ノンネームシートと企業概要書(IM)とは? 記載項目と、特定されない書き方

最終更新: 2026-09-12

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会社を譲渡するとき、売り手の情報を最初から全部を見せることはありません。買い手候補は最終的に1社に絞られますが、その1社にたどり着くまでには十数社から数十社に打診することもあります。打診した全社に社名や決算書を渡してしまえば、成約しなかった会社にまで内情が残ることになります。そこでM&Aの実務では、情報を段階的に開示するという方法をとります。

その入口が「ノンネームシート(ティーザー)」、次の段階が「企業概要書(IM:Information Memorandum)」です。ノンネームシートは社名を伏せた1枚程度の匿名資料、IMは秘密保持契約を結んだ相手にだけ渡す数十ページの詳細資料で、役割がはっきり分かれています。

この記事では、2つの資料の位置づけを整理したうえで、ノンネームシートの記載項目と「特定されない書き方」のコツIMの目次例と作成のポイント、買い手がどこを見ているか、そして配布先の記録や透かしといった情報管理の実務までを解説します。売り手として何を用意すればよいかが分かる構成にしています。

情報開示は3段階で進む

まず全体像です。M&Aの情報開示は、ノンネームシート、NDA(秘密保持契約)、企業概要書(IM)という順序で進むのが一般的です。前の段階で関心を示した相手だけが次の段階に進むため、情報が広がる範囲は段階ごとに狭くなっていきます。

段階資料・手続き目的分量の目安読み手
第1段階ノンネームシート(ティーザー)社名を伏せたまま関心の有無を確認し、母集団を絞るA4で1枚(多くても2枚)買い手候補の担当者・経営企画
第2段階NDA(秘密保持契約)の締結情報の目的外利用と第三者開示を禁じ、詳細開示の前提をつくる契約書2〜5ページ程度買い手候補の法務・決裁者
第3段階企業概要書(IM)検討に必要な事業・財務・組織の情報をまとめて開示し、意向表明を判断してもらう20〜50ページ程度(案件規模による)買い手候補の経営陣・投資検討チーム

この流れはM&A・会社売却の全体の流れのうち、打診から意向表明までの前半部分にあたります。IMを読んだ買い手が前に進みたいと判断すれば、トップ面談を経て意向表明書・基本合意書に進み、その後デューデリジェンス(買収監査)で実態の検証が行われます。つまりIMは「デューデリで検証される内容の予告編」でもあります。

段階を分ける理由

段階を分けるのは、単に手順が決まっているからではなく、売り手側に実害が出ることを避けるためです。譲渡を検討していることが取引先や従業員、金融機関に伝わると、取引条件の見直しを持ちかけられたり、キーマンが先に離職したりといった影響が出ることがあります。従業員への開示タイミングを慎重に設計するのと同じ理由で、社外への情報も出す順番と範囲をコントロールします。

もうひとつの理由は、買い手側の負担です。買い手にとっても、関心を持てるかどうか分からない案件のために毎回NDAを締結して数十ページの資料を読むのは負担が大きいものです。1枚のノンネームシートで「自社の戦略に合うか」を短時間で判断できるようにしておくことは、買い手にとっての親切でもあり、結果として検討してもらえる確率を上げます。

ノンネームシートの記載項目

ノンネームシートは、会社が特定されない範囲で、買い手が「関心を持てるか」を判断できる最小限の情報をまとめた資料です。実務では次のような項目で構成することが多くなっています。

項目書き方の考え方記載例のイメージ
業種中分類程度にとどめる。細かすぎる分類は特定につながる金属加工業(部品製造)/ソフトウェア受託開発
地域都道府県より粗く。地方ブロックや「〇〇地方」程度関東地方/東海地方/西日本
売上規模実額ではなくレンジ。刻み幅は規模に応じて調整する年商3〜5億円/年商10億円台
営業利益レンジまたは利益率帯。黒字・赤字の別だけ示す場合もある営業利益3,000万〜5,000万円/営業利益率5〜10%
従業員数レンジ。パート・アルバイトを含むかは注記する20〜30名(うちパート含む)
譲渡理由一般化した表現で。個人的事情は具体的に書かない後継者不在のため/事業の選択と集中のため
希望スキーム株式譲渡か事業譲渡か、株式の全部か一部かを示す株式譲渡(100%)/事業譲渡(一部事業)
事業の特徴3〜5行程度。強みを抽象度を上げて表現する特定業界向けの継続取引が中心/有資格者が在籍し許認可を保有

このほか、案件番号(管理番号)、担当する仲介会社・FAの連絡先、希望譲渡時期などを添えるのが一般的です。価格については、希望額を明記する場合と「応相談」とする場合の両方があります。相場観の考え方は会社売却の相場で解説しています。

ノンネームシートは「売り込む資料」ではなく「関心の有無を確認する資料」です。1枚に情報を詰め込みすぎると匿名性が下がるうえ、読み手も判断しにくくなります。買い手が次の一歩(NDA締結)を踏み出すのに必要な情報だけを残す、という引き算の発想で作ります。

特定されない書き方のコツ

ノンネームシートで最も気を配るのが匿名性です。「社名を書いていないから大丈夫」とは限りません。業界内の人が読めば、いくつかの情報の組み合わせから会社が推測できてしまうことがあります。ここでは実務で意識される具体的なコツを挙げます。

具体的な地名・取引先名を書かない

  • 市区町村名や「〇〇工業団地内」「〇〇駅前」といった立地の記載は避け、地方ブロック単位にとどめます。
  • 取引先は実名を出さず、「大手自動車部品メーカー」「上場する小売チェーン」のように業種と規模で表現します。
  • 創業年についても、業歴が特徴的な場合は「創業50年以上」「業歴30年超」といった幅を持たせた表現にします。

独自すぎる強みは抽象度を上げる

「国内シェア〇位」「特許取得の〇〇工法」「業界唯一の〇〇認証」といった記載は、買い手には魅力的に映る一方で、業界内では会社を一意に特定してしまう情報になりがちです。ノンネームの段階では「ニッチ分野で安定したシェアを持つ」「独自技術に関する知的財産を保有」といった抽象度に落とし、具体的な中身はNDA後のIMで開示します。強みそのものを隠すのではなく、開示のタイミングを後ろにずらすという考え方です。

数字はレンジで書く

売上高「4億2,300万円」のような実額は、業界団体の名簿や信用調査会社のデータと突き合わせれば特定材料になります。「3〜5億円」のようにレンジで示し、レンジの刻み幅も規模に応じて調整します。年商1億円未満の会社に1億円刻みのレンジを使えば意味がなく、年商50億円の会社に1,000万円刻みを使えば細かすぎます。従業員数や店舗数も同様です。

写真・ロゴ・図面を載せない

工場や店舗の外観写真、会社ロゴ、製品写真、組織図の実名部分などは、ノンネームシートには載せません。画像は文字情報よりも特定力が高く、一度出回ると回収できません。ファイルのプロパティに作成者名や会社名が残っていないかも、配布前に確認しておきたいポイントです。

「業界内でだけ分かる表現」に注意する

外部の人が読めば一般的に見える表現でも、同業者が読むと特定できてしまうケースがあります。特定の設備名、業界内での通称、取扱品目の独特な組み合わせ、限られた事業者しか持っていない許認可の種類などです。ノンネームシートは同業の買い手にも届くことを前提に、その業界に詳しい人が読んだらどう見えるかという視点で一度チェックすることをおすすめします。可能であれば、社内外の第三者に読んでもらって「どこの会社か想像がつくか」を確認する方法が有効です。

なお、M&Aマッチングプラットフォームに案件を掲載する場合は、不特定多数の登録者が閲覧できるため、仲介会社経由で限られた買い手候補に配布する場合よりも匿名性への配慮を一段強める必要があります。掲載範囲を業種や地域で絞り込めるプラットフォームもあるため、設定を確認しておきましょう。

企業概要書(IM)の目次例

NDA締結後に開示するIMは、買い手が意向表明の判断をするための資料です。決まった様式はありませんが、実務で使われるIMはおおむね次のような構成になっています。案件規模が小さい場合は項目を統合し、10〜20ページ程度にまとめることもあります。

記載する内容買い手が読み取ること
1. 会社概要商号、所在地、設立年、資本金、株主構成、代表者、決算期、主要銀行法人としての基本情報、株式の集中度
2. 沿革創業から現在までの主な出来事、事業転換、拠点開設、資本異動事業がどう積み上がってきたか、過去の資本関係
3. 事業内容とビジネスモデル提供する商品・サービス、収益の生まれ方、価格設定、商流図何で稼いでいるか、その仕組みが理解できるか
4. 主要取引先と構成上位取引先の業種・取引年数・売上構成比(実名は伏せる場合もある)取引先の集中度、取引の継続性
5. 組織と人員組織図、人員構成(年齢・勤続年数・職種別)、キーマン、採用状況引き継ぎ後に事業が回るか、人材の年齢構成
6. 業績推移と財務直近3〜5期の損益、月次売上の推移、部門別・商品別の内訳収益の水準と安定性、季節変動
7. 資産の状況貸借対照表の内容、主要資産の明細、有利子負債、担保・保証の状況純資産の実態、引き継ぐ負債の中身
8. 設備・拠点本社・工場・店舗の一覧、所有/賃借の別、設備の取得年と更新見込み追加投資の必要性、不動産の扱い
9. 許認可保有する許認可・登録・資格者要件、更新時期、承継の可否スキーム選択への影響、承継手続きの手間
10. 強みと課題競争優位の源泉、市場環境、認識している課題とリスク買収後に伸ばせる点、手を打つべき点
11. 譲渡理由と希望条件譲渡に至った背景、希望スキーム、希望時期、オーナーの処遇希望交渉の前提条件、引き継ぎ期間の見通し
12. 事業計画今後3〜5年の売上・利益計画、前提となる施策と根拠将来キャッシュフローの見通し、価格算定の土台

巻頭にエグゼクティブサマリー(1〜2ページで案件の要点をまとめたページ)を置き、巻末に免責事項を記載する構成が一般的です。免責事項には、IMが情報提供のみを目的とするものであること、記載内容は売り手から提供された情報にもとづくこと、買い手自身の判断と検証が必要であることなどを記載します。

IM作成のポイント

IMは「きれいに作る」ことより「読んだ人が判断できる」ことが大切です。実務で品質を左右するのは次の5点です。

すべての数字に裏付けを用意する

IMに載せた数字は、後のデューデリジェンスで必ず元資料と突き合わせられます。売上構成比なら販売管理システムの出力、人員構成なら賃金台帳、設備一覧なら固定資産台帳というように、各数字がどの資料から出てきたかを社内で追える状態にしておきます。IM作成時に集計の定義(税抜/税込、単体/連結、期間の区切り)を決めて記録しておくと、後で数字が合わない事態を防げます。

悪い情報も書く

訴訟や係争、大口取引先の減少見込み、設備の老朽化、未払残業の可能性、簿外債務の懸念など、ネガティブな情報を伏せておきたくなるのは自然な心理です。ただし、これらの多くはデューデリジェンスで明らかになります。後から発覚した場合、そのマイナス自体よりも「隠していた」という事実が信頼を損ない、条件の悪化や交渉の打ち切りにつながることがあります。

課題を書くときは、事実、影響の大きさ、現在の対応状況をセットで書くと、単なる弱点の列挙ではなく「認識して手を打っている経営」として伝わります。事前に自社の弱点を洗い出して整理しておくセルサイドDD(売り手側デューデリ)の考え方が役に立ちます。

正常収益力を説明する

オーナー企業の損益計算書には、役員報酬の水準、オーナー個人に関わる費用、保険料、賃料(オーナー所有不動産を賃借している場合)、一時的な特別損益など、買い手が引き継いだ後には変わる項目が含まれていることがあります。これらを調整した後の利益水準を正常収益力と呼び、価格算定の出発点になります。

IMでは、公表ベースの営業利益から調整項目を1つずつ加減算して正常収益力に至る過程を表で示すと、買い手が自社の前提で読み替えやすくなります。調整の根拠を示さずに「実質利益は〇〇円です」とだけ書くと、買い手は自分で計算し直すことになり、その過程で保守的な見方をされることもあります。

写真や図で伝わりやすくする

NDA締結後のIMでは、ノンネームシートとは逆に、視覚情報を積極的に使います。工場のレイアウト図、商流図、拠点マップ、製造工程のフロー、主要設備の写真、店舗の内観などは、文章だけでは伝わりにくい実態を短時間で理解してもらう助けになります。特に遠方の買い手や、業界の慣行に馴染みのない買い手にとっては、写真の有無で理解の速さが変わります。

更新のタイミングを決めておく

IMは一度作って終わりではありません。決算期をまたいだとき、月次の実績が計画から大きく乖離したとき、主要取引先や人員に変動があったとき、大きな設備投資を実行したときなどは、記載内容を更新します。古い数字のまま配布し続けると、後の交渉で「話が違う」という指摘を受けることになります。IMの表紙や巻末に基準日(〇年〇月末時点)を明記し、更新履歴を管理しておくと安全です。

IMは営業資料ではなく、情報提供資料です。誇張した表現や根拠のない将来見通しを書くと、デューデリジェンスの段階で信頼を失うだけでなく、表明保証違反として最終契約後に責任を問われる可能性もあります。「良く見せる」ではなく「正確に、分かりやすく伝える」ことを基準に作成してください。

買い手はIMのどこを見るか

買い手がIMを読むときの視点を知っておくと、どこに紙面を割くべきかが見えてきます。買い手の関心はおおむね次の5つに集約されます。

1. 収益の再現性

直近期の利益が、来期以降も同じように出るのかどうか。一時的な特需、単発の大型受注、補助金、コロナ禍関連の特殊要因などが含まれていないかを確認します。月次の売上推移、受注残、継続契約の比率、リピート率といった情報があると、再現性の説明がしやすくなります。

2. オーナー依存

営業がオーナーの人脈に依存していないか、技術判断がオーナー個人に集中していないか、金融機関との関係がオーナー個人の信用に支えられていないか。買い手が最も警戒するポイントのひとつです。IMでは、営業担当者ごとの売上構成、意思決定のプロセス、権限委譲の状況などを示すと不安を和らげられます。オーナーが引き継ぎ期間中にどこまで関与できるかも重要な情報です。

3. 取引先の集中

上位1社で売上の過半を占めるような構成は、その1社を失ったときの影響が大きいためリスクと見られます。集中している場合は、取引年数、契約形態、担当者レベルの関係の厚み、他社にはない供給要件など、関係が続く理由を説明することが有効です。逆に、取引先が分散していることは安定性としてアピールできます。

4. 簿外リスク

未払残業代、社会保険の加入漏れ、退職給付の引当不足、リース債務、個人保証、係争、環境負荷、名義株の存在などです。金額が確定していなくても、可能性があるなら記載しておくほうが結果的に有利に働くことが多い領域です。個人保証の扱いはM&Aでの個人保証の解除で整理しています。

5. シナジー

買い手は、自社と組み合わせたときに何が生まれるかを考えながらIMを読みます。顧客基盤の相互活用、仕入の統合、遊休設備の活用、人材の相互補完、営業エリアの補完などです。売り手側で買い手ごとのシナジーを断定することはできませんが、シナジーを検討するための材料(顧客の業種構成、仕入先の分布、設備の稼働率、対応可能な地域など)をIMに載せておくと、買い手が自社に引き寄せて考えやすくなります。シナジーの考え方はM&Aのシナジーとはで解説しています。

配布時の情報管理

ノンネームシートもIMも、配って終わりではありません。どこに何を渡したかを管理できていないと、情報漏えいが起きたときに経路をたどれず、対応が後手に回ります。実務では次のような管理が行われます。

  • 配布先の記録:いつ、どの会社の誰に、どの資料の何版を渡したかを一覧で記録します。ノンネームシートの段階から記録を残しておくことが重要です。
  • 透かし(ウォーターマーク):IMの各ページに配布先名や案件番号を薄く重ねて印字します。万一流出した場合に経路を特定でき、受け取った側の取り扱いも慎重になります。
  • PDF化と権限設定:編集可能な形式ではなくPDFで配布し、必要に応じて印刷やコピーを制限します。数式が残ったExcelをそのまま渡すと、意図しない情報まで伝わることがあります。
  • 番号管理:「No.003/全10部」のように通し番号を付し、回収の要否を明示します。紙で配布する場合は特に有効です。
  • データルームの利用:ダウンロードを許さず閲覧のみとしたり、アクセスログを取得したりできる環境を使う方法もあります。デューデリジェンスの段階では一般的です。
  • 検討終了時の返却・破棄:検討を見送った相手には、NDAに定めた条項にもとづいて資料の返却または破棄と、その旨の確認を求めます。

買い手候補への打診をどの範囲まで広げるかは、情報管理の負担と成約可能性のバランスで決まります。打診先の広げ方については買い手の探し方を参照してください。

誰が作るのか

ノンネームシートとIMは、仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)が作成するのが一般的です。買い手が何を見るかを知っている立場から構成を組み立て、匿名化の程度も過去の案件を踏まえて調整します。仲介とFAの立ち位置の違いはM&A仲介とFAの違いで解説しています。

一方で、資料の質は売り手が用意する素材でかなり変わります。決算書と試算表、部門別・商品別の売上内訳、主要取引先ごとの取引推移、組織図と人員一覧、固定資産台帳、許認可の一覧、賃貸借契約書、そして今後の見通しの根拠。これらが揃っていれば、アドバイザーは推測ではなく事実にもとづいてIMを組み立てられます。逆に素材が乏しいと、抽象的な記述の多いIMになり、買い手からの追加質問が増えて検討期間が長引きます。

小規模案件では、売り手自身が簡易的なノンネームシートを作成し、マッチングプラットフォームに掲載するケースもあります。この場合も匿名化の考え方は同じです。案件規模ごとの進め方の違いはスモールM&Aとは、支援者の選び方はM&A仲介会社の選び方が参考になります。なお、当サービスの月額プラン(9,800円・税込)では、登録した案件情報からノンネームシートと企業概要書(IM)を作成できます。

よくある質問(FAQ)

Q. ノンネームシートでも会社が特定されることはありますか?

A. あります。業種・地域・規模・特徴の組み合わせが具体的すぎると、同業者には推測できてしまうことがあります。特に、限られた事業者しかいないニッチ分野や、地域内で事業者数が少ない業種では注意が必要です。地域の粒度を粗くする、数字をレンジにする、独自すぎる強みは抽象化するといった調整を重ね、業界に詳しい第三者に読んでもらって確認する方法が有効です。

Q. IMには決算書をそのまま添付しますか?

A. IM本体には要約した数値表を載せ、決算書そのものは別添とするか、後の段階で提供する形が多く見られます。IMは「読んで理解してもらう資料」なので、生データをそのまま貼るより、推移や構成比が読み取れる形に整理するほうが目的に合います。ただし、要約した数値と元の決算書が整合していることは必ず確認してください。

Q. ノンネームシートに希望価格は書くべきですか?

A. どちらのやり方もあります。書けば価格感の合わない相手を早い段階で除外できる一方、上限として意識され、それ以上の条件が出にくくなる面もあります。「応相談」としておき、関心を示した相手とNDA締結後に条件をすり合わせる進め方も一般的です。自社の目安を持っておくこと自体は、どちらの進め方でも有益です。

Q. IMは何ページくらいが適切ですか?

A. 案件規模によります。年商数億円規模であれば10〜20ページ程度、規模が大きくなれば30〜50ページ程度になることもあります。重要なのはページ数ではなく、買い手が意向表明の判断をするのに必要な情報が揃っているかどうかです。ページを増やすより、エグゼクティブサマリーで要点を押さえ、詳細は章ごとに整理する構成のほうが読まれます。

Q. 買い手ごとにIMの内容を変えてもよいですか?

A. 事実の記載を相手によって変えることは避けるべきです。同じ案件について異なる情報が出回れば、後の交渉で不信を招きます。一方で、同業の買い手には技術や設備の詳細、異業種の買い手には市場や商流の説明を厚くするなど、同じ事実の説明の重点を変えることは実務でも行われます。数値や事実関係は共通にしておくことが原則です。

Q. IMを渡した後、買い手から何も反応がない場合はどうしますか?

A. アドバイザーを通じて期限を区切り、検討状況を確認するのが一般的です。関心が薄い場合は早めに次の候補に移るほうが、時間も情報リスクも抑えられます。見送りとなった相手には、NDAにもとづく資料の返却・破棄を求めます。あわせて、見送りの理由を聞き取れると、IMの説明が不足していた点や条件面の課題が分かり、次の打診に活かせます。

まとめ

ノンネームシートは社名を伏せた1枚程度の匿名資料で、関心の有無を確認するための入口です。業種・地域・売上規模・営業利益・従業員数・譲渡理由・希望スキーム・特徴という項目を、レンジと抽象化を使って「特定されない範囲で判断できる」水準にまとめます。具体的な地名や取引先名、独自すぎる強み、写真やロゴは載せず、業界内で分かってしまう表現にも注意します。

企業概要書(IM)はNDA締結後に開示する詳細資料で、会社概要から事業計画まで12章程度の構成が目安です。数字に裏付けを持たせ、悪い情報も書き、正常収益力の考え方を示し、図や写真で理解を助け、基準日を明記して更新する——この5点が質を左右します。買い手は収益の再現性、オーナー依存、取引先の集中、簿外リスク、シナジーの5つを見ています。配布にあたっては、配布先の記録、透かし、PDF化、番号管理といった情報管理を徹底してください。

資料の作成は仲介会社やFAが担うのが一般的ですが、売り手が素材を揃えておくほど内容は具体的になり、買い手からの追加質問も減ります。資料づくりは、そのまま自社を高く評価してもらうための準備にもつながります。

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