M&A仲介の手数料相場|着手金・中間金・成功報酬とレーマン方式の計算、手取りへの影響

最終更新: 2026-09-12

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会社を売却するとき、多くの経営者が価格の次に気にするのが「仲介会社に支払う手数料はいくらか」という点です。M&Aの手数料は、着手金・中間金・成功報酬などの複数の項目で構成され、なかでも成功報酬は「レーマン方式」と呼ばれる計算方法で決まるのが一般的です。ところが同じ料率テーブルを使っていても、何を基準に計算するか(算定基礎)が違うだけで、支払う金額が2倍近く変わることがあります。ここを知らずに契約すると、成約直前になって「思っていた手取りと違う」ということになりかねません。

本稿では、M&A仲介・FAに支払う手数料の相場を項目別に整理したうえで、レーマン方式の仕組みと算定基礎による差を具体的な数字で示します。さらに、手数料と譲渡益課税を差し引いた「実際に手元に残る金額」の計算例、契約前に必ず確認すべきチェック項目、費用を抑えるための現実的な考え方まで、順を追って解説します。料率や金額はいずれも一般的な目安であり、実際の水準は依頼先や案件の内容によって異なります。

結論:見るべきは「料率」ではなく「算定基礎 × 最低報酬 × 手取り」

先に要点をまとめます。M&Aの手数料を比較するときに見落とされがちな順序は次のとおりです。

  • 料率テーブルはどこも似ている:5億円以下5%から始まる逓減型の料率は広く使われており、料率だけを比べても差はつきにくいのが実情です。
  • 差がつくのは算定基礎:同じ5%でも、株式価値に掛けるのか、負債を含めた移動総資産に掛けるのかで、支払額は大きく変わります。
  • 小規模案件では最低成功報酬が支配的:譲渡価額が小さいほど、料率計算の結果ではなく下限額がそのまま手数料になります。
  • 最後は手取りで比べる:手数料は譲渡費用として譲渡所得から控除できるため、手数料の差がそのまま手取りの差にはなりません。税引後で比較するのが実務的です。

売却の全体像を先に押さえたい方はM&Aによる会社売却の流れを、自社がいくらで売れそうかの目安は会社売却の相場はいくらかをあわせてご覧ください。

M&A手数料の種類と相場の目安

M&A仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)に支払う費用は、大きく6種類に分けられます。すべての会社がすべての項目を請求するわけではなく、「着手金なし・完全成功報酬型」を掲げる会社もあれば、月額報酬を軸にする会社もあります。まずは全体像を確認しましょう。

費用項目支払うタイミング金額の目安(一般論)備考
相談料初回相談時無料〜数万円程度無料としている会社が多数。有料の場合も初回のみのことが一般的です。
着手金アドバイザリー契約・仲介契約の締結時無料〜数百万円程度企業概要書の作成や買い手探索の初期費用にあたります。無料の会社もあります。
月額報酬(リテーナーフィー)契約期間中、毎月無料〜月数十万円程度採用していない会社も多く見られます。期間が長引くほど総額が膨らむ点に注意します。
中間金基本合意(LOI)締結時など定額数百万円、または成功報酬の10〜20%程度成功報酬の一部前払いとして充当される設計が多いですが、充当の有無は契約次第です。
成功報酬最終契約の締結・クロージング時レーマン方式で算出(最低報酬あり)手数料の中心。算定基礎の定義で金額が大きく変わります。
実費都度、または成約時に精算案件により変動出張費、登記費用、外部専門家によるDD費用など。範囲の明示が重要です。
上表は一般的に見られる水準を整理したものであり、特定の会社の料金体系を示すものではありません。実際の金額・有無は依頼先や案件の規模、業務範囲によって異なります。契約前に必ず書面で確認してください。

「完全成功報酬型」をどう読むか

着手金も中間金も月額報酬も取らず、成約したときだけ費用が発生する体系を「完全成功報酬型」と呼びます。売り手にとっては、成約しなかった場合の持ち出しがゼロになるという分かりやすいメリットがあります。一方で、初期費用を取らない分、成功報酬の料率や最低報酬が高めに設定されている場合や、算定基礎が広めに定義されている場合もあります。着手金の有無だけで安い・高いを判断せず、成約したときの総額で比べることが大切です。

また、着手金を支払う体系にも合理性はあります。着手金があることで、仲介側は初期の資料作成や買い手探索に十分な工数をかけやすくなり、売り手側も「本気で売る」という前提で進められます。どちらが優れているかではなく、自社の資金余力とリスク許容度に合うかで選ぶ問題です。依頼先の選び方はM&A仲介会社の選び方で詳しく整理しています。

レーマン方式の仕組みと料率テーブル

成功報酬の計算に広く使われているのがレーマン方式(Lehman Formula)です。取引金額を金額帯(レンジ)ごとに区切り、それぞれの帯に対応する料率を掛けて合算します。金額が大きくなるほど適用料率が下がる逓減方式である点が特徴です。一般的には次の料率がよく用いられます。

取引金額のうちの部分一般的な料率の目安
5億円以下の部分5%
5億円超〜10億円以下の部分4%
10億円超〜50億円以下の部分3%
50億円超〜100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

注意したいのは、これは「全体に一つの料率を掛ける」のではなく「帯ごとに刻んで合算する」計算だという点です。たとえば取引金額が8億円なら、8億円全体に4%を掛けるのではなく、5億円までの部分に5%、残る3億円の部分に4%を掛けて合算します。

取引金額8億円の計算例:
5億円 × 5% = 2,500万円
3億円 × 4% = 1,200万円
合計 3,700万円(税抜、最低報酬がこれを上回る場合は最低報酬)
料率テーブルは一例で、依頼先により異なります(目安)。

料率テーブル自体の解説と刻み計算の手順はレーマン方式の計算方法で詳しく扱っています。金額を入れて自動で計算したい場合はレーマン方式の手数料計算ツールをご利用ください。算定基礎を切り替えて比較することもできます。

最低成功報酬(ミニマムフィー)に注意する

レーマン方式で計算した金額が一定額を下回る場合、下限額が適用されます。これが最低成功報酬(ミニマムフィー)で、数百万円規模に設定されているのが一般的です。この下限は、小規模な案件ほど実質的な負担率を押し上げます。

譲渡価額(株式価値基準)料率計算の結果最低報酬が500万円の場合の実際の支払額実質負担率
2,000万円100万円500万円約25%
5,000万円250万円500万円約10%
1億円500万円500万円約5%
3億円1,500万円1,500万円約5%

表のとおり、譲渡価額が1億円を下回るあたりから、実質的な負担率が急に重くなります。最低報酬の水準は依頼先によって幅がありますので、小規模な会社ほど「料率は何%か」より「下限額はいくらか」を先に確認すべきです。小規模M&Aの全体像はスモールM&Aとはで整理しています。

算定基礎の違いで手数料は大きく変わる

ここが本稿でもっとも重要な論点です。レーマン方式は「取引金額 × 料率」で計算しますが、その「取引金額」が何を指すのかは会社によって定義が異なります。主に次の4つの考え方があります。

算定基礎計算に用いる金額特徴
株式価値基準(譲渡対価基準)株式の譲渡代金そのもの売り手が実際に受け取る金額に対応するため、もっとも分かりやすく、負担も相対的に軽くなります。
オーニングス基準株式価値 + 役員借入金・オーナーからの借入等オーナー個人が会社に貸し付けている資金の返済分まで含めて計算する考え方です。
企業価値基準株式価値 + 有利子負債(借入金等)買い手が実質的に負担する事業全体の価値を基礎とします。借入が多い会社ほど基礎が膨らみます。
移動総資産基準株式価値 + 負債総額(buyer側に移る負債すべて)もっとも基礎が大きくなりやすい方式です。買掛金や未払金まで含まれる設計もあります。

言葉だけでは差が実感しにくいので、同じ会社・同じ譲渡価額で比べてみます。株式価値と企業価値の関係そのものについては企業価値と株式価値の違いをご覧ください。

計算例:同じ「3億円で売却」でも手数料は1,500万円〜2,900万円

前提を次のように置きます。株式の譲渡価額は3億円、会社には金融機関からの借入金が2億円、オーナーからの役員借入金が5,000万円、買掛金・未払金などその他の負債が1億円あるものとします(負債総額は3億円)。料率は前掲の一般的なテーブル(5億円以下5%、5億円超〜10億円4%)を使います。

算定基礎計算のベースとなる金額成功報酬の計算成功報酬(税抜)
株式価値基準3億円3億円 × 5%1,500万円
オーニングス基準3億円 + 役員借入5,000万円 = 3億5,000万円3億5,000万円 × 5%1,750万円
企業価値基準3億円 + 有利子負債2億円 = 5億円5億円 × 5%2,500万円
移動総資産基準3億円 + 負債総額3億円 = 6億円5億円 × 5% + 1億円 × 4%2,900万円
同じ「3億円で売却」でも、算定基礎の定義が違うだけで成功報酬は1,500万円〜2,900万円と約1.9倍の開きが生じます。差額の1,400万円は、料率交渉で埋まる水準ではありません。料率テーブルより先に、契約書の「取引金額」の定義条項を確認してください。レーマン方式の手数料計算ツールで、自社の数字を入れて基礎ごとの差を確認できます。

なお、どの算定基礎が「正しい」ということはありません。買い手にとっての負担は借入金の引き継ぎも含めた総額であるという考え方にも一定の合理性はあります。問題は、売り手が受け取る金額(株式価値)と、手数料の計算基礎が乖離していることに気づかないまま契約してしまうことです。借入が多い会社ほど乖離は大きくなりますので、自社の負債構成を踏まえて確認しましょう。

売り手・買い手それぞれの負担:両手と片手、仲介とFA

M&Aの支援には、大きく分けて「仲介」と「FA(アドバイザリー)」の2つの立場があります。この違いは、誰が誰に手数料を支払うかにも直結します。

項目仲介FA(フィナンシャル・アドバイザー)
立場売り手と買い手の間に立ち、双方の合意形成を支援します。売り手または買い手の一方につき、その依頼者の利益のために交渉します。
報酬の受け取り方双方から受け取る形(両手)が一般的です。依頼した側のみが支払う形(片手)です。
売り手の負担感手数料は売り手・買い手がそれぞれ自分の分を負担します。自社分のみを負担しますが、料率が仲介より高めに設定される場合もあります。
向いている場面相手探しを含めてスピーディに進めたい中小規模の案件で選ばれやすい形です。価格・条件を徹底して交渉したい場合や、規模の大きい案件で選ばれやすい形です。

仲介は双方から報酬を受け取る構造であるため、一般論として利益相反が生じうる立場だと指摘されることがあります。売り手にとっては価格が高いほど望ましく、買い手にとっては低いほど望ましいため、その両方から報酬を得る主体は、どちらの利益を優先するかという緊張関係に置かれるからです。この点については、契約書で双方から受託していることを明示する、価格の妥当性について売り手が独自に検証できるようにするなど、実務上の対応が取られています。

重要なのは、仲介という形態そのものを善悪で評価することではなく、売り手として「提示された価格が妥当かどうかを自分でも判断できる材料を持っておく」ことです。事前に自社の価値レンジを把握しておけば、仲介・FAどちらに依頼する場合でも、提示条件を冷静に受け止められます。両者の違いはM&A仲介とFAの違いで詳しく解説しています。

買い手側の手数料負担

買い手も、仲介に依頼する場合は同様にレーマン方式の成功報酬を負担するのが一般的です。買い手側は加えて、財務・税務・法務のデューデリジェンス費用(外部専門家への報酬)を負担することが多く、案件規模によっては数百万円規模になります。買い手にとっては、買収価額に手数料とDD費用を加えた金額が実質的な投資額になりますので、価格交渉の際には売り手側もこの構造を理解しておくと、相手の反応を読みやすくなります。

手数料が手取りに与える影響:譲渡価額から税引後まで

売り手オーナーにとって本当に重要なのは、譲渡価額そのものではなく、税金と手数料を払い終えたあとに手元に残る金額です。個人が株式を譲渡した場合、譲渡所得に対して20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の分離課税がかかります。計算の順序は次のとおりです。

  • ① 譲渡所得を計算する:譲渡価額 − 取得費(出資額など) − 譲渡費用(仲介手数料など) = 譲渡所得
  • ② 税額を計算する:譲渡所得 × 20.315% = 税額
  • ③ 手取りを計算する:譲渡価額 − 手数料 − 税額 = 手取り

ポイントは、仲介手数料が譲渡費用として譲渡所得から控除されるため、手数料が増えるとその分だけ税額も減るという点です。つまり手数料の差額が、そのまま手取りの差額になるわけではありません。

計算例1:譲渡価額1億円のケース

譲渡価額1億円、取得費(設立時の出資額など)500万円、手数料は着手金100万円+成功報酬500万円(株式価値基準・最低報酬適用)の合計600万円とします。

項目金額
譲渡価額1億円
手数料(着手金+成功報酬)600万円
取得費500万円
譲渡所得(1億円 − 500万円 − 600万円)8,900万円
譲渡益課税(8,900万円 × 20.315%)約1,808万円
手取り(1億円 − 600万円 − 約1,808万円)約7,592万円

計算例2:譲渡価額3億円で、算定基礎が違う2ケース

次に、先ほどの算定基礎の違いが手取りにどう効くかを見ます。譲渡価額3億円、取得費500万円、着手金100万円は共通とし、成功報酬だけを株式価値基準(1,500万円)と移動総資産基準(2,900万円)で比べます。

項目株式価値基準移動総資産基準
譲渡価額3億円3億円
手数料合計(着手金100万円+成功報酬)1,600万円3,000万円
取得費500万円500万円
譲渡所得2億7,900万円2億6,500万円
譲渡益課税(20.315%)約5,668万円約5,383万円
手取り約2億2,732万円約2億1,617万円
手数料の差は1,400万円ですが、税額が約285万円減るため、手取りの差は約1,116万円にとどまります。とはいえ1,000万円を超える差であることに変わりはなく、算定基礎の確認が手取りを左右することが分かります。手取りの試算は株式譲渡の手取り計算ツールで行えます。

上記はいずれも簡略化した目安の計算です。実際には、取得費が不明な場合の概算取得費(譲渡価額の5%)の扱い、法人が株主である場合の法人税課税、役員退職金を組み合わせる場合の税負担など、個別の事情で結論は変わります。中小企業のM&Aに関わる税務の全体像は中小企業M&Aの税務を、株式譲渡と事業譲渡で課税関係がどう違うかは事業譲渡と株式譲渡の違いをご覧ください。最終的な税額は必ず税理士に確認してください。

契約前に必ず確認すること

アドバイザリー契約・仲介契約を結ぶ前に、次の項目を書面で確認しておくと、あとから「聞いていない」という事態を避けられます。口頭説明だけで済ませず、契約書の条文としてどう書かれているかを読むことが大切です。

確認項目確認のポイント見落とすとどうなるか
算定基礎(取引金額の定義)株式価値か、オーニングスか、企業価値か、移動総資産か。負債のどこまでを含むのかを条文で確認します。同じ料率でも手数料が2倍近くになることがあります。
料率テーブル各金額帯の料率と、帯ごとの刻み計算になっているかを確認します。全額に一律料率を掛ける設計だと、想定より高くなる場合があります。
最低成功報酬下限額はいくらか。譲渡価額が小さい場合の実質負担率を試算しておきます。小規模案件では下限額がそのまま手数料になり、実質負担率が跳ね上がります。
中間金の返金可否・充当成約しなかった場合に返金されるか、成功報酬に充当されるかを確認します。成約に至らなかった場合に、支払った中間金が戻らないことがあります。
専任条項と契約期間他社への同時依頼が禁止されるか、期間は何ヶ月か、更新は自動かを確認します。進捗が芳しくない場合でも、期間中は他社に相談できなくなることがあります。
テール条項契約終了後、一定期間内に紹介先と成約した場合に成功報酬が発生する条項です。対象範囲と期間を確認します。契約を解除したあとに成約しても、成功報酬の支払義務が生じることがあります。
直接交渉の禁止紹介された相手と当事者だけで交渉することが禁止されているか、その違反時の扱いを確認します。意図せず違反となり、違約金や報酬全額の支払いを求められる可能性があります。
実費の範囲何が実費に含まれるか、上限や事前承認のルールがあるかを確認します。出張費や外部専門家費用が想定外に膨らむことがあります。

テール条項は、仲介側が紹介した相手と契約終了後に直接成約されてしまうと報酬を得られなくなるため、その防止を目的として設けられるものです。目的自体は合理的ですが、対象となる相手の範囲が広すぎないか、期間が長すぎないかは確認しておく価値があります。専任条項についても、途中で依頼先を変えたくなったときに何ができるのかを、契約時点で把握しておきましょう。

費用を抑えるための現実的な考え方

手数料は値切るものというより、構造を理解して自社に合う形を選ぶものです。次の4つの方向で検討すると、負担を抑えやすくなります。

1. M&A支援機関登録制度を活用する

中小企業庁は、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した支援機関を登録・公表する「M&A支援機関登録制度」を運営しています。登録機関は情報開示や適正な業務運営について一定の要件を満たすことが求められており、依頼先を検討する際の一つの目安になります。また、後述する補助金の対象となる支援機関は、この登録を受けていることが要件とされています。

2. 公的な相談窓口を先に使う

各都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターをはじめとする公的窓口では、無料で相談に応じています。「そもそも売れるのか」「どう進めるべきか」といった初期段階の疑問を、費用をかけずに整理できます。民間の仲介に依頼する前に一度公的窓口で全体像を確認しておくと、その後の依頼先選びの判断材料が増えます。詳しくはM&Aの公的支援制度で解説しています。

3. 補助金・マッチングサイトなど費用体系の選択肢を知る

M&Aに伴う専門家費用については、事業承継・M&A補助金の対象となる場合があります。要件や補助率、対象経費は公募回ごとに変わりますので、最新の公募要領を確認してください。制度の概要は事業承継・M&A補助金で整理しています。

また、M&Aマッチングサイト(プラットフォーム)は、仲介と比べて費用体系が軽いことが一般的です。売り手側の掲載・利用は無料で、成約時のみ定額または低めの料率で課金する設計や、買い手側のみが手数料を負担する設計などがあります。自社で相手を探し、交渉もある程度自力で進められる場合には、有力な選択肢になります。一方で、相手探しから条件交渉、契約実務までの支援は限定的になりますので、自社の体制と照らして選ぶ必要があります。サイトの選び方はM&Aマッチングサイトの選び方で解説しています。

4. 相談する前に、自社の価値の目安を持っておく

費用を抑えるうえで、実はもっとも効果が大きいのがこれです。自社の価値レンジを事前に把握していれば、提示された価格の妥当性を自分で判断でき、条件交渉でも受け身になりません。また、価格の目安があれば、手数料が譲渡価額に対してどの程度の比率になるかを契約前に試算でき、依頼先の比較もしやすくなります。

簡易的な目安として年買法(年倍法)で当たりをつけたい場合は年買法の簡易計算ツールが使えます。加えて、売却前に課題を洗い出して整えておくことは、価格そのものを引き上げる可能性があります。進め方はセルサイドDDと売却前の磨き上げを、動き出す時期の考え方は会社売却のタイミングを参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 着手金や中間金は、成約しなかった場合に返ってきますか?

A. 一般的には、着手金は返金されない前提で設計されていることが多く、中間金についても契約内容によって扱いが分かれます。中間金を成功報酬の一部前払いと位置づけ、成約時に充当する設計が多い一方、成約に至らなかった場合の返金については契約書に明記されていないこともあります。「成約しなかったとき」「途中で解約したとき」の扱いを、契約前に条文で確認してください。

Q. 提示された手数料が相場より高いかどうかは、どう判断すればよいですか?

A. 料率テーブルだけで比べても差はつきにくいため、次の3点で比較してください。第一に算定基礎の定義、第二に最低成功報酬の水準、第三に着手金・中間金・月額報酬を含めた成約時の総額です。そのうえで、自社の想定譲渡価額を当てはめて総額と手取りを試算し、複数社で並べると判断しやすくなります。レーマン方式の計算ツールで基礎別の金額を出し、手取り計算ツールで税引後まで揃えると比較が容易です。

Q. 両手取引(仲介)は売り手に不利ですか?

A. 一概に不利とは言えません。仲介は双方の合意形成を支援する立場であるため、相手探しから条件のすり合わせまで一貫して進めやすく、中小規模の案件ではスピードの面で利点があります。一方で、双方から報酬を得る構造上、価格については売り手・買い手の利害が対立するという一般的な論点があります。対策としては、提示価格の妥当性を自分でも検証できるよう、事前に自社の価値レンジを把握しておくことが有効です。規模が大きい案件や、価格・条件を徹底的に交渉したい場合はFAという選択肢もあります。

Q. 小規模な案件ほど手数料が割高になるのはなぜですか?

A. 最低成功報酬が設定されているためです。M&Aの実務は、譲渡価額が1億円でも10億円でも、資料作成・買い手探索・交渉・契約実務といった工程の多くが共通してかかります。案件ごとに一定の固定的な工数が発生するため、下限額が設けられているという構造です。譲渡価額が数千万円規模の場合、実質負担率が10%を超えることもありますので、マッチングサイトの活用や公的窓口の併用も含めて検討する価値があります。

Q. FAと仲介、どちらを選ぶべきですか?

A. 案件の規模と、自社が何を優先するかで決まります。相手探しを含めて任せたい、なるべく早く進めたい、規模は中小規模という場合は仲介が選ばれやすい傾向があります。価格・条件について自社の立場を徹底して代弁してほしい、規模が大きく交渉が複雑になりそうという場合はFAが適することが多いです。どちらを選ぶ場合でも、算定基礎・最低報酬・専任条項・テール条項の確認は共通して必要です。判断の材料はM&A仲介とFAの違いにまとめています。

Q. M&Aの手数料は経費になりますか?

A. 個人が株式を譲渡する場合、譲渡に直接要した費用は譲渡費用として譲渡所得から控除できるのが一般的です。仲介手数料は、その譲渡のために直接支出したものであれば譲渡費用に該当すると整理されることが多いですが、着手金や月額報酬など、譲渡そのものとの直接的な対応関係が判断される項目もあります。法人が株主として株式を譲渡する場合は、法人税の計算上の損金の扱いになります。いずれも個別の事実関係で結論が変わりますので、契約書と請求内訳を揃えたうえで税理士に確認してください。

まとめ

M&A仲介・FAの手数料は、相談料・着手金・月額報酬・中間金・成功報酬・実費で構成され、成功報酬はレーマン方式(5億円以下5%から始まる逓減型)で計算されるのが一般的です。ただし比較の要点は料率ではありません。算定基礎を株式価値に置くか、オーニングス・企業価値・移動総資産に置くかで、同じ3億円の譲渡でも成功報酬は1,500万円から2,900万円へと約1.9倍に開きます。加えて、小規模案件では最低成功報酬が実質負担率を大きく押し上げます。

そして最後は手取りで比べることです。手数料は譲渡費用として譲渡所得から控除されるため、手数料の差がそのまま手取りの差になるわけではありませんが、それでも1,000万円規模の違いが生じ得ます。契約前には、算定基礎の定義、料率テーブル、最低報酬、中間金の返金可否、専任条項と期間、テール条項、直接交渉の禁止、実費の範囲を、必ず書面で確認してください。費用を抑えるには、M&A支援機関登録制度や公的窓口、事業承継・M&A補助金、マッチングサイトといった選択肢を知っておくことに加えて、相談する前に自社の価値の目安を持っておくことが有効です。

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