WACC(加重平均資本コスト)とは? 計算式と構成要素
最終更新: 2026-06-18
WACC(Weighted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト)は、企業が資金を調達するためにかかるコストを、負債と株主資本の構成比で加重平均したものです。DCF法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引く際の割引率として使われ、評価額を左右する最重要パラメータのひとつです。
本稿では、WACCの計算式と各構成要素、簡単な計算例、評価額への影響、非上場企業での実務上の注意点までを解説します。
なぜWACCが「割引率」になるのか
会社は株主と債権者(銀行など)から資金を集めて事業を行います。株主は配当や値上がり益を、債権者は利息を期待します。つまり会社が事業で生み出すキャッシュフローは、まず資金の出し手の期待に応える必要があります。その「期待リターンの平均」がWACCであり、事業のキャッシュフローを評価するときの基準(ハードルレート)として使われます。リスクの高い会社ほど出し手の期待リターンは高く、WACCも高くなります。
計算式
WACC = 株主資本コスト ×(株主資本÷総資本)+ 負債コスト ×(1−実効税率)×(負債÷総資本)
総資本は株主資本と有利子負債の合計です。各コストを、その調達源が全体に占める割合で重み付けして足し合わせます。
主な構成要素
- 株主資本コスト:株主が期待する収益率。CAPM(リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム)で求めるのが一般的。通常、負債コストより高くなります。
- 負債コスト:借入金利など。支払利息は損金算入され税負担を減らすため、(1−実効税率) を掛けて節税効果(タックスシールド)を反映します。
- 資本構成:負債と株主資本の比率。簿価ではなく時価ベースで測るのが望ましいとされます。
簡単な計算例(イメージ)
WACC = 8%×0.7 + 2%×(1−0.3)×0.3 = 5.6% + 0.42% = 約6.0%。
(仕組みを示す例・目安。実際は各要素を個別に精査します)
WACCが評価額に与える影響
WACCが高いほど将来キャッシュフローの現在価値は小さくなり、評価額は下がります。逆にWACCが低いと評価額は上がります。特にターミナルバリューはWACCの影響を強く受けるため、WACCが1%変わるだけで評価額が大きく動くことがあります。だからこそ、前提(β・リスクプレミアム・資本構成)の根拠を持ち、感応度分析で幅を確認することが欠かせません。
非上場企業での実務上の注意
- 株主資本コストのβは直接観測できないため、上場類似会社のβを参照して推計する。
- 規模が小さい会社では、サイズプレミアム(小規模ゆえの上乗せリスク)を加味することがある。
- 資本構成は実態の時価ベースで考える(過度な借入前提でWACCを不当に下げない)。
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ負債コストに (1−税率) を掛けるのですか?
A. 支払利息は損金算入され、その分だけ税金が減る(節税効果がある)ためです。実質的な負債コストは表面金利より低くなります。
Q. WACCはどれくらいの水準が普通ですか?
A. 業種・規模・金利環境・会社のリスクで大きく異なり、一概には言えません。重要なのは水準そのものより、各構成要素に根拠があることと、感応度で幅を見ることです(あくまで目安)。
Q. WACCだけ分かれば株価が出せますか?
A. いいえ。WACCはDCF法の割引率にすぎません。将来FCFの予測やターミナルバリューと組み合わせて初めて評価額になります。
まとめ
WACCは、株主資本コストと負債コストを資本構成で加重平均した「会社全体の資金調達コスト」で、DCF法の割引率として使われます。評価額への影響が大きいため、β・リスクプレミアム・資本構成といった前提に根拠を持ち、感応度分析でレンジを確認することが、信頼できる評価の鍵になります。