企業価値評価はどこに依頼する? 依頼先の違い・費用の目安と、依頼前に整える資料

最終更新: 2026-09-12

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「自社の株価を出したいが、そもそもどこに頼めばいいのか分からない」。企業価値評価(株価算定)を初めて手配する方から、最もよく聞く悩みです。顧問税理士に聞けばよいのか、公認会計士に頼むべきなのか、M&A仲介会社がやってくれるのか、あるいは自分たちで計算しても構わないのか。依頼先の選択肢は思いのほか多く、しかもそれぞれ得意な目的も費用も成果物もまったく違います。ここを取り違えると、必要のない高額な算定書を発注してしまったり、逆に必要な第三者性が確保できていない資料で交渉に臨んでしまったりします。

この記事では、企業価値評価の依頼先を6つのタイプに分け、得意な目的・第三者性・費用の目安・期間・成果物・限界という6つの切り口で比較します。そのうえで、目的別にどこを選べばよいか、費用が変わる理由は何か、依頼前に何を整えておけば費用と期間が下がるか、見積もりを取るときに何を確認すべきかを、実務の順番に沿って整理します。なお、本記事は特定の事業者を推奨・比較するものではなく、依頼先を自分で選ぶための観点を提供するものです。費用はいずれも一般的に語られる目安であり、実際の金額は個別の見積もりでご確認ください。

企業価値評価の依頼先には、どんなタイプがある?

依頼先を整理するときに大切なのは、「誰が計算するか」ではなく「その成果物が、誰に対して、どこまでの説明力を持つか」という視点です。同じDCF法で同じ数字を出しても、社内の検討メモとして使うのか、税務署や裁判所、あるいは交渉相手に示すのかで、求められる独立性と手続きの厚みはまったく変わります。まず、代表的な6つのタイプを俯瞰しましょう。

①顧問税理士

日ごろ決算や申告を見てもらっている税理士に相談するルートです。自社の財務内容を最もよく知っている相手なので、決算書の説明や勘定科目の背景を一から説明する必要がなく、話が早いのが最大の利点です。相続・贈与・自己株式の取得といった税務上の株価が論点になる場面では、第一に相談すべき相手といえます。一方で、M&Aの取引価格を求める評価は税務上の評価とは目的も手法も異なるため、事務所によって対応の幅に差があります。M&A案件の経験があるか、DCF法や類似会社比較法に対応できるかは、事前に確認しておきたいところです。税理士に相談できる範囲と限界は株価算定と税理士の役割で詳しく整理しています。

②公認会計士・監査法人系のアドバイザリー

会計・監査の専門性をベースに、株価算定や財務デューデリジェンスを手がける事務所・法人です。会計基準に沿った処理が求められる場面、たとえば取得原価の配分(PPA)や減損テストに使う評価、組織再編に伴う評価などで力を発揮します。手続きが体系立っており、報告書の記載も厚くなる傾向があるため、監査対応や外部への説明を前提とする場面で選ばれます。反面、手続きが厚いぶん費用と期間はかかりやすく、「まず目安を知りたい」という初期段階の相談には重すぎることがあります。

③M&A仲介・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)

M&Aの実行支援とセットで価値の目線を出してくれる相手です。実際に成立した案件の相場観を持っているため、「この業種・この規模なら、買い手はこのくらいで見る」というマーケットの温度感を反映した評価が期待できます。交渉のなかで価格をどう作っていくかまで踏み込んだ助言が得られるのも強みです。ただし、仲介は売り手・買い手の双方から関与する立場、FAは片側につく立場と、そもそも立ち位置が異なります。仲介の場合は成約が報酬に結びつく構造上、算定結果が「独立した第三者の意見」として扱われにくい場面がある点は理解しておくべきです。立場の違いはM&A仲介とFAの違いにまとめています。

④独立系の評価専門機関

企業価値評価そのものを主業務とする機関です。取引の当事者から独立した立場で算定を行い、必要に応じて意見書(フェアネス・オピニオン等)まで提供できる点が最大の特徴です。反対株主の株式買取請求、非上場株式の売買価格をめぐる争い、上場会社の開示を伴う取引など、第三者性そのものが成果物の価値になる場面で選ばれます。そのぶん手続きの厚みと費用は最も大きくなりやすく、初期検討で使う選択肢ではありません。

⑤オンラインのレポートサービス

財務データや事業計画を所定の形式で入力すると、複数の手法で株式価値のレンジを算定し、前提条件つきのPDFレポートを出力するサービスです。算定ロジックは第三者が設計したものを使うため、自分でExcelを組むより再現性が高く、費用と納期は圧倒的に軽くなります。初期検討、社内の目線合わせ、複数候補の絞り込みといった用途に向きます。一方、入力する数値や前提を置くのは利用者自身であり、独立した第三者が対象会社を検証したうえで出す意見ではありません。税務申告や裁判、開示のように独立性が求められる用途には使えない、という線引きを理解して使うことが前提です。サービスの見極め方は株価算定ツール・サービスの選び方を参考にしてください。

⑥自社で算定する

経理・経営企画の担当者がExcelで試算するパターンです。費用はかからず、前提を自由に動かせるため、感度を確かめながら考えを整理するには向いています。一方、割引率や類似会社の倍率といった市場データを自前で集める手間、計算式や参照範囲のミスに気づきにくいリスク、社外に出せる体裁に整えるまでの時間といった、見えにくいコストがあります。何より、自社が作った数字は交渉相手や第三者に対する説明力が弱い点が本質的な限界です。

依頼先を6つの切り口で比較すると?

6つのタイプを、得意な目的・第三者性・費用の目安・期間の目安・成果物・限界の順に並べたのが次の表です。費用と期間は、対象会社の規模や資料の整備状況によって大きく振れるため、あくまで一般に語られるレンジとしてご覧ください。

依頼先得意な目的第三者性費用の目安
①顧問税理士税務上の株価、相続・贈与、自己株式の取得、日常的な相談顧問という関係があるため、完全な独立性は前提としにくい税務評価は顧問業務の延長で対応されることもあり、案件により幅が大きい
②会計士・監査法人系アドバイザリー会計目的の評価(PPA・減損)、組織再編、監査対応を伴う場面高い(取引当事者から独立した立場で受託する)一般に数十万円程度〜。手続きの厚みに応じて上振れしやすい
③M&A仲介・FAM&Aの価格交渉、買い手の目線の把握、案件全体の設計仲介は双方関与のため限定的。FAは片側の助言者という立場算定単体ではなく、着手金・中間金・成功報酬に含まれる形が多い
④独立系の評価専門機関係争・買取請求・開示・第三者意見が必要な場面最も高い(独立性を担保する手続きを備える)一般に数十万円程度〜。意見書を伴う場合はさらに上がる傾向
⑤オンラインのレポートサービス初期検討、社内の目線合わせ、候補の絞り込み算定ロジックは第三者。ただし前提は利用者が置く数千円程度〜のものが多い
⑥自社で算定考え方の理解、前提を動かした感度の確認低い(自社の試算という位置づけ)直接費用は0円(担当者の作業時間はかかる)
依頼先期間の目安主な成果物限界・注意点
①顧問税理士数日〜数週間(税務評価は比較的短いことが多い)評価計算書、税務上の株価の試算M&Aの取引価格の評価は事務所ごとに経験差がある。税務評価と取引価格は別物
②会計士・監査法人系アドバイザリーおおむね数週間〜1か月以上算定報告書(前提・手法・検証過程の記載が厚い)初期検討には重い。着手前の資料整備や質疑の往復に時間がかかる
③M&A仲介・FA案件の進行に合わせて随時価格の目線メモ、企業概要書に載せる価値レンジ報酬構造との関係で、独立した第三者の意見としては扱われにくい場面がある
④独立系の評価専門機関おおむね数週間〜1か月以上株価算定書、必要に応じて意見書費用・期間ともに最も重い。目的が明確でないと過剰投資になる
⑤オンラインのレポートサービス資料が揃っていれば当日〜数日PDFレポート(手法・前提・レンジを記載)第三者算定機関の意見書は提供されない。税務・裁判・開示には使えない
⑥自社で算定スキル次第で数時間〜数日Excelの試算表、社内資料市場データの収集が負担。計算ミスに気づきにくく、対外的な説明力が弱い
費用・期間はいずれも一般的に語られる目安であり、対象会社の規模、評価の目的、採用する手法の数、資料の整備状況によって大きく変わります。金額を確定させるには、複数の依頼先から見積もりを取り、業務範囲と前提を揃えて比べる必要があります。相場観の内訳は株価算定の費用相場で整理しています。

表を見比べると、依頼先の違いは「第三者性の高さ」と「費用・期間の重さ」がほぼ比例していることが分かります。裏を返せば、第三者性を必要としない場面で重い依頼先を選ぶと、そのぶんの費用と時間がそのまま無駄になります。だからこそ、依頼先を選ぶ前に「この評価は誰に見せるものか」をはっきりさせることが先決なのです。

目的別に、どこへ依頼すればよい?

ここからは、実務でよくある6つの目的ごとに、どの依頼先が噛み合いやすいかを整理します。自分の状況に近いものを探してみてください。どの場面でどの水準の資料が求められるかは株価算定書が必要になる場面で場面別に詳しく解説しています。

社内検討・目線合わせをしたいとき

「そもそも自社はいくらくらいなのか」を経営陣で共有したい、事業売却を選択肢として検討し始めた、という段階です。この時点で必要なのは一点の価格ではなく、桁とレンジの感覚です。オンラインのレポートサービスや自社での試算で十分に足ります。むしろ、この段階で数十万円をかけて算定書を作ると、その後の検討で前提が変わったときに作り直しが必要になり、費用が二重にかかりかねません。まずは年買法 計算機DCF法 計算機のような無料の計算機でおおよその桁をつかみ、そのうえで根拠つきのレポートに進むのが無駄のない順番です。

M&Aの交渉に臨むとき

買い手候補から打診を受けた、あるいは自ら売却を進める段階です。ここでは、仲介・FAが持つマーケットの相場観と、自分の手元にある独立した試算の両方を持っておくのが実務的です。仲介・FAから提示された価格の目線が妥当かどうかを検証するには、比較対象となる自前の数字が要ります。提示価格の検証方法は買収価格の妥当性の検証に、別の見方を取りにいく考え方はM&A価格のセカンドオピニオンにまとめました。最終合意の直前で第三者の意見が必要になった場合は、独立系の評価専門機関を検討します。

税務・相続の場面

相続・贈与、親族間の株式移転、自己株式の取得などでは、税務上の株価の考え方が適用され、M&Aで使う時価とは評価の枠組み自体が異なります。この領域は税務の専門領域であり、顧問税理士に相談するのが基本です。オンラインのレポートや自社の試算をそのまま申告に使うことはできません。税務上の評価と取引価格の関係は非上場株式の評価方法で、事業承継の場面での考え方は事業承継の株価算定で整理しています。

裁判・紛争になっているとき

株式買取請求、少数株主との争い、株式の売買価格をめぐる訴訟などでは、独立性と手続きの適正さが厳しく問われます。独立系の評価専門機関に依頼し、前提・手法・検証過程が詳細に記載された算定書を用意するのが一般的です。この場面で費用を抑えようとすると、その資料自体の証拠価値が問われることになりかねません。個別の対応方針については、弁護士とあわせて相談することをおすすめします。

会計上の減損・PPAへの対応

子会社株式やのれんの減損テスト、企業結合における取得原価の配分(PPA)といった会計目的の評価は、会計基準に沿った処理と監査対応が前提になります。会計士・監査法人系のアドバイザリー、または会計目的の評価に対応する評価専門機関が適任です。監査人とのやり取りが発生することが多いため、着手前に監査人が何を求めているかを確認しておくと、手戻りを減らせます。

社内の稟議を通したいとき

取締役会や経営会議に諮る資料として、価格の根拠を添えたいという場面です。求められるのは、採用した手法と前提が明示され、第三者のロジックで計算されていることが分かる資料であって、必ずしも意見書ではありません。オンラインのレポートで足りることが多く、重要な意思決定に限って専門家の関与を検討する、という段階分けが合理的です。稟議で押さえるべき記載事項は稟議に使う株価算定書にまとめています。

費用はなぜこんなに幅があるのか?

同じ「株価算定」という言葉でも、見積もり金額が数倍違うことは珍しくありません。金額の差は依頼先のブランドではなく、実際にかかる作業量と負う責任の重さで決まります。主な変動要因は次の6つです。

変動要因費用が上がる方向費用が下がる方向
会社の規模・複雑さ子会社や関連会社が多い、複数事業を営む、海外拠点がある単一事業・単体決算で、事業構造がシンプル
採用する手法の数DCF・類似会社比較・純資産など複数手法を並べ、相互に検証する目的に応じて手法を絞る
事業計画の有無と精度計画がなく一から策定支援が必要、または計画の検証を深く行う既に作成済みで、前提の説明が整理されている
意見書の要否フェアネス・オピニオン等、独立した意見の表明を伴う算定書のみ、または社内資料としての試算
期日の厳しさ短納期での対応、特急対応を求める通常のスケジュールで進められる
資料の整備状況質疑の往復が多く、追加資料の作成が発生する必要書類が最初から揃っており、追加確認が少ない

この6つのうち、依頼する側が最もコントロールしやすいのが資料の整備状況期日です。手法の数や意見書の要否は目的で決まってしまいますし、会社の規模は変えられません。逆にいえば、資料を整えて余裕を持って依頼するだけで、見積もりの前提が良くなり、期間も短くなります。費用の内訳と相場観をもう少し細かく知りたい方は株価算定の費用相場をご覧ください。

見積もりが安いこと自体は問題ではありません。問題なのは、安い見積もりと高い見積もりで業務範囲が違うのに、金額だけを比べてしまうことです。採用手法の数、報告書の記載量、質疑への対応回数、修正対応の範囲が揃っていなければ、金額の比較には意味がありません。

依頼前に整えておく資料は?

依頼先が決まったら、次は資料です。評価の実務では、算定そのものより資料集めと質疑の往復に時間がかかるのが通例で、ここが整っているかどうかで期間も費用も変わります。以下は、多くの依頼先で共通して求められる資料です。各資料が評価のどこで使われるかは企業価値評価に必要なデータ・書類で詳しく解説しています。

  • 決算書(直近3期分):貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表。売上と利益の推移、純資産、収益力の水準を把握する土台になります。3期あることで、単年度の特殊要因を平準化して見られます。
  • 勘定科目内訳明細書:売掛金・貸付金・借入金・仮払金などの中身を確認するために使います。実態の把握では、貸借対照表の科目名だけでは分からない中身が論点になることが多く、実務上とても重要な資料です。
  • 直近の試算表(月次):評価基準日が期中にある場合や、直近の業績動向を反映したい場合に必要です。決算後の変化を説明する材料にもなります。
  • 事業計画(3〜5年程度):DCF法を採用する場合の中核資料です。売上・原価・販管費・設備投資・運転資本の見通しがあると精度が上がります。まだ作っていない場合でも、売上と利益の見通しだけ置いた簡易版から始められます。
  • 株主名簿:発行済株式数、自己株式の有無、株主の構成を確認します。1株あたりの価値を出す段階で必須で、名義株が疑われる場合は事前の整理が必要です(企業価値と株式価値の違いもあわせてご確認ください)。
  • 就業規則・主要な契約書:役員報酬の水準、退職金規程、主要取引先との契約条件、賃貸借契約など。収益力の正常化や、将来のコストの見積もりに影響します。
  • 不動産に関する資料:登記事項証明書、固定資産税評価証明書、必要に応じて不動産鑑定評価書。時価純資産法を使う場合に、簿価と時価の差を把握するために使います。
  • 有利子負債の一覧:金融機関別の借入残高と返済予定、リース債務、社債、役員からの借入。企業価値から株式価値を求める際に差し引く対象で、計上漏れは評価額のずれに直結します。
  • 簿外債務の有無に関する情報:未払残業代、退職給付債務、係争案件、債務保証、リース料の未払いなど。帳簿に載っていない負担は、後の交渉で価格の減額要因になりやすいため、早い段階で把握しておくべき項目です。

これらが揃っていると、依頼先は初回のヒアリングで論点をつかめるため、見積もりの前提が明確になり、質疑の往復も減ります。結果として費用の見積もりが下振れしやすく、納期も短くなるのが実務の実感です。逆に、資料が断片的なまま依頼すると、着手前の整理に時間を取られ、追加費用の相談につながることもあります。

資料をすべて完璧に揃えてから動く必要はありません。特に事業計画は、精緻な計画の完成を待つと数か月かかってしまうことがあります。売上と利益の大まかな見通しだけでも置いて先に試算を回し、計画が固まった段階で更新するほうが、意思決定は前に進みます。

見積もりを取るとき、何を確認すればよい?

複数の依頼先から見積もりを取るときは、金額だけでなく業務範囲を揃えて比べる必要があります。次の8点を同じ質問として投げると、見積書の数字を横並びで比較できるようになります。

確認事項なぜ確認するのか聞き方の例
採用する手法手法の数と組み合わせで作業量が変わり、結果のレンジも変わるどの手法を、どういう理由で採用する想定ですか
評価基準日いつ時点の価値かで、使う決算数値も市場データも変わる評価基準日はいつに設定し、どの決算期の数値を使いますか
前提条件の記載前提が書かれていない報告書は、後から検証も説明もできない割引率や倍率の根拠、前提条件は報告書に明記されますか
感応度分析の有無一点の数字より、前提が動いたときの振れ幅が交渉で効く主要な前提を動かした場合の感応度は示されますか
成果物の形式と部数PDFのみか製本版もあるか、電子データの提供可否で使い勝手が変わる納品形式は何で、追加の部数が必要な場合の扱いはどうなりますか
修正対応の範囲前提変更や追加質問への対応が別料金かどうかで総額が変わる納品後の修正や質疑への対応は、何回まで報酬に含まれますか
秘密保持決算書や事業計画といった機微情報を渡すことになる秘密保持契約は締結できますか。情報の保管・廃棄はどうなりますか
利益相反の有無取引の相手方と関係がある場合、第三者性が損なわれる相手方や関係者との取引・顧問関係はありませんか

特に見落とされやすいのが修正対応の範囲利益相反の有無です。前者は、事業計画の見直しや基準日の変更が起きたときに追加費用が発生するかどうかに直結します。後者は、成果物の説明力そのものに関わります。第三者性を目的として依頼するのであれば、依頼先が取引の相手方と何らかの関係を持っていないかは、必ず書面で確認しておくべき事項です。

また、納品された算定書やレポートは、受け取って終わりではありません。基準日と決算期が対応しているか、財務数値が決算書と一致しているか、企業価値と株式価値の調整が正しいか、といった点は依頼した側でも確認できます。読み方のポイントは評価レポートのサンプルと見方にまとめています。

依頼せずに済ませてよいのは、どんな場面?

すべての場面で外部への依頼が必要なわけではありません。むしろ、次の3つの場面では、依頼しないほうが合理的なことが多くあります。

初期検討の段階

「売却も選択肢として考え始めた」「後継者がいないので出口を検討したい」という段階では、必要なのは方向性を決めるための桁とレンジです。この時点では前提そのものが動きますから、精緻な算定書を作っても、検討が進むうちに作り直しになります。無料の計算機や低額のレポートで当たりを付け、方向性が定まってから専門家に相談するほうが、費用対効果は高くなります。

社内の目線合わせ

経営陣や株主のあいだで価値の認識がバラバラなまま議論を進めると、話が噛み合いません。「うちは3億円は下らない」「いや1億円がいいところだ」といった感覚のズレを埋めるには、第三者のロジックで計算した数字を一度テーブルに載せるのが有効です。この用途では、手法と前提が明示されたレポートがあれば十分で、意見書までは要りません。

複数候補の絞り込み

買収を検討していて候補が複数ある場合や、複数の事業のうちどれを売却するか決めたい場合、すべてについて正式な算定書を取るのは現実的ではありません。まず同じ手法・同じ前提でスクリーニングし、絞り込んだ対象についてだけ本格的な評価に進む、という二段構えが定石です。

これらの場面では、無料の試算ツールやオンラインのレポートサービスが実用的な選択肢になります。簡易な位置づけのレポートと、より詳しい前提や感応度まで含むレポートのどちらを選ぶべきかは簡易版と詳細版レポートの選び方で比較しています。急ぎで手元に資料が必要な場合の段取りは企業価値評価レポートを即日で用意する方法にまとめました。

「依頼しない」という判断は、「依頼が要らない」という意味ではありません。今はまだそのタイミングではないというだけです。案件が具体化し、相手方や当局に対して説明責任が生じた段階で、あらためて適切な依頼先を選べばよいのです。むしろ、事前に自社の数字を整理しておけば、そのときの依頼はスムーズに、そして安く済みます。

よくある質問(FAQ)

Q. 顧問税理士に企業価値評価を頼めますか?

A. 相続・贈与・自己株式の取得などの税務上の株価であれば、顧問税理士に相談するのが基本です。自社の財務内容を把握しているぶん、話が早く進みます。一方、M&Aの取引価格を求める評価は、税務上の評価とは目的も手法も異なります。DCF法や類似会社比較法を用いた評価の経験があるか、M&A案件の対応実績があるかは、事務所によって差があるため事前に確認するとよいでしょう。税理士に依頼できる範囲は株価算定と税理士の役割で整理しています。

Q. 企業価値評価を依頼すると、いくらくらいかかりますか?

A. 外部の専門家に正式な算定を依頼する場合、一般に数十万円程度からがひとつのレンジとして語られます。対象会社の規模、採用する手法の数、事業計画の検証の深さ、意見書の要否によっては、それ以上になることもあります。オンラインのレポートサービスであれば数千円程度からのものが多く、目的に応じて選択肢の幅は広いといえます。いずれも目安であり、実際の金額は業務範囲を揃えたうえで見積もりを取って比較してください。内訳は株価算定の費用相場にまとめています。

Q. 依頼してから、どのくらいで結果が出ますか?

A. 外部の専門家に依頼する場合、初回相談から最終報告書の受領まで、一般に数週間から1か月以上を見込むのが目安です。内訳としては、見積もり・契約に数日から1週間程度、資料提出と質疑に1〜2週間程度、算定とドラフト作成に1〜2週間程度、最終化に数日から1週間程度、というイメージです。資料が揃っていて論点が少なければ短くなりますし、事業計画から作る場合や質疑が長引く場合は延びます。オンラインのレポートサービスであれば、資料が揃っていれば当日中に手元に用意できる場合もあります。

Q. 株価算定書とオンラインのレポートは何が違いますか?

A. 最も大きな違いは第三者性と検証の範囲です。専門家が作成する株価算定書は、依頼先が対象会社の情報を検証し、独立した立場で結論を示すもので、外部への説明責任を伴う場面で使われます。オンラインのレポートは、算定ロジックそのものは第三者が設計していますが、入力する数値や置く前提は利用者自身の責任です。したがって、社内検討や目線合わせには十分機能する一方、税務申告・裁判・開示など独立した意見が求められる用途には使えません。当サービスも第三者算定機関としての意見書の提供は行っておりません。

Q. すでに提示された評価について、セカンドオピニオンは取れますか?

A. 取ることは可能で、実務でも行われています。仲介会社やアドバイザーから示された価格の目線に納得できない場合、別の視点から検証してみることには意味があります。ただし、セカンドオピニオンで大切なのは「別の人に頼む」ことよりも、前提と手法を揃えて差の原因を突き止めることです。金額が違って見えても、基準日が違う、非事業用資産の扱いが違う、といった前提の差が原因であることが少なくありません。考え方はM&A価格のセカンドオピニオンで解説しています。

Q. 自社で算定すると、何が足りませんか?

A. 主に3つです。第1に、割引率や類似会社の倍率といった市場データを自前で集める必要があり、出所の説明が求められると答えに窮しがちです。第2に、計算式や参照範囲のミス、単位や符号の取り違えといった誤りに、自分では気づきにくい構造があります。第3に、そして最も本質的な点として、自社が作った数字は交渉相手や第三者に対する説明力が弱いことです。逆にいえば、自社で試算すること自体は、前提を動かして感度を確かめるうえで有効です。まずは自社で当たりを付け、対外的な説明が必要な場面で外部の力を借りる、という組み合わせが現実的です。

まとめ:目的から逆算して依頼先を選ぶ

企業価値評価の依頼先は、顧問税理士、会計士・監査法人系のアドバイザリー、M&A仲介・FA、独立系の評価専門機関、オンラインのレポートサービス、自社での算定という6つに大別できます。それぞれ得意な目的も第三者性も費用も違い、第三者性が高いほど費用と期間は重くなるという関係があります。だからこそ、依頼先を探し始める前に「この評価は誰に見せるものか」を決めることが、最も費用対効果を左右する判断になります。

進め方としては、社内検討や目線合わせの段階はオンラインのレポートや自社試算で軽く済ませ、M&Aの交渉では仲介・FAの相場観と自前の試算を突き合わせ、税務は税理士、係争や開示は独立系の評価専門機関、会計目的は会計士系のアドバイザリー、という切り分けが基本形です。そのうえで、決算書3期分・勘定科目内訳明細書・試算表・事業計画・株主名簿・主要契約・不動産資料・有利子負債の一覧・簿外債務の情報を事前に整えておけば、見積もりの前提が良くなり、費用も期間も抑えやすくなります。見積もりを取るときは、採用手法・基準日・前提条件の記載・感応度・成果物の形式と部数・修正対応の範囲・秘密保持・利益相反の8点を揃えて比較してください。

「M&Aバリュークラウド」は、オンラインで完結する企業価値評価レポートのサービスです。財務データと事業計画を入力すると、複数の手法で株式価値のレンジを算定し、前提条件を明記したPDFレポートを作成できます。簡易版は2,200円(税込)、詳細版は5,500円(税込)で、登録と試算は無料です。なお、当サービスは第三者算定機関としての意見書は提供しておりません。税務申告・裁判・開示など独立した第三者の意見が必要な場面では、目的に応じた専門家へご相談ください。詳細版の完成イメージは詳細版レポートのサンプルで確認できます。まずは自社の目安をつかみたい方は、無料で登録して試算するところから始めてみてください。

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