事業承継における株価算定のポイント
最終更新: 2026-06-19
事業承継(親族内承継・社内承継・第三者承継=M&A)では、自社株の価値を把握することが出発点になります。承継の方法や条件を検討するうえで、株式価値の目安は欠かせません。本稿では、なぜ株価算定が必要か、使われる手法、そして特に混同しやすい「税務上の評価」と「取引価格」の違いを整理します。
なぜ株価算定が必要か
- 株式の移転(譲渡・贈与・相続)の条件を検討するため。
- 後継者や買い手との交渉の根拠とするため。
- 承継スキーム全体の資金計画・税負担を見積もるため。
自社株の価値が分からないままでは、贈与・相続の税負担も、社内承継の買取資金も、M&Aの希望価格も具体化できません。承継のあらゆる検討は、株価の把握から始まります。
承継方法によって「必要な価値」が違う
| 承継方法 | 主に関わる価値 | 補足 |
|---|---|---|
| 親族内・相続/贈与 | 税務上の評価額 | 国税庁方式(財産評価基本通達) |
| 社内承継(MBO等) | 取引価格(経済的価値) | 買取資金の調達が論点 |
| 第三者承継(M&A) | 取引価格(経済的価値) | 交渉・シナジーで決まる |
「税務上の評価」と「取引価格」は別物
ここが最も誤解されやすい点です。相続税・贈与税の課税で使う「取引相場のない株式の評価」は、国税庁の財産評価基本通達にもとづく類似業種比準価額・純資産価額などで計算され、目的も計算方法も決まっています。一方、M&Aや社内承継の取引価格は、DCF法・類似会社比較法・時価純資産法などで目安を出し、最終的に交渉で決まります。両者は一致するとは限りません。
使われる評価手法(取引価格の検討)
収益性のある事業会社では、DCF法や類似会社比較法といった収益・市場の視点を中心に、時価純資産法を併用して多面的に検証します(非上場株式の評価方法)。会社の状況(資産構成・収益力・上場区分)に応じて手法の比重は変わります。
進め方
まずは直近の財務数値や事業計画をもとに価値の目安(レンジ)を把握し、論点を整理します。そのうえで、事業承継税制の活用可否や、役員退職金などの自社株対策、承継方法の選択を具体的に検討し、必要に応じて専門家の精緻な評価につなげるのが効率的です。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続税の評価額とM&Aの売却価格は同じですか?
A. 別物です。相続税評価は国税庁方式による課税上の計算、M&A価格は交渉で決まる取引価格で、目的も計算も異なります。
Q. まず何から始めればよいですか?
A. 自社株のおおよその価値(レンジ)を把握することからです。価値が分かれば、税負担の見込みや承継方法の比較が具体化します。
まとめ
事業承継は自社株の価値把握が出発点です。承継方法によって関わる価値(税務上の評価か取引価格か)が異なり、両者は一致しません。まず経済的な価値の目安をつかみ、税務評価や承継方法の検討につなげましょう。
※ 相続税・贈与税の課税上の評価は税務上の判断を伴います。税務上の評価は顧問税理士にご確認ください。本サービスが提供するのは取引・意思決定の参考となる経済的な株式価値評価です。