M&Aマッチングサイトの選び方|手数料・匿名性・サポート範囲で比べる

最終更新: 2026-09-12

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インターネット上で売り手と買い手が直接出会えるM&Aマッチングサイト(プラットフォーム)は、ここ数年で数を増やしました。とくに譲渡価額が数百万〜数千万円のスモールM&Aでは、費用を抑えながら幅広い相手に届く手段として定着しています。一方で、サービスごとに料金体系も情報の扱いも支援の厚みもかなり違い、「どれがいいのか」を外から比べるのは簡単ではありません。

本稿では、特定のサービス名を挙げずに、比較するための軸だけを整理します。マッチングサイトと仲介の違い、選ぶときに確認したい観点、売り手・買い手それぞれが気をつけること、仲介や公的窓口との併用の考え方、そして成約したときに手元にいくら残るのかの試算例までを順に見ていきます。掲載してから慌てないために、登録前に一度目を通しておく内容として書いています。

本稿の料率・金額・期間はいずれも一般的な目安であり、特定のサービスの条件を示すものではありません。実際の条件は各サービスの利用規約・料金表で必ずご確認ください。個別の判断は契約前に専門家へご相談ください。

マッチングサイトとは何か:仲介との違いを先に押さえる

マッチングサイトは、ひとことで言えば「出会いの場」を提供するサービスです。売り手が匿名の事業概要を掲載し、興味を持った買い手が問い合わせる。そこから先の交渉・資料開示・条件のすり合わせ・契約は、原則として当事者同士で進めます。これに対して仲介会社は、相手探しから交渉の調整、資料の整備、契約実務まで人が伴走します。

この違いは、そのまま費用と手間・リスクのトレードオフになります。自分で進める分だけ費用は軽く済みますが、判断の責任も自分で負うことになります。整理すると次のとおりです。

観点マッチングサイトM&A仲介
基本の役割案件情報の掲載と、売り手・買い手の引き合わせ相手探しから交渉・契約までの伴走
費用感登録・掲載は無料のことが多く、成約時のみ課金する設計が中心着手金・中間金・成功報酬の組み合わせ。最低報酬が設定されることが多い
交渉の主体当事者同士。日程調整や条件提示も自分で行うのが基本担当者が間に立ち、条件の調整や言いにくい話の橋渡しをする
資料の準備概要資料も決算データの整理も原則として自力企業概要書(IM)などの作成を支援してもらえることが多い
相手の見極め自分で判断する。プロフィールや面談で確かめる必要がある担当者が一定のスクリーニングをかけたうえで打診する
向いているケース小規模で費用を抑えたい。自分で動ける時間と体力がある規模が大きい、論点が多い、社内外の調整に手が回らない
苦手なこと冷やかしの選別、情報管理、価格の妥当性判断が自己責任になる小規模案件では最低報酬が相対的に重くなりやすい

なお、最近は境界があいまいになっています。サイト運営者がアドバイザーを紹介する仕組みを持っていたり、逆に仲介会社が自社のプラットフォームを併設していたりするためです。「サイトか仲介か」ではなく、どこまで自分でやり、どこから人に頼むかで考えるほうが実態に合います。仲介とFAの立場の違いはM&A仲介とFAの違い、仲介会社を選ぶ場合の観点はM&A仲介会社の選び方で解説しています。

選ぶときに見る10の観点

サービスを比較するときは、トップページの見栄えや掲載件数の大きさではなく、次の10点を利用規約・料金ページ・FAQまで下りて確認してください。ここが曖昧なまま登録すると、あとで「聞いていない費用」「思っていたより出てしまった情報」といった問題が起きます。

観点確認すること見落としやすい点
登録・掲載の費用登録料、月額、掲載料の有無。無料プランと有料プランの機能差無料で掲載できても、買い手への一斉打診や上位表示が有料オプションのことがある
成約時手数料の負担者売り手・買い手のどちらが払うか。両方から取る設計か「売り手無料」でも、譲渡側が別の名目(アドバイザリー費用など)を負担する形がある
手数料の料率と最低額成約価額に対する料率、最低手数料の金額、算定の基準額料率より最低額が効く。基準が株式価値か、負債を含む事業価値かで金額が変わる
匿名性の担保掲載時に何が公開され、誰まで見えるか。会社名が特定されない設計か業種・地域・売上・従業員数の組み合わせだけで特定されることがある
買い手の審査登録時の本人確認・法人確認、資金力の確認、規約違反者の排除審査の有無より「何を確認しているか」。名前だけの審査は実質ノーチェック
NDAの仕組み詳細情報の開示前に秘密保持契約を結ぶ導線があるか。書式が用意されているかサイト規約上の秘密保持だけで、当事者間のNDAは別途必要なことがある
サポート範囲専門家の紹介、面談の同席、契約書の雛形、進行チェックリストの提供「サポートあり」の中身。紹介のみか、実際に伴走するかで負担が違う
案件数と偏り自社と同じ規模・業種・地域の案件がどれだけあるか総件数ではなく、自分に近いセグメントの厚み。古い案件が残っていないか
成約実績の開示成約件数や成約までの期間が公開されているか。集計の定義「登録者数◯万人」は成約とは無関係。掲載数と成約数を混ぜて見せる表現に注意
退会・解約条件掲載の取り下げ方法、退会後の情報の扱い、直接交渉禁止条項の期間退会後も一定期間は、サイトで知り合った相手との成約に手数料が発生する規定がある

費用は「料率」より「誰がいくら払うか」と「最低額」を見る

マッチングサイトの料金は、成約時に一定の料率をかける設計が中心です。よく見かけるのは、売り手は無料で買い手のみが数%を負担する形、双方が数%ずつ負担する形、定額を課す形などです。ここで効いてくるのが最低手数料です。譲渡価額が小さいほど、料率で計算した金額より最低額のほうが大きくなり、実質的な負担率が跳ね上がります。例えば料率3%・最低額50万円なら、成約1,000万円では30万円ではなく50万円(5%相当)になります。

もう一つ確認したいのが算定の基準額です。株式の譲渡代金だけを基準にするのか、役員借入金の返済や有利子負債まで含めた金額を基準にするのかで、同じ料率でも支払額が変わります。仲介の世界では基準額の取り方が報酬を大きく左右しますが、これはプラットフォームでも同じです。料率の一般的な水準や算定基準の考え方はM&A仲介手数料の相場にまとめています。

匿名性は「規約」ではなく「掲載文」で決まる

どのサービスも匿名掲載を前提にしていますが、実際に特定されるかどうかを決めるのは、規約ではなく自分が書いた掲載文です。「北関東・従業員12名・年商1.8億円・創業30年の金属加工」と書けば、業界の人にはかなり絞り込めてしまいます。サービス側の仕組みとしては、閲覧できる範囲の制御(登録者のみ/NDA締結後のみ)、特定の企業からの閲覧をブロックする機能、担当者による掲載文のチェックといった点を確認しておくと安心です。匿名概要の考え方はノンネームシートとIM、書き方の実務はノンネームシートの作り方で解説しています。

買い手審査は「何を確認しているか」で読む

買い手側の登録が容易であるほど案件は集まりやすい一方、検討の本気度が低い問い合わせも増えます。審査の有無だけでなく、本人確認書類の提出、法人の登記情報の確認、資金の裏付け(自己資金額や融資の見通し)の申告、過去の違反者の排除といった具体的な中身を確認してください。あわせて、通報・ブロックの仕組みがあるかも実務上は重要です。

案件数は総数ではなくセグメントで見る

掲載件数が多くても、自社と同じ規模・業種・地域の案件がなければマッチングは起きません。売り手なら「自分と似た会社にどれだけ問い合わせが付いていそうか」、買い手なら「自分の予算帯に案件がどれだけあるか」を、実際に検索して確かめるのが一番確実です。掲載日が数年前のまま残っている案件が多いサイトは、成約に至っていないか、掲載の整理が行われていない可能性があります。

退会条件と直接交渉の禁止規定は登録前に読む

見落とされがちなのが、退会後の取り扱いです。多くのサービスでは「サイトを通じて知り合った相手と、サイト外で成約した場合も手数料が発生する」旨の規定があり、退会後一定期間(1〜2年程度が一つの目安)まで効力が続くこともあります。これは運営側から見れば当然の防衛策ですが、複数のルートを併用する売り手にとっては、同じ相手が別ルートからも来たときに整理が必要になります。掲載の取り下げ方法と、掲載情報が検索結果やキャッシュからいつ消えるかもあわせて確認してください。

売り手が気をつけること

ノンネーム情報は「引き算」で書く

掲載文は、買い手の関心を引きたい気持ちから具体的に書きすぎてしまいがちです。しかし匿名性は、書いた情報の組み合わせで簡単に破れます。次のような書き方は避けたほうが無難です。

  • 地域を市区町村まで書く:「◯◯県南部」程度にとどめる
  • 取引先の実名や、実名が推測できる表現:「大手自動車メーカー1次下請」なども地域と組み合わせると絞り込まれる
  • 創業年・許認可番号・受賞歴:単独でも検索で特定されうる
  • 売上・従業員数を1桁まで正確に書く:「年商1〜2億円」「10名前後」といったレンジ表記にする
  • 自社サイトの文章をそのまま流用する:一文検索で会社名が出てしまう

買い手が知りたいのは、業種の大枠、規模のレンジ、収益が出ているか、譲渡理由、引継ぎの可否といった判断材料です。特定につながる固有名詞を削っても、これらが伝われば問い合わせは来ます。「削れるだけ削って、判断に必要な骨格だけ残す」という引き算の発想で書いてください。

開示は段階を踏み、順序を崩さない

情報は一度出すと取り戻せません。段階を決めて、前の段階が終わるまで次に進まないのが原則です。一般的な順序は次のとおりです。

段階開示する内容前提条件
① 掲載(ノンネーム)業種の大枠、地域ブロック、規模レンジ、譲渡理由、希望条件の概要会社が特定されない表現になっているか自分で検証する
② 一次質疑事業内容の補足、収益構造の概要、譲渡スキームの希望相手の属性(法人/個人)と検討目的を聞く
③ NDA締結詳細を出す前に必ず締結。目的外利用の禁止と有効期間を確認
④ 詳細開示決算書3期分、試算表、事業の詳細、主要契約の概要NDA締結済みであること。従業員名や顧客名は伏せる
⑤ トップ面談・意向表明現地確認、経営者同士の面談、条件の書面提示価格と条件の大枠が書面で示されてから深い開示に進む
⑥ 基本合意・DD詳細資料、従業員・顧客情報(必要な範囲で)独占交渉期間や費用負担の取り決めを書面化する

③のNDAを飛ばさないことが最大のポイントです。サイトの規約に秘密保持の条項があっても、それは運営者と利用者の間の取り決めであって、相手方との間の契約とは限りません。詳細を出す前に、当事者間で締結してください。締結時に見るべき条項はNDA(秘密保持契約)とはで解説しています。全体の進行はM&Aによる会社売却の流れもあわせてご覧ください。

冷やかし・情報収集目的の問い合わせを選別する

マッチングサイトは間口が広いぶん、成約意思の薄い問い合わせも混じります。次のような相手は、詳細開示の前に見極めておきたいところです。

  • 同業からの情報収集:顧客構成や単価だけを執拗に聞き、価格の話に進まない
  • 資金の裏付けがない:予算を聞いても答えず、「融資が付けば」以上の説明がない
  • 転売目的をうかがわせる:事業の中身より、すぐ売れるかどうかに関心が集中している
  • 意思決定者が出てこない:面談を重ねても決裁者と会えない
  • NDAの締結を渋る:署名を避ける、条項を大幅に削ろうとする

選別のコツは、こちらから先に質問することです。検討の目的、想定予算のレンジ、資金の調達方法、意思決定の体制とスケジュール、過去のM&A経験。この5点を最初の面談で聞くだけで、相手の本気度はかなり見えます。買い手候補の探し方と見極め方の全体像はM&Aの買い手の探し方にまとめています。

直接交渉には、進めやすさと同じだけリスクがある

当事者同士で直接話せることはマッチングサイトの利点ですが、間に人が入らない分、次のような場面で不利になりやすくなります。価格を口頭で先に言ってしまい後から下げられない、値下げ要求に感情的に反応して破談になる、合意した内容が書面に残っておらず認識がずれる、といったケースです。対策はシンプルで、重要な合意は必ず書面かメールで残すこと、その場で即答しないことの2つです。最終契約に落とすべき項目は株式譲渡契約の要点で確認できます。

価格の根拠は自分で持っておく

仲介を使わない場合、価格の目線を示してくれる人がいません。買い手から提示された金額が妥当かどうかを判断できないまま交渉に入ると、根拠のない値下げに押し切られたり、逆に高すぎる希望額を出して問い合わせが来なかったりします。掲載の前に、少なくとも次の3つは自分の言葉で説明できる状態にしておいてください。

  • 実態の利益はいくらか:役員報酬、オーナー個人の経費、一時的な損益を調整した後の営業利益
  • 純資産はいくらか:含み損益を反映した時価ベースの純資産
  • 希望額の算定根拠:どの手法で、どの前提を置いて、いくらになるのか

小規模案件では年買法(時価純資産+実態営業利益の数年分)が交渉のたたき台になることが多く、まずここで当たりを付けるのが現実的です。相場の全体感は会社売却の相場はいくらか、試算の進め方は会社売却シミュレーション、個人事業の場合は個人事業の売却相場を参考にしてください。

従業員・取引先への影響を先に考えておく

掲載情報から会社が特定され、従業員や取引先の耳に入ることは、実際に起こり得ます。万一伝わったときに誰にどう説明するかを、掲載前に決めておいてください。開示のタイミングと伝え方の設計は従業員への開示タイミングで扱っています。借入に経営者保証が付いている場合は、譲渡と同時に外せるかを金融機関と早めに詰める必要があります(M&Aと個人保証の解除)。

買い手(個人・法人)が気をつけること

掲載情報は「売り手の申告」であって、検証済みの数字ではない

掲載されている売上・利益・従業員数は、原則として売り手の自己申告です。運営者が決算書を精査しているとは限りません。数字の定義もばらつきます。「利益」が営業利益なのか経常利益なのか、役員報酬を差し引く前なのか後なのか、オーナーの生活費相当が含まれていないか。ここを確認しないまま利回りを計算すると、実態と大きくずれます。まずは決算書3期分と直近の試算表を出してもらい、掲載情報との整合を自分の目で突き合わせてください。

簡易であってもDDは必ず行う

小規模案件で数百万円の調査費用をかけるのは現実的ではありませんが、それは「やらない」理由にはなりません。費用に見合う範囲で、次の項目は必ず確認します。

  • 財務:決算書と試算表の突き合わせ、借入残高と返済条件、役員貸付・借入の実態、在庫や売掛の滞留
  • 労務:未払残業代の有無、社会保険の加入状況、就業規則と実態のずれ、キーパーソンの雇用形態
  • 契約:店舗・事務所の賃貸借(承継の可否、更新条件)、リース、主要取引先との基本契約にチェンジオブコントロール条項がないか
  • 訴訟・クレーム:進行中の紛争、行政指導の履歴
  • 資産:設備の状態と更新時期、不要資産の有無

調査の範囲と進め方はデューデリジェンスとはで詳しく解説しています。調査で読み切れないリスクが残る場合は、契約の表明保証や補償条項でカバーする、あるいは株式譲渡ではなく事業譲渡にして承継範囲を限定する、といった設計も検討してください。

資金は「買収代金+その後」で組む

自己資金と融資を合わせて買収代金ちょうどを用意する計画は、危険です。引継ぎ直後は、運転資金、想定外の修繕、売上の一時的な落ち込み、専門家費用、名義変更などの実費が重なります。買収代金と別に、少なくとも数ヶ月分の運転資金を確保しておく計画にしてください。融資を使う場合は、返済が始まる時期と、事業から出るキャッシュのタイミングがずれないかを月次で確認します。

許認可の承継可否は契約前に窓口で確認する

建設業、飲食業、運送業、宿泊業、産業廃棄物、医療・介護、古物商など、許認可が前提の業種では、承継できるかどうかが取引の成否そのものになります。株式譲渡なら会社は変わらないので原則そのまま残りますが、事業譲渡では取り直しが必要なものが多くあります。さらに、専任技術者や管理者といった人的要件を退任予定のオーナーが満たしていた場合、譲渡と同時に要件を欠くおそれがあります。所管窓口への確認は、契約前に済ませてください。

引継ぎ期間を条件として書面化する

小規模事業の価値は、オーナー個人の関係性やノウハウに紐づいていることが多いものです。「引継ぎは3ヶ月くらいで」という口約束では足りません。関与期間、週あたりの日数、その間の報酬、顧客紹介の範囲、競業避止の内容と期間まで、契約書に落とし込みます。ここを詰められない相手であれば、価格を下げるか、見送るという判断も選択肢です。

個人の買い手は「自分が回せる事業か」を基準にする

個人が買い手になる場合、価格の安さより引き継いだ後に回せるかどうかが判断の中心になります。自分の経験が生きる業種か、現場に立つ必要があるか、既存の従業員が残る見込みはあるか、営業をオーナーが一人で担っていないか。これらが厳しい事業は、価格が安くても引継ぎ後に苦しくなります。

併用の考え方:サイト・仲介・公的窓口を組み合わせる

相手探しのルートは一つに絞る必要はありません。それぞれ届く相手層が違うため、組み合わせたほうが接点は増えます。おおまかな役割分担は次のとおりです。

ルート届きやすい相手使いどころ
マッチングサイト個人・サーチャー・小規模法人・異業種からの参入費用を抑えたい。想定外の業種からの引き合いも受けてみたい
M&A仲介・FA同業の事業会社、一定規模の法人規模が大きい、論点が多い、交渉や書類作成を任せたい
公的な相談窓口同一地域の事業者、地域金融機関の取引先何から始めるか整理したい。地域内での引継ぎを重視したい
取引先・金融機関への相談既に関係がある相手事情を知っている相手に打診したい。ただし情報管理には最大限の注意が必要

公的支援の枠組みや、専門家費用の補助制度の概要はM&Aの公的支援で整理しています。

専任契約との関係に注意する

併用で最も注意が必要なのが、専任(独占)契約です。仲介会社と専任契約を結ぶと、契約期間中は他のルートで相手を探すことが制限され、マッチングサイトへの掲載も原則できなくなります。すでに掲載中の案件がある状態で専任契約を結ぶ場合や、逆に専任契約の期間中にサイトへ登録する場合は、次の点を確認してください。

  • 契約形態:専任か非専任(併用可)か。契約書の文言で確認する
  • 契約期間と中途解約:期間、自動更新の有無、解約時の費用
  • テール条項:契約終了後も、紹介を受けた相手と成約した場合に報酬が発生する期間
  • 紹介済み相手のリスト:どの相手が「紹介済み」に含まれるかを書面で特定しておく
  • サイト側の直接交渉禁止規定:サイト経由で知り合った相手を仲介に引き継ぐ場合の扱い

両方から手数料を請求される事態を避けるには、どの相手をどのルートで知ったかの記録を、日付付きで残しておくことが有効です。名刺、問い合わせ日時、初回接触の経緯をメモしておくだけで、後の整理がずいぶん楽になります。

費用のシミュレーション例:成約価格3,000万円のとき

費用の違いが手取りにどう効くかを、単純化した例で見てみます。株式譲渡で成約価額3,000万円、取得費(出資額)300万円のオーナー個人が売り手というケースです。手数料は譲渡費用として所得から控除できる前提で計算します。

以下は単純化した計算例です。実際の税額は取得費の把握状況、他の所得、控除の適用などで変わります。手数料の水準もサービスや契約によって異なります。最終的な判断は税理士にご確認ください。
項目ケースA:マッチングサイトケースB:仲介(最低報酬あり)
成約価額3,000万円3,000万円
仲介手数料・成約手数料料率3%と仮定 → 約90万円最低報酬500万円と仮定 → 500万円
取得費(出資額)300万円300万円
譲渡所得3,000 −300 −90 = 2,610万円3,000 −300 −500 = 2,200万円
税額(20.315%)約530万円約447万円
手取り(概算)約2,380万円約2,053万円

この例では、手数料の差410万円に対して、税負担の差(約83万円)が一部を打ち消し、手取りの差は約330万円になります。手数料は経費として所得を減らすため、額面の差がそのまま手取りの差にはならない、という点は押さえておいてください。

ただし、この比較は「同じ価格で成約した場合」の話です。仲介を使ったことで買い手候補が増え、結果として成約価額が上がるなら、手数料の差は十分に回収され得ます。逆に、自分で相手を見つけられる見込みがあるなら、費用の軽いルートを選ぶ合理性があります。費用の大小だけでなく、価格への影響とセットで考えるのが要点です。

仲介手数料の計算に使われるレーマン方式の金額はレーマン方式の計算ツールで、譲渡後の手取りは株式譲渡の手取り計算ツールで試算できます。掲載前におおよその手取りを把握しておくと、希望価格の設定に現実味が出ます。

よくある質問(FAQ)

Q. 「売り手無料」は本当に無料ですか?

A. 多くのサービスでは、売り手の登録・掲載・成約手数料まで無料という設計が実際に採られています。ただし、無料と書かれていても確認すべき点はあります。買い手への一斉打診や上位表示といったオプションが有料になっていないか、専門家の紹介を受けた場合にその専門家への報酬が別途発生しないか、成約時に「アドバイザリー費用」など別名目の費用が発生しないか、の3点です。また、サイト自体が無料でも、契約書のレビューや税務相談を専門家に依頼すれば当然その費用はかかります。総額で比べる意識を持ってください。

Q. 情報が漏れることはありませんか?

A. 「絶対に漏れない」と言えるサービスはありません。匿名掲載の仕組みがあっても、掲載文の書き方次第で特定されますし、詳細開示の後は相手方の管理に依存します。現実的な対策は、掲載文から固有名詞と一意に絞り込める情報を削ること、NDAを締結してから詳細を出すこと、従業員名や顧客名は最終段階まで伏せること、そして万一伝わった場合の説明を先に準備しておくことです。特定の取引先や同業に見られたくない場合は、閲覧をブロックできる機能があるかを登録前に確認してください。

Q. 仲介会社とマッチングサイトを両方使えますか?

A. 仲介会社と非専任で契約しているなら、多くの場合は併用できます。専任(独占)契約の場合は、契約期間中の他ルートでの探索が制限されるのが通常です。併用する際は、どの買い手候補をどのルートで知ったかを日付付きで記録し、二重に手数料が発生しないようにしてください。また、サイト側にも「サイト経由で知り合った相手とサイト外で成約した場合の手数料」に関する規定があるのが一般的なので、両方の契約条件を突き合わせて確認することをおすすめします。

Q. 個人の買い手は信用できますか?

A. 個人だから信用できない、法人だから安心、という単純な話ではありません。実際に個人が買い手となる成約は多数あり、事業を丁寧に引き継ぐ買い手も少なくありません。見るべきは属性ではなく、資金の裏付けと、その事業を回せる経験です。自己資金の額、融資の見通し(金融機関との相談状況)、対象業種での実務経験、引継ぎに割ける時間。この4点を面談で確認してください。逆に法人であっても、決裁者が出てこない、検討目的が曖昧といった相手は慎重に扱うべきです。

Q. 掲載してからどのくらいで反応がありますか?

A. 一概には言えませんが、業種・地域・規模・価格の設定によって大きく差が出ます。買い手の関心が高い業種で、価格が実勢に沿っていれば、掲載から数週間で複数の問い合わせが入ることもあります。一方、地域が限られる、設備投資が必要、赤字が続いているといった案件では、数ヶ月から半年以上かかることも珍しくありません。反応がない場合は、掲載文の情報量が不足していないか、希望価格が実勢から離れていないか、譲渡理由の説明が不足して不安を与えていないかを順に見直します。価格の目線は会社売却の相場で確認しておくと、見直しの判断がしやすくなります。

Q. 成約しなかった場合、費用はかかりますか?

A. 成約時のみ課金する設計のサービスであれば、成約に至らなければ手数料は発生しないのが一般的です。ただし、月額プランや掲載オプションを利用していた場合はその分の費用が発生しますし、途中で専門家に契約書レビューや調査を依頼していれば、その報酬は成約の有無にかかわらず必要になります。仲介の場合は着手金や中間金が返還されない契約もあるため、「どの費用がどの時点で確定するか」を契約前に一覧で整理しておくと安全です。

まとめ

M&Aマッチングサイトは、費用を抑えて幅広い相手に届く手段である一方、交渉・情報管理・相手の見極め・価格判断を自分で担うことになります。選ぶときは、掲載費用、成約手数料の負担者と料率・最低額、売り手無料の実質、匿名性の担保の仕組み、買い手の審査内容、NDAの導線、サポート範囲、自分と同じセグメントの案件数、成約実績の開示、そして退会・直接交渉禁止の条件、という10点を利用規約まで下りて確認してください。

売り手は、掲載文を引き算で書き、開示の順序を崩さず、NDAを締結してから詳細を出すこと。冷やかしはこちらから質問して選別し、重要な合意は必ず書面に残すこと。買い手は、掲載情報を鵜呑みにせず、簡易でも財務・労務・契約・許認可を確認し、買収代金とは別に運転資金を用意し、引継ぎ条件を契約に落とし込むこと。そして双方に共通するのが、価格の根拠を自分で持っておくことです。仲介や公的窓口との併用も可能ですが、専任契約とテール条項の確認だけは先に済ませてください。

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