飲食店・飲食業の売却相場|M&Aの価格の決まり方と、店舗・立地・スタッフの評価ポイント

最終更新: 2026-09-12

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飲食店・飲食業の売却を考えるとき、多くの経営者が最初に知りたいのは「自分の店(会社)はいくらで売れるのか」という点だと思います。ところが飲食業の売却相場は、「売上の何割」「坪単価いくら」といった一律の基準では決まりません。1店舗だけを居抜きで譲るのか、複数店舗を運営する会社ごと譲るのかで、そもそも価格の作られ方が変わるからです。さらに、立地と賃貸借契約の条件、営業許可の引き継ぎ、オーナーやシェフへの依存度、スタッフの定着といった、決算書に金額として表れない要素が価格を大きく左右します。

本稿では、飲食店・飲食業のM&Aにおける相場の考え方を、年買法・EV/EBITDA倍率法・営業権(のれん)という3つの見方の比較から整理し、1店舗の造作譲渡と会社ごとの株式譲渡の違い、価格を上げる要素と下げる要素、買い手が必ず確認する論点、決算に表れにくい利益を整える「正常収益力」の作り方までを順に解説します。相場は立地・収益力・時期・買い手の数で大きく変わるため、以下はあくまで考え方と目安として読み進めてください。

結論:飲食業の売却価格は「何を売るか」で決まり方が変わる

先に全体像をまとめます。飲食業の売却価格は、大きく次の3つの層の組み合わせで説明できます。

  • 資産の価値:厨房設備・内装造作・什器などの、そのまま使える設備の価値。1店舗の居抜き譲渡では、この部分が価格の中心になります。
  • 収益力の価値:オーナー報酬や私的経費を調整した「実態としての営業利益・EBITDA」が、どのくらい安定して出ているか。会社ごとの譲渡ではここが価格の土台になります。
  • 無形の価値(営業権):立地、常連客、業態やレシピ、ブランド、スタッフの体制など、買い手が「ゼロから作るより買ったほうが早い」と感じる部分です。

小規模な個店ほど資産の価値に寄り、規模が大きく仕組み化された会社ほど収益力の価値に寄る、というのが大まかな傾向です。無形の価値の考え方はのれん(営業権)とはで詳しく整理しています。会社売却全般の相場観は会社売却の相場はいくらかもあわせてご覧ください。

飲食業の相場の3つの見方(年買法・EV/EBITDA倍率・営業権)

実務では、次の3つの見方で目安を出し、そのレンジを交渉の出発点にします。どれか一つが正解ということではなく、規模と収益の安定度に応じて、重心となる手法が変わると考えるのが実態に近いです。

見方計算の考え方向いているケース目安(一般論)
年買法時価純資産+実態の営業利益×年数1〜数店舗規模で、利益は出ているが将来計画の裏付けが乏しいケース営業利益の2〜5年分程度を加算するレンジで議論されることが多い
EV/EBITDA倍率法EBITDA×倍率=事業価値(EV)。ここから純有利子負債を調整して株式価値へ複数店舗を安定運営し、店舗ごとの損益が管理されているケース小規模な飲食業では一般に3〜5倍程度で語られることが多い
時価純資産法資産・負債を時価で評価し直した純資産赤字・低収益で、収益力からの価値がつきにくいケース価格の下限を確認する目安として使われる
営業権(のれん)の直接見積り設備・造作の時価に、立地や客付けの価値を上乗せ1店舗の居抜き・造作譲渡設備の残存価値を基礎に、立地と収益状況で上下する

年買法の考え方は年買法とは、倍率法の考え方は類似会社比較法(EV/EBITDA倍率)、純資産ベースの考え方は時価純資産法とはで解説しています。上の倍率・年数は「よく見られるレンジ」の目安であり、個別の店舗・会社の価格を示すものではありません。

小規模ほど年買法・造作譲渡に寄るのはなぜか

飲食業で規模が小さいほど年買法や造作譲渡の発想に寄るのには、いくつか理由があります。第一に、利益が数人のスタッフとオーナーの働きに強く結びついているため、将来のキャッシュフローを長期に見積もることが難しいことです。DCF法のように何年も先の利益を前提にする手法は、前提の置き方ひとつで金額が大きく動くため、小規模案件では説得力を持ちにくくなります。

第二に、店舗が賃借物件であることが多く、賃貸借契約の残存期間を超えた将来の利益を織り込みにくいことです。第三に、買い手側も「この立地でこの設備がすぐ使えるなら、開業コストがいくら浮くか」という発想で価格を測るため、造作・設備の価値が交渉の共通言語になりやすいという事情があります。結果として、小規模では「純資産+利益の数年分」や「設備の価値+立地の上乗せ」という、シンプルで検証しやすい枠組みが選ばれやすくなります。

計算例:実態営業利益800万円の飲食会社(仮の数値)

説明のため、3店舗を運営する仮の会社を想定します。売上高2.4億円、決算書上の営業利益400万円、減価償却費600万円。オーナー報酬が買収後の想定水準より400万円多く、家族従業員の給与に実態より多い部分が100万円分あり、これらを調整すると実態営業利益は900万円、実態EBITDAは1,500万円になるとします。ただし赤字店舗が1店あり、その営業損失100万円分を差し引いて実態営業利益を800万円とみる、という整理をした場合の目安が次のとおりです。時価純資産は3,000万円(現預金2,000万円、有利子負債4,000万円を含む)とします。

手法計算株式価値の目安
年買法(2〜4年分)時価純資産3,000万円+実態営業利益800万円×2〜4年約4,600万〜6,200万円
EV/EBITDA倍率法(3〜5倍)実態EBITDA1,400万円×3〜5倍=EV4,200万〜7,000万円、+現預金2,000万円−有利子負債4,000万円約2,200万〜5,000万円
時価純資産法資産・負債を時価評価した純資産のみ約3,000万円(下限の目安)
上の数値はすべて説明用の仮の数値です。実際の年数・倍率は、立地、業態、利益の安定性、店舗数、賃貸借契約の条件、買い手の数などで変わります。手法によって結果が一致しないのはむしろ普通で、複数のレンジを並べて「どの前提だと高く出るのか」を理解しておくことが交渉では役立ちます。あくまで考え方の例・目安としてご覧ください。

自社の数字で試したい場合は、年買法の無料計算ツールEV/EBITDA倍率の無料計算ツールに営業利益・減価償却費・純資産・有利子負債を入れてみてください。事業価値と株式価値の違いは企業価値と株式価値の違いで整理しています。

1店舗の譲渡(居抜き・造作譲渡)と会社ごとの譲渡(株式譲渡)の違い

飲食業の「売却」という言葉は、まったく性質の異なる2つの取引を指すことがあります。1店舗だけを居抜きで引き渡す造作譲渡と、法人ごと株式を譲る株式譲渡です。価格の桁も、契約も、税金の扱いも変わるため、最初にどちらを想定しているのかを整理しておくことが大切です。

項目1店舗の譲渡(居抜き・造作譲渡)会社ごとの譲渡(株式譲渡)
譲渡の対象内装造作・厨房設備・什器など。賃借権は貸主の承諾を得て新賃借人へ切り替え会社の株式。店舗・契約・従業員・許認可を含む事業全体が原則そのまま移る
価格の作られ方設備・造作の残存価値を基礎に、立地や収益状況で上下。数十万円〜数百万円規模で語られることが多い(目安)実態の営業利益・EBITDAをもとに年買法や倍率法で算定。利益が出ていれば数千万円規模になることもある(目安)
契約の形造作売買契約+賃貸借契約の解約・新規締結(三者間の合意が前提)株式譲渡契約(SPA)。表明保証や補償の条項が入る
許認可飲食店営業許可は事業者ごとの許可のため、買い手が新たに取得するのが基本許可の名義人である法人が存続するため、原則としてそのまま継続(役員変更等の届出は必要)
従業員雇用は自動的には移らない。買い手が改めて雇用するかどうかを決める雇用契約は会社に紐づくため、原則としてそのまま継続する
税金の扱い法人が譲渡する場合は法人の譲渡損益として法人税等の対象。消費税の課税対象になる部分がある個人株主の株式譲渡益に対して課税されるのが基本。手取りの計算が別途必要

スキームによる違いの全体像は事業譲渡と株式譲渡の違いで整理しています。税金は個別の事情で変わるため、具体的な判断は税理士に確認してください。株式譲渡の場合の手取り額は手取り額の無料計算ツールでおおまかな見当をつけられます。

造作譲渡の価格は「開業コストがいくら浮くか」で測られる

造作譲渡の価格交渉では、買い手は「同じ規模の店をスケルトンから作ったらいくらかかるか」を基準に考えます。厨房機器・空調・排気ダクト・給排水・内装が使える状態で残っていれば、その分だけ初期投資と工事期間が節約できるため、そこに値段がつくという発想です。裏を返すと、設備が古く入れ替えが前提になる場合や、業態が変わって内装をやり直す場合は、造作の価値はほとんど評価されず、むしろ原状回復や撤去の負担が論点になります。

なお、造作譲渡であっても、実際に利益が出ている繁盛店では「設備の価値+営業権」という形で上乗せが乗ることがあります。この上乗せがどの程度になるかは、立地、賃料の水準、契約の残存期間、そして直近の売上・利益の推移で大きく変わります。数字が説明できる状態になっているほど、上乗せは通りやすくなります。

価格を上げる要素・下げる要素

同じ利益水準でも、飲食業は評価が上下しやすい業種です。買い手が「引き継いだあとも同じ利益が出るか」を判断する材料が、財務諸表の外に多くあるためです。代表的な要素を整理します。

要素価格を上げる方向価格を下げる方向
立地・賃貸借契約駅からの動線が良い、賃料が売上に対して妥当、契約の残存期間が長く更新の見込みが立つ賃料が売上比で重い、契約の残存が短い、貸主が譲渡に難色を示す可能性がある
坪当たり売上・客単価同業態の水準より坪効率が高く、客単価と回転が安定している席数に対して売上が伸びず、空席時間が長い
FLコスト(原価率+人件費率)FL比率が管理され、メニュー改定や仕入れの見直しで改善余地も示せる原価率・人件費率が高止まりし、改善の打ち手が説明できない
オーナー・シェフ依存度レシピとオペレーションが文書化され、オーナー不在でも回る味と集客がオーナー個人に紐づき、退任後の継続に不安がある
リピート率・顧客基盤常連客の比率が高い、予約・会員データが残っている、法人利用がある一見客中心で、外部の集客サービスへの依存度が高い
店長・スタッフの定着店長が育っており、社員・アルバイトの勤続年数が長い慢性的な人手不足で、キーパーソンの退職リスクが高い
設備の年数・状態主要な厨房機器が新しく、当面の大きな更新投資が不要空調や冷凍設備の老朽化が進み、買収後すぐに投資が必要
多店舗展開・仕組み化店舗ごとの損益が管理され、出店・運営の型が横展開できる店舗ごとに運営がバラバラで、赤字店舗の整理も進んでいない
収益源の広がりデリバリー・テイクアウト・EC・法人向け販売など、店内以外の収益がある収益が店内飲食のみで、外部環境の変化に弱い

飲食業の評価軸をより詳しく知りたい場合は飲食業の企業価値評価のポイント、業種ごとの見られ方の違いは業種別の企業価値評価のポイントで整理しています。フランチャイズ本部・加盟店の評価の考え方はフランチャイズ事業の企業価値評価も参考になります。

買い手が必ず見る論点(許認可・賃貸借・労務)

飲食業のM&Aでは、価格の議論と並行して「そもそも引き継げるのか」という確認が進みます。ここでつまずくと、価格の減額や取引の中止につながるため、早めに状況を把握しておくことが重要です。買い手のデューデリジェンスの全体像はデューデリジェンスとはで解説しています。

論点確認される内容つまずいたときの影響
賃貸借契約の承継可否譲渡・転貸の禁止条項の有無、貸主の承諾が得られるか、名義変更料や更新条件承諾が得られなければ取引自体が成立しない。条件変更で賃料が上がることもある
飲食店営業許可許可の名義、有効期限、施設基準を満たしているか。造作譲渡では買い手の新規取得が前提取得までの期間、営業の空白期間が生じるおそれ
深夜酒類提供・風営法関連の届出深夜に酒類を提供する営業の届出、必要な場合の許可の状況届出漏れが判明すると、営業体制の見直しや価格の再交渉につながる
消防・保健所防火管理者の選任、消防設備の点検、食品衛生責任者の配置、衛生管理の記録是正費用の見積りが価格から差し引かれることがある
未払残業代・シフト管理勤怠の記録方法、休憩の取得、固定残業代の運用、アルバイトの労働時間管理過去分の見積額を控除、または契約の補償条項で手当てされることが多い
簿外債務リース残債、未払の仕入代金、原状回復義務、係争、社会保険の未加入見つかった金額が価格から控除される
前オーナーの個人保証借入や賃貸借契約に付いた連帯保証の有無と、解除できるか解除の交渉が必要。残ると売り手側にリスクが残る
フランチャイズ加盟店の場合加盟契約に定められた本部の承諾、契約の残存期間、加盟金・ロイヤリティの条件本部の承諾が得られないと株式譲渡でも実行できないことがある

許認可の要件や届出の要否、労務管理の適法性は制度改正もあり、個別の判断が必要です。行政書士・社会保険労務士などの専門家や、所管の保健所・消防署に必ず確認してください。フランチャイズ加盟店の場合は、加盟契約書の該当条項を早い段階で読み直しておくことをおすすめします。

決算に表れにくい調整=正常収益力(実態EBITDA)の作り方

飲食業のオーナー企業では、決算書の営業利益がそのまま「稼ぐ力」を表していないことがよくあります。買い手は、買収後に自分たちが運営した場合の利益に引き直して評価するため、この調整の精度が価格に直結します。考え方の基礎は正常収益力とはで解説しています。

調整項目よくある実態調整の方向
オーナー報酬節税や生活費の都合で、同規模の店長・経営者の水準と乖離している買収後の想定水準に置き換える。過大なら利益はプラス調整
家族従業員の給与実際の勤務時間に比べて多い(または無給で働いている)実態に見合う人件費に引き直す。無給なら利益はマイナス調整
私的経費車両費、保険料、交際費、旅費などに事業と無関係な支出が混ざる事業に必要な範囲に絞り、それ以外は利益に戻す
現金商売の売上計上レジ記録と会計データの突合が甘く、売上の網羅性に疑問が残る計上漏れは主張しても評価されにくい。POSと日報で説明できる形に整える
一過性の損益補助金、閉店に伴う損失、開業初期の赤字、災害等による特殊要因継続しない要素として除外し、平常時の水準に均す
赤字店舗・退店予定店舗全社の利益が、一部の不採算店に食われている店舗別の損益を示し、譲渡対象の切り分けや改善計画で説明する
減価償却と更新投資償却が終わった古い設備で利益が良く見えている近い将来の更新投資を織り込んで、実力値を確認する

注意したいのは、「本当はもっと利益が出ている」という主張が、資料で裏づけられなければ価格に反映されにくいことです。売上はPOSデータと預金入金、経費は領収書と勘定科目の内訳で説明できる状態にしておくと、調整が受け入れられやすくなります。売り手側で事前に課題を洗い出して整える進め方はセルサイドDDと売却前の磨き上げで詳しく解説しています。

自分で相場のレンジを出してみる手順

「飲食店の売却相場は◯円」と一律に言うことはできませんが、自分の数字を当てはめてレンジを出すことはできます。次の順番で進めてみてください。

  • 1. 直近3期の営業利益と減価償却費を並べる:期ごとのブレの原因(新店の開業費用、閉店、改装、季節要因)をメモしておきます。
  • 2. 正常収益力に引き直す:オーナー報酬・家族給与・私的経費・一過性の損益を調整し、実態営業利益と実態EBITDAを出します。
  • 3. 時価純資産を出す:現預金、保証金・敷金、設備の実態価値、借入残高、未払金を反映します。原状回復義務や退職金の積立不足があれば控除します。
  • 4. 年買法で計算する:時価純資産+実態営業利益×2〜5年。年数は、利益の安定度とオーナー依存度で選びます。
  • 5. EV/EBITDA倍率法で計算する:実態EBITDA×3〜5倍でEVを出し、現預金を足し有利子負債を引いて株式価値に換算します。
  • 6. 2つのレンジを並べて幅として持つ:一致しなくても構いません。上限と下限の根拠を言葉で説明できることのほうが重要です。

計算そのものは年買法ツールEV/EBITDAツールで数分で済みます。自分で計算する際の考え方は自分で企業価値を計算する方法も参考にしてください。

売却の準備とタイミング

飲食業は、業績の波と店舗の状態によって「売りやすい時期」が動きます。準備なしに動き出すと、買い手の質問に答えられずに交渉が長引き、その間に業績が落ちて価格が下がる、という展開になりがちです。次の点を先に整えておくと、話が前に進みやすくなります。

  • 数字の整理:店舗別の月次損益、FL比率の推移、客数・客単価、POSデータを、少なくとも直近2〜3年分そろえます。
  • 退店・多店舗の切り分け:赤字店舗を残したまま売るのか、閉めてから売るのかを決めます。閉める場合は原状回復費用と違約金を見積もっておきます。
  • 契約書の棚卸し:賃貸借契約、リース契約、フランチャイズ加盟契約、仕入先との取引条件を一覧にします。
  • 労務の点検:勤怠管理の方法、固定残業代の運用、社会保険の加入状況を確認します。
  • タイミング:業績が上向いている時期、賃貸借契約の更新前に余裕がある時期、オーナーの体力があるうちが一般に動きやすい時期とされます。

時期の考え方は会社を売却するタイミング、手続きの全体像は会社売却(M&A)の流れで解説しています。価値を高める具体策は会社を高く売るにはもご覧ください。

よくある失敗

  • 賃貸借契約の確認を後回しにする:条件が固まった段階で貸主の承諾が得られず、話が振り出しに戻るケースです。
  • 「売上はもっとある」と口頭で主張する:資料で裏づけられない利益は評価されず、かえって数字の信頼性を損ないます。
  • 従業員への伝え方を決めずに進める:情報が漏れてキーパーソンが辞め、価格が下がることがあります。
  • 赤字店舗を放置したまま打診する:全社の利益が薄く見え、レンジの下側で評価されやすくなります。
  • 1社としか話さない:比較できる提示がないと、価格や条件が妥当かを判断できません。

よくある質問(FAQ)

Q. 赤字の飲食店でも売れますか?

A. 赤字でも成立することはあります。立地が良い、設備がまだ使える、常連客が付いている、といった要素があれば、買い手にとっては「開業コストと立ち上げ期間を買う」意味があるためです。ただし価格は収益力ではなく設備と立地の価値、あるいは純資産をもとに慎重に評価されやすく、条件も厳しくなりがちです。赤字の場合の考え方は赤字会社の売却相場で整理しています。

Q. 個人事業の飲食店でも売却できますか?

A. できます。ただし個人事業には譲渡する「株式」がないため、店舗の造作・設備・在庫・屋号などを個別に引き渡す事業譲渡の形になります。賃貸借契約の切り替えと、買い手側での営業許可の取得が前提になる点に注意してください。個人事業の場合の相場感は個人事業の売却相場を参考にしてください。

Q. 従業員にはいつ伝えるべきですか?

A. 一般には、条件がおおむね固まり、成立の見込みが立った段階で伝えるケースが多いです。早すぎると不安から離職が出て店の運営に支障が生じ、遅すぎると引き継ぎがうまくいかない、というジレンマがあります。店長など運営の要となる人には、買い手と相談のうえ早めに個別に話す段取りを組むことが多いです。伝える範囲と順番は、買い手側と事前にすり合わせておくことをおすすめします。

Q. 居抜きと会社ごとの譲渡は、どちらが得ですか?

A. 一概には言えません。1店舗で利益が小さい場合は、手続きが軽い造作譲渡のほうが現実的なことが多い一方、利益が出ていて複数店舗ある場合は、会社ごと譲るほうが収益力を価格に反映しやすくなります。また、造作譲渡は法人側の譲渡損益として課税され、株式譲渡は株主個人の譲渡益として課税されるなど、手取りの計算も変わります。金額と手続きの負担、税引後の手取りを並べて比べるのが現実的です。税務の判断は税理士に確認してください。

Q. 仲介会社に払う手数料はどのくらいですか?

A. 一般には、成約時の成功報酬をレーマン方式で計算する形が多く、最低手数料が設定されていることもあります。着手金や月額報酬の有無は会社によって異なります。小規模な飲食店のM&Aでは、譲渡価格に対する手数料の割合が相対的に大きくなりやすいため、契約前に費用の総額を確認しておくことが大切です。詳細はM&A仲介の手数料相場で整理しています。

Q. 相場を知りたいだけですが、何から始めればよいですか?

A. まずは直近数期の決算書から実態の営業利益とEBITDAを整理し、年買法とEV/EBITDA倍率法で自分でレンジを出してみるのが手軽です。そのうえで、原状回復義務や未払残業代など差し引かれる可能性のある項目を確認すると、より現実的な水準に近づきます。複数の手法でレンジを持っておくと、仲介会社や買い手から提示された金額が妥当かを判断しやすくなります。小規模案件の進め方はスモールM&Aとはもご覧ください。

まとめ

飲食店・飲食業の売却相場は、「1店舗を居抜きで譲るのか、会社ごと譲るのか」でまず考え方が分かれます。造作譲渡では設備・内装の残存価値と立地の上乗せが価格の中心となり、会社ごとの譲渡では実態の営業利益・EBITDAをもとに、年買法(時価純資産+営業利益の2〜5年分)やEV/EBITDA倍率法でレンジを出すのが基本です。そのうえで、賃貸借契約の残存期間と賃料水準、FLコスト、オーナー依存度、スタッフの定着、設備の年数といった要素が、レンジの上側に寄るか下側に寄るかを決めます。

同時に、賃貸借契約の承継、営業許可や届出、消防・保健所、労務管理、個人保証、フランチャイズ本部の承諾といった「引き継げるか」の論点は、価格以前に取引の成否を左右します。オーナー報酬や私的経費を整理して正常収益力を示せる状態にし、店舗別の損益と契約書を早めに棚卸ししておくことが、納得のいく条件につながります。

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