持株会社(ホールディングス)とは? メリット・デメリットと、事業承継での使い方・作り方

最終更新: 2026-09-12

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「持株会社(ホールディングス)にすると何が良いのか」「うちの規模でも作る意味があるのか」——事業承継やグループ再編を考え始めた経営者から、よく出てくる質問です。「○○ホールディングス」という社名は上場企業でおなじみですが、実際には中小企業でも、複数事業の整理や後継者への承継のために持株会社を作るケースがあります。

本稿では、持株会社とは何かという定義と種類から始めて、メリットとデメリットを表で対比し、作り方の3類型(株式移転・株式交換・抜け殻方式)、事業承継でよく語られる「持株会社スキーム」の一般的な流れ、そして導入するかどうかを判断するチェックリストまでを順に整理します。持株会社化は税務・法務の論点が多く、同じ形でも会社の状況によって結論が変わります。ここでは一般的な考え方を示すもので、実行にあたっては必ず税理士・弁護士などの専門家に確認してください。

持株会社(ホールディングス)とは

持株会社とは、他の会社の株式を保有することで、その会社を支配・管理することを主な目的とする会社です。株式を持たれる側の会社は「子会社」「事業会社」などと呼ばれます。持株会社とその傘下の子会社をまとめて「グループ」と呼び、持株会社はグループ全体の方針決定、資源配分、子会社の管理といった役割を担います。

ポイントは、会社の数が増えても、株主から見た支配の構造は変わらないという点です。従来はオーナーが事業会社の株式を直接持っていたのに対し、持株会社化すると「オーナー → 持株会社 → 事業会社」という二階建ての構造になります。この一段はさむことが、後で述べる承継やリスク遮断の設計につながります。

純粋持株会社と事業持株会社

持株会社は、自ら事業を行うかどうかで大きく2種類に分かれます。実務では、この違いによって持株会社自身の収入源や、税務・与信の見え方が変わってきます。

種類内容持株会社自身の主な収入よくある使われ方
純粋持株会社自らは事業を行わず、子会社株式の保有・グループ管理に特化する子会社からの配当、経営指導料(業務委託料)、ブランド使用料、不動産の賃料など複数事業を対等に並べたいとき、承継の受け皿を作りたいとき
事業持株会社自社でも本業を行いながら、子会社の株式も保有する自社の事業収益に加えて、子会社からの配当など主力事業はそのまま残し、周辺事業だけ別会社にしたいとき

中小企業では、いきなり純粋持株会社にするのではなく、まず主力の会社が他社を子会社として持つ「事業持株会社」の形から始まり、事業が増えた段階で純粋持株会社に組み替える、という順序をたどることも少なくありません。

グループ構造のイメージ

持株会社化の前後で、株式の保有関係がどう変わるかを整理すると次のようになります。

階層持株会社化する前持株会社化した後(純粋持株会社の例)
最上位オーナー(個人株主)オーナー(個人株主)
1段目事業会社A(本業を営む)持株会社(事業は行わず株式を保有)
2段目—(事業会社Bは別途オーナーが直接保有)事業会社A・事業会社B・事業会社C(それぞれ持株会社の子会社)
意思決定各社の社長がそれぞれ判断し、横の調整は個人の関係に依存しやすい持株会社がグループ方針・投資配分を決め、各社は事業執行に集中する

持株会社のメリット

持株会社化のメリットは、「経営管理の面」と「株式・承継の面」の二つに整理できます。よく挙げられるものを一覧にすると次のとおりです。

メリット内容効果が出やすいケース
意思決定の分離グループ全体の戦略・投資判断を持株会社が担い、各事業会社は現場の執行に専念できる。役割が分かれることで、長期の投資判断と日々の収益管理を切り分けやすくなる事業が複数あり、社長が全部を兼務して手が回らなくなっている
事業ごとのリスク遮断各事業を別法人にすることで、一方の事業で生じた債務・訴訟・許認可上の問題が、他の事業に直接及びにくくなる。ただし親会社保証を出していれば遮断されない点に注意リスクの性質が大きく異なる事業(製造と不動産、既存事業と新規事業など)を併営している
一部事業のM&A・切り出しがしやすい事業ごとに法人が分かれていれば、その会社の株式を譲渡するだけで事業を売却でき、契約・許認可の個別移転の手間が相対的に小さくなる将来、一部の事業だけを売却または譲受する可能性がある
人事制度の分離業種や収益構造の違う事業ごとに、給与水準・評価制度・労働時間の設計を分けられる。逆に、持株会社に本社機能を集めて間接部門を共通化する使い方もある同じ会社の中で職種ごとの処遇差が説明しづらくなっている
後継者への段階的な承継「持株会社の経営は後継者、事業会社の一部は先代が当面担当」といった役割分担ができ、権限を段階的に移しやすい後継者が決まっているが、いきなり全体を任せるには経験が足りない
株式の集約株式移転・株式交換によって分散した事業会社の株式を持株会社に集め、株主を持株会社ひとつに統一できる。少数株主が持株会社の株主に置き換わる形になる複数の会社にそれぞれ親族株主がいて、意思決定が煩雑になっている
メリットの多くは「会社を分けること」そのものから生まれます。裏を返せば、事業が一つしかなく株主も社長一人という会社では、得られる効果が限られやすいということでもあります。後述のチェックリストで、自社に当てはまるメリットがいくつあるかを確認してみてください。

株式の集約が持つ意味

中小企業の承継で意外に重いのが、株式の分散です。創業から時間が経つと、相続を経て親族に株式が分かれていたり、名義だけ借りた株主が残っていたりします。持株会社化にあたって株式移転・株式交換を使うと、事業会社の株主は持株会社の株主に切り替わり、事業会社の株式は持株会社に100%集まります。グループの意思決定を一本化するうえでは有効です。

ただし、これは株主が消えるわけではなく、持株会社の株主として残るという整理です。少数株主対策としての効果には限界があり、そもそも誰が株主なのかがあいまいなままでは組織再編の手続き自体が進みません。名義株が疑われる場合は名義株の整理を先に済ませておくのが実務的です。株主の権利内容を設計し直したい場合は種類株式の活用も選択肢になります。

持株会社のデメリット・コスト

メリットだけを見て持株会社化を決めると、後から「維持が思ったより大変だった」となりがちです。負担面も同じ粒度で確認しておきましょう。

デメリット・コスト内容対応の考え方
管理コストと申告の増加会社が増えれば、決算・税務申告・法人住民税の均等割・社会保険の手続き・株主総会や取締役会の運営が会社の数だけ発生する。会計事務所への報酬も一般に増える間接部門を持株会社に集約する、会計システムを統一するなどで負担を抑える設計を先に決めておく
グループ間取引の税務経営指導料・業務委託料・ブランド使用料・グループ内の賃貸借などは、金額の妥当性が問われやすい論点。根拠が薄いと寄附金や役員給与として扱われるおそれがあるサービスの内容と対価の算定根拠を文書化し、契約書を整備する。金額設定は税理士に確認する
赤字子会社との損益通算ができない場合がある法人は原則として会社ごとに課税されるため、A社の黒字とB社の赤字は自動的には相殺されない。グループ通算制度など一定の制度はあるが、適用には要件と事務負担がある会社を分ける前に、赤字が出そうな事業と黒字事業の関係を確認する。制度適用の可否は個別に判断が必要
資金の移動と配当純粋持株会社は自ら稼がないため、資金は子会社からの配当や経営指導料に頼ることになる。子会社の業績が落ちれば持株会社の資金繰りも直撃する。グループ内の貸付にも利率などの論点がある配当方針をあらかじめ決めておく。返済が必要な借入がある場合は特に、資金の流れを事前に試算する
金融機関の与信既存の借入は事業会社に残るのが通常で、持株会社が新たに借りる場合は返済原資が配当等になるため、金融機関は慎重に見ることがある。再編に伴う契約上の制限(財務制限条項など)にも注意再編の構想段階で取引金融機関に相談する。既存の借入契約に支配権変更に関する条項がないか確認する
少数株主・関係者への説明組織再編には株主総会の決議や、反対株主の株式買取請求などの手続きが伴う。従業員・取引先から見ても「会社が変わる」ことになり、説明が必要になるスケジュールに説明と手続きの期間を織り込む。買取請求が出た場合に備えて価格の根拠を用意する

とくに見落とされやすいのが「資金の移動」です。持株会社が借入をして株式を買い取るスキーム(後述)では、返済原資を子会社からの配当等でまかなうことになります。子会社に十分な利益と資金がなければ、返済が滞る設計になってしまいます。配当の基本的な仕組みは配当とはで整理しています。

持株会社の作り方:3つの類型

持株会社を作る方法は、大きく次の3つに分けられます。どれを選ぶかで、手続き・税務・登記・所要期間が変わります。なお、既存の会社を使わず後継者が新会社を設立して株式を買い取る「株式取得型」もあり、これは事業承継の項で扱います。

類型手続きの概要税務の主な論点登記期間の目安向いているケース
株式移転既存の会社(1社または複数社)が、新たに設立する持株会社の完全子会社になる。既存会社の株主には持株会社の株式が交付される適格要件を満たすかどうかで、株主・法人の課税関係が変わる。要件は個別に確認が必要持株会社の設立登記、子会社側の変更登記検討開始から数ヶ月程度(会社の数・株主の状況による)既存の1社をそのまま持株会社の傘下に置きたい/複数社を横並びで束ねたい
株式交換既存の会社を、別の既存会社の完全子会社にする。買収先を傘下に入れる場面でも使われる同じく適格・非適格の判定がある。対価の内容(株式か金銭か)が判定に影響する当事会社の変更登記(新設はない)数ヶ月程度すでに親会社にしたい会社が存在する/M&Aで取得した会社を100%子会社にしたい
抜け殻方式(会社分割)既存会社が営む事業を、新設または既存の会社に会社分割で移し、元の会社は株式を保有する持株会社として残る分割の適格判定に加え、移転資産の評価、消費税・不動産取得税・登録免許税など資産移転に伴う論点が生じやすい分割による設立・変更登記、移転資産(不動産等)の登記数ヶ月〜(資産・許認可の移転があるとさらに長期化)会社名や信用・許認可を元の会社に残したまま、事業だけを子会社化したい

株式移転と株式交換の違いは株式交換・株式移転とは、会社分割の仕組みは会社分割とはで詳しく解説しています。グループ内の会社を逆にひとつにまとめたい場合は合併とはもあわせて確認してください。

組織再編の税務は「適格/非適格」の判定が中心的な論点で、支配関係の継続、従業者の引継ぎ、事業の継続など複数の要件を満たす必要があります。要件は制度改正もあり、会社の資本関係や再編の目的によって結論が変わります。ここでは類型の違いを示すにとどめ、実際の判定は必ず税理士に確認してください。

抜け殻方式が選ばれる理由と注意点

抜け殻方式は、元の会社(法人格)をそのまま持株会社に転換する方法です。長年の社名や信用、取引先との関係を持株会社側に残せる一方で、事業に紐づく許認可・免許、取引契約、不動産などは新しい子会社へ移す必要があります。許認可の再取得に時間がかかる業種では、この移転作業がスケジュールを大きく左右します。事業を移す手続きの考え方は事業譲渡と株式譲渡の違いの整理も参考になります。

事業承継での使い方:いわゆる「持株会社スキーム」

事業承継の文脈で「持株会社」と言われるとき、多くの場合に想定されているのが、後継者が設立した会社が金融機関からの借入で先代の持つ自社株を買い取る形です。一般的な流れは次のとおりです。

  • 1. 後継者が新会社(持株会社)を設立する:後継者が出資して新会社を作ります。ここが将来のグループの最上位になります。
  • 2. 持株会社が金融機関から借入を行う:事業会社の株式を買い取るための資金を調達します。借入額は買取価格に対応するため、株価の算定が前提になります。
  • 3. 先代から事業会社の株式を買い取る:持株会社が先代株主に代金を支払い、事業会社の株式を取得します。先代には売却代金が入り、後継者側に株式が移ります。
  • 4. 子会社からの配当・経営指導料で返済する:持株会社自身は事業を行わないため、返済原資は事業会社からの配当や経営指導料になります。これが長期にわたって続く前提の設計です。

この形が検討される理由は、主に二つあります。ひとつは、先代が株式の対価を現金で受け取れるため、引退後の生活資金や他の相続人への分配原資を確保しやすいこと。もうひとつは、後継者が自己資金を用意しなくても、会社の信用と将来の利益で株式を取得できることです。親族内承継で「後継者に買取資金がない」という壁に当たったときの選択肢のひとつとして語られます。後継者がいない場合も含めた選択肢の全体像は後継者不在の会社の選択肢で整理しています。

株価対策として語られる面と、注意すべき点

持株会社スキームは、しばしば「株価対策」「相続対策」として紹介されます。事業会社の株式を持株会社が保有する形になると、相続財産は持株会社の株式に置き換わり、その評価は事業会社の株式を直接持つ場合とは異なる計算になるためです。また、持株会社に借入が乗ることも評価に影響します。

ただし、ここは慎重に見る必要があります。

  • 効果は事案によって大きく異なります:会社の規模、資産の内容、株主構成、借入の条件などによって結論は変わります。「持株会社にすれば株価が下がる」と一律に言えるものではありません。
  • 税負担の軽減を目的とした形式的な再編は、否認されるリスクがあります:経済的な合理性や事業上の目的が乏しく、税負担の減少だけを狙ったと見られる場合、想定した取扱いが認められないおそれがあります。
  • 売買価額の妥当性が問われます:先代から持株会社への株式譲渡で価額が適正でないと、みなし贈与などの問題が生じるおそれがあります。第三者間ではない取引だからこそ、価格の根拠を残しておくことが重要です。
  • 返済が実際に回るかが最大の実務論点です:借入は長期に残ります。子会社の業績が想定より落ちれば、配当が出せず返済が苦しくなります。楽観的な計画で組まないことが大切です。
  • 他の相続人とのバランスも論点です:株式が後継者側に集中する分、他の相続人への配慮をどう設計するかを別途考える必要があります。
本稿は特定の税務上の効果を保証するものではありません。持株会社スキームの可否や具体的な設計、税務上の取扱いは、会社ごとの事情や適用時点の制度によって異なります。実行前に必ず税理士・弁護士に確認してください。相続・贈与に関する制度としては事業承継税制もあり、持株会社化と比較検討されることがあります。

持株会社化と、他の自社株対策との比較

自社株の承継では、持株会社化のほかにもいくつかのアプローチがあります。それぞれ目的も負担も違うため、並べて比べるのが実務的です。

手法主な狙い主な負担・注意点
持株会社化(株式取得型)先代に現金を渡しつつ、後継者側に株式を集約する長期の借入返済が必要。グループ管理コストが増える
生前贈与・相続で移す株式をそのまま後継者に移転する評価額次第で税負担が重くなる。納税資金の手当てが必要
事業承継税制の活用一定の要件のもとで納税を猶予・免除する制度を使う要件の充足と継続的な報告が必要。取消事由に注意
役員退職金の支給などによる調整利益・純資産の水準を通じて評価に影響させる金額の妥当性が問われる。会社の資金繰りへの影響もある
MBO(役員・従業員への承継)親族外の経営陣に承継する買収資金の調達が課題。価格の合意形成が必要
第三者へのM&A外部に売却して創業者利益を確定する相手探しと交渉に時間がかかる。従業員・取引先への説明が必要

役員退職金を使った自社株対策の考え方は役員退職金と自社株対策、経営陣による承継はMBOとはで解説しています。第三者への売却まで含めて比較したい場合はM&Aによる会社売却の流れもご覧ください。

株価の算定が出発点になる理由

ここまで見てきたとおり、持株会社化のどの類型を選んでも、必ず「株式をいくらと見るか」という問題が出てきます。

  • 株式移転・株式交換:既存株主に交付する持株会社株式の割当比率を決めるために、各社の株式価値を見比べる必要があります。複数社を束ねる場合は特に重要です。
  • 株式取得型(持株会社スキーム):先代から持株会社が買い取る価格そのものが株価です。価格は借入額に直結し、税務上の妥当性も問われます。
  • 反対株主の買取請求:組織再編に反対する株主から買取を求められた場合、価格の根拠を示す必要があります。
  • 金融機関への説明:買取資金を借りる際、その金額が妥当であることの説明を求められることがあります。

非上場株式には市場価格がないため、複数の方法で価値を捉えるのが一般的です。評価手法の全体像は非上場株式の評価方法、承継の場面での考え方は事業承継の株価算定で整理しています。なお、相続税・贈与税の計算に使う財産評価基本通達に基づく評価額と、M&Aや事業の実態から見た価値は別の考え方に基づくものです。両者の違いを踏まえて、目的に合った評価を用意することが大切です。

導入判断のチェックリスト

持株会社化に踏み切るかどうかを考えるとき、次の項目を確認してみてください。多く当てはまるほど、検討する価値が高くなります。逆に、当てはまるものが少なければ、いまは会社を分けずに他の方法を考えたほうがよいかもしれません。

確認項目確認する内容当てはまらない場合の見方
グループ会社が複数あるかすでに2社以上を運営している、または近く事業を分けたい理由がある1社だけなら、リスク遮断や人事分離のメリットが出にくい
承継の相手が決まっているか後継者が特定されており、本人に承継の意思がある相手が未定のまま器だけ作ると、後から設計をやり直すことになりやすい
借入余力があるか株式取得型を採る場合、買取額に見合う借入ができ、子会社の利益で返済できる見通しがある返済原資が足りなければ、贈与・事業承継税制など別の方法を先に検討する
管理体制が持つか会社が増えても、経理・総務・申告を回せる人員か外部体制がある管理が回らないと、増えたコストに見合う効果が得られない
株主の状況が整理されているか株主名簿が実態と合っており、名義株や所在不明株主の問題がない先に株主整理を済ませないと、組織再編の手続き自体が進まない
自社株の価値の目安を把握しているか複数の手法で株式価値のレンジを確認している価格が分からないままでは、借入額も割当比率も設計できない
金融機関に相談しているか取引金融機関に構想を伝え、既存借入への影響を確認している後から契約上の制約が判明すると、スケジュールが崩れる
専門家の体制があるか税理士・弁護士・司法書士と、目的とスケジュールを共有できている税務・法務・登記が絡むため、単独で進めるのは現実的でない

相談先の選び方に迷う場合は事業承継の相談先を参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 小さな会社でも持株会社を作る意味はありますか?

A. 意味があるかどうかは、規模よりも「何を解決したいか」で決まります。事業が複数ある、承継のために株式を集約したい、一部事業を将来切り出したいといった具体的な目的があれば、規模が小さくても検討する価値はあります。一方、事業が一つで株主も社長一人という会社では、得られるメリットに対して管理コストの増加が相対的に重くなりやすく、慎重に判断したほうがよいでしょう。

Q. 持株会社化の費用はどのくらいかかりますか?

A. 費用は、選ぶ類型・会社の数・資産の内容・株主の状況によって大きく変わるため、一律の金額は示せません。一般に発生しうるものとしては、登録免許税などの登記関係の費用、司法書士報酬、税理士・弁護士などの専門家報酬、株式価値の算定にかかる費用、抜け殻方式で不動産を移す場合の不動産取得税・登録免許税などがあります。加えて、持株会社化後は会社が増える分の決算・申告費用や法人住民税の均等割といったランニングコストが毎年かかる点も見込んでおく必要があります。初期費用だけでなく、維持費まで含めて見積もりを取ることをおすすめします。

Q. 持株会社にすると株価は下がるのですか?

A. 一律に下がるとは言えません。相続財産が事業会社株式から持株会社株式に置き換わり、持株会社に借入が乗ることで評価が変わる可能性はありますが、その結果は会社の規模や資産構成、株主構成、借入条件などによって異なります。また、税負担の軽減だけを目的とした形式的な再編とみなされると、想定した取扱いが認められないおそれもあります。株価への影響は必ず個別に、税理士に確認してください。

Q. 銀行は持株会社化をどう見ますか?

A. 金融機関は、グループ全体の収益力と資金の流れを見ます。既存の借入は事業会社に残るのが通常で、持株会社が新たに借りる場合は、返済原資が子会社からの配当や経営指導料になるため、その安定性を確認されます。また、既存の借入契約に支配権の変更や組織再編に関する条項が入っていることもあります。構想段階で取引金融機関に相談しておくと、後から手戻りが生じにくくなります。

Q. 持株会社化は後から解消できますか?

A. 解消自体は不可能ではなく、合併によってグループ会社を一つに戻す、子会社株式を譲渡するといった方法が考えられます。ただし、解消にも組織再編としての手続き・登記・税務の検討が必要で、作るときと同程度の手間と費用がかかることがあります。持株会社に借入が残っている場合は、その処理も論点になります。「合わなければ戻せばよい」と気軽に考えるのではなく、最初の設計段階で長期的に維持できる形かどうかを確認しておくことが大切です。

Q. 将来M&Aで売却するとき、持株会社があると不利になりませんか?

A. 一概に不利とは言えず、むしろ有利に働く場面もあります。事業ごとに法人が分かれていれば、買い手が欲しい事業だけを株式譲渡で切り出しやすく、売り手にとっても選択肢が広がります。一方で、買い手から見るとグループ内取引の整理や、持株会社に残る借入・資産の扱いが検討事項として増えるため、調査に時間がかかることはあります。また、株主が持株会社になるため、売却代金は個人ではなく法人に入り、そこから個人に移す段階でさらに検討が必要になります。個人と法人のどちらで受け取るかは課税関係が異なるため、売却を視野に入れているなら、その点も含めて事前に税理士へ相談しておくとよいでしょう。

まとめ

持株会社(ホールディングス)は、子会社株式を保有してグループを支配・管理する会社で、自ら事業を行わない純粋持株会社と、事業も営む事業持株会社に分かれます。メリットは、意思決定の分離、事業ごとのリスク遮断、一部事業のM&A・切り出しのしやすさ、人事制度の分離、後継者への段階的な承継、株式の集約といった点にあります。一方で、管理コストと申告の増加、グループ間取引の税務、損益通算ができない場合があること、資金移動と配当の設計、金融機関の与信、少数株主への説明といった負担も同時に生じます。

作り方には株式移転・株式交換・抜け殻方式(会社分割)の3類型があり、手続き・税務・登記・期間が異なります。事業承継では、後継者が設立した持株会社が借入で自社株を買い取り、子会社からの配当等で返済していくスキームがよく語られますが、返済が実際に回る設計かどうかが最大の実務論点です。株価対策として紹介されることもあるものの、効果は事案によって異なり、税負担の軽減だけを目的とした形式的な再編には否認リスクもあります。判断の前に、税理士・弁護士に確認してください。

そして、どの類型を選ぶにしても共通の出発点になるのが、自社株の価値の把握です。買取価格も、株式の割当比率も、借入額も、すべて株価から逆算されます。

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