議決権とは? 株式比率でできることの一覧と、事業承継・M&Aで押さえる持株比率
最終更新: 2026-09-12
議決権とは、株主が株主総会で会社の意思決定に参加できる権利のことです。会社の所有者は株主であり、その株主が「誰を取締役にするか」「定款を変えるか」「会社を売るか」といった重要事項を決める場が株主総会です。そこで一票を投じる力が議決権であり、どれだけの議決権を持っているかが、そのまま会社に対する影響力の大きさになります。
中小企業のオーナー経営者にとって、議決権は「普段は意識しないが、いざというときに決定的な意味を持つもの」です。日常の経営は代表取締役として動かせても、後継者に会社を引き継ぐ場面や、第三者に会社を売却する場面では、必ず「誰が何パーセントの議決権を持っているか」が問われます。ここが整理されていないと、承継もM&Aも前に進みません。
本稿では、議決権の基本を確認したうえで、持株比率ごとに何ができるのかを一覧表で整理します。そのうえで、事業承継で後継者に議決権を集める考え方、株式が分散したときのリスクと対策、M&Aで買い手が100%を求める理由、議決権の行使方法や議決権のない株式の使い方まで、実務目線で順に解説します。なお、株式の価値そのものへの影響(支配権の有無による価格差)についてはコントロールプレミアムの解説で詳しく扱っていますので、本稿は「比率ごとにできること」に絞ってご説明します。
議決権の基本:1株1議決権が原則
株式会社では、1株につき1個の議決権を持つのが原則です。100株持っていれば100個の議決権があり、1,000株発行されている会社で100株を持っていれば議決権割合は10%になります。株主平等の考え方に基づき、出資した株数に応じて発言力が決まる、というのが基本の設計です。
ただし、この「1株1議決権」にはいくつかの例外や調整があります。実務でつまずきやすいポイントを先に押さえておきましょう。
- 単元株制度:定款で「100株を1単元とする」といった定めを置いている場合、議決権は1単元につき1個になります。単元未満の株式には議決権が認められないのが一般的で、上場会社では広く使われている仕組みです。中小企業でも定款に定めがあれば適用されるため、自社の定款を確認しておく必要があります。
- 自己株式には議決権がない:会社が自ら保有している株式(自己株式)には議決権がありません。会社が自分自身の意思決定に一票を投じるのはおかしいためです。この点は実務上とても重要で、会社が自己株式を取得すると、その分だけ発行済株式のうち議決権のある株式が減り、残った株主の議決権割合が相対的に上がります。後継者の持株比率を高める手段として、会社による自己株式の取得が検討されるのはこのためです。
- 議決権制限株式:種類株式として、議決権のない株式や、一部の事項についてのみ議決権を持つ株式を発行することができます(後述)。
- 相互保有株式など:一定の資本関係にある会社が保有する株式について、議決権の行使が制限される場合があります。グループ会社間で株式を持ち合っているケースでは確認が必要です。
また、株主総会で誰が議決権を行使できるかは、基準日によって決まります。会社は「この日の株主名簿に載っている人を、その総会で権利を行使できる株主とする」という日を定めることができ、多くの会社では定款で決算日を基準日としています。つまり、基準日より後に株式を取得した人は、その回の総会では議決権を行使できないのが通常です。株式の譲渡や相続があったときは、株主名簿の名義書換を済ませておかないと権利を行使できないという点も、あわせて覚えておきたいところです。
なお、非上場の中小企業では株券を発行していない会社が多く、株主であることの証明は基本的に株主名簿によります。名簿が長年更新されていない、そもそも作成されていない、という会社も珍しくありません。この状態は事業承継やM&Aの場面で必ず問題になりますので、早めの整備が必要です。
持株比率でできることの一覧
ここからが本題です。議決権の割合ごとに、どのようなことができるのかを整理します。株主の権利は大きく分けて、1株でも持っていれば行使できる権利(単独株主権)と、一定割合以上を持っていないと行使できない権利(少数株主権)があります。以下の表は代表的な目安をまとめたものです。
| 議決権割合 | できること(代表例) | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 1株〜 | 株主総会での議決権行使、配当を受け取る権利、株主総会の議事録などの閲覧請求、総会決議の取消しを求める訴えの提起 | 1株でも株主は株主。総会の招集通知を送る必要があり、手続き上は必ず関与が生じる。人数が多いほど総会運営の手間とリスクが増える |
| 1%以上 | 株主総会での議案提出(株主提案権)、総会の招集手続きを調査する検査役の選任請求など | 公開会社では「1%以上または300個以上の議決権を6ヶ月以上保有」といった要件が一般に求められ、非公開会社では保有期間の要件が課されない扱いになるなど、会社の区分によって条件が異なる。少数でも議題を持ち込める点に意味がある |
| 3%以上 | 会計帳簿の閲覧・謄写請求、株主総会の招集請求、取締役等の責任を調査する検査役の選任請求、役員の解任を求める訴えの提起など | 帳簿を見られるインパクトが大きい。少数株主でも会社の内部情報にアクセスでき、経営陣にとっては大きな圧力になりうる。M&Aで少数株主が残ると、この権利が後々の火種になりやすい |
| 3分の1超 | 特別決議を単独で否決できる(可決を阻止できる) | いわゆる拒否権のライン。定款変更、合併、事業譲渡、解散といった重要事項を止められる。買い手にとっても後継者にとっても、他人にこの水準を持たれるのは避けたい |
| 過半数(50%超) | 普通決議を単独で可決できる。取締役の選任・解任、(定款に定めがない場合の)役員報酬総額の決定、剰余金の配当など | 経営陣を自分で決められる水準。日常の経営の主導権を握れるが、これだけでは定款変更や組織再編はできない |
| 3分の2以上 | 特別決議を単独で可決できる。定款変更、合併・会社分割・株式交換などの組織再編、事業譲渡、募集株式の有利発行、解散など | 実質的に会社を動かせる水準。事業承継で後継者に集めたい目標ラインは、まずここが目安になる |
| 90%以上 | 特別支配株主の株式等売渡請求という制度の対象になりうる(他の株主から株式を強制的に取得する仕組みが用意されている) | 少数株主を締め出して100%化する手段が制度として存在する水準。ただし手続き・価格の適正さをめぐる要件があり、実行には専門家の関与が前提 |
| 100% | 完全支配。総会の手続きも実質的に簡素化でき、意思決定に他の株主が関与しない | 買い手が最も望む状態。反対株主も、帳簿閲覧を求める株主も、配当を分け合う相手もいない |
普通決議と特別決議の違い
表に出てくる「普通決議」「特別決議」の違いも押さえておきましょう。普通決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で成立するのが原則です。取締役の選任や配当の決定など、日常的な事項がこれにあたります。
特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要とされるのが原則です。定款変更や組織再編、事業譲渡といった会社の根幹に関わる事項が対象になります。定款でこれより厳しい要件を定めることもできるため、「自社の定款はどうなっているか」の確認が出発点になります。
なお、出席した株主を基準に数えるため、理屈のうえでは3分の2未満の持株比率でも、他の株主が総会に出席しなければ特別決議が通ることはあります。ただし承継やM&Aの実務では、そうした偶然に頼らず「確実に単独で可決できる比率」を確保することを目指すのが通常です。
1株でも株主は株主、という感覚を持つ
中小企業でありがちなのが、「1株や2株くらいなら誰が持っていても関係ない」という感覚です。しかし実際には、1株の株主にも総会の招集通知を送る必要があり、総会決議の取消しを求める訴えを起こす権利もあります。連絡が取れない株主が1人でもいると、それだけで総会の適法性に不安が残り、M&Aのデューデリジェンスで必ず指摘されます。株主の「人数」も、比率と同じくらい実務上の重みを持つと考えてください。
事業承継での意味:後継者に3分の2以上を集める
事業承継で議決権を考えるときの基本方針は、後継者に3分の2以上を集めることです。過半数だけでは取締役の選任はできても、定款変更や組織再編ができません。将来、会社を分割したり、他社と組んだり、あるいは第三者に売却したりする可能性を考えると、後継者が単独で特別決議を通せる状態にしておくのが安全です。
逆に言えば、後継者以外に3分の1超が集まってしまう状態は避けたいということになります。親族間の関係が良好なうちは問題が表面化しませんが、世代が変わると事情は変わります。「兄弟仲が良いから大丈夫」という前提は、次の世代には引き継がれません。
株式が分散する主な原因
- 相続による分散:株式は財産ですから、遺言や遺産分割協議がなければ相続人の間で分けられることになります。1回の相続で3人に分かれ、次の相続でさらに分かれ、と代を重ねるうちに株主が十数人になっているケースは珍しくありません。
- 設立時の名義借り(名義株):かつて株式会社の設立に発起人が複数必要だった時代に、親族や知人の名前を借りて株主として登録した株式です。実質的な出資者はオーナーでも、名簿上は他人名義になっているため、後になって「自分の株だ」と主張されるリスクがあります。整理の考え方は名義株の整理で詳しく解説しています。
- 従業員・取引先への譲渡:功労のあった従業員や取引先に株式を持ってもらった結果、退職後・取引終了後もそのまま株主として残っているケースです。
- 行方不明株主・相続人不明:住所変更が名簿に反映されておらず連絡が取れない、株主が亡くなって相続人が誰かも分からない、という状態です。総会の招集通知すら送れず、株式の集約も進められません。
分散した株式への対策
分散してしまった株式を集約する、あるいはこれ以上分散しないようにする手段には、次のようなものがあります。いずれも税務・法務の検討が必要ですから、税理士・弁護士と組んで進めることが前提です。
| 手段 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 生前贈与・売買による集約 | 後継者が現オーナーや少数株主から株式を買い取る、または贈与を受ける | 評価額によって贈与税・所得税の負担が変わる。後継者の資金力が問題になりやすい |
| 会社による自己株式の取得 | 会社が少数株主から株式を買い取る。買い取った株式に議決権はないため、残る株主の比率が上がる | 分配可能額の範囲など財源の制約がある。売り手側の税務上の扱いにも注意 |
| 種類株式の活用 | 後継者には議決権のある株式、他の相続人には配当を優先する無議決権株式を渡すなど、経営権と財産価値を分けて設計する | 定款変更・登記が必要。設計次第で効果が大きく変わるため専門家の関与が必須 |
| 譲渡制限の設定 | 株式の譲渡に会社の承認を必要とする定めを置き、望まない第三者に株式が渡るのを防ぐ | 相続による移転は譲渡ではないため、これだけでは相続分散は防げない |
| 名義株の整理 | 名義人と実質的な所有者を確認し、名簿を実態に合わせる | 時間が経つほど当事者の記憶と証拠が失われる。早期着手が重要 |
| 持株会社の活用 | 持株会社に株式を集約し、事業会社の議決権を一本化する | 資金調達やグループ全体の設計とセットで考える必要がある |
種類株式の設計については種類株式、譲渡制限の仕組みについては譲渡制限株式、持株会社を使う場合の全体像は持株会社の解説をあわせてご覧ください。また、こうした株式の移転にはほぼ必ず評価額の問題が伴いますので、事業承継における株価算定と事業承継税制も確認しておくと全体像がつかめます。
後継者が決まっていない場合
親族にも社内にも後継者がいない場合、議決権の集約は「後継者に渡すため」ではなく「第三者に売却できる状態にするため」に行うことになります。この場合も目標は同じで、オーナーの手元にできるだけ議決権を集め、株主構成をシンプルにしておくことです。選択肢の整理は後継者不在のときの選択肢で扱っています。
M&Aでの意味:なぜ買い手は100%を求めるのか
中小企業のM&Aでは、買い手が「株式の100%取得」を条件にすることが一般的です。少数株主が1人でも残ると、買い手にとっては次のような負担とリスクが残るためです。
- 意思決定に他人が関与する:株主総会を開くたびに招集通知を送り、決議の手続きを踏む必要があります。買収後に事業を組み替えようとしても、3分の1超を持つ株主がいれば特別決議が通りません。
- 帳簿を見られる:3%以上を持つ株主からは会計帳簿の閲覧・謄写を求められる可能性があります。買い手グループの経営情報が外部に出る懸念があります。
- 配当を分け合う:配当を出せばその比率分は少数株主に流れます。逆に配当を出さなければ「利益を独り占めしている」と不満が出やすくなります。
- 将来の売却・再編の妨げになる:グループ再編で株式交換・株式移転を使う場合も、さらに転売する場合も、少数株主の存在は手続きを複雑にします。
- 買い取り価格の交渉が後で発生する:あとから少数株主の株式を買い取ろうとすると、足元を見られて高値を要求される、あるいは価格をめぐって争いになる、という事態が起こりえます。
こうした理由から、買い手は「クロージングまでに100%を集めてほしい」と求めます。売り手側から見ると、株式が分散したままではそもそも交渉のテーブルに着けない、あるいは価格を下げられる要因になるということです。株式の集約はM&Aの準備の中でも最も時間がかかる作業のひとつですから、売却を考え始めた段階で真っ先に着手すべき項目だと言えます。
全体の流れの中でどのタイミングで株主構成が問われるかはM&Aによる会社売却の流れを、最終契約で株式の帰属がどう扱われるかは株式譲渡契約(SPA)の要点を参照してください。なお、会社そのものではなく特定の事業だけを譲渡する方法を選べば、株式の分散問題を回避できる場合もあります。両者の違いは事業譲渡と株式譲渡の違いで整理しています。
持株比率と価格の関係
議決権の比率は、1株あたりの価値そのものにも影響します。会社を支配できるだけの株式には支配権の価値が上乗せされ(コントロールプレミアム)、逆に何も決められない少数株式は割り引いて評価される(マイノリティディスカウント)のが一般的な考え方です。さらに非上場株式は市場で自由に売れないため、換金しにくさによる調整も加わります。
この論点は本稿では深入りしません。詳しくはコントロールプレミアムとは、非流動性ディスカウント(DLOM)、算定方法の全体像は非上場株式の評価方法をご覧ください。
議決権の行使方法
議決権は株主総会で行使しますが、株主が必ず会場に足を運ばなければならないわけではありません。主な方法は次の3つです。
| 方法 | 内容 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 総会に出席して行使 | 株主本人(法人株主であれば代表者など)が総会に出席し、その場で賛否を表明する | 株主が少数で、実質的に一堂に会せる中小企業では基本形 |
| 代理人による行使(委任状) | 他の株主などを代理人として、委任状を提出して行使する。定款で代理人の資格を株主に限る定めを置いている会社が多い | 遠方の株主、高齢の株主、当日都合がつかない株主がいる場合 |
| 書面(または電磁的方法)による行使 | 議決権行使書面に賛否を記載して提出する。会社が制度として採用している場合に利用できる | 株主数が多い会社。中小企業では採用していないことも多い |
また、株主が少数の非上場会社では、実際に総会を開催せず、議案について株主全員が書面で同意することにより決議があったものとみなす方法が使われることもあります。手続きが簡便になる一方で、書面の作成・保管を怠ると「本当に決議があったのか」が後で問題になります。M&Aのデューデリジェンスでは過去の総会議事録が必ずチェックされますので、形式を整えておくことが大切です。
議決権制限株式・属人的株式という選択肢
「財産としては渡したいが、経営には口を出してほしくない」という場面で使われるのが、議決権を制限した株式です。代表的なものを整理します。
- 議決権制限株式(無議決権株式を含む):議決権がまったくない株式や、特定の事項についてだけ議決権を持つ株式です。後継者以外の相続人に、配当を優先する代わりに議決権のない株式を渡す、といった設計に使われます。
- 拒否権付株式(いわゆる黄金株):一定の事項について、その種類株主の総会の決議も必要とする株式です。承継の過渡期に、先代が1株だけ保有して後継者を見守る、といった使い方が紹介されることがあります。ただし、この株式が第三者に渡ると経営が止まるリスクがあるため、譲渡制限や取得条項をセットで設計するのが通常です。
- 属人的株式:非公開会社では、定款で「特定の株主については議決権を1株につき複数個とする」といった、株主ごとに異なる取扱いを定めることが認められています。株数を動かさずに議決権のバランスだけを調整できる点が特徴ですが、他の株主の利益を害する内容だと有効性が争われる可能性があり、慎重な設計が求められます。
いずれも定款変更(原則として特別決議)と登記が必要で、設計を誤ると後で身動きが取れなくなります。詳細は種類株式の解説を参照しつつ、必ず弁護士・司法書士に相談して進めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 51%を持っていれば安心と考えてよいですか?
A. 日常の経営という意味では大きな力を持ちますが、「安心」とまでは言えません。過半数で可決できるのは普通決議です。取締役の選任・解任や配当の決定はできますが、定款変更、合併や会社分割などの組織再編、事業譲渡といった特別決議事項は単独では通せません。逆に、残りの49%が一人に集まっていれば、その株主は特別決議をすべて止められます。会社の将来の選択肢を自分で決めたいのであれば、3分の2以上を目標にするのが実務的な考え方です。
Q. 3分の1超を他の人が持つと、具体的に何が起きますか?
A. その株主が反対する限り、特別決議が成立しなくなります。たとえば定款を変更したい、会社を分割したい、事業を譲渡したい、といった場面で前に進めなくなります。M&Aで会社全体を売却しようとする場合も、その株主が株式の売却に応じなければ100%の譲渡は成立しません。実務では、この水準を持つ株主がいると「事実上の共同経営者」として扱わざるを得なくなり、交渉のたびに同意を取り付ける必要が生じます。株主構成を設計する際は、3分の1超を後継者以外に集中させないことが基本方針になります。
Q. 親族に少しずつ株を渡していくのは危険ですか?
A. 贈与税の負担を抑えるために毎年少しずつ贈与する方法はよく使われますが、渡す相手を分散させると議決権も分散します。特に、複数の子に均等に渡していくと、後継者の比率が3分の2に届かない構成になりがちです。さらに、渡した先で相続が起きればもう一段細分化されます。財産を公平に分けたいという意図があるなら、後継者に議決権のある株式を集め、他の相続人には無議決権株式や株式以外の財産で調整する、といった設計を検討するのが一般的です。渡し始める前に、最終的な株主構成のゴールを決めておくことをおすすめします。
Q. 議決権のない株式を渡すには、どうすればよいですか?
A. 一般的には、定款を変更して議決権制限株式(無議決権株式)という種類株式を発行できるようにし、既存の普通株式の一部をその種類株式に変更する、または新たに発行する、といった手続きを踏みます。定款変更には原則として株主総会の特別決議が必要で、登記も伴います。配当を優先する条件を付ける、会社が一定の事由で買い取れる条項を付けるなど、設計の自由度が高い反面、内容次第で株式の評価額や既存株主との公平性の問題が生じます。種類株式の解説を参考にしつつ、必ず専門家と一緒に設計してください。
Q. 株主名簿に載っている人と、実際の出資者が違う場合はどうなりますか?
A. 会社との関係では、原則として株主名簿の記載を基準に権利の行使が扱われます。つまり、実質的な出資者が別にいても、名簿上の株主に招集通知が送られ、その人が議決権を行使できるのが基本です。名義を借りていただけという主張が通るかどうかは、出資の事実を示す資料や当事者の認識などを総合して判断されることになり、争いになりやすい領域です。M&Aでは買い手が必ずここを確認しますので、早いうちに事実関係を整理し、名義人の協力が得られるうちに名簿を実態に合わせておくべきです。進め方は名義株の整理で解説しています。
Q. M&Aでは何パーセントの取得を目指すのが一般的ですか?
A. 中小企業の株式譲渡では100%が原則です。買い手は経営の自由度と情報管理を確保したいため、少数株主が残る形を嫌います。事情により100%が難しい場合でも、最低でも3分の2以上を確保し、残る株主については将来の買い取りに関する取り決めを契約に入れておくのが通常です。売り手が一部の株式を持ち続けて経営に関与し続ける形(一部譲渡)も選択肢としてはありますが、その場合は残る株式の扱いや将来の売却条件を最終契約で細かく定めておく必要があります。いずれにしても、交渉に入る前に「今、誰が何株持っているか」を正確に把握しておくことが出発点になります。
まとめ
議決権は、株主が株主総会で会社の意思決定に参加できる権利であり、1株1議決権が原則です。ただし単元株の定めがあれば単元ごとの議決権になり、自己株式には議決権がなく、誰が行使できるかは基準日と株主名簿で決まります。まずはこの基本を自社の定款と名簿で確認するところから始めてください。
持株比率でできることは段階的に増えていきます。3%以上で会計帳簿の閲覧を請求でき、3分の1超で特別決議を止められ、過半数で取締役を選任でき、3分の2以上で定款変更や組織再編まで単独で決められます。事業承継では後継者に3分の2以上を集めることが目標ラインであり、M&Aでは買い手が100%を求めるのが原則です。相続や名義株による分散は放置するほど解決が難しくなりますから、種類株式・譲渡制限・自己株式の取得・名義株の整理といった手段を、税務と法務の両面から早めに検討しておくことが重要です。要件は会社の機関設計や定款の定めによって異なりますので、実行にあたっては弁護士・税理士への確認を前提としてください。
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