レーマン方式とは|M&A仲介手数料の計算方法・早見表・具体例

最終更新: 2026-06-28

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M&Aの仲介・FAに支払う成功報酬の計算で、業界標準として広く使われているのがレーマン方式(Lehman Formula)です。取引金額を金額帯ごとに区切り、それぞれに料率を掛けて合算する仕組みで、金額が大きくなるほど料率が下がる逓減方式になっています。本稿では、レーマン方式の料率テーブル・計算手順・具体的な計算例に加え、実務で混乱しがちな「手数料の基準額」の違いや最低報酬・着手金まで、できるだけかみ砕いて解説します。M&A仲介の手数料相場の全体像はM&A仲介手数料の相場もあわせてご覧ください。

レーマン方式とは

レーマン方式は、M&Aの取引金額を一定の金額帯(一般に5億円刻み)に分け、各帯に決められた料率を掛けて、その合計を成功報酬とする計算方法です。たとえば「5億円以下の部分は5%、5億円超〜10億円以下の部分は4%」というように、帯ごとに異なる料率を適用します。金額が大きい部分ほど料率が下がるため、全体の実効料率(手数料÷取引金額)は取引が大きくなるほど低くなります。

このやり方は、成功報酬の金額に客観的な根拠を持たせやすく、売り手・買い手・仲介の三者にとって分かりやすいことから、中小企業のM&Aから大型案件まで幅広く採用されています。仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いはM&A仲介とFAの違いで解説していますが、報酬計算にレーマン方式を使う点は共通しています。

レーマン方式の料率テーブル

最も一般的な料率テーブルは次のとおりです。会社や契約によって料率や刻みが異なる場合があるため、実際の契約書(マンデート)で必ず確認してください。

取引金額の帯料率
5億円以下の部分5%
5億円超〜10億円以下の部分4%
10億円超〜50億円以下の部分3%
50億円超〜100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

ポイントは「取引金額の全体に1つの料率を掛けるのではない」ことです。たとえば取引金額が8億円のとき、8億円すべてに4%を掛けるのではなく、5億円までの部分に5%、残り3億円の部分に4%を掛けて合算します。この「帯ごとに区切って合算する」点がレーマン方式の最大の特徴です。

計算の手順

  • ① 取引金額(手数料の基準額)を確定する
  • ② 取引金額を料率テーブルの帯に分解する
  • ③ 各帯の金額にそれぞれの料率を掛ける
  • ④ ③を合計する(=レーマン方式による成功報酬)
  • ⑤ 最低報酬を下回る場合は最低報酬額を適用する

具体的な計算例

例1:取引金額が5億円の場合

5億円はすべて「5億円以下の部分」に収まるため、5億円 × 5% = 2,500万円が成功報酬です。実効料率は5.0%になります。

例2:取引金額が8億円の場合

  • 5億円以下の部分:5億円 × 5% = 2,500万円
  • 5億円超〜8億円の部分:3億円 × 4% = 1,200万円
  • 合計:3,700万円(実効料率 約4.6%)

例3:取引金額が30億円の場合

  • 5億円以下:5億円 × 5% = 2,500万円
  • 5億円超〜10億円:5億円 × 4% = 2,000万円
  • 10億円超〜30億円:20億円 × 3% = 6,000万円
  • 合計:1億500万円(実効料率 約3.5%)

このように、取引金額が大きくなるほど実効料率は下がっていきます。逆に小規模案件では、後述する最低報酬が適用されて実効料率が跳ね上がることがあります。

注意:手数料の「基準額」で金額が大きく変わる

レーマン方式で実務上もっとも注意すべきなのが、料率を掛ける「基準額(取引金額)」を何にするかです。同じ会社のM&Aでも、基準額の取り方によって手数料が数倍変わることがあります。代表的な基準は次の3つです。

基準額の種類内容手数料への影響
株式価値(譲渡対価)株式の譲渡代金そのもの。売り手の受取額に近い基準が最も小さく、手数料は相対的に低い
企業価値(EV)株式価値に有利子負債を加えた事業全体の価値負債が多い会社ほど基準が膨らみ手数料が増える
移動総資産(オーナー受取+負債総額 等)負債を含む資産規模をベースにする方式基準が最も大きく、手数料が高くなりやすい

株式価値と企業価値の違いは企業価値と株式価値の違いで詳しく整理しています。借入の多い会社では、株式価値ベースと移動総資産ベースで手数料が大きく変わるため、契約前に「何を基準に料率を掛けるのか」を必ず確認することが重要です。仲介を選ぶ売り手にとっても、ここは見落とせない比較ポイントになります。

最低報酬・着手金・中間金・月額報酬

レーマン方式による計算額が一定額を下回る場合、多くの仲介会社は最低報酬(ミニマムフィー)を設定しています。中小・小規模のM&Aでは、最低報酬が実際の手数料を決めるケースが少なくありません。

  • 最低報酬 … 成功報酬の下限。数百万円〜が一般的(会社により幅がある)
  • 着手金 … 契約時に支払う初期費用。無料の会社もある
  • 中間金 … 基本合意(LOI)時などに支払う中間的な報酬
  • 月額報酬(リテイナー) … FA契約で毎月発生する固定報酬

近年は売り手の負担を抑えるため、着手金・中間金を無料にし、成功報酬のみとする「完全成功報酬型」も増えています。どの費用がいつ発生するかは会社ごとに異なるため、受託提案や見積りの段階で明示することが、売り手の安心と受託率の向上につながります(受託提案書の作り方はこちら)。

取引金額別の手数料 早見表(株式価値ベース・最低報酬考慮前)

取引金額レーマン方式の概算実効料率
1億円500万円5.0%
3億円1,500万円5.0%
5億円2,500万円5.0%
8億円3,700万円約4.6%
10億円4,500万円4.5%
20億円7,500万円約3.8%
30億円1億500万円約3.5%
上表は標準的な料率テーブル・株式価値ベースの概算です。実際は基準額の取り方・最低報酬・着手金/中間金の有無で総額が変わります。あくまで目安としてご利用ください。

売り手・買い手の双方から手数料が発生する点

M&A「仲介」は売り手と買い手の間に立つため、双方からそれぞれ成功報酬を受け取るのが一般的です(両手)。一方、売り手だけ・買い手だけの一方に立つFAは、依頼者からのみ報酬を受け取ります(片手)。同じ取引金額でも、仲介かFAか、双方課金か片手かで、当事者が負担する手数料は変わります。利益相反の観点を含め、立場の違いはM&A仲介とFAの違いで確認しておくとよいでしょう。

株価レーマンと移動総資産レーマンの違い(具体例で比較)

前述の「基準額」のうち、中小企業のM&Aで特に差が出やすいのが、株式価値(譲渡対価)を基準にする方式(株価レーマン)と、負債を含む規模を基準にする方式(移動総資産レーマンなど)の違いです。借入の多い会社では、この2つで手数料が大きく変わります。同じ会社で比較してみましょう。

【前提】株式の譲渡対価(株式価値)3億円、有利子負債4億円、現預金1億円の会社を想定します。

方式基準額レーマン方式の概算手数料
株価レーマン3億円(株式価値)1,500万円(3億円×5%)
企業価値レーマン6億円(株式価値3億+有利子負債4億-現預金1億)2,900万円(5億×5%+1億×4%)
移動総資産レーマン7億円(株式価値+負債総額の考え方)3,300万円(5億×5%+2億×4%)

同じ会社の同じ取引でも、基準額の取り方だけで手数料が1,500万円から3,300万円へと2倍以上に変わります。借入が多い会社ほどこの差は拡大します。売り手として仲介を選ぶときも、仲介として売り手に説明するときも、「料率」だけでなく「何を基準に料率を掛けるのか」をそろえて比較することが欠かせません。料率テーブルが同じでも、基準が違えば総額はまったく別物になります。

着手金・中間金・成功報酬の発生タイミング

レーマン方式で計算されるのは主に成功報酬(クロージング時)ですが、案件の進行に応じて他の費用が発生する契約もあります。いつ・何が発生するかを時系列で押さえておきましょう。

タイミング費用目安
契約時着手金無料〜数百万円(完全成功報酬型は無料)
案件進行中月額報酬(リテイナー)FA契約で発生する場合がある
基本合意時中間金成功報酬の10〜20%程度を前払いする例
クロージング時成功報酬レーマン方式(最低報酬を下回れば最低報酬)

着手金や中間金は、案件が途中で破談になっても返還されないのが一般的です。そのため売り手は、「成約しなかった場合に何が手元に残るのか/何を失うのか」を事前に理解しておく必要があります。完全成功報酬型は売り手の初期負担が小さい一方、仲介側は成約しなければ収益が立たないため、案件の選別が厳しくなる傾向があります。それぞれに一長一短があるため、料金体系は会社選びの重要な比較軸になります。

消費税・その他の費用の扱い

成功報酬には別途、消費税が課されます。たとえば成功報酬が2,500万円なら、消費税を加えた支払額はそれ以上になります。見積りを比較するときは、税込・税抜のどちらで表示されているかを確認しましょう。また、デューデリジェンス費用(買い手が負担することが多い)、契約書の作成・レビューに関わる弁護士費用、登記費用など、仲介手数料以外の実費が発生する場合もあります。

売り手から見た手数料の見極め方

  • 料率テーブルだけでなく「基準額」を必ず確認する(株式価値か、負債込みか)
  • 最低報酬の金額と、自社の想定取引額で最低報酬が効くかを試算する
  • 着手金・中間金の有無と、破談時の扱いを確認する
  • 双方課金(両手)か片手かを確認する(仲介かFAか)
  • 税込・税抜、消費税やその他実費の扱いを揃えて相見積りする
  • 「最終的に手元にいくら残るか(最終手取り)」で比較する

小規模M&Aでは取引額に対して最低報酬の比率が高くなりがちで、実効的な負担が想定より大きくなることがあります。譲渡対価が小さい案件ほど、最低報酬と基準額の取り方が手取りに直結します。

レーマン方式の由来と近年の動向

レーマン方式の名称は、かつて米国の投資銀行で用いられた報酬体系に由来するとされ、日本のM&A実務にも広く定着しました。長く使われてきた背景には、(1) 金額に応じて報酬が決まるため客観性があり、(2) 逓減方式で大型案件でも料率が過大になりにくく、(3) 売り手・買い手・仲介の三者にとって理解しやすい、という利点があります。

一方で近年は、売り手の負担感への配慮や、中小・小規模M&Aの増加を背景に、着手金・中間金を無料とする完全成功報酬型や、最低報酬の水準を抑えたプランなど、料金体系の多様化が進んでいます。中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」など、支援者の質や手数料の透明性を高める動きもあり、料金体系をわかりやすく提示することが、これまで以上に重視されています。仲介を選ぶ売り手にとっても、料率テーブルだけでなく、基準額・最低報酬・付随費用まで含めた総額で比較する姿勢が大切です。

成功報酬とオーナーの最終手取り

売り手オーナーにとって本当に大事なのは、手数料の金額そのものよりも「最終的に手元にいくら残るか(最終手取り)」です。株式譲渡の場合、譲渡対価から、(1) 仲介の成功報酬(+消費税)、(2) 株式譲渡益にかかる税金、(3) その他の実費、を差し引いた額が手取りになります。

たとえば株式の譲渡対価が3億円、成功報酬が1,500万円(+消費税)、譲渡益課税がおおむね2割程度(個人の株式譲渡益課税の概算)とすると、手取りはこれらを差し引いた金額になります。税率や課税の前提は個別事情で変わるため、正確な試算は税理士等の専門家に確認が必要ですが、提案段階で「手数料」だけでなく「手取りの概算」まで示せると、オーナーの納得感は大きく高まります。スキームによって税負担が変わる点は株式譲渡と事業譲渡の違いもあわせてご確認ください。

税金の概算は前提により大きく変わります。本稿は手数料計算の理解を目的とした一般的な説明であり、個別の税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。

よくある質問

レーマン方式の料率は会社によって違いますか?

基本的な料率テーブル(5%/4%/3%…)は広く共通していますが、刻みや最低報酬、基準額の取り方は会社・契約によって異なります。必ず個別の契約書で確認してください。

取引金額が小さいと手数料率が高くなるのはなぜですか?

最低報酬が設定されているためです。たとえば最低報酬が500万円の場合、譲渡対価が5,000万円なら実効料率は10%に達します。小規模案件ほど最低報酬の影響が大きくなります。

仲介とFAで手数料は変わりますか?

計算方法(レーマン方式)は共通ですが、仲介は売り手・買い手の双方から、FAは依頼者の一方からのみ報酬を受け取るのが一般的です。立場の違いはM&A仲介とFAの違いを参照してください。

着手金や中間金は、破談になったら返ってきますか?

一般に、着手金・中間金は案件が成約に至らなくても返還されないことが多い費用です。契約前に、どの費用がいつ発生し、破談時にどう扱われるのかを必ず確認しましょう。近年は売り手の負担を抑える完全成功報酬型も増えています。

事業譲渡でもレーマン方式が使われますか?

はい、株式譲渡・事業譲渡のいずれでもレーマン方式が用いられます。ただし基準額の取り方(譲渡対価か、移動する資産・負債を含むか)は契約によって異なるため、スキームに応じて何を基準にするかを確認してください。スキームの違いは株式譲渡と事業譲渡の違いを参照してください。

両手取引(双方課金)と利益相反の論点

M&A仲介は売り手と買い手の双方から成功報酬を受け取る「両手」が一般的ですが、この構造には利益相反の論点が指摘されることがあります。売り手はできるだけ高く、買い手はできるだけ安く取引したいため、双方から報酬を得る仲介がどちらの利益を優先するのか、という懸念です。これに対し、近年は契約上の利益相反への対応や情報開示の充実が求められています。

売り手・買い手の一方のみに立つFA(フィナンシャル・アドバイザー)は片手で、依頼者の利益最大化に専念できる一方、報酬は依頼者の負担となります。どちらが適しているかは案件の性質によります。買い手候補を幅広く探したい中小案件では仲介が、条件交渉を有利に進めたい・利益相反を避けたい案件ではFAが選ばれる傾向があります。手数料を比較する際は、立場の違いによる報酬負担の構造まで含めて検討するとよいでしょう。詳しくはM&A仲介とFAの違いを参照してください。

まとめ

レーマン方式は「金額帯ごとに区切って料率を掛けて合算する」逓減方式の成功報酬計算です。料率テーブル自体はシンプルですが、実際の手数料は (1) 基準額を何にするか、(2) 最低報酬・着手金・中間金の有無、(3) 双方課金か片手か、で大きく変わります。売り手に提示するときは、これらの前提をそろえて「最終的にいくら手元に残るか(最終手取り)」まで示すことが信頼につながります。

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