年買法(年倍法)とは? 中小M&Aで使われる簡便な価格算定
最終更新: 2026-06-18
年買法(ねんばいほう/年倍法)は、中小企業のM&Aで広く使われる簡便な価格算定の考え方です。「時価純資産+営業利益の数年分」で買収価格の目安を求めます。専門的な評価モデルを組まなくても直感的に目安が出せるため、スモールM&Aの現場で重宝されています。
計算の考え方
買収価格の目安 = 時価純資産 + 営業利益(または実質利益)× 年数
純資産という「今ある財産」に、これから数年分の利益を上乗せする、という発想です。この営業利益の数年分が、実質的に営業権(のれん)——純資産に表れない将来の稼ぐ力——に相当します。
加算する「年数」の決め方
上乗せする年数は2〜5年程度が目安とされ、次のような要素で調整します。
- 収益力の高さ・安定性(安定して稼げるなら年数を長めに)
- 収益の持続性(一過性でなく今後も続くか)
- 属人性の低さ(オーナーが抜けても回るか)
- 業種・成長性・取引先の固定度
年数を1つ動かすだけで価格が大きく変わるため、ここが交渉の論点になります。
「実質利益」への正規化
中小企業では、オーナー個人に紐づく費用(過大な役員報酬、私的経費など)や一過性の損益が混じっていることがあります。そこで、これらを調整した「実質的な利益(正常収益力)」を使うのが望ましいとされます。表面の営業利益のまま計算すると、実態とずれた価格になりかねません。
簡単な数値例(イメージ)
買収価格の目安 = 2億円 + 5,000万円 × 3 = 約3.5億円。
(仕組みを示す例・目安。年数や利益の取り方で変わります)
メリットと限界
- メリット:計算がシンプルで、売り手・買い手の双方が直感的に理解しやすい。交渉の共通の土台にしやすい。
- 限界:将来の成長性やリスク、資本コストを精緻に反映しないため、あくまで交渉の出発点・目安。
実務では年買法で大まかな目安をつかみつつ、DCF法や類似会社比較法(EV/EBITDA)による評価レンジと照らし合わせて妥当性を確認するのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 年買法の「年数」は何年が正解ですか?
A. 決まった正解はありません。収益の安定性・持続性・属人性などを踏まえ、2〜5年程度で調整します。年数は交渉で動く部分です(目安)。
Q. 赤字の会社でも年買法は使えますか?
A. 上乗せする利益がないため、そのままでは使いにくくなります。時価純資産が中心となり、収益改善の見込みなどを別途交渉材料にすることになります。
Q. 年買法とDCF法はどちらが正しいですか?
A. 目的が違います。年買法は素早い目安、DCF法は将来性を反映した精緻な評価です。両方を見比べてレンジで捉えるのが実務的です。
まとめ
年買法は「時価純資産+実質利益×数年分」で買収価格の目安を出す、中小M&Aの簡便法です。シンプルで交渉の土台になりやすい一方、成長性やリスクを精緻に反映しないため、あくまで出発点。DCF法や類似会社比較法のレンジと照らし合わせ、会社売却の相場感とともに妥当性を確認しましょう。