ターミナルバリュー(継続価値)とは? 永久成長率法の計算式と注意点
最終更新: 2026-09-12
ターミナルバリュー(TV/継続価値・残存価値)とは、DCF法において、事業計画で個別に予測した期間が終わったそれ以降の価値をまとめて表した金額のことです。会社は事業計画の最終年度で消滅するわけではなく、その後も事業を続けてキャッシュを生み出します。しかし6年目、7年目……と無限に予測を続けることは現実的ではないため、予測期間より先の全期間を1つの金額に集約する——それがターミナルバリューの役割です。
この項目は、DCF法のなかで最も影響が大きく、同時に最も前提に左右されやすいパートでもあります。評価額の7割前後をターミナルバリューが占めることは珍しくなく、永久成長率をわずか1%動かすだけで結論が2割変わる、といったことが普通に起こります。本稿では、なぜそこまで大きくなるのかを数値で確認したうえで、永久成長率法(ゴードン・モデル)と倍率法の計算式、両者によるクロスチェック、永久成長率の置き方、gがWACCに近づいたときに何が起きるか、予測期間の決め方、期央主義と期末主義の違い、そして実務で頻出する誤りを順に整理します。
ターミナルバリューが必要な理由
DCF法では、まず根拠を示せる範囲で年度別のフリーキャッシュフロー(FCF)を予測します。この期間を「明示的予測期間」と呼び、実務では3〜5年程度に設定するのが一般的です。しかし、この5年分のFCFを割り引いて合計しただけでは、会社の価値を大きく過小評価してしまいます。5年で事業をたたむ前提の計算になってしまうからです。
かといって、50年分のFCFを1年ずつ予測しても精度は上がりません。10年先の売上を根拠づけて予測することは大半の会社で不可能ですし、割引の効果によって遠い将来のキャッシュフローが現在価値に与える影響は急速に小さくなります。WACC 8%であれば、20年後の1億円は今日の約2,150万円、30年後の1億円は約990万円としか評価されません。
そこで、「予測できる期間は年度別に丁寧に予測し、それ以降は一定のパターンで続くと仮定して一括で評価する」という二段構えを採ります。この後半部分がターミナルバリューです。
事業価値 = 予測期間FCFの現在価値の合計 + ターミナルバリューの現在価値
ここで求まるのは事業価値(EV)なので、そこから株式価値に落とすには、非事業用資産を加算し有利子負債を控除します。この関係は企業価値と株式価値の違いで整理しています。
なぜ企業価値の大半を占めるのか
ターミナルバリューが「無限の将来」を丸ごと引き受けている以上、その金額が大きくなるのは構造上当然です。どの程度の割合になるのか、数値で確認してみましょう。以下はすべて仕組みを示すための例です。
予測期間5年分のFCFの現在価値合計 = 約3.99億円
ターミナルバリュー = 1億円 ×(1+0.01)÷(0.08 − 0.01)≒ 14.43億円(5年目時点)
その現在価値 = 14.43億円 × 0.681 ≒ 9.82億円
事業価値 = 3.99 + 9.82 = 13.81億円 → うちTVの割合は約71%
5年間かけて丁寧に予測したFCFの現在価値は3.99億円、全体の約29%に過ぎません。残りの71%は「6年目以降の、1本の式で置いた部分」です。事業計画の議論に何時間もかけたあとで、gを1%動かすだけで結論が数億円動く、という状況がここから生まれます。
ただし、この割合は前提によって変わります。同じFCFでも、WACCが高く成長率が低い会社ほどTVの割合は下がり、予測期間を長く取るほど下がります。
| ケース(すべて例) | 予測期間FCFの現在価値 | TVの現在価値 | 事業価値 | TVの割合 |
|---|---|---|---|---|
| 予測5年/WACC 8%/g=1% | 3.99億円 | 9.82億円 | 13.81億円 | 約71% |
| 予測5年/WACC 12%/g=0% | 3.60億円 | 4.73億円 | 8.33億円 | 約57% |
| 予測10年/WACC 8%/g=1% | 6.71億円 | 6.68億円 | 13.39億円 | 約50% |
つまり、TVの割合が高いこと自体が誤りなのではありません。問題は、TVの割合が高いにもかかわらず、その前提(最終年度のFCF・WACC・g)の検証が甘いまま結論を出してしまうことです。評価書を読むときは、まず「TVが全体の何%か」を確認する習慣をつけると、その評価の脆さがどこにあるかが見えてきます。評価書の読み解き方は評価レポートの見方でも解説しています。
永久成長率法(ゴードン・モデル)
計算式
最も広く使われるのが永久成長率法です。予測最終年度のFCFが、その後は一定率gで永久に成長し続けると仮定します。
ターミナルバリュー = 予測最終年度のFCF ×(1 + g)÷(WACC − g)
分子が「6年目のFCF」(最終年度のFCFを1年ぶん成長させたもの)、分母が「WACCから成長率を差し引いた率」です。求まるのは予測最終年度時点の価値なので、これをさらに最終年度の割引係数で現在価値に直してから事業価値に加えます。
式の直感:なぜ(WACC − g)で割るのか
この式は「毎年一定率で増えていくキャッシュフローを永久に受け取る権利の、現在価値」を表しています。直感的には次のように理解できます。
まず、成長がまったくない(g=0)場合を考えます。毎年1億円を永久に受け取る権利は、WACC 8%なら 1億円 ÷ 0.08 = 12.5億円です。「利回り8%で12.5億円を運用すれば、毎年1億円の果実が永久に得られる」と考えれば納得しやすいでしょう。この12.5億円が、成長のない永久キャッシュフローの現在価値です。
次に、キャッシュフローが毎年1%ずつ増えていく場合を考えます。受け取る金額が年々増えるのですから、権利の価値は12.5億円より高くなるはずです。式のうえでは、この成長ぶんだけ割引率の効きを弱める、つまり分母をWACCからgを引いた(0.08 − 0.01)=7%に置き換えます。結果、1.01億円 ÷ 0.07 ≒ 14.43億円となり、成長がない場合より約2億円高く評価されます。
重要なのは、この式が成立するのはWACC > g のときだけだという点です。gがWACC以上になると、キャッシュフローの成長速度が割引の速度に追いつき、現在価値が収束しなくなります。数学的には無限大に発散し、経済的には「その会社は永久に経済全体より速く成長し続ける」という現実的でない仮定を置いていることになります。
gがWACCに近づくとどうなるか
永久成長率を少しずつ上げていったときに、ターミナルバリューがどう変化するかを見てみます。予測最終年度のFCFを1億円、WACCを8%とした例です。
| 永久成長率 g | 分母(WACC − g) | ターミナルバリュー | g=0%比 |
|---|---|---|---|
| 0% | 8.0% | 12.50億円 | 1.00倍 |
| 1% | 7.0% | 14.43億円 | 1.15倍 |
| 2% | 6.0% | 17.00億円 | 1.36倍 |
| 3% | 5.0% | 20.60億円 | 1.65倍 |
| 4% | 4.0% | 26.00億円 | 2.08倍 |
| 5% | 3.0% | 35.00億円 | 2.80倍 |
| 6% | 2.0% | 53.00億円 | 4.24倍 |
| 7% | 1.0% | 107.00億円 | 8.56倍 |
| 8%(=WACC) | 0.0% | 算定不可(分母がゼロ) | — |
この性質があるため、当サービスのDCF計算では、永久成長率がWACC以上になる入力(g ≧ WACC)は算定不可として扱い、結果を表示しません。計算式上は数字が出てしまう領域(gがWACCに極端に近い場合)でも、その結果は経済的な意味を持たないためです。もしgをWACCに近い水準に置かないと期待する評価額に届かない、という状況になっているのであれば、それはgの問題ではなく、事業計画かWACCの前提を見直すべきサインだと考えられます。
実務でも、gは「大きくても長期の名目経済成長率まで」という制約が広く共有されています。WACCが8〜12%程度になることが多い中小企業では、gを0〜2%に置いておけば、この発散領域に踏み込む心配はほとんどありません。
倍率法(エグジットマルチプル法)
計算式
もう一つの方法が倍率法です。予測最終年度に会社を売却したと仮定し、そのときの想定売却価格をターミナルバリューとみなします。
ターミナルバリュー = 予測最終年度のEBITDA × 想定EV/EBITDA倍率
倍率にはEV/EBITDAのほか、EV/EBITやEV/売上高が使われることもあります。倍率の水準は、類似会社比較法と同じ考え方で、同業の上場会社や過去の類似取引の水準から選びます。市場の相場観を直接持ち込めるため、実務家の感覚に馴染みやすいのが特徴です。
ただし注意点があります。倍率法は「予測最終年度の時点でも、今と同じ相場が続いている」と仮定しています。5年後の市場環境が今と同じである保証はなく、現在の倍率が歴史的に高い(あるいは低い)局面であれば、その歪みをそのまま将来に持ち込むことになります。また、成長期待の高い倍率を使うと、明示的予測期間で織り込んだ成長を二重に評価してしまう恐れもあります。
2つの方法の比較とクロスチェック
| 永久成長率法(ゴードン・モデル) | 倍率法(エグジットマルチプル) | |
|---|---|---|
| 考え方 | 最終年度のFCFが一定率で永久に成長すると仮定する | 最終年度に会社を売却すると仮定し、そのときの想定価格を置く |
| 必要な前提 | 最終年度のFCF、WACC、永久成長率g | 最終年度のEBITDA等、想定する倍率 |
| 強み | DCF法の理論と一貫している。前提が明示的で、感応度分析と相性がよい | 市場の相場観を反映できる。実務家に説明しやすい |
| 弱み | gの置き方に極端に敏感。gがWACCに近いと発散する | 5年後も現在の相場が続く前提。成長期待の二重計上が起きやすい |
| 向いている場面 | 安定した収益構造を持つ会社、成熟産業 | 業界の取引倍率が安定していて参照しやすい業種 |
| 実務での位置づけ | 主たる方法として使われることが多い | 主たる方法、またはクロスチェック用 |
どちらか一方を選ぶのではなく、両方で算定して整合性を確認するのが安全な進め方です。クロスチェックの具体的な方法は次の2つです。
① 永久成長率法の結果を「倍率」に換算する
永久成長率法で求めたターミナルバリューを、最終年度のEBITDAで割ってみます。先ほどの例(TV 14.43億円)で、最終年度のEBITDAを1.5億円とすれば、14.43 ÷ 1.5 ≒ 9.6倍です。この倍率が同業の取引水準と比べて妥当かを確認します。同業が6〜8倍で取引されているのに9.6倍が出ているなら、gかWACCの前提が甘い可能性を疑います。
② 倍率法の結果から「暗黙のg」を逆算する
逆に、倍率法で置いたターミナルバリューが、永久成長率法ではどんなgに相当するかを逆算する方法もあります。最終年度のFCFを1億円、WACCを8%とした場合の対応関係は次のとおりです。
| 想定EV/EBITDA倍率 | TV(最終年度EBITDA 1.5億円の場合) | 暗黙の永久成長率g |
|---|---|---|
| 6倍 | 9.0億円 | 約 △2.8% |
| 8倍 | 12.0億円 | 約 △0.3% |
| 10倍 | 15.0億円 | 約 +1.3% |
| 12倍 | 18.0億円 | 約 +2.3% |
永久成長率(g)の置き方
gは「永久」に適用される率です。3%と置けば、その会社は50年後も100年後も年3%で成長し続ける、と仮定していることになります。長期的には、いかなる会社も経済全体の成長率を超えて永久に成長し続けることはできません(そうでなければ、いずれその会社が経済全体を上回ってしまいます)。この制約から、gの設定には次のような考え方が使われます。
- 長期の物価上昇率・名目経済成長率を上限の目安とする:これがgの理論的な天井です。実務では0〜2%程度に収める例が多く見られます。
- 業種と成熟度で調整する:構造的に市場が縮小している業種や、人口減少の影響を直接受ける業種では、0%またはマイナスを置くこともあります。業種ごとの評価の勘所は業種別の評価ポイントも参考になります。
- 会社固有の高成長を永久に持ち込まない:高い成長率は明示的予測期間のなかで織り込み、gには「成長が落ち着いたあとの巡航速度」を置きます。SaaS企業やスタートアップのように高成長が前提の会社では、予測期間を長めに取って成長が逓減する姿を明示的に描き、gそのものは控えめに置くのが定石です。
- 名目と実質を混ぜない:事業計画を名目値(物価上昇を織り込んだ金額)で作ったなら、gも名目ベースで置きます。実質ベースの計画に名目のgを当てると、インフレぶんを二重に見込むことになります。
- WACCとの距離を確認する:g がWACCに近いほど結果は不安定になります。(WACC − g)が3%を下回るような設定になっていないかを確認しておくと安心です。
なお、gと同じかそれ以上に結果を左右するのがWACCです。gを慎重に置いてもWACCの根拠が薄ければ、ターミナルバリューの信頼性は上がりません。WACCの算定手順はWACCとは、その主要部品である株主資本コストはCAPMと株主資本コストで解説しています。
予測期間の長さをどう決めるか
明示的予測期間の長さは、ターミナルバリューの割合を直接左右します。一般的な目安と考え方を整理します。
| 予測期間 | 向いているケース | 留意点 |
|---|---|---|
| 3年 | 中小企業で、根拠のある計画を作れるのが3年程度の場合 | TVの割合が高くなりやすい。最終年度が安定状態かの確認が特に重要 |
| 5年 | 最も一般的。中期経営計画の期間と揃えやすい | 5年目が特殊な状態(大型投資の直後など)でないかを確認する |
| 7〜10年 | 成長段階にある会社、赤字から黒字化する途中の会社、大型投資が数年後に一巡する会社 | 後半年度の予測根拠が薄くなりがち。成長が逓減していく姿を描けているかが鍵 |
判断の軸は年数そのものではなく、「予測期間の最終年度が、その後も長く続く安定した状態になっているか」です。ターミナルバリューは最終年度のFCFを起点に無限の将来を組み立てるので、最終年度が安定状態でなければ、その歪みが無限に増幅されます。成長が続いている途中の年度を最終年度にすると、その成長水準が永久に続く前提が紛れ込みます。逆に、たまたま設備投資が集中した年度を最終年度にすると、価値を大きく過小評価します。
安定状態の目安としては、①売上成長率がgに近い水準まで落ち着いている、②営業利益率が正常な水準にある、③設備投資と減価償却費がおおむね釣り合っている、④運転資本の増加が売上成長に見合った水準に収まっている、といった条件が挙げられます。これらを満たさない場合は、予測期間を1〜2年伸ばして安定状態まで描き切るか、ターミナルバリュー算定用に「正常化した最終年度FCF」を別途作る、という対応をとります。
期央主義と期末主義
現在価値に割り引くとき、キャッシュフローが1年のどの時点で発生すると仮定するかで、2つの流儀があります。
- 期末主義:各年度のFCFが期末に一括で発生すると仮定します。割引係数は 1 ÷(1+WACC)ⁿ で、計算が単純です。本稿および多くの入門書はこの方式で説明しています。
- 期央主義(ミッドイヤー・コンベンション):FCFは1年を通じて平均的に発生するのだから、期の中央(0.5年、1.5年、2.5年……)に発生すると仮定するほうが実態に近い、という考え方です。割引係数は 1 ÷(1+WACC)ⁿ−0.5 になります。
期央主義では割引期間が半年ぶん短くなるため、同じ前提でも評価額は数%程度高く出ます。ターミナルバリューについても、期央主義に合わせて割引時点を調整する扱いと、最終年度末時点として扱う扱いがあり、実務上のバリエーションがあります。
ターミナルバリューでよくある間違い
最終年度が異常値になっている
最も影響の大きい誤りです。最終年度に大型受注が乗っている、補助金が入っている、逆に大型投資が重なっている——こうした特殊要因を含んだままの最終年度FCFを起点にすると、その特殊要因が無限に続く前提でターミナルバリューが組み立てられます。最終年度のFCFは、必ず「その後ずっと続く水準か」という目で検証します。
設備投資と減価償却の不整合
最終年度だけ設備投資を絞ると、その年のFCFが膨らみ、ターミナルバリューが大きく出ます。しかし、投資を絞り続ければ設備は老朽化し、いずれ事業が続かなくなるので、その水準が永久に続くという仮定は成立しません。安定状態では、設備投資は減価償却費とおおむね同水準か、成長ぶんだけやや上回る、というのが一つの目安です。逆に、成長を織り込んでgをプラスに置いているのに設備投資を減価償却より低く置くのは、投資なしで成長する前提を意味し、整合しません。
名目と実質の混在
事業計画を実質ベース(物価上昇を織り込まない)で作りながら、gに名目の経済成長率を当てはめてしまうケースです。あるいはその逆で、名目ベースの計画にg=0%を置くと、実質的にはマイナス成長を仮定していることになります。計画・WACC・gのすべてを名目で揃えるか、すべてを実質で揃えるかを最初に決めておきます。実務では名目で揃えるのが一般的です。
ターミナルバリューを現在価値に割り引き忘れる
永久成長率法で求めたTVは「予測最終年度時点の価値」です。これを割り引かずに予測期間の現在価値合計に足すと、前述の例では事業価値が13.81億円ではなく18.42億円となり、3割以上の過大評価になります。単純ですが、表計算で組んでいると起こりがちなミスです。
成長を二重に織り込む
倍率法で高い成長期待を織り込んだ倍率を使いながら、明示的予測期間でも高成長を描いていると、同じ成長を2回評価していることになります。永久成長率法でも、最終年度のFCFがすでに成長のピークにあるのに、そこにさらにgを掛けると同様の重複が生じます。
ターミナルバリューの割合を確認していない
TVが事業価値の何%を占めているかを計算していない評価は、自分のモデルのどこが脆いかを把握できていない状態です。7割前後までは通常の範囲ですが、9割に達しているようなら、予測期間・最終年度FCF・gのいずれかを見直すべきサインと考えられます。
よくある質問(FAQ)
Q. 永久成長率は何%に置けばよいですか?
A. 一律の正解はありませんが、長期の物価上昇率・名目経済成長率を上限の目安とし、実務では0〜2%程度に収める例が多く見られます。成熟産業や縮小市場では0%、あるいはマイナスを置くこともあります。重要なのは水準そのものより、なぜその値を置いたのかを説明できることと、感応度分析で幅を確認しておくことです。
Q. 永久成長率法と倍率法、どちらを使うべきですか?
A. どちらか一方に決めるより、両方で算定して整合性を確認するのが安全です。実務では永久成長率法を主たる方法とし、倍率法をクロスチェックに使うことが多くあります。両者が大きく乖離する場合は、gが高すぎる、倍率が現在の相場に引きずられている、最終年度のFCFやEBITDAが安定水準でない、といった原因を疑って前提を見直します。
Q. ターミナルバリューが評価額の7割を占めるのは問題ですか?
A. DCF法では珍しくなく、それ自体が誤りというわけではありません。ただし、それだけ最終年度FCF・WACC・gの3つに結論が依存しているということなので、これらの前提の検証と感応度分析が不可欠になります。9割前後まで達している場合は、予測期間の設定や最終年度の状態に無理がないかを点検することをおすすめします。
Q. 永久成長率をWACCより高く置くとどうなりますか?
A. 計算式の分母(WACC − g)がゼロまたはマイナスになるため、価値が発散するか、マイナスという意味をなさない値になります。経済的にも「その会社が永久に経済全体より速く成長する」という成立しない仮定を置いていることになります。当サービスのDCF計算でも、g ≧ WACC となる入力は算定不可として扱っています。この状況になった場合は、gではなく事業計画やWACCの前提を見直します。
Q. 予測期間を長くすればターミナルバリューの影響を減らせますか?
A. TVが占める割合は下がりますが、事業価値そのものが大きく変わるわけではありません。本稿の例では、予測期間を5年から10年に伸ばすとTVの割合は71%から約50%に下がりますが、事業価値は13.81億円から13.39億円へと小幅な変化に留まります。価値の中身が「一括で置いた部分」から「明示的に予測した部分」へ移るだけです。したがって、根拠のある予測ができる範囲でのみ期間を伸ばす意味があり、根拠なく年数だけ増やしても精度は上がりません。
Q. 赤字の会社や、最終年度のFCFがマイナスの会社ではどうしますか?
A. 最終年度のFCFがマイナスのまま永久成長率法を適用すると、ターミナルバリューがマイナスになり、現実的な評価になりません。この場合は、①黒字化して安定するところまで予測期間を伸ばす、②ターミナルバリュー算定用に正常化した安定状態のFCFを別途設定する、③DCF法以外の手法(類似会社比較法や純資産をベースにした評価)と併用してレンジで捉える、といった対応をとります。3つのアプローチを並べて検証する姿勢が有効です。
まとめ
ターミナルバリュー(継続価値)は、DCF法で明示的予測期間より先の価値をまとめて表す構成要素です。無限の将来を1本の式で引き受けているため、事業価値の7割前後を占めることも珍しくありません。算定方法には永久成長率法(ゴードン・モデル)と倍率法があり、前者は「最終年度FCF ×(1+g)÷(WACC − g)」で計算します。
押さえるべき要点は4つです。第一に、gは長期の物価・経済成長を超えない範囲で控えめに置き、gがWACCに近づくほど結果が発散して不安定になること。第二に、算定の起点となる最終年度のFCFは、設備投資と減価償却が釣り合った安定状態でなければならないこと。第三に、永久成長率法と倍率法を相互に換算してクロスチェックすること。第四に、求めたTVは最終年度時点の価値なので、必ず現在価値に割り引いてから加えることです。DCF法全体の手順はDCF法とは、その入力となるFCFの作り方はFCFとはで解説しています。自分の手で計算してみたい方は自分で企業価値を計算する方法もあわせてご覧ください。
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