を与えるものであって、個別案件の答えを与えるものではないためです。
DLOMを大きくする要因・小さくする要因
率を決めるときの実務的な作業は、対象会社と対象株式について「売りやすさを高める事情」と「売りにくさを高める事情」を洗い出し、目安のレンジの中でどこに位置づけるかを判断することです。主な要因を整理すると次のようになります。
| 要因 | DLOMが大きくなる方向 | DLOMが小さくなる方向 |
|---|---|---|
| 株式の譲渡制限 | 定款で譲渡承認が必要、株主間契約で売却先や時期が縛られている | 譲渡制限が緩い、または承認の運用が実質的に予測可能 |
| 株主構成 | 同族・特定株主に集中し、外部への売却が事実上難しい | 第三者への譲渡実績があり、株主の入替えが起きている |
| 配当の有無 | 無配が続き、保有していても現金リターンが得られない | 安定的に配当があり、売却までの間も保有メリットがある |
| 買い手候補の存在 | 同業の買収意欲が乏しく、想定できる買い手が極端に少ない | 同業・周辺業種に複数の買い手候補があり、打診先が広い |
| 財務の安定性 | 業績の振れ幅が大きい、債務が重く先行きが読みにくい | 黒字が継続し、キャッシュフローと財務基盤が安定している |
| 保有割合 | 少数持分で、単独では何も決められない | 支配権を伴う持分で、売却の意思決定を自分で完結できる |
| 想定される売却までの期間 | 出口の時期が見通せず、長期保有を前提とせざるを得ない | 上場や第三者売却など、現実的な出口が一定期間内に見込める |
| 情報開示の程度 | 月次資料や事業計画が整っておらず、買い手が価値を検証しにくい | 決算・月次・契約関係が整理され、調査に耐える資料がそろっている |
譲渡制限の仕組みそのものについては譲渡制限株式とはで解説しています。また、情報開示の程度は率の話にとどまらず、そもそも買い手が検討のテーブルに載せてくれるかどうかを左右します。資料の整備は、DLOMを小さくする方向に働く数少ない「自分で動かせる要因」です。
どの評価結果にDLOMを適用するか
意外に見落とされやすいのが、「そもそもどの手法の結果に適用するのか」という論点です。DLOMは、算定の前提として流動性がある価格を使っている手法に対して適用するのが基本的な整理です。すでに流動性のない前提で組み立てた価値に重ねて掛けると、二重に割り引くことになってしまいます。
| 評価手法 | DLOMの適用 | 理由(一般的な整理) |
|---|---|---|
| DCF法 | 適用することが多い | 割引率を上場企業のデータ(市場のリスクプレミアム等)から組み立てるため、結果は流動性のある株式ベースの価値になりやすい。 |
| 類似会社比較法(マルチプル法) | 適用することが多い | 上場企業の株価倍率を借りてくる手法であり、その倍率にはいつでも売れることの価値が含まれている。 |
| 時価純資産法 | 通常は適用しない | 資産・負債を個別に時価評価する手法で、上場株式の市場価格を出発点にしていないため、流動性の上乗せが前提に含まれていない。 |
| 年買法などの簡便法 | 実務上の扱いは分かれる | 中小M&Aの取引相場を反映した簡便法で、もともと非上場の取引実感に基づくため、重ねて割り引くと過小評価になりやすい。 |
当サービス「M&Aバリュークラウド」の算定でも、この一般的な整理に沿ってDCF法と類似会社比較法の結果には非流動性ディスカウントを適用し、時価純資産法の結果には適用しないという扱いにしています。3つのアプローチの位置づけを整理したい場合は株式評価の3つのアプローチ比較もあわせてご覧ください。
なお、DLOMは株式価値に対する調整であり、事業価値や企業価値の段階で掛けるものではないという整理が一般的です。企業価値から有利子負債を控除して株式価値を求めたあとに適用する、という順番になります。この区別が曖昧だと控除する対象を間違えるため、企業価値と株式価値の違いを先に押さえておくと安全です。
コントロールプレミアムとの二重計上に注意
DLOMの実務でもっとも事故が起きやすいのが、支配権に関する調整との重複です。支配権の調整(コントロールプレミアムの加算、またはDLOCの減算)と、流動性の調整(DLOMの減算)は、別々の理由に基づく別々の調整です。それぞれ独立して検討する必要がありますが、同時に、同じ事情を二度カウントしていないかを確認しなければなりません。
- 調整の順番:一般的には、まず対象持分が支配権を伴うかどうかで支配権側の調整を行い、そのうえで流動性の調整としてDLOMを適用する、という順で整理します。乗算で重ねる(例:×(1+プレミアム率)×(1−DLOM率))のか、片方だけを適用するのかは、出発点の価値がどちらのベースかによって決まります。
- 出発点の確認:類似会社比較法で上場企業の株価倍率を使った結果は、通常は少数株主ベース(支配権を伴わない)の価値と整理されます。ここに支配権の価値を足すのがコントロールプレミアムです。一方、DCF法でシナジーや支配権行使後の改善を織り込んだ計画を使っている場合、その結果はすでに支配権ベースに近く、さらにプレミアムを乗せると二重計上になります。
- 同じ事情の二度引きを避ける:「少数持分だから買い手が見つかりにくい」という事情をDLOCの理由にも、DLOMの理由にも同じ重みで使ってしまうケースがあります。少数であることの権利面のハンデはDLOC、換金の困難さはDLOMと、理由を書き分けておくと重複を発見しやすくなります。
- 100%取得なら支配権調整は不要:会社を丸ごと売買する中小M&Aの多くでは、買い手が支配権を得るためDLOCは論点になりません。それでもDLOMは、非上場会社を売ること自体の難しさとして議論の対象になりえます。
評価書では、どの調整を、どの順で、なぜ適用したのかを一覧で示しておくと、二重計上の疑いを持たれにくくなります。株価算定書が必要になる場面ごとに、求められる説明の細かさは変わります。
税務上の評価ではDLOMという形の割引は使われない
ここで注意したいのが、評価の目的が違えば、流動性の扱いも変わるという点です。相続や贈与に関する税務上の株式評価は、財産評価基本通達に定められた方法(類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式など)に従って計算します。この体系の中に、「非流動性ディスカウントとして◯%を控除する」という形の調整は組み込まれていません。
まったく流動性を無視しているという意味ではなく、たとえば純資産価額方式における法人税額等相当額の控除や、少数株主が用いる配当還元方式といった仕組みの中に、非上場株式ならではの事情が制度としてあらかじめ織り込まれている、という整理になります。したがって、税務上の評価額に対して重ねてDLOMを掛けるという処理は、一般的には行われません。
| 目的 | 主な考え方 | DLOMの扱い(一般論) |
|---|---|---|
| M&Aの取引価格の検討 | DCF法・類似会社比較法・時価純資産法などで経済価値を算定し、当事者間で交渉 | 算定手法に応じて適用を検討する |
| 相続税・贈与税の申告 | 財産評価基本通達に定められた方式で計算 | DLOMという形の割引は使わない |
| 同族間・少数株主との売買価格の検討 | 税務上の評価と経済価値の両面を見ながら、税務リスクも考慮して決める | 経済価値側では検討するが、税務上の評価額とは分けて説明する |
事業承継の場面では、税務上の評価額と、第三者に売るとしたらいくらかという経済価値が並行して問題になります。両者の関係については事業承継における株価算定で整理しています。
実務のチェックポイント
DLOMは、率の置き方に幅がある以上、「妥当な率を当てる」ことよりも「読み手が検証できる形で示す」ことが実務上の要点になります。最低限、次の3つを押さえておきましょう。
1. 率の根拠を文章で書く
「非流動性ディスカウント20%を適用した」とだけ書かれた評価書は、読み手にとって検証のしようがありません。譲渡制限の内容、想定される買い手の広がり、業績の安定性、想定売却期間といった要因のうち、何を重く見て、どのアプローチの考え方を参考にその水準に置いたのかを、数行でよいので言語化しておきます。後日、当事者や税務当局、金融機関から質問を受けたときに耐えられるかどうかは、この一手間で決まります。
2. 感応度を示す
率を10%・20%・30%と振ったときに株式価値がどう変わるかを併記すると、その調整が結論に与える影響の大きさが一目で分かります。感応度を隠さず示すことは、恣意性の疑いを減らすうえで有効です。DCF計算ツールなどで前提を振ってみると、どの変数が効いているかの感覚もつかみやすくなります。
3. 単一の数字ではなくレンジで示す
非上場株式の価値はもともと幅を持つものです。DLOM適用後の株式価値も、「◯億円」とピンポイントで示すより、「◯億円〜◯億円」とレンジで示すほうが実態に近く、交渉の出発点としても機能します。あわせて、適用前の金額(ディスカウント前の価値)も併記しておくと、いくら割り引いたのかが明確になります。
4. 適用しなかった場合も理由を書く
時価純資産法の結果にDLOMを適用しなかったときや、100%取得を前提として支配権調整を行わなかったときも、「適用していない」という事実とその理由を書いておきます。書かれていないと、検討漏れなのか意図的な判断なのかが区別できません。
よくある質問(FAQ)
Q. DLOMは何%が妥当ですか?
A. 一律の正解はありません。実務では10〜30%程度のレンジが使われることが多いとされ、中小企業では20%前後を出発点に置く例もありますが、あくまで目安です。譲渡制限の強さ、買い手候補の広がり、財務の安定性、想定される売却までの期間などによって、同じ会社でも妥当な水準は変わります。率を先に決めてから理由を後づけするのではなく、要因を洗い出したうえでレンジの中の位置を決める、という順序で考えるのが実務的です。
Q. 根拠として何を書けばよいですか?
A. 二段構えで書くと整理しやすくなります。第一に、水準のレンジ感の参考として、制限株式研究・IPO前後の価格比較・プット・オプションによる理論モデルといったアプローチのうち、どの考え方を参考にしたかを述べます。第二に、そのレンジの中でなぜこの率にしたのかを、対象会社の個別事情(譲渡制限の内容、買い手候補の数、業績の安定性など)で説明します。特定の論文名や数値を断定的に引用するより、判断の筋道を示すほうが実務では通りやすい書き方です。
Q. 少数株式ならDLOMはどうなりますか?
A. 大きくなりやすい傾向があります。少数持分は、支配権を伴う持分に比べて買い手候補がさらに限られ、単独では売却の意思決定もできないためです。ただし注意したいのは、少数であることのハンデには「換金しにくさ」と「経営に関与できないこと」の2種類が含まれる点です。前者はDLOM、後者はDLOCとして扱い、同じ事情を両方で二重に引かないよう理由を書き分けます。
Q. M&Aの取引価格にもDLOMは必要ですか?
A. 会社を丸ごと売買する中小M&Aでは、価格は最終的に売り手と買い手の交渉で決まり、明示的にDLOMを何%と示さないまま合意に至ることも多くあります。ただし、DCF法や類似会社比較法で理論値を出して交渉の土台にする場合は、その理論値が上場企業のデータに基づく以上、非上場であることの割引を考慮するのが整合的です。買い手が提示する価格の中には、実質的にこの割引が織り込まれていると考えることもできます。価格の妥当性を検討する際は、第三者の算定も含めて根拠を整理しておくと交渉しやすくなります。
Q. 税務上の評価との違いは何ですか?
A. 目的が違うため、扱い方そのものが異なります。M&Aの取引価格を検討する評価は経済価値を求めるものなので、算定手法に応じてDLOMの適用を検討します。一方、相続税・贈与税の評価は財産評価基本通達に定められた方式で計算し、DLOMという形の割引は使いません。非上場株式ならではの事情は、通達の仕組みの中に制度としてあらかじめ織り込まれているという整理です。同族間売買など両方が絡む場面では扱いが複雑になるため、税理士への確認が必要です。
Q. DLOCと併用してもよいのですか?
A. 理由が異なる別々の調整なので、両方が該当する状況(非上場会社の少数持分など)では併用しうると整理されます。ただし併用する場合は、出発点の価値がどちらのベースか(支配権ベースか少数株主ベースか)を確認し、同じ事情を二度引いていないかを点検する必要があります。実務では、支配権に関する調整を先に行い、そのうえで流動性の調整を適用する順序で整理し、それぞれの適用理由を分けて記載するのが安全です。
まとめ
DLOM(非流動性ディスカウント/流動性ディスカウント/マーケタビリティ・ディスカウント)は、非上場株式がすぐに市場で売れないことを反映して、算定した株式価値を一定割合だけ割り引く調整です。実務では10〜30%程度の水準が使われることが多いとされ、その根拠としては制限株式研究、IPO前後の価格比較、プット・オプションによる理論モデルといったアプローチの考え方が参照されます。いずれもレンジの目安を与えるものであって、個別案件の答えを与えるものではありません。
適用にあたっては、上場企業のデータを出発点とするDCF法・類似会社比較法の結果には適用し、時価純資産法には通常適用しないという整理を押さえること、支配権に関する調整(コントロールプレミアム/DLOC)と理由を分けて二重計上を避けること、そして税務上の評価とは目的も扱いも違うことを理解することが要点です。率そのものより、その率をどう導き、どう検証可能な形で示すか。ここに評価書の信頼性が表れます。
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