NDA(秘密保持契約)とは? M&Aでの役割と、条項の読み方・チェックポイント
最終更新: 2026-09-12
NDA(Non-Disclosure Agreement/秘密保持契約。CA:Confidentiality Agreementとも呼ばれます)は、M&Aの検討で会社の中身を相手に見せる前に取り交わす契約です。会社売却の流れのなかで、当事者が最初に署名する書面がこれにあたることが多く、実質的なスタート地点といえます。
ところが実務では、仲介会社から差し出された雛形にそのまま押印して終わり、という場面が少なくありません。NDAは定型的な文書に見えますが、どの情報が守られるのか、どこまでの人に見せてよいのか、いつまで効力が続くのか、破られたときに何が請求できるのかは、条項の書きぶりで大きく変わります。本稿では、M&AにおけるNDAの位置づけを整理したうえで、主要条項を売り手側・買い手側それぞれの視点で読み解き、実務でよく問題になる論点と、NDAだけでは守りきれない場面への備えまでを解説します。
M&AにおけるNDAの位置づけ:開示は段階的に進む
M&Aで売り手の情報が一度に全部出ることはありません。相手が本当に検討する意思と能力を持っているかを確かめながら、少しずつ深い情報に進みます。一般的な順序は次のとおりです。
- ① ノンネーム(匿名概要):社名を伏せ、「関東・製造業・売上◯億円規模」といった粒度で打診する。特定されない範囲にとどめる。
- ② NDAの締結:関心を示した相手と秘密保持契約を結ぶ。ここで初めて社名を開示するのが通例。
- ③ 企業概要書(IM)の開示:事業内容・沿革・財務推移・組織・取引先構成などをまとめた資料を渡す。
- ④ トップ面談・条件提示:意向表明や基本合意書(LOI)で価格・スキームの大枠を確認する。
- ⑤ デューデリジェンス(DD):契約書原本・給与台帳・税務申告書など、最も機微な資料まで開示する。
- ⑥ 最終契約:株式譲渡契約書(SPA)などを締結し、クロージングへ。
ノンネームと企業概要書の作り分けについては企業概要書(IM)・ノンネームシートとはを、DDで何をどこまで見られるかはデューデリジェンスとはをあわせてご覧ください。NDAは②に位置しますが、その効力は③以降のすべての開示に及びます。つまりNDAは「入口の手続き」ではなく、成約まで(そして成約後も一定期間)ずっと効き続ける土台だと考えてください。
誰と誰が結ぶのか
NDAというと「売り手と買い手の間の契約」と思われがちですが、中小M&Aの現場では複数のNDAが並行して存在します。それぞれ目的と守る対象が違います。
| 当事者 | 結ぶタイミング | 主に守る対象 |
|---|---|---|
| 売り手 ⇔ 買い手候補 | 買い手候補が関心を示し、社名を開示する直前 | 売り手の事業・財務・顧客情報、および「売却を検討している」事実そのもの |
| 売り手 ⇔ 仲介会社・FA | アドバイザリー契約(提携仲介契約)の締結時。契約書内の一条項として置かれることも多い | 売り手が支援者に渡す一切の情報。仲介側が第三者に打診する範囲の取り決めを含む |
| 仲介会社 ⇔ 買い手候補 | 仲介がノンネームで打診し、買い手が詳細を求めた時点 | 案件情報。仲介が売り手の代理として先に締結し、後から三者間で結び直す運用もある |
| 当事者 ⇔ 専門家(会計士・弁護士・税理士) | DDチームや契約レビューの依頼時 | 開示資料。専門家は職業上の守秘義務も負うが、明文化しておく |
| 会社 ⇔ 一部の役員・キーマン | 社内の検討メンバーを増やす時 | 検討の事実と資料。既存の就業規則・誓約書とは別に個別に取る例もある |
注意したいのは、仲介会社と買い手候補が結んだNDAでは、売り手が直接の当事者になっていない場合がある点です。この場合、買い手が情報を漏らしても、売り手が自分の名前で請求できるかどうかは契約の作りによります。売り手を受益者として明記してもらう、あるいは三者間契約にしてもらうよう、仲介会社に確認しておくと安心です。仲介の選び方全般はM&A仲介会社の選び方を参照してください。
主要条項の読み方:売り手・買い手それぞれの注意点
以下は、M&AのNDAでほぼ必ず登場する条項です。「書いてあるかどうか」だけでなく、どちらに有利な書きぶりかを意識して読んでください。売り手は守りを厚く、買い手は実務が回る範囲に、というのが基本的な力学です。
| 条項 | 内容 | 売り手側の注意点 | 買い手側の注意点 |
|---|---|---|---|
| 秘密情報の定義 | 何を「秘密情報」として保護するかの範囲。書面・電磁的記録に限るのか、口頭・映像も含むのか | 「本件に関連して開示された一切の情報」と広く取り、口頭や工場見学で見たものも含める。狭く限定されていないか確認 | 範囲が無限定だと社内で管理しきれない。既存事業で独自に得た情報まで縛られないか確認 |
| 除外事由 | 既に公知、既に保有、第三者から適法に取得、独自開発、法令や公的機関の要請による開示 | 「既に知っていた」の抗弁を許しやすいので、立証責任を相手に置く書き方か確認 | 自社が以前から持っていた情報まで縛られないよう、除外事由の記載を必ず残す |
| 目的外使用の禁止 | 情報を「本件M&Aの検討」以外に使わせない。競合分析や採用への流用を防ぐ | 目的を「本件株式譲渡の検討および実行」と具体的に書く。「事業提携の検討」など広い目的は避ける | 検討に必要な社内稟議・金融機関への説明は「目的の範囲内」と読めるか確認 |
| 開示範囲の限定 | 誰に見せてよいか。役職員(知る必要のある者に限る)、弁護士・会計士等の専門家、親会社・出資者など | 再開示先に同等の義務を課し、その者の違反も相手の責任とする条項があるか | 実際に必要なメンバー(ファンドなら投資委員会、事業会社なら経営会議)が範囲に入っているか |
| 複製・返還・破棄 | 検討終了時に資料をどう処理するか。返還か破棄か、電子データやバックアップの扱い | 破棄の完了を書面で報告させる(破棄証明)条項を入れておく | システム上のバックアップは即時削除が難しい。「合理的に可能な範囲で」等の現実的な文言を確保 |
| 有効期間と存続期間 | 契約自体の期間と、義務が終了後も続く期間。1〜3年、機微情報は5年程度とする例が多い | 検討が流れた後こそリスクが残る。期間が短すぎないか、自動更新の有無を確認 | 無期限は管理負担が重い。合理的な年数に区切る交渉をする |
| 損害賠償 | 違反時の賠償責任。範囲(直接損害に限るか)、上限の有無 | 上限額が設定されていると回収が制限される。安易に上限を受け入れない | 無限定・懲罰的な賠償は避け、通常損害の範囲に整理したい |
| 差止め | 金銭賠償だけでは回復できない場合に、開示・使用の停止を求められることを確認する条項 | 情報漏えいは事後の金銭では取り返せない。差止めを求め得る旨の記載を入れておく | 対象が広すぎると通常業務まで止められかねない。範囲を明確にする |
| 直接接触の禁止 | 買い手が売り手の従業員・取引先・仕入先・金融機関に無断で接触することの禁止 | 取引先への「あの会社どうですか」という探りが最も情報を広げる。窓口を代表者と仲介に一本化する記載を | DDでの取引先ヒアリングが必要な場合、事前の書面同意を条件に可能とする例外を確保する |
| 勧誘禁止(引抜き防止) | 検討を通じて知った従業員を採用・勧誘しない義務。期間を区切るのが通常 | キーマンを引き抜かれると事業価値そのものが失われる。期間と対象範囲を確認 | 公募への一般応募まで禁止されると過度。応募者本人からの接触は除外する文言を |
| 準拠法・裁判管轄 | どの国の法律に従い、争いをどの裁判所で解決するか | 遠方の管轄だと訴える負担が大きい。自社所在地の地方裁判所を第一審の専属的合意管轄にできるか | 同様に自社側の管轄を主張しがち。落としどころは被告地主義とする例もある |
| 独占交渉の有無 | 一定期間、他の候補と交渉しない約束。本来はLOI段階の論点だが、NDAに紛れ込むことがある | NDA段階での独占は原則として不要。入っていたら削除を求める(相手探しの幅が狭まる) | 独占が欲しいなら基本合意で正面から交渉する。NDAに潜ませると信頼を損なう |
独占交渉権の考え方や、どの条項に法的拘束力を持たせるかという論点は、LOI・基本合意書の書き方で詳しく整理しています。NDAで先取りすべきでない条件がLOI側の論点であることを知っておくと、雛形の違和感に気づきやすくなります。
実務上よくある論点
口頭で伝えた情報は守られるのか
雛形によっては、秘密情報を「書面その他の記録媒体により開示されたもの」に限定し、口頭情報は「開示後◯日以内に書面で秘密である旨を通知したものに限る」としている例があります。実務上、この通知を毎回出すのは現実的ではありません。売り手側としては、口頭・映像・現地見学で認識した情報も含むと定義に書き込んでおくのが安全です。工場や店舗を案内した際に見えるレイアウト・設備・人員配置は、それ自体が競争上の情報になり得ます。
「既に知っていた情報」の扱い
除外事由のうち、実際に争いになりやすいのが「開示前から自社が保有していた情報」です。相手が後から「それは元から知っていた」と主張すれば、保護の実効性が下がります。対策としては、その事実を相手が客観的な記録で示せる場合に限るという書きぶりにしておくこと、そして売り手側でも「いつ・誰に・何を渡したか」を開示記録として残しておくことです。資料に通し番号を振り、送付日と受領者を一覧化しておくだけでも、後の整理が格段に楽になります。
クラウド・生成AIへのアップロード
近年とくに扱いが定まっていないのが、開示資料をクラウドストレージや生成AIサービスにアップロードする行為です。買い手側が財務データの整理や要約のためにこうしたツールを使うことは珍しくなくなりましたが、外部サービスへの入力が「第三者への開示」にあたるかは契約の書きぶり次第です。実務では、利用してよいツールの種類(学習に利用されない設定であること、社内管理下のテナントであること等)を具体的に取り決めるか、あるいは事前の書面同意を要件とする方法が取られます。売り手側は、この点について何も書かれていない雛形をそのまま使うのは避けたいところです。
社内での共有範囲をどう決めるか
「知る必要のある役職員に限る」という文言は、裏を返せば、誰が必要かの判断は開示を受けた側に委ねられているということです。買い手が上場会社やファンドであれば、投資委員会・監査部門・親会社まで情報が回ることがあります。売り手としては、共有する社内メンバーの氏名・所属をリストで提出させる運用にすると管理が実効的になります。売り手側でも同じで、社内で誰に伝えるかは慎重に段階を踏む必要があります。従業員への開示のタイミングは、従業員への開示タイミングで詳しく扱っています。
DDでの資料の持ち出し
DDでは、閲覧のみを許して持ち出しを禁じる方式(オンラインのデータルームで、ダウンロード不可・印刷不可・ウォーターマーク付きにする)と、資料一式を渡す方式があります。前者は情報管理には強い一方、買い手側の検討効率は落ち、質問の往復が増えます。案件規模と機微度に応じて、資料の種類ごとに閲覧レベルを分けるのが現実的です。たとえば、顧客名簿・単価表・給与台帳は閲覧のみ、決算書や登記事項証明書はダウンロード可、といった具合です。売り手が事前に自社を点検しておくセルサイドDDの考え方を取り入れると、出す資料の順序と粒度を自分でコントロールしやすくなります。
破棄証明をどう取るか
検討が不成立に終わったとき、渡した資料がどうなったかを確認せずに終わるケースが非常に多くあります。NDAに返還・破棄の条項があっても、実行を求めなければ動きません。不成立が確定した時点で、書面またはメールで「破棄の実施と完了報告」を要請することを、売り手側のルーティンにしてください。報告には、破棄の対象(紙・電子データ・複製物)、実施日、責任者名を含めてもらいます。バックアップやメール履歴に残る分については、「復元して利用しない」旨の確約に切り替えるのが実務的な落としどころです。
NDAを結んでも守られない場面がある
ここが本稿でいちばんお伝えしたい点です。NDAは重要な契約ですが、締結したから安心、という性質のものではありません。理由は主に二つあります。
第一に、情報が広まった経路の立証が難しいことです。取引先から「御社、売りに出しているそうですね」と言われたとして、それがどの候補先から、いつ、どのように伝わったのかを外形的に示すのは容易ではありません。複数の候補と並行して話している場合はなおさらです。また、業界内の噂は「うちにも打診が来た」という買い手側の何気ない会話から広がることがあり、これを特定するのは現実的に困難です。
第二に、損害額の算定が難しいことです。情報が漏れた結果、従業員が数名辞めた、取引先が発注を減らした、成約価格が下がった——いずれも起きたことは事実でも、「漏えいがなければこうなっていたはず」という金額を積み上げて示すのは簡単ではありません。損害賠償額の予定(違約金)をあらかじめ定める方法もありますが、金額の妥当性をめぐって別の議論が生じますし、そもそも失われた信頼や辞めた人材は戻りません。
具体的には、次のような段階管理が実務的です。①ノンネームでは業種・地域・規模を丸め、特定につながる固有情報(許認可番号、特徴的な設備、著名な取引先名)を外す。②企業概要書では顧客名をA社・B社と匿名化し、売上構成比だけを示す。③個別単価・従業員個人の給与・係争中の案件などは、意向表明を受け取った後のDD段階まで出さない。④キーマンの氏名や連絡先は最終盤まで開示しない。相手探しの進め方はM&Aの買い手の探し方、プラットフォーム経由の場合の匿名性の担保はM&Aマッチングサイトの選び方も参考になります。
中小M&Aでの実務
雛形の使い回しに注意する
インターネット上や書籍には、業務委託・共同開発など一般的な取引を想定したNDAの雛形が数多くあります。しかしM&Aで必要な条項は、通常の取引とは重点が違います。とくに「売却を検討している事実そのものを秘密とする」という規定、そして従業員・取引先への直接接触の禁止と従業員の勧誘禁止は、一般的な雛形にはまず入っていません。逆に、共同開発向けの雛形にある知的財産の帰属条項などは、M&A検討では不要か、かえって誤解を生みます。M&A用として作られたものを使い、目的条項を自社の案件に合わせて書き換えてください。
仲介の書式にサインする前に見る点
仲介会社が用意するNDAは、実務が回るようによく整理されている一方、仲介側の立場を保護する記載が厚めになっていることがあります。押印の前に、少なくとも次の点は確認しておきましょう。
- 売り手が直接の当事者として権利を行使できる建て付けになっているか(仲介と買い手の二者間契約で終わっていないか)。
- 仲介会社が案件情報を打診できる相手の範囲。事前に売り手が承諾したリストに限る運用になっているか、包括的な同意になっていないか。
- 売り手が「この会社には打診しないでほしい」と指定できる除外先リストの仕組みがあるか(同業の近隣事業者、主要取引先など)。
- 存続期間と、検討終了後の資料破棄の実行手順。
- NDAの中に、独占交渉やテール条項(契約終了後に成約した場合の手数料)といった、本来アドバイザリー契約側で議論すべき条件が紛れていないか。
スモールM&Aのように当事者の規模が小さい案件でも、確認すべき項目自体は変わりません。むしろ地域が狭く同業者が近い分、情報が広まったときの影響は大きくなりがちです。
押印と電子契約
NDAは記名押印で締結するのが従来の実務ですが、近年は電子契約サービスによる締結も広く使われています。相手が上場企業やファンドの場合、電子契約が標準になっていることも珍しくありません。電子で締結する場合は、誰の権限で署名したのか(代表者か、権限を委任された役員か)を確認し、締結済みファイルを自社側でも保存しておいてください。サービスの解約後に閲覧できなくなる事態を避けるため、PDFをローカルにも保管しておくと安全です。会社実印での押印にこだわる必要は必ずしもありませんが、社内規程で押印方法が定められている場合はそれに従います。
よくある質問(FAQ)
Q. NDAを結べば、情報漏えいの心配はしなくてよいですか?
A. いいえ。NDAは抑止力として意味がありますが、漏えいを物理的に止める仕組みではなく、実際に漏れた場合も経路の特定と損害額の立証が難しいのが実情です。安心材料として扱うのではなく、渡す情報の範囲と順序を自分で管理することと組み合わせて初めて機能します。とくに、社名が分かるだけで特定されてしまうような特徴的な事業の場合は、ノンネームの粒度から見直してください。
Q. 有効期間は何年にするのが普通ですか?
A. 一律の正解はありませんが、契約自体の有効期間を1〜3年、秘密保持義務の存続期間をそこからさらに数年とする例がよく見られます。技術情報や顧客情報のように陳腐化しにくい情報は長め、市況に左右される数値情報は短めでも実害が小さい、という考え方が目安になります。売り手としては、検討が流れた後こそリスクが残ることを踏まえ、極端に短い期間を提示された場合は理由を確認してください。逆に無期限とすると相手の管理負担が重く、締結自体が進まないこともあります。
Q. 個人の買い手候補ともNDAを結ぶべきですか?
A. 結ぶべきです。法人か個人かでリスクの性質は変わりますが、情報を渡す以上、取り決めが必要である点は同じです。個人の場合は所属先(勤務先)を通じて情報が広がる可能性があるため、勤務先や共同検討者への共有をどう扱うかを明記しておくとよいでしょう。あわせて、資金の裏付けや検討体制を確認してから詳細資料に進むと、無用な開示を減らせます。
Q. NDAを破られたら、実際にどうなりますか?
A. まずは事実確認と、開示・使用の停止を求める通知を出すことになります。そのうえで、損害賠償や差止めを検討しますが、前述のとおり立証のハードルがあります。現実には、それ以上の拡散を止めること、社内・取引先への説明を先回りして行うことが優先されます。仲介会社が関与しているなら、経緯の記録と相手への申し入れを速やかに依頼してください。法的手段の要否と進め方は、弁護士に相談したうえで判断することになります。
Q. 従業員に知られずに進めるには、どうすればよいですか?
A. 資料の作成・受け渡しを社外の場所とメールアドレスで行う、面談は休日や社外の会議室で設定する、社内の関与者を最小限に絞る、といった運用面の工夫が中心になります。買い手候補の現地見学も、営業時間外に設定したり、取引先や設備メーカーの訪問という形で行ったりする例があります。あわせて、NDAに従業員への直接接触の禁止を入れておくことが効きます。いつ・どの順番で誰に伝えるかは従業員への開示タイミングで整理しています。
Q. NDAの雛形はどこで手に入りますか?
A. 仲介会社やFA、依頼している弁護士から提供を受けるのが最も一般的です。公的機関が公表しているM&A関連の手引きに参考書式が掲載されていることもあり、出発点としては有用です。ただし、雛形はあくまで出発点で、目的条項・開示範囲・存続期間・接触禁止の範囲は案件ごとに書き換える必要があります。とくに売り手側で自ら用意する場合は、署名前に弁護士のレビューを受けることをおすすめします。
まとめ
NDAは、M&Aで情報を開示する前に結ぶ契約であり、ノンネーム→NDA→企業概要書→DDという段階的な開示を支える土台です。売り手と買い手だけでなく、仲介会社や専門家との間にも並行して存在するため、自分が直接の当事者として権利を行使できる建て付けになっているかを最初に確認してください。
条項を読むときの要点は、秘密情報の定義(口頭情報を含むか)、除外事由の書きぶり、目的の具体性、開示できる相手の範囲、返還・破棄と破棄証明、有効期間と存続期間、賠償の上限、差止め、従業員・取引先への直接接触の禁止、勧誘禁止、準拠法・管轄、そしてNDAに独占交渉が紛れていないか、の12点です。売り手は守りを厚く、買い手は実務が回る範囲に——この綱引きを理解して読むと、雛形の偏りに気づけます。
そして最も大切なのは、NDAを結んでも守りきれない場面があると知っておくことです。漏えいの経路は特定しにくく、損害額の算定も困難です。だからこそ、開示の段階を分け、その相手にまだ必要でない情報は渡さないという運用が、最大の防御になります。契約書そのものは、押印の前に必ず弁護士など専門家の確認を受けてください。
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