M&Aバリュークラウドが作成する株式価値評価報告書の計算方法を、すべて公開します。どの数字がどの式から出ているか、どの前提値を何から取っているかを、報告書と同じ順序で説明します。
| 簡易版 | 詳細版 | |
|---|---|---|
| 結論の手法 | 年買法 | DCF法と類似会社比較法の併用法 |
| 参考として表示 | 類似会社比較法(業種平均倍率)・時価純資産 | 純資産法(簿価) |
| 必要な資料 | 直近の決算書 | 決算書と事業計画、類似する上場会社3社以上 |
| 向いている場面 | 売却額の目安をつかむ・初回の打ち合わせ | 買い手との交渉・社内の検討資料 |
年買法は、中小企業のM&Aで広く使われている算定方法です。会社の純資産を時価に直したものに、のれん(営業権)として正常な営業利益の数年分を加えます。
オーナー経営者の報酬が相場より高い(または低い)場合や、一時的な費用・収益がある場合は、その分を調整して「平常時に稼ぐ力」に直します。調整額と理由は報告書に表示します。正常営業利益が0以下の場合、のれんは0とし、時価純資産だけで評価します。
のれんの年数は、買い手が会社の収益力を何年分評価するかを表し、実務では3〜5年が目安とされます。3年を下限、5年を上限として株式価値のレンジを示し、4年を参考の中央値として表示します。年数は理論から一つに決まるものではありません。だからこそ1つの数字ではなく幅で示しています。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 簿価純資産 | 1億2,000万円 | 決算書の純資産 |
| 土地の含み益 | 3,000万円 | 時価 − 帳簿価額 |
| 含み益にかかる税金 | ▲1,007万円 | 3,000万円 × 33.58% |
| 時価純資産 | 1億3,993万円 | |
| 営業利益(直近期) | 2,000万円 | 決算書 |
| 役員報酬の正常化 | +500万円 | 相場との差額 |
| 正常営業利益 | 2,500万円 | |
| のれん | 7,500万〜1億2,500万円 | 2,500万円 × 3〜5年 |
| 株式価値 | 2億1,493万〜2億6,493万円 | 時価純資産 + のれん |
上場企業の業種別の倍率(EV/EBIT・EV/EBITDAの中央値)を正常営業利益に掛けた値も参考として表示します。上場企業の水準には規模や株式の売買のしやすさの分が含まれ、小規模なM&Aの価格水準とは前提が異なるため、結論には含めません。報告書には、どの業種の・いつ集計した・何社分の倍率かを明記します。
詳細版は、将来の収益力から評価するDCF法と、市場での評価から求める類似会社比較法の2つで株式価値を算定し、両方の結果を合わせて結論を出します。
DCF法の結果は、WACC±0.5%と永久成長率±0.5%の組み合わせで計算した値の最小〜最大をレンジとします。報告書にはWACC±1.0%までの感応度表も載せます。
| 状況 | 結論とするレンジ |
|---|---|
| DCF法と類似会社比較法のレンジが重なる | 重なっている範囲 |
| 重ならない | DCF法のレンジ(2つの結果が2倍以上離れている場合は注記) |
| DCF法が算定不能 | 類似会社比較法のレンジ |
| 両方とも算定不能 | 純資産法(簿価) |
複数の手法の結果に比率を掛けて平均する方法(加重平均)は、比率の決め方に根拠を示しにくいため採用していません。純資産法(簿価)は参考値として表示します。
利用者が値を指定した場合は、指定した値を使います。
| 前提値 | 使う値 | 出所・決め方 |
|---|---|---|
| 無リスク金利 | 評価時点の10年国債利回り | 財務省「国債金利情報」 |
| 負債コスト | 評価時点の長期プライムレート | 日本銀行の公表値 |
| 市場リスクプレミアム | 6.0% | 専門家への調査で示される日本の水準の上側(下記) |
| β | 類似会社のβの中央値を再レバー | 週次株価とTOPIXの5年分から推計 |
| 自己資本比率 | 類似会社の平均 | 有利子負債÷時価総額から算出 |
| サイズ・個別リスクプレミアム | 利用者が入力(未入力は加算なし) | 根拠メモを報告書に表示 |
| 非流動性ディスカウント | 利用者が入力(未入力は適用なし) | 上場会社の評価では適用しない |
| 永久成長率 | 利用者が入力 | 事業計画の前提とあわせて設定 |
| 実効税率 | 中小法人33.58%/その他30.62% | 法人税・住民税・事業税等を合わせた標準税率ベース |
| のれんの年数(簡易版) | 3〜5年 | 中小企業M&Aの実務の目安 |
IESEビジネススクールのPablo Fernandez教授らが毎年行っている調査(大学教員・アナリスト・企業の財務担当者が実際に使っている値を尋ねるもの)では、2025年の日本の市場リスクプレミアムは、回答36件の平均5.1%・中央値5.7%、回答の範囲は2.8〜6.2%でした。
本サービスの6.0%はこの範囲の上側の値です。市場リスクプレミアムが高いほど割引率が上がり、DCF法の評価額は低めに出ます。売り手に有利な方向へ評価額がふくらまないよう、やや保守的な値を標準としています。案件に応じて利用者が変更することもできます。
見本の報告書には、ここで説明した計算の途中の数字がすべて載っています。電卓や表計算ソフトで同じ結果になることを確かめられます。