デューデリジェンス(DD)とは? 種類・進め方・費用の目安と、売り手が準備すること

最終更新: 2026-09-12

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デューデリジェンス(Due Diligence、以下DD)とは、M&Aで買い手が対象会社や対象事業の実態とリスクを、契約前に調べる調査のことです。日本語では「買収監査」「適正評価手続」などと訳されますが、実務ではそのまま「DD(ディーディー)」と呼ばれるのが一般的です。M&Aによる会社売却の流れのなかでは、基本合意書(LOI/MOU)を締結したあと、最終契約の前に行われます。

DDは買い手のための手続きですが、売り手にとっても他人事ではありません。DDで想定外の問題が出れば、いったん合意した価格が引き下げられたり、契約条件が厳しくなったり、最悪の場合は破談になったりします。逆に、売り手が事前に論点を整理し、聞かれる前に開示しておけば、交渉は安定し、合意した条件を守りやすくなります。

本稿では、DDの目的、種類ごとの調査内容、実際の進め方とスケジュール、期間と費用の目安、中小企業のM&Aでよく出る指摘、そして売り手が準備しておくべきことまでを、売り手・買い手の双方の視点から整理します。

本稿の期間・費用はあくまで一般的な目安であり、案件の規模・業種・論点の数、依頼する専門家によって大きく変わります。個別の判断や税務・法務・労務の取扱いについては、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

デューデリジェンス(DD)の目的

DDは「粗探し」のために行うものではありません。買い手が意思決定に必要な情報を、契約でお金を払う前に自分の目で確かめるための手続きです。目的は大きく次の4つに整理できます。

  • 価格の妥当性を検証する:基本合意で示された価格は、決算書やIMなど売り手側の提供資料をもとにした暫定値です。DDでは、その前提になっている利益が本当に継続する実力値なのか(正常収益力・実態EBITDA)、資産に実在性があるか、負債に漏れがないかを確かめます。価格が妥当かを検証する視点は買収価格の妥当性検証でも詳しく整理しています。
  • リスクを把握する:簿外債務、未払残業代、係争、許認可の不備といった、決算書の表面には出てこない問題を洗い出します。金額に換算できるリスクは価格に、換算しにくいリスクは契約条件に反映されます。
  • 契約条件に反映する:発見した事項は、最終契約(株式譲渡契約書など)の表明保証補償、クロージング条件に落とし込まれます。契約条項の要点は株式譲渡契約書(SPA)の要点を参照してください。
  • PMI(統合作業)の準備をする:DDは買収後の運営設計を始める場でもあります。人員配置、システム、取引先との契約、就業規則の統合など、成約後に手を付けるべき課題をここで把握しておくと、PMIの初動が早くなります。期待していたシナジーが本当に実現しうるかを確かめるのも、この段階の役割です。

つまりDDは、「買うかどうか」だけでなく「いくらで、どういう条件で、買った後どう回すか」を決めるための調査です。売り手側から見れば、この4つの目的に沿って情報を整えておけば、買い手の不安を先回りして解消できるということでもあります。

DDの種類と調査内容

DDは調査の切り口によって複数の種類に分かれます。すべてをフルスコープで実施するのは大型案件に限られ、中小企業のM&Aでは案件の規模と論点に応じて範囲を絞るのが一般的です。主な種類と調査内容を整理すると次のとおりです。

種類主な調査内容中小M&Aでの位置づけ(一般論)
財務DD収益力の実態(一過性損益・オーナー個人経費の調整)、資産の実在性と評価、簿外債務、運転資本の水準、資金繰り、関係会社取引ほぼ必ず実施される中心的な調査。価格の根拠に直結する
税務DD法人税・消費税・源泉所得税などの申告内容、繰越欠損金の引継ぎ可否、役員報酬・交際費・外注費の処理、税務調査の履歴と追徴リスク財務DDと一体、または同じ専門家が併せて実施することが多い
法務DD株式の権利関係(株主名簿・名義株・種類株)、重要契約の内容、許認可、訴訟・紛争、コンプライアンス、知的財産、担保・保証株式譲渡では特に重要。範囲を絞って実施されることが多い
労務DD未払残業代、社会保険・労働保険の加入状況、労働時間管理、就業規則、有給・退職金制度、労使紛争、名ばかり管理職労働集約的な業種では重点項目。法務DDに含めることもある
事業DD市場環境と競合、顧客構成と取引の継続性、事業計画の妥当性、業務フロー、キーパーソンへの依存度、シナジーの実現可能性買い手が社内の事業部門で実施することも多い
IT・システムDD基幹システムの構成とライセンス、外部委託の状況、情報セキュリティ、個人情報の管理、システム統合の難易度と追加投資IT依存度の高い業種で実施。小規模では簡易な確認にとどまることも
環境DD土壌汚染、アスベスト、産業廃棄物の処理、環境関連法令の順守状況、有害物質の取扱い製造業・工場や土地を持つ案件で検討される
不動産DD権利関係と登記、境界・越境、建物の遵法性と老朽化、賃貸借契約の条件、修繕・耐震の必要性、評価額自社不動産の比重が大きい案件で実施される

中小企業のM&Aでは、財務・税務・法務の3つが中心になり、業種特性に応じて労務や環境が加わる、という組み合わせが一般的です。譲渡対価が比較的小さい案件では、専門家に依頼する範囲をさらに絞った「簡易DD」で対応することもあります。簡易DDでは、たとえば財務は直近3期分の決算書と勘定科目内訳明細書の精査に限定し、法務は重要契約と許認可の確認にとどめる、といった形でスコープを設計します。

なお、事業譲渡と株式譲渡のどちらのスキームを採るかによっても、DDの重さは変わります。株式譲渡では会社の権利義務を丸ごと引き継ぐため、簿外債務や過去の税務リスクまで含めた広い調査が必要です。一方、事業譲渡は引き継ぐ資産・負債・契約を個別に特定できるため、調査範囲を対象事業に限定しやすく、結果としてDDが軽くなる傾向があります。買い手が簿外債務を強く警戒している場合に事業譲渡が選ばれるのは、この違いによるものです。

DDの進め方とスケジュール

DDは思いつきで資料を出し合うものではなく、一定の型に沿って進みます。全体の流れを押さえておくと、売り手側も「いつ何を求められるか」を予測して動けます。

1. 基本合意(LOI/MOU)の締結

価格・スキーム・スケジュールのおおよその方向性を確認し、独占交渉権とDDへの協力義務を定めます。ここで合意した価格は暫定であり、DDの結果によって見直されうる、という前提を双方が共有しておくことが大切です。秘密保持契約(NDA)は通常これより前に締結済みですが、DDでは開示する情報の深さが一段変わるため、開示範囲や目的外利用の禁止をあらためて確認しておきます。

2. 資料依頼リスト(リクエストリスト)の提示

買い手側の専門家から、必要資料を列挙したリストが届きます。中小案件でも数十項目、規模が大きければ百項目を超えることもあります。典型的には、決算書と勘定科目内訳明細書(3〜5期分)、税務申告書、月次試算表、総勘定元帳、定款、登記事項証明書、株主名簿、議事録、主要取引先との契約書、賃貸借契約書、借入契約書、就業規則、賃金台帳、労働者名簿、社会保険関係の書類、許認可の写し、保険証券、といったものです。

3. 資料開示(データルーム)

開示はオンラインのデータルーム(クラウドストレージ)で行うのが一般的になっています。誰がいつ何を見たかの記録が残り、印刷やダウンロードを制限できるためです。開示のタイミングと範囲は売り手側でコントロールし、機微な情報(顧客名、従業員の個人情報など)はマスキングしたうえで、必要に応じて後半で開示するといった段階設計をすることもあります。

4. Q&A(質問と回答のやり取り)

提出資料を読んだ買い手側から、書面で質問が届きます。回答は通常、Q&Aシートに記録しながら進めます。ここでのやり取りは後の表明保証の前提になるため、推測で答えず、事実と分からないことを区別して回答することが重要です。「分からない」「資料が残っていない」も、正直に伝えるほうが結果的にリスクを小さくします。

5. マネジメントインタビュー

経営者や経理担当者へのヒアリングです。数字の背景、取引先との関係、キーパーソン、今後の見通しなど、資料だけでは分からない部分を確認します。半日〜1日程度で行われることが多く、買い手にとっては経営者の人柄や説明の一貫性を見る場でもあります。従業員に知られたくない場合は、休日や社外の会議室を使うなどの配慮が取られます。

6. 現地調査(サイトビジット)

工場、店舗、倉庫などを訪問し、設備の稼働状況、在庫の状態、作業環境や職場の雰囲気などを実地で確認します。従業員への影響を避けるため、「取引先」「金融機関」などの名目で訪問することもあります。

7. 報告書の提出と価格・条件への反映

専門家から買い手に対して、発見事項(ファインディングス)と影響額、対応方針をまとめた報告書が提出されます。買い手はこれをもとに、価格の見直し、契約条件の追加、あるいは取引中止を判断します。

期間の目安としては、資料提出から報告書の提出まで、小規模案件で数日〜2週間程度、中堅規模で2〜4週間程度が一つの目安です。ただし、資料の整備状況によって大きく前後します。求められた資料がすぐ出てこないと、そのぶん期間は延び、買い手の心証も悪くなります。

DDの費用の目安と負担者

DDの費用は、専門家への報酬として発生します。金額は調査範囲、対象会社の規模、拠点数、論点の多さ、資料の整備状況によって大きく変わるため、一律の相場を示すのは困難ですが、一般的な傾向としては次のように言われます。

区分費用の目安(一般論)備考
簡易DD(小規模・範囲限定)数十万円程度〜財務・税務を中心に、書面確認とヒアリングに絞った調査
財務・税務DD(中小案件)数十万円〜数百万円程度対象期間・拠点数・グループ会社の有無で変動
法務DD(中小案件)数十万円〜数百万円程度契約書の本数、係争・許認可の論点数で変動
労務・IT・環境などの追加DD案件ごとに個別見積もり業種特性に応じて必要な範囲だけ追加するのが一般的

費用は買い手が負担するのが原則です。DDは買い手が自らの意思決定のために行う調査だからです。ただし例外もあり、売り手が自主的に実施するセルサイドDDの費用は売り手負担ですし、複数の買い手候補が並ぶ入札形式で売り手側が調査報告書を用意する場合も同様です。仲介会社やFAに支払う手数料はDD費用とは別枠なので、総コストを見るときは分けて考える必要があります。手数料の考え方はM&A仲介手数料の相場で整理しています。

国や自治体には、M&Aに伴う専門家費用の一部を補助する制度が設けられている場合があります。要件・上限額・公募時期は年度ごとに変わるため、利用を検討する際は最新の公募要領を必ず確認してください。

中小企業のDDでよく出る指摘

中小企業のM&Aでは、指摘される論点にある程度の共通パターンがあります。売り手はここに挙げた項目を先に自己点検しておくと、DDでの不意打ちを大きく減らせます。

論点何が問題になるか売り手の備え
簿外債務貸借対照表に計上されていない債務(未払費用、リース、保証債務、返品・値引の約束など)が後から判明する契約書と取引実態を突き合わせ、計上漏れがないか点検する
未払残業代固定残業代の設計不備、労働時間の未把握などにより、遡って支払義務が生じるおそれがある勤怠管理と賃金規程を確認し、必要なら是正と概算額の把握を行う
社会保険の未加入加入要件を満たす従業員が未加入で、遡及的な保険料負担のリスクがある加入状況の一覧を作り、対象者の判定を社会保険労務士に確認する
名義株・株主の所在不明実質的な所有者と名簿上の株主が異なり、株式を100%取得できない、または後日争いになる株主名簿・出資の経緯・議事録を整理し、必要なら株式を集約しておく
役員貸付金・仮払金回収可能性が乏しい資産が計上されており、実質的な純資産が目減りするクロージングまでに精算する方針を決め、処理方法を税理士に相談する
在庫の実在性・評価帳簿在庫と実地在庫が合わない、滞留・不良在庫が評価減されていない実地棚卸の記録を整え、滞留在庫の状況を先に説明できるようにする
退職給付・退職金制度退職金規程はあるが引当が不足している、中退共等の資産と債務が対応していない規程・加入状況・要支給額を整理し、不足額を把握する
係争・クレーム訴訟、労働審判、取引先とのトラブルが未開示のまま発見される進行中・見込みの案件をリスト化し、経緯と見通しを説明できるようにする
許認可・免許更新漏れ、名義人の要件、譲渡に伴って再取得が必要な許認可がある保有する許認可と有効期限、承継の可否を一覧にしておく
チェンジオブコントロール条項主要な契約に「支配権の変更時に相手方の承諾が必要/解除できる」条項があり、譲渡後に契約が失われうる重要契約を洗い出し、該当条項の有無と事前承諾の要否を確認する
関連当事者取引オーナー個人や親族の会社との取引が市場条件と乖離しており、譲渡後に利益が変動する取引の内容・条件・金額を開示し、譲渡後の取扱いを整理しておく
オーナー個人資産・私的経費社用車・保険・交際費など、事業に必要でない支出が損益に混ざっている正常収益力の調整項目として、根拠つきで説明できるよう整理する

これらは「見つかったら終わり」という性質のものばかりではありません。金額が特定でき、対応方針が示せるなら、価格調整や補償の設計で処理できます。問題になるのは、売り手が知っていたのに黙っていたと受け取られたときです。信頼が崩れると、他の開示内容まで疑われ、交渉全体が硬直します。

売り手の準備(セルサイドの視点)

DDは買い手の手続きですが、成否を左右するのは売り手の準備です。ここでは売り手が実務としてやるべきことを3点に整理します。

資料を先に揃えておく

買い手から資料依頼リストが来てから探し始めると、時間がかかるうえに抜け漏れが出ます。決算書・申告書・総勘定元帳・契約書・株主名簿・議事録・許認可・就業規則・賃金台帳といった定番の資料は、打診を始める前からファイル単位で整理しておくのが理想です。「資料がすぐ出てくる会社」は、それだけで管理体制への信頼につながります。企業概要書(IM)を作る段階で多くの資料が集まるため、その延長でDD用のフォルダを整えておくと効率的です。

指摘されそうな点を先に開示する

未払残業代の可能性、役員貸付金、名義株、係争など、自社で心当たりのある論点は、DDで発見されるより前に自分から伝えるほうが有利です。先に出せば「認識していて、こう対応するつもりだ」という説明ができますが、後から見つかると「隠していた」と受け取られます。同じ事実でも、開示の順番だけで交渉での意味が変わります。事前に自社を点検する具体的な進め方はセルサイドDDと売却前の磨き上げで詳しく解説しています。

開示の順番と秘密保持を設計する

すべてを一度に出す必要はありません。ノンネーム段階、NDA締結後のIM開示、DDでの詳細開示という段階を踏み、機微な情報(主要顧客名、単価表、従業員の個人情報、レシピや設計図といったノウハウ)は最終段階まで残す、あるいはマスキングして開示するのが一般的な設計です。DDは情報が最も深く出る局面なので、データルームのアクセス権限、閲覧ログ、目的外利用の禁止、破棄・返還の取り決めを、NDAとあわせてあらためて確認しておきましょう。

なお、赤字や債務超過の会社であっても、DDを乗り切れないわけではありません。むしろ状況を正確に開示し、改善の道筋を示せるかどうかが評価を分けます。この点は赤字・債務超過の会社の売却で整理しています。

DDの結果はどう価格・契約に反映されるか

DDで見つかった事項は、次のいずれか(または複数の組み合わせ)で処理されるのが一般的です。「見つかった=即破談」ではなく、リスクをどちらがどう負担するかを決める作業だと理解すると、交渉の見通しが立てやすくなります。

処理の方法内容使われやすい場面
価格の減額発見した負担額を譲渡価格から差し引く金額が確定していて、クロージング前に解消できない場合
表明保証売り手が、開示内容や一定の事実に誤りがないことを契約上保証するリスクの有無自体は確認できないが、後日の発覚に備えたい場合
補償(特別補償)特定の事項について、損害が生じたら売り手が補填すると定める論点が特定されており、金額が確定していない場合
クロージング条件(前提条件)是正・許認可の取得・第三者の承諾などを、実行の条件にするチェンジオブコントロール条項の承諾取得、名義株の整理など
エスクロー・支払留保対価の一部を第三者に預託、または支払を一定期間留保する補償の実効性を担保したい場合
アーンアウト対価の一部を、成約後の業績達成に連動させて後払いにする将来の収益見通しに買い手が確信を持てない場合

売り手にとっては、価格の減額だけでなく表明保証・補償の範囲と期間、上限額が実質的な負担になります。譲渡代金を受け取った後に補償を求められる可能性があるため、どこまで保証するか、いつまで責任を負うか、上限をいくらにするかは、価格そのものと同じくらい重要な交渉項目です。これらの条項の読み方は株式譲渡契約書(SPA)の要点で整理しています。

また、DDを理由とした減額要求がすべて妥当とは限りません。指摘された事項が本当に価値を毀損するのか、金額の見積もりが過大でないかは、売り手側でも検証する余地があります。提示された価格の考え方に納得できないときは、価格のセカンドオピニオンを取るという選択肢もあります。前提として、自社の価値レンジを会社売却の相場時価純資産法などの考え方で把握しておくと、交渉の土台ができます。

よくある質問(FAQ)

Q. デューデリジェンスは必ず必要ですか?

A. 法律上の義務ではありませんが、実務上はほとんどの案件で何らかの形で実施されます。買い手は取得後に発覚した問題を自ら負担することになるため、調査せずに買う判断は取りにくいからです。小規模な案件では、専門家に依頼せず買い手自身が決算書と契約書を確認する程度で済ませることもありますが、その場合はリスクを表明保証や補償で厚めにカバーするなど、契約側で手当てするのが一般的です。

Q. 売り手はDDを断れますか?

A. 現実的には難しいと考えてください。基本合意書にDDへの協力義務が定められていることが多く、正当な理由なく拒めば交渉は進みません。ただし、断るのではなく条件を付けることはできます。開示の時期を段階的にする、従業員の個人情報や顧客名をマスキングする、現地調査の日時と名目を配慮してもらう、情報の目的外利用と破棄について取り決める、といった調整は通常の交渉の範囲内です。

Q. DDの費用は誰が負担しますか?

A. 買い手負担が原則です。買い手が自らの意思決定のために行う調査だからです。ただし、売り手が自主的に行うセルサイドDDの費用は売り手負担になりますし、入札形式で売り手が調査報告書を用意する場合も同様です。仲介・FAへの手数料はDD費用とは別に発生します。

Q. DDはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 小規模で範囲を絞った調査なら数日〜2週間程度、中堅規模で財務・税務・法務をひととおり行う場合は2〜4週間程度が一つの目安です。基本合意から最終契約までの全体では1〜3か月程度をみておくことが多いですが、いずれも資料の整備状況と論点の数で前後します。売り手側の資料提出が遅れると、そのまま全体のスケジュールが延びます。

Q. DDで問題を指摘されたら、どうなりますか?

A. 内容と金額によります。金額が特定できるものは価格の減額やクロージング前の是正で、金額が定まらないものは表明保証・特別補償・エスクローなどで処理されるのが一般的です。破談に至るのは、金額が大きく手当てが難しい場合や、開示されていなかった事実が出てきて信頼関係が損なわれた場合です。指摘された時点で慌てず、事実関係と影響額を整理して、対応方針をセットで提示することが交渉を前に進めます。

Q. 小規模な会社でもDDは必要ですか?

A. 規模が小さくても、株式譲渡であれば会社の過去のリスクをそのまま引き継ぐため、最低限の調査は行われるのが通常です。ただし、規模に見合わない費用をかけるのは合理的ではないため、財務・税務を中心とした簡易DDにとどめる、対象を直近3期に絞る、といったスコープ調整が行われます。買い手が調査を軽くする代わりに、表明保証や補償を厚く求めてくることもあるため、「DDが軽い=売り手のリスクが軽い」とは限らない点に注意してください。

まとめ

デューデリジェンス(DD)は、買い手が価格の妥当性を検証し、リスクを把握し、契約条件に反映し、PMIの準備をするための調査です。種類としては財務・税務・法務・労務・事業・IT・環境・不動産などがあり、中小企業のM&Aでは財務・税務・法務を中心に、規模と論点に応じて範囲を絞るのが一般的です。進め方は、基本合意→資料依頼リスト→開示→Q&A→マネジメントインタビュー→現地調査→報告書という流れで、期間は数日〜数週間程度、費用は中小案件で数十万円程度からというのが目安になります(いずれも案件により大きく変動します)。

売り手にとって重要なのは、DDを「受け身で耐える工程」にしないことです。資料を先に揃え、指摘されそうな点は自分から開示し、開示の順番と秘密保持を設計しておく。それだけで、価格の蒸し返しや破談のリスクはかなり下げられます。そしてもう一つ、DDが始まる前に自社の価値の目線を持っておくことが、減額要求に冷静に向き合うための土台になります。なお、労務・税務・法務の個別判断は、社会保険労務士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。

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