PBR(株価純資産倍率)とは? 1倍割れの意味と、非上場企業の評価での使い方

最終更新: 2026-09-12

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PBR(Price Book-value Ratio=株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産の何倍まで買われているかを示す指標です。会社が積み上げてきた純資産という「ストックの価値」に対して、市場がどれだけの評価を与えているかを表します。利益というフローを見るPERに対し、PBRは貸借対照表側から会社を眺める指標だと言えます。

近年は「PBR1倍割れの是正」が上場企業の経営課題として広く語られるようになり、資本効率への関心とともに注目度が高まりました。一方、非上場企業の株価算定でもPBRの考え方は形を変えて使われています。M&Aの現場で聞く「時価純資産の1.2倍で」といった交渉は、まさにPBRの発想そのものです。本稿では、PBRの計算式と1倍割れの意味から、ROE・PERとの関係式、業種による水準差、そして非上場企業の評価での具体的な使い方までを、計算例とあわせて整理します。

結論:PBRは「純資産に対する市場の評価」を示す指標

先に要点をまとめます。

  • 計算式はPBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)。会社全体で見れば、PBR=時価総額÷純資産(自己資本)となり、どちらも同じ数字になります。
  • 1倍が「純資産=株式価値」の分岐点。1倍割れは、市場が純資産の帳簿価額ほどの価値を認めていない状態を意味します。
  • PBR=ROE×PERという関係が成り立ちます。PBRの高低は「資本効率(ROE)」と「将来への期待(PER)」の掛け算で説明できます。
  • 業種によって水準が大きく違う。資産を厚く持つ業種は低め、無形資産が価値の中心にある業種は高めに出やすい傾向があります。
  • 非上場企業では簿価純資産をそのまま使わない。含み損益を反映した時価純資産に直したうえで、その何倍かという形で価格を議論するのが実務です。

非上場株式の評価手法の全体像は非上場株式の評価方法、3つのアプローチの整理は株式評価の3つのアプローチ比較をご覧ください。

PBRの計算式:株価÷BPS、時価総額÷純資産

PBRの基本形は次のとおりです。

PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)

BPS(Book-value Per Share)は、純資産(自己資本)を発行済株式数で割った1株あたりの純資産額です。BPSとEPSの計算方法はEPS・BPSとはで整理しています。

分子・分母をそれぞれ株式数倍しても比率は変わらないため、会社全体の金額でも表せます。

PBR = 時価総額 ÷ 純資産(自己資本)

非上場企業のように株価が存在しない会社では、後者の形、つまり「純資産の何倍で株式価値を見るか」という表現のほうが扱いやすくなります。

株価1,200円、BPS1,000円の会社の場合。
PBR = 1,200円 ÷ 1,000円 = 1.2倍
同じ会社の時価総額が120億円、純資産が100億円なら、120億円 ÷ 100億円 = 1.2倍で一致します。
(仕組みを示すためのです。実際の水準は市況で変動します)

ここで使う純資産は、原則として自己資本(株主資本+その他の包括利益累計額)です。新株予約権や非支配株主持分は株主に帰属する部分ではないため、厳密に計算する場面では除きます。また、PBRが対象にしているのは株式価値であって事業価値ではありません。事業価値と株式価値の関係は企業価値と株式価値の違いで解説しています。

PBR1倍割れが意味すること

PBRが1倍を下回る状態は、株式市場での評価額(時価総額)が、帳簿上の純資産を下回っていることを意味します。これは主に2つの角度から解釈されます。

解散価値との比較という見方

帳簿上の純資産は、資産をすべて売却して負債を返済したあとに株主の手元に残る金額のおおまかな目安であり、しばしば「解散価値」と呼ばれます。PBR1倍割れは、理屈のうえでは「事業を続けるより、いま清算して分配したほうが株主の取り分が多い」状態を示していることになります。

ただし、これはあくまで理論上の比較です。帳簿価額と実際の換金価額は一致しませんし、清算するには退職金や契約解除の費用もかかります。「1倍割れ=清算すべき」という単純な話にはなりません。それでも、市場が事業の継続価値を純資産以下に見積もっているというシグナルとしては重い意味を持ちます。

資本効率への評価という見方

より本質的なのはこちらです。会社が純資産(株主から預かった資本と、これまでの利益の蓄積)を使って、投資家が期待するリターンを上回る利益を生めているなら、市場は純資産以上の価値を認めます。逆に、預かった資本を十分に活かせていないと見なされれば、評価は純資産を下回ります。

つまりPBR1倍割れは、「この会社に資本を置いておくより、株主に返して他で運用したほうがよい」という市場からの評価とも読めます。だからこそ、1倍割れへの対応策として、収益性の改善だけでなく、配当の増額や自己株式の取得といった株主還元、事業ポートフォリオの見直しが議論されるのです。自己株式の取得は純資産を減らすため、同じ時価総額ならPBRを押し上げる方向に働きます(自己株式とは)。

1倍割れが常に「割安」を意味するわけではありません。低い収益性が今後も続くと市場が見ているなら、1倍割れはむしろ妥当な評価です。数字の低さそのものではなく、その低さの理由を確認することが判断の出発点になります(投資成果を保証するものではありません)。

PBR=ROE×PERという関係

PBRは、次の式で分解できます。

PBR = ROE × PER

成り立ちは簡単な約分です。ROEは「純利益÷純資産」、PERは「時価総額÷純利益」ですから、掛け合わせると純利益が打ち消し合い、「時価総額÷純資産」=PBRになります。1株あたりで書いても同じで、(EPS÷BPS)×(株価÷EPS)=株価÷BPSです。

ROE(資本効率)PER(期待)PBR(=ROE×PER)読み方の例
5%10倍0.5倍資本効率が低く、期待も乏しい。1倍割れになりやすい典型。
8%12.5倍1.0倍ちょうど1倍。純資産並みの評価。
10%15倍1.5倍平均を上回る資本効率と一定の成長期待。
15%20倍3.0倍高い資本効率に成長期待が上乗せされた状態。

この式が教えてくれるのは、PBRを高めるルートが2つあるということです。1つはROEを高めること、つまり同じ資本でより多くの利益を生むこと。もう1つはPERを高めること、つまり将来の成長やリスク低減について市場の期待を得ることです。逆に言えば、ROEが株主資本コストを下回っている限り、いくら利益額を積み上げてもPBRは1倍に近づく・割り込む方向に働きます。

理論的には、PBRは「(ROE-成長率)÷(株主資本コスト-成長率)」といった形でも説明され、ROEが株主資本コストと等しいときにPBRは1倍になります。株主資本コストの考え方はCAPMと株主資本コスト、加重平均資本コストはWACCとはで解説しています。ROEが資本コストを上回っていれば1倍超、下回っていれば1倍割れというのが、PBRを読むうえでの基本の物差しです。PERとあわせて見ることで、会社の姿がより立体的に把握できます。

業種によるPBRの差:資産型と無形資産型

PBRの水準は業種によって大きく異なります。分母である純資産に、会社の価値の源泉がどれだけ載っているかが業種ごとに違うためです。

タイプ特徴PBRの傾向背景
資産型(金融・不動産・重厚長大産業など)多額の資産と自己資本を抱え、貸借対照表が事業規模をよく表す低めに出やすい価値の源泉の多くが帳簿に載っているため、純資産に対する上乗せが限られる。規制や自己資本比率の制約も影響する。
無形資産型(ソフトウェア・サービス・ブランド型ビジネスなど)人材、技術、顧客基盤、ブランドといった帳簿に載らない資産が価値の中心高めに出やすい自己開発したソフトウェアやブランド価値は原則として資産計上されず、純資産が実力より小さく見えるため倍率が大きく出る。
中間型(製造業・卸売・小売など)設備や在庫といった有形資産と、技術・販路といった無形の強みが混在業態により幅が大きい同じ製造業でも、装置産業に近いほど低め、独自技術やブランドの比重が高いほど高めに振れやすい。

重要なのは、「PBRが低い業種は劣っている」という話ではないことです。会計上、自社で築いたブランドや技術は資産計上されないため、無形資産型のビジネスは構造的に純資産が小さく見え、その結果PBRが大きく出ます。買収によって取得した場合にだけのれんとして計上される、という会計の非対称性がここに効いています。したがってPBRの比較は、同じ業種・同じような資産構成の会社どうしで行うのが前提です。業種ごとの評価の勘所は業種別の企業価値評価のポイントにまとめています。

金融機関・不動産業でPBRが重視される理由

PBRが特に重視される業種として、金融機関と不動産業があります。理由はそれぞれ異なります。

  • 金融機関では「事業価値」という概念がなじまない:銀行や保険会社にとって預金や保険負債は、返済すべき借金であると同時に事業の原材料でもあります。有利子負債を差し引いて事業価値を求めるEV/EBITDAのような指標は成立しにくく、株式価値ベースのPBRやPERが中心になります。詳しくは金融機関の企業価値評価をご覧ください。
  • 金融機関では自己資本そのものが事業規模を規定する:自己資本比率規制のもとでは、自己資本の大きさが取れるリスクの量を決めます。純資産が事業の器そのものである以上、純資産との比較で評価するのが自然です。
  • 不動産業では保有資産の含み損益が価値を左右する:取得時の簿価で計上された不動産が、現在の相場では大きく値上がり(値下がり)していることがあります。この場合、簿価純資産をベースにしたPBRは実態を反映せず、含み損益を反映した修正純資産と比べる必要があります。REITなどでは、こうした考え方を反映したNAV倍率が使われます(不動産・REITの評価)。
  • 資産の時価が把握しやすい業種ほど、純資産ベースの評価が機能する:有価証券や不動産のように市場価格を参照できる資産が中心の会社では、純資産の信頼性が高く、PBRが有効な指標になります。

非上場企業の評価でPBRをどう使うか

非上場企業には株価がないため、PBRを直接計算することはできません。使い方は大きく2通りあります。

1. 類似会社のPBRを当てはめる

類似会社比較法の一環として、事業内容の近い上場会社のPBRを求め、その中央値を対象会社の純資産に掛けて株式価値を概算します。手順はPERを使う場合と同じで、複数社を選び、外れ値を除き、中央値を採用するのが一般的です。

ただし、対象会社の純資産をそのまま使うと精度を欠きます。上場会社は監査を受け、減損や引当金の計上も一定の規律のもとで行われますが、非上場のオーナー企業では会計処理が税務の都合に寄っていることが多く、純資産の中身の質が揃わないためです。

2. 時価純資産法との関係で使う

より実務的なのはこちらです。時価純資産法は、貸借対照表の各資産・負債を時価に洗い替えて純資産を求める方法で、PBRの分母を実態に近づける作業そのものと言えます。時価純資産を求めたうえで、「その何倍で取引するか」を議論するのが、非上場M&Aでよく見られる価格形成のかたちです。

調整項目簿価のままの問題調整の方向
土地・建物取得時の簿価のままで、現在の相場と乖離していることが多い時価(実勢価格や路線価等を参考にした評価額)に洗い替え、含み益・含み損を反映する
有価証券・ゴルフ会員権取得原価で計上されたままの場合がある時価に評価し直す
売掛金・受取手形回収見込みの薄い債権が資産として残っている回収可能性を検討し、必要な貸倒引当を追加する
棚卸資産滞留在庫や陳腐化した商品が簿価で計上されている実際に販売できる価額まで評価減する
保険積立金支払保険料の累計と解約返戻金が一致しない解約返戻金相当額に置き換える
退職給付・未払残業引当金が不足している、または計上されていない必要額を負債として追加計上する
簿外債務・偶発債務保証債務や係争案件が帳簿に表れていない内容を確認し、金額が見積もれるものは負債として反映する

これらの調整を行った結果が時価純資産であり、簿価純資産と比べて大きく増減することも珍しくありません。含み益のある不動産を持つ会社では時価純資産が簿価を上回り、逆に不良債権や退職給付の積み残しがある会社では下回ります。調整に必要な資料は企業価値評価に必要なデータで整理しています。

簿価純資産の限界

純資産ベースの評価には、構造的な限界もあります。

  • 将来の収益力を表さない:純資産は過去の蓄積であり、これから稼ぐ力とは別ものです。同じ純資産でも、利益を出し続ける会社と赤字の会社では価値が違います。
  • 帳簿に載らない価値を拾えない:技術力、取引先との関係、従業員のスキル、許認可といった強みは資産計上されません。これらを反映するには営業権(のれん)を別途上乗せする発想が必要になります。
  • 成長中の会社では過小評価になりやすい:投資先行で純資産が薄い会社は、純資産だけを見ると価値が小さく見えます。こうした会社にはDCF法EBITDA倍率のほうが適します。
  • 非上場ゆえの流動性の差も別途検討が必要:上場会社のPBRをそのまま当てはめると、換金性の差が反映されません。非流動性ディスカウントの検討が必要になる場面があります。

M&Aでの使われ方:純資産倍率法(時価純資産+営業権)

中小企業のM&Aでは、「時価純資産の何倍で買うか」あるいは「時価純資産に営業権をいくら上乗せするか」という形で価格が話し合われることがよくあります。前者が純資産倍率法、後者が年買法(年倍法)と呼ばれる考え方で、実質的にはどちらもPBRの発想を非上場向けに翻訳したものです。年買法の詳細は年買法とはで解説しています。

考え方算式のイメージ特徴と留意点
時価純資産法(単体)時価純資産 = 株式価値客観性が高く、清算に近い場面や資産保有型の会社に向く。収益力が価格に反映されない。
純資産倍率法時価純資産 × 倍率 = 株式価値収益力の高い会社には1倍超、低い会社には1倍未満の倍率が意識される。倍率の根拠を説明できるかが要点。
年買法(時価純資産+営業権)時価純資産 + 正常利益 × 年数 = 株式価値純資産に収益力を足す形で分かりやすい。上乗せする年数の根拠が乏しくなりやすい点に注意。

これらは簡便で交渉の共通言語になりやすい一方、倍率や年数に明確な理論的裏づけがあるわけではありません。実務では、時価純資産を土台としつつ、DCF法や類似会社比較法でも試算し、複数の結果が重なるレンジを探るのが安全です。EV/EBITDA倍率での試算はEV/EBITDA倍率の計算ツール、将来キャッシュフローからの試算はDCF計算ツールで確認できます。

計算例2つ

例1:上場会社のPBRとROE・PERの関係

C社(上場)の前提。
株価 1,800円、発行済株式数 4,000万株 → 時価総額 = 720億円
純資産 600億円 → BPS = 600億円 ÷ 4,000万株 = 1,500円。
PBR = 1,800円 ÷ 1,500円 = 1.2倍(=720億円 ÷ 600億円 でも同じ)。
当期純利益 48億円 → ROE = 48億円 ÷ 600億円 = 8.0%、EPS = 120円、PER = 1,800円 ÷ 120円 = 15.0倍。
検算:ROE 8.0% × PER 15.0倍 = 1.2倍でPBRと一致します。
ここで、純利益が同じまま自己株式の取得で純資産が500億円に減ったと仮定すると、ROEは9.6%に上がり、時価総額が変わらなければPBRは1.44倍に上昇する計算になります。
(仕組みを示すための例・目安です。実際の水準は市況で変動します)

例2:非上場会社の時価純資産と純資産倍率

D社(非上場・卸売業)の前提。簿価純資産 3億円。
ステップ1:時価純資産への洗い替え
・本社土地の含み益 +8,000万円
・滞留在庫の評価減 △2,000万円
・回収困難な売掛金の追加引当 △1,500万円
・退職給付引当の不足 △3,000万円
・保険積立金と解約返戻金の差額 +1,000万円
調整額の合計 = +2,500万円。
含み益に対する税負担を仮に30%見込むと △2,400万円(8,000万円 × 30%)。
時価純資産 = 3億円 + 2,500万円 - 2,400万円 = 約3.01億円
ステップ2:倍率を当てはめる
類似上場会社のPBR中央値を1.1倍、非上場ゆえの流動性の差を20〜30%と仮定すると、
調整後の倍率の目安 = 1.1倍 ×(1-20〜30%)= 約0.77〜0.88倍。
株式価値のレンジ = 3.01億円 × 0.77〜0.88 = 約2.3億円 〜 約2.6億円
参考:年買法で見た場合
正常利益 4,000万円 × 3年分 = 1.2億円を営業権として上乗せすると、3.01億円 + 1.2億円 = 約4.2億円。
(数値はすべて計算の流れを示すための仮定・目安です。倍率・ディスカウント率・年数は個別事情と市況で変動します)

例2で確認したいのは、純資産ベースの結果と収益力ベースの結果が大きく食い違うことがある、という点です。この会社が安定して利益を出せているなら純資産だけの評価は低すぎ、逆に利益が細っているなら営業権を3年分乗せた金額は高すぎるかもしれません。どちらが正しいかを一義的に決めることはできないため、複数の手法で試算し、その差が生じる理由を説明できるようにしておくことが実務では重要になります。

PBRを使うときの注意点

  • 1倍割れを機械的に「割安」と読まない:低収益が続く見込みなら1倍割れが妥当な評価であることもあります。ROEと事業の見通しをセットで確認します。
  • 簿価の質を確認する:減損を先送りしている、引当金が不足している、といった事情があれば、表示された純資産は実態より大きく見えます。
  • 債務超過ではPBRが意味をなさない:純資産がマイナスの会社では倍率を計算できません。この場合は収益力ベースの評価か、再生を前提とした別の枠組みで検討します。
  • 無形資産中心のビジネスでは倍率が構造的に高くなる:数字の高さだけを見て「割高」と判断すると誤ります。同業種内での比較を徹底します。
  • 収益性指標と併用する:PBRだけで完結させず、PER、ROE、EV/EBITDA、DCF法と組み合わせてレンジで捉えるのが基本です。評価結果の読み方は評価レポートの見方で整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q. PBR1倍割れは買いのサインですか?

A. 一概には言えません。1倍割れの背景に低い資本効率や構造的な業績不振があるなら、その評価は妥当かもしれません。逆に、一時的な悲観や資本政策の見直し余地があるなら、見直される可能性もあります。ROE、事業の見通し、株主還元の方針をあわせて確認することが大切です(投資成果を保証するものではありません)。

Q. PBRとPERはどちらを重視すべきですか?

A. 目的次第です。収益力を見るならPER、資産価値や解散価値との比較を見るならPBRが向いています。両者はPBR=ROE×PERで結ばれているため、片方だけでなくROEを挟んで一体的に読むと、会社の資本効率と市場の期待が同時に見えてきます。

Q. PBRは何倍が適正ですか?

A. 一律の適正値はありません。ROEが株主資本コストと等しいときにPBRは理論上1倍になる、という関係が一つの目安です。実務では、同業他社の中央値と、その会社自身の過去の推移との比較で相対的に判断します。水準は市況や金利環境でも変動します。

Q. 非上場企業でもPBRは計算できますか?

A. 株価がないため自社のPBRを直接求めることはできません。代わりに、類似する上場会社のPBRを対象会社の純資産に当てはめる方法や、時価純資産を求めたうえで「その何倍か」を議論する方法を使います。いずれの場合も、簿価純資産をそのまま使うのではなく含み損益を反映することが前提になります。

Q. 簿価純資産と時価純資産はどのくらい差が出ますか?

A. 会社によって大きく異なります。古くから土地を保有している会社では含み益で時価純資産が大きく上振れすることがあり、逆に滞留在庫や回収困難な債権、退職給付引当の不足がある会社では下振れします。差の大きさは決算書だけでは分からないため、資産項目を一つずつ確認する作業が必要です。詳しくは時価純資産法をご覧ください。

Q. 純資産が少ない会社は評価が低くなりますか?

A. 純資産ベースの手法だけで評価すればそうなりますが、それが会社の実力を表しているとは限りません。少ない資産で高い利益を上げている会社は、収益力ベースの手法では高く評価されます。純資産が薄い会社ほど、DCF法やEBITDA倍率など将来の収益に着目した手法を併用することが重要です。

まとめ

PBRは「株価÷BPS」または「時価総額÷純資産」で計算する、純資産に対する市場評価を示す指標です。1倍割れは解散価値との比較という意味を持つと同時に、資本効率が投資家の期待に届いていないというシグナルでもあります。PBR=ROE×PERという関係を押さえておけば、倍率の高低を「資本効率」と「将来への期待」に分解して説明できるようになります。

業種による水準差は、価値の源泉がどれだけ帳簿に載るかの違いによるものです。非上場企業の評価では、簿価純資産をそのまま使わず、含み損益や引当不足を反映した時価純資産に洗い替えたうえで、その何倍かという形で議論するのが実務の基本になります。純資産は過去の蓄積であって将来の収益力を表さないため、DCF法や類似会社比較法と併用し、幅を持ったレンジとして捉えることが納得感のある評価につながります。

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