フリーキャッシュフロー(FCF)とは? DCF法の基礎
最終更新: 2026-06-18
フリーキャッシュフロー(FCF)は、企業が事業活動で生み出したキャッシュから、事業の維持・成長に必要な投資を差し引いた「自由に使えるキャッシュ」です。DCF法はこのFCFを割り引いて価値を求めるため、FCFはバリュエーションの出発点といえます。
なぜ「利益」ではなく「FCF」なのか
会計上の利益には、現金の出入りを伴わない項目(減価償却など)が含まれ、逆に設備投資や運転資本の増加といった現金流出が反映されません。価値の源泉は最終的に「手元に残る現金」であるため、DCF法では利益ではなく現金ベースのFCFを使います。利益が黒字でもFCFがマイナス、ということは珍しくありません。
計算の考え方
簡略的には次の式で表されます。
FCF = 税引後営業利益 + 減価償却 − 設備投資(CAPEX)− 運転資本の増加
- 税引後営業利益(NOPAT)… 本業の利益から税を引いたもの
- + 減価償却 … 現金流出を伴わない費用なので足し戻す
- − 設備投資(CAPEX)… 事業維持・成長のための現金流出
- − 運転資本の増加 … 売掛金・在庫の増加で寝る現金
FCF = 8,000 + 2,000 − 3,000 − 1,000 = 6,000万円(単純化した例)。
FCFFとFCFE
| 種類 | 誰に帰属するか | 割引率 | 求まる価値 |
|---|---|---|---|
| FCFF(企業へのFCF) | 債権者+株主 | WACC | 事業価値(EV) |
| FCFE(株主へのFCF) | 株主のみ | 株主資本コスト | 株式価値 |
FCFFをWACCで割り引いて事業価値を求める方法が一般的です。FCFEは利払い後・純粋に株主に帰属するキャッシュで、株主資本コストで割り引きます。どちらを使うかで割引率が変わる点に注意します。
EBITDAとの違い
EBITDAは「営業利益+減価償却」で現金創出力に近い概算ですが、設備投資や運転資本の増減を反映しません。FCFはそこまで差し引いた「本当に自由に使える現金」です。設備投資が重い事業では、EBITDAが大きくてもFCFは小さい、ということが起こります。
よくある質問(FAQ)
Q. 利益が黒字なのにFCFがマイナスになるのはなぜですか?
A. 大きな設備投資や、売掛金・在庫の急増で現金が出ていく/寝ているためです。成長期の会社でよく見られます。
Q. DCF法ではFCFFとFCFEのどちらを使いますか?
A. 一般にはFCFFをWACCで割り引く方法が広く使われます。金融機関など資本構成が特殊な業種ではFCFEを使うこともあります。
まとめ
FCFは、事業が生んだ現金から必要投資を差し引いた「自由に使えるキャッシュ」で、DCF法の評価の土台です。利益とは異なり設備投資・運転資本まで反映するため、企業の実質的な稼ぐ力を表します。FCFF(→WACC→事業価値)とFCFE(→株主資本コスト→株式価値)の違いを押さえることが、DCF法を正しく使う鍵になります。