先例取引比較法とは? 過去のM&A事例から評価する
最終更新: 2026-06-18
先例取引比較法(Precedent Transactions/類似取引比較法)は、過去に行われた類似企業のM&A取引で、どのくらいの倍率(EV/EBITDA など)で売買されたかを参照し、評価対象に当てはめる手法です。マーケット・アプローチの一つで、「実際にいくらで取引されたか」という生の相場を反映できるのが特徴です。
算定の手順
- ① 評価対象に近い、過去のM&A事例(同業種・近い規模)を収集する
- ② 各取引の取引価格と財務から EV/EBITDA などの取引倍率を算定する
- ③ 倍率の中央値などを評価対象の財務数値に当てはめて価値を求める
- ④ 取引時期・条件の違いを踏まえて調整する
類似会社比較法との違い
| 項目 | 類似会社比較法 | 先例取引比較法 |
|---|---|---|
| 参照する倍率の出どころ | 上場類似会社の市場株価 | 過去のM&Aの取引価格 |
| 支配権プレミアム | 含まない(市場の少数株ベース) | 含みやすい(経営権の取得対価) |
| データ入手 | 市場データで比較的容易 | 非開示が多く難しいことも |
類似会社比較法が上場株式の「市場株価」を参照するのに対し、先例取引比較法は過去のM&Aの「取引価格」を参照します。取引価格には支配権(コントロールプレミアム)が含まれることが多く、一般に倍率が高めに出る傾向があります。
留意点
- 非上場の取引は条件が開示されないことが多く、適切な先例データの入手が難しい。
- 取引時期の市場環境(好不況・金利)が違うと倍率の前提も変わる。
- 各取引に固有の事情(シナジー・売り急ぎなど)が倍率に混じる。
そのため、先例取引比較法は単独で使うより、類似会社比較法やDCF法と並べてレンジで捉えるのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 先例取引比較法と類似会社比較法、どちらが正確ですか?
A. 一概には言えません。先例取引は実際の取引相場(支配権込み)を反映できますが、データ入手が難しいのが難点です。両方を補完的に使うのが実務的です。
Q. なぜ取引倍率は市場株価の倍率より高くなりやすいのですか?
A. M&Aでは経営権を取得するため、コントロールプレミアムが上乗せされることが多いからです。少数株ベースの市場株価より高く出やすくなります。
まとめ
先例取引比較法は、過去の類似M&Aの取引倍率を当てはめて価値を概算する手法です。実取引の相場(支配権込み)を反映できる一方、非開示でデータ入手が難しく、時期・個別事情の影響も受けます。類似会社比較法やDCF法と並べ、会社売却の相場感とともにレンジで捉えるのがよいでしょう。