のれんの償却とは? 会計処理と減損の基礎
最終更新: 2026-06-18
M&Aで買収価格が買収先の純資産を上回ると、その差額は「のれん」として資産計上されます(のれん(営業権)とはを参照)。こののれんを期間にわたって費用化していく処理が「のれんの償却」です。償却の扱いは会計基準によって大きく異なり、買い手の損益に影響します。
のれんの償却とは
資産計上されたのれんは、将来にわたって収益に貢献すると考えられます。そこで、その効果が及ぶ期間にわたって少しずつ費用に振り替えていく——これが償却です。償却費は損益計算書(P/L)の費用として計上され、その分だけ利益が減ります。
日本基準とIFRSの違い
| 項目 | 日本基準 | IFRS |
|---|---|---|
| 定期償却 | あり(20年以内で規則的に償却) | なし(償却しない) |
| 減損 | 兆候があれば減損テスト | 毎期、減損テストを実施 |
| 毎期の費用 | 償却費が継続的に発生 | 通常は発生しない(減損時に一括) |
日本基準では毎期の償却費が利益を圧迫する一方、IFRSは償却しないため利益が出やすく見える反面、減損が起きると一度に大きな損失が出る、という違いがあります。
減損の影響
買収後に想定した収益が得られないと、のれんの減損が発生し、その期に多額の損失が計上されることがあります。大型M&Aで多額ののれんを計上した企業が、後に巨額の減損損失を出す事例も見られます。買収価格が高すぎると後の減損リスクが高まるため、買収時点の適正な価値評価(DCF法などによるバリュエーション)が重要になります。
評価・M&Aとのつながり
のれんの大きさは、買収価格と時価純資産の差で決まります。つまり、高値づかみを避けることが、後の償却負担や減損リスクを抑えることに直結します。買い手にとっては、評価レンジを把握したうえで価格交渉に臨むことが、のれんリスクの管理にもなります。
よくある質問(FAQ)
Q. のれんの償却費は節税になりますか?
A. 会計上の償却と税務上の損金算入は必ずしも一致しません。税務の取り扱いは取引形態(株式取得か事業譲渡か等)で異なるため、税理士・会計士の確認が必要です。
Q. 減損はどのようなときに起きますか?
A. 買収した事業の収益が計画を大きく下回り、のれんの価値が回収できないと判断されたときです。経営環境の悪化や統合(PMI)の失敗が引き金になることがあります。
まとめ
のれんの償却は、M&Aで計上したのれんを費用化していく処理で、日本基準は定期償却、IFRSは非償却+減損テストと扱いが異なります。いずれにせよ、買収価格が高すぎると償却負担や減損リスクが高まります。買収時点での適正な価値評価が、のれんリスクを抑える出発点です。
※ 具体的な会計処理・税務は会社の採用基準や取引形態により異なります。詳細は会計士・税理士にご確認ください。