事業譲渡と株式譲渡の違い|会社売却のスキーム比較
最終更新: 2026-06-18
中小企業のM&Aでは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」という2つのスキームが使われます。何を引き継ぐかが根本的に異なり、手続き・税務・リスクにも大きな差が出ます。本稿で両者の違いと使い分けを整理します。
株式譲渡とは
会社の株式そのものを売買する方法です。会社は法人格ごと買い手に移り、資産・負債・契約・従業員・許認可も原則そのまま引き継がれます(包括承継)。手続きが比較的シンプルで、中小M&Aで最も一般的なスキームです。売り手はオーナー個人(株主)で、譲渡対価は株主が受け取ります。
事業譲渡とは
会社が営む事業(資産・負債・契約などを個別に選択)を売買する方法です。引き継ぐ対象を選べるため、買い手は不要な負債や簿外リスクを避けられます。一方、契約・許認可の移転や従業員の再雇用手続きを個別に行う必要があり、手間がかかります。売り手は会社(法人)で、対価は会社が受け取ります。
比較表
| 観点 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 引き継ぐ対象 | 会社まるごと(包括) | 選んだ事業・資産のみ |
| 手続き | 比較的シンプル | 契約・許認可ごとに個別対応 |
| 簿外債務リスク | 引き継ぐ(DDが重要) | 対象を限定でき避けやすい |
| 許認可 | 原則そのまま継続 | 取り直しが必要なことがある |
| 対価の受取人 | 株主(個人) | 会社(法人) |
使い分けの観点
- 会社をまるごと引き継ぐなら株式譲渡、一部の事業だけなら事業譲渡。
- 買い手が簿外債務を警戒する場合は、対象を限定できる事業譲渡が選ばれることも。株式譲渡ではデューデリジェンスが特に重要。
- 税務上の課税関係(売り手・買い手とも)が異なるため、必ず専門家と事前検討する。
価値評価との関係
どちらのスキームでも、まず対象事業・会社の価値(レンジ)を把握しておくことが、スキーム選択と価格交渉の土台になります。株式譲渡では会社全体の株式価値、事業譲渡では対象事業の価値(のれんを含む)を見積もる、という違いも意識しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 中小M&Aではどちらが多いですか?
A. 手続きがシンプルな株式譲渡が一般的です。ただし、一部事業のみの売買や簿外リスク回避の観点から事業譲渡が選ばれることもあります。
Q. 税金はどちらが有利ですか?
A. 売り手・買い手の立場や状況で変わるため一概には言えません。譲渡益課税・消費税・のれんの扱いなどが絡むため、税理士への確認が必須です。
まとめ
株式譲渡は「会社まるごと」を包括的に、事業譲渡は「選んだ事業だけ」を個別に引き継ぐスキームです。手続き・簿外債務リスク・許認可・税務に違いがあり、目的に応じて使い分けます。いずれもまず価値レンジを把握しておくことが、スキーム選択と価格交渉の出発点になります。