介護事業の売却相場|稼働率・加算・人員基準で変わる価格と、指定の承継

最終更新: 2026-09-12

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介護事業のM&Aは、経営者の高齢化と後継者不在、人材確保の難しさ、報酬改定への対応を背景に、事業所単位・法人単位ともに件数が増えている分野です。「うちのデイサービスはいくらで売れるのか」「訪問介護の事業所だけ譲れるのか」と考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。介護事業は、収入の大半が公的な介護報酬であるため収益の予見性が高い一方、稼働率・加算・人員基準・指定(許認可)という制度側の要素が価格を大きく左右する、独特の業種です。

本稿では、訪問系・通所系・施設系・障害福祉というサービス類型ごとに価格の作り方を整理したうえで、稼働率と要介護度構成、加算の取得状況、人員基準の充足、処遇改善の取り扱い、指定の承継とスキームの違い、実地指導と返還金のリスク、賃借物件の論点、買い手のタイプ別の評価、価格を上げる準備までを解説します。評価手法そのものの詳しい解説は介護・福祉事業のバリュエーション医療法人のバリュエーションに譲り、ここでは「相場と売却の実務」に絞ります。金額・倍率はいずれも一般的な目安であり、個別の事業所の価格を示すものではありません。

結論:介護事業の価格は「安定した収益力」に制度リスクの調整を加えて決まる

介護事業の売却価格は、おおむね次の3つの要素の組み合わせで決まります。

  • 実質的な収益力:役員報酬や一過性の補助金・助成金を調整した営業利益・EBITDA。介護報酬という公的な財源に支えられるため、売上の予見性は高い部類に入ります。
  • 純資産と資産の中身:施設・設備、敷金や保証金、有利子負債、退職金の積立状況、未払残業代などの潜在的な債務。
  • 制度に紐づく無形の価値:指定(許認可)、稼働率と利用者基盤、加算の取得状況、人員基準を満たす有資格者、地域でのケアマネジャーや医療機関との関係。

一方で、介護報酬は数年ごとに改定されるため、買い手は「今の報酬体系が続く前提の利益」をそのまま評価するとは限りません。改定の影響を受けにくい収益構造か、加算に過度に依存していないかが、レンジの上側に寄るか下側に寄るかを分けます。会社売却全般の相場観は会社売却の相場はいくらか、規模による違いは会社売却の規模別の相場、業種ごとの着眼点は業種別の企業価値評価のポイントで整理しています。

サービス類型別に見る価格の作り方

一口に介護事業といっても、初期投資の大きさ、収益の安定性、人材確保の難しさは類型によって大きく異なります。買い手が価値を感じるポイントも変わります。

サービス類型収益・コストの特徴価格の作り方と評価の傾向
訪問介護・訪問看護設備投資が小さく、ヘルパー・看護師の人数と稼働が売上に直結。人材確保が最大の制約純資産が小さいため、実質営業利益に対する営業権が価格の中心。有資格者の在籍と定着で評価が分かれる
通所介護(デイサービス)・通所リハ送迎車両と施設が必要。定員に対する稼働率が収益を決める固定費型稼働率が高いほど利益率が跳ね上がるため、稼働の水準と推移が価格を大きく左右する
施設系(有料老人ホーム・サ高住・グループホームなど)建物への投資または長期の賃借が前提。入居率と家賃・介護収入の二本立て不動産の所有・賃借の別で価格の作り方が変わる。入居率と待機状況が重視される
居宅介護支援(ケアマネ事業所)単独では利益が薄いが、他サービスへの導線として価値がある単体の収益力より、併設事業とのつながりや地域での関係性が評価される
障害福祉サービス(就労支援・グループホームなど)報酬体系が介護保険とは別。利用者の確保と支援の質、工賃や就労実績が問われる指定の類型ごとに要件が異なるため、承継の可否と手続を早期に確認する必要がある

実務では、これらを組み合わせて多角化している法人が多く、事業所ごとに収益力とリスクを分けて評価するのが一般的です。複数事業所を持つ場合、事業所別の損益(人件費・地代家賃・送迎費まで配賦したもの)を作っておくと、買い手の評価が精緻になり、赤字事業所の存在で全体が割り引かれる事態を避けやすくなります。

売却相場の目安(年買法・EV/EBITDA倍率)

手法計算の考え方中小の介護事業での目安(一般論)
年買法(時価純資産+営業権)時価純資産+実質営業利益×年数営業利益の2〜4年分程度を加算するレンジで議論されることが多い
EV/EBITDA倍率法EBITDA×倍率=事業価値(EV)。純有利子負債を調整して株式価値へ一般に3〜6倍程度のレンジが目安とされることが多い
事業譲渡での価格対象事業所の営業利益×年数、または利用者数・定員をもとにした目安事業所単位の小規模な取引では、数百万円〜数千万円のレンジで議論されることがある
DCF法将来のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引く施設系など投資回収の期間が長い案件で併用されることがある

年買法の考え方は年買法とは、倍率法の考え方は類似会社比較法(EV/EBITDA倍率)、資産評価は時価純資産法とはで解説しています。介護事業では、報酬改定の不確実性を割引率や倍率に反映させる考え方が取られることがあり、同じ利益水準でも他業種より慎重に見られる場面があります。

計算例:実質営業利益3,000万円の介護事業会社(仮の数値)

説明のため、次のような仮の会社を想定します。デイサービス2か所と訪問介護1か所を運営し、売上高4億円。決算書上の営業利益2,200万円、減価償却費800万円。役員報酬が同規模の会社の水準より800万円ほど多く、これを調整すると実質営業利益は3,000万円、実質EBITDAは3,800万円になるとします。時価純資産は8,000万円(現預金7,000万円、有利子負債5,000万円を含む)とします。

手法計算株式価値の目安
年買法(2〜4年分)時価純資産8,000万円+実質営業利益3,000万円×2〜4年約1.4億〜2.0億円
EV/EBITDA倍率法(4〜6倍)EBITDA3,800万円×4〜6倍=EV約1.5億〜2.3億円、+現預金7,000万円−有利子負債5,000万円約1.7億〜2.5億円
潜在債務を控除した場合上記から、未払残業代の見積り1,000万円と返還リスクの引当500万円(いずれも簿外)を控除約1.6億〜2.4億円
上の数値はすべて説明用の仮の数値です。実際の倍率・年数は、サービス類型、稼働率、加算の状況、人員体制、買い手の数などで変わります。あくまで考え方の例・目安としてご覧ください。

どこまで利益の調整が認められるかは正常収益力とはの考え方がベースになります。自社の数字で試すなら年買法の無料計算ツールEV/EBITDA倍率の無料計算ツールが使えます。事業価値と株式価値の関係は企業価値と株式価値の違いをご覧ください。

稼働率と利用者構成が価格を動かす

稼働率は固定費型の事業ほど効く

通所介護や施設系のように固定費の比率が高い事業では、定員に対する稼働率が数ポイント違うだけで営業利益が大きく変わります。買い手は、直近数年の月次の稼働率の推移、季節変動、定員に対する余裕(受け入れ余力)を確認します。稼働率が低い事業所は利益が出ていなくても、買い手が自社の集客力で埋められると判断すれば、改善の余地として評価されることがあります。逆に、すでに満床・満員に近い事業所は、収益は安定している一方で「これ以上伸びしろがない」と見られ、増設余地や周辺エリアの需要とあわせて説明することが有効です。

要介護度の構成と利用者の入れ替わり

  • 要介護度の分布:報酬単価に直結します。重度の利用者が多い場合は単価が高い一方、必要な人員体制や医療的ケアの負担も大きくなります。
  • 平均利用回数・利用月数:継続的に利用されているか、短期で入れ替わっているか。
  • 新規紹介の経路:居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、病院の連携室など。特定のケアマネジャーや医療機関への依存度が高い場合、その関係が経営者個人に紐づいていないかが論点になります。
  • 待機者の状況:施設系では待機の有無が将来の稼働の裏付けになります。
  • 自費サービスの比率:介護保険外の収入は報酬改定の影響を受けにくく、収益の多角化としてプラスに評価されることがあります。

加算の取得状況と人員基準の充足

加算は「取れているか」と「維持できるか」の両方を見られる

各種加算を適切に取得している事業所は、同じ利用者数でも収益性が高くなります。買い手は、どの加算をいくら算定しているか、算定要件(人員配置、研修の実施、記録の整備など)を実態として満たしているかを確認します。要件を満たさないまま算定していた場合は、後述する返還のリスクにつながるため、加算の算定根拠となる記録が整っているかは重要な確認事項です。

また、加算に大きく依存した収益構造は、報酬改定で加算の要件や単位数が見直された際に利益が減るリスクとして意識されます。基本報酬でどの程度の利益が出ているのかを分けて示せると、収益の安定性を説明しやすくなります。

人員基準の充足は取引の前提条件

指定を受けて事業を続けるには、サービス類型ごとに定められた人員基準を満たす必要があります。管理者、サービス提供責任者、生活相談員、看護職員、機能訓練指導員など、必要な職種と人数がそろっているか、常勤換算の計算が正しいかは、デューデリジェンスで必ず確認されます。人員基準を満たしていない状態が判明すると、価格の減額にとどまらず、是正されるまで取引を進めないという条件が付くこともあります。

買い手は、人員配置表、常勤換算の計算資料、資格証の写し、シフト表を突き合わせて確認します。慢性的に欠員が出ている、派遣職員で基準をかろうじて満たしているといった状況は、買収後の追加コストとして価格に反映されます。基準の解釈は自治体によって運用が異なることがあるため、具体的な判断は所管の行政庁や社会保険労務士などの専門家に確認してください。

処遇改善の取り扱い

処遇改善に関する加算は、受け取った額を職員へ賃金として支給することが前提となる仕組みです。評価上は、この部分を利益として扱わないのが基本であり、支給実績と計画・実績報告が整合しているかが確認されます。支給が不足していれば返還の対象となり得ますし、逆に加算額を超えて支給している場合はその差額が実質的なコストになります。加算の受け取りと支給の対応関係を整理した資料を用意しておくと、評価の議論がスムーズになります。

指定の承継:株式譲渡と事業譲渡で扱いが違う

介護事業のM&Aで最も注意が必要なのが、指定(許認可)の扱いです。ここを誤ると、譲渡日から報酬を請求できないという事態になりかねません。

スキーム指定の扱い実務上の注意点
株式譲渡法人格は変わらないため、法人が受けている指定はそのまま継続するのが原則役員・管理者の変更に伴う届出が必要。欠格事由への該当がないか、変更届の提出漏れがないかを確認する
事業譲渡指定は自動的には移らない。譲受側が新たに指定を受けるのが原則指定の申請は締切と適用開始日が決まっていることが多く、スケジュール設計が要。空白期間が生じないよう事前相談が不可欠
会社分割承継の可否と手続は自治体の運用により異なる早い段階で所管行政庁に確認し、必要な届出・申請を洗い出しておく

特に事業譲渡では、譲受側が指定基準(人員・設備・運営)を満たしたうえで申請し、指定の効力が発生する日と事業の引き継ぎ日をそろえる必要があります。申請の受付から効力発生までに一定の期間を要するのが通例で、月の途中での切り替えができない自治体もあります。利用者との契約の巻き直し、重要事項説明書の再交付、従業員の再雇用手続も個別に必要になるため、株式譲渡に比べて手間と時間がかかります。

手続の要否や進め方は自治体によって運用が異なり、制度改正もあります。基本合意の前の段階で、所管の行政庁への事前相談を行い、行政書士などの専門家とスケジュールを詰めておくことを強くおすすめします。スキームによる違いと税務の考え方は事業譲渡と株式譲渡の違い、手取り額の目安は手取り額の無料計算ツールで確認できます。

実地指導・返還金・労務のリスク

介護事業のデューデリジェンスでは、財務と同じかそれ以上に、運営基準の順守状況が調べられます。見つかった内容は、価格からの控除、表明保証と補償条項、あるいはクロージング条件という形で扱われます。調査全体の流れはデューデリジェンスとはで解説しています。

論点内容価格への影響(一般的な扱い)
実地指導・監査の指摘過去の指導内容と改善状況、記録の不備、運営基準違反の有無未改善の指摘があれば是正コストを控除、または改善を条件とされる
報酬の返還リスク算定要件を満たさない加算の算定、記録と実態の不一致返還見込み額を控除、または補償条項の対象。過去分の遡及範囲が論点になる
人員基準の未充足常勤換算の不足、必要な資格者の欠員採用コストや報酬減算の見込みを控除。是正が前提条件になることもある
未払残業代夜勤や送迎、記録作成の時間の扱い、固定残業代の運用、移動時間の賃金過去分の見積額を控除、または補償条項で手当てされることが多い
利用者・職員との係争事故(転倒・誤嚥など)に関する紛争、ハラスメント、労使トラブル係争中の案件は見積額の控除や補償の対象になりやすい
退職給付・有給退職金規程に対する積立不足、未消化の有給休暇積立不足額を有利子負債に準じて控除するのが一般的

訪問系では移動時間や待機時間の賃金の扱い、施設系では夜勤の休憩時間の運用が、それぞれ未払残業代の論点になりやすい傾向があります。売却を考え始めた段階で、勤怠の記録方法と賃金規程の運用を点検しておくと、減額や交渉の長期化を避けやすくなります。労務の具体的な判断は社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

賃借物件の論点

介護事業所の多くは賃借物件で運営されています。買い手にとっては、譲渡後もその場所で事業を続けられるかが前提条件になるため、賃貸借契約の中身が価格と成立可否の両方に影響します。確認しておきたいのは次の点です。

  • 契約期間と更新条件:定期借家か普通借家か、残存期間、更新の可否と条件。
  • 譲渡・支配権変更に関する条項:事業譲渡では賃貸人の承諾が必要になるのが通常です。株式譲渡でも、支配権の変更を解除事由とする条項が入っていることがあります。
  • 賃料水準と改定:相場と比べて高い場合は、その差が実質的なコスト増として評価に反映されます。経営者やその親族が所有する物件を借りている場合は、適正な水準への引き直しが行われます。
  • 敷金・保証金:返還される部分は資産として、償却される部分は費用として扱われます。
  • 原状回復・用途制限:撤退時の負担、建物の用途や消防・建築の基準への適合。

経営者所有の建物で事業を行っている場合、建物を売却対象に含めるのか、譲渡後も賃貸を続けるのかで、価格の組み立てと手取りが変わります。賃貸を続ける場合は、賃料と期間を事前に合意し、契約書に落とし込んでおくことが重要です。

買い手のタイプ別に見る評価の違い

買い手のタイプ主な狙い評価で重視する点価格・条件の傾向
同業の介護事業者エリアの拡大、サービス類型の補完、人材と指定の確保稼働率、人員体制、加算の状況、既存拠点との距離運営ノウハウがあるため改善余地も含めて評価し、レンジの上側を提示することもある
医療法人・医療グループ医療と介護の連携、退院後の受け皿の確保、地域包括ケアへの対応医療的ケアへの対応力、看護職員の配置、病院との距離連携の相乗効果を見込める立地では評価が高くなりやすい
異業種からの参入(不動産・人材・給食など)既存事業との相乗効果、安定収益の獲得、新規事業への参入現場を任せられる管理者が残るか、運営基準を守れる体制があるか運営の引き継ぎを重視するため、経営者や管理者の一定期間の関与が条件になりやすい
投資ファンド複数法人の統合による規模拡大、管理体制の強化キャッシュフローの安定性、報酬改定への耐性、経営を任せられる幹部の存在制度リスクを厳しく見るため、倍率はレンジ内で慎重になりやすい

地域や類型の補完関係を感じる買い手ほど高い価格を出しやすくなります。複数のタイプに打診して比較できる状況をつくることが有効です。相乗効果の考え方はM&Aのシナジーとは、上乗せ部分の位置づけはのれん(営業権)、買い手の探し方はM&Aの買い手の探し方で解説しています。従業員への開示の進め方は従業員への開示のタイミングもご覧ください。

価格を上げるための準備チェックリスト

準備項目具体的にやること価格への効果
実質利益の整理役員報酬、私的経費、一過性の補助金を切り分けて説明できるようにする正常収益力が高く評価され、倍率を掛ける土台が上がる
事業所別の損益人件費・地代家賃・送迎費まで配賦した事業所別の月次損益を作る収益源が明確になり、赤字事業所による全体の割引を避けやすい
稼働率の可視化定員・登録者数・実利用者数・稼働率を月次で追える表を作る収益の裏付けとなり、事業計画の信頼性が上がる
加算の根拠整備算定している加算の一覧と、要件を満たす記録・研修実績をそろえる返還リスクの見積り控除を小さくできる
人員基準の点検常勤換算の計算、資格証、配置表、シフトを突き合わせて確認する是正を条件とされる事態を避け、交渉が円滑になる
処遇改善の整理加算の受給額と職員への支給実績の対応表を作る利益の実態が正しく理解され、誤解による減額を防げる
労務の点検夜勤・移動時間・記録作成時間の扱い、固定残業代の運用を見直す未払残業代による控除や補償条項を抑えられる
指定関係の書類整備指定通知、変更届、実地指導の結果と改善報告を一式そろえる承継の見通しが立ち、スケジュールの遅延を避けられる
賃貸借契約の確認期間・更新条件・譲渡や支配権変更に関する条項、賃料水準を確認する取引の前提が固まり、成立可否のリスクを下げられる
属人化の解消管理者の育成、業務手順とマニュアルの整備、紹介経路の組織化経営者依存が減り、買収後の再現性が高いと評価される

売り手側で先に課題を洗い出す方法はセルサイドDDと売却前の磨き上げ、価値を高める具体策は会社を高く売るにはで解説しています。動き出す時期の考え方は会社を売却するタイミング、全体の進行は会社売却の流れ、仲介の費用感はM&A仲介手数料の相場をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. デイサービス1か所だけでも売却できますか?

A. 事業譲渡の形で、事業所単位の取引が行われることはあります。ただし、譲受側が新たに指定を受ける必要があり、申請のスケジュールと引き継ぎ日をそろえる設計が欠かせません。利用者との契約や従業員の雇用も個別に引き継ぐ形になるため、早い段階で所管の行政庁に相談することをおすすめします。

Q. 赤字の介護事業でも買い手はつきますか?

A. 指定、立地、利用者基盤、有資格の職員といった要素に価値があれば、買い手が見つかることはあります。特に同業にとっては、自社の運営ノウハウで稼働率やコスト構造を改善できると判断すれば、赤字でも検討の対象になり得ます。ただし価格は純資産ベースで慎重に評価されやすく、条件も厳しくなりがちです。詳しくは赤字会社の売却相場をご覧ください。

Q. 報酬改定の直前・直後、どちらで売るのがよいですか?

A. 一概には言えませんが、改定の内容が明らかになり、自社への影響を数字で示せる状態のほうが、買い手は評価しやすくなります。改定前に交渉する場合は、影響の試算を用意しておくと、買い手が過度に保守的な前提を置くのを避けられます。時期の考え方は会社を売却するタイミングも参考にしてください。

Q. 過去に加算の返還があった場合、価格に影響しますか?

A. 過去の返還そのものより、原因が是正され、同じことが起きない体制になっているかが見られます。記録の整備や研修の仕組みが改善されていることを示せれば、影響を限定できる場合があります。未処理の返還見込みがある場合は、その金額が価格から控除されるか、補償条項の対象になるのが一般的です。

Q. 自社の売却価格の目安はどう調べればよいですか?

A. まず直近数期の決算書から実質営業利益とEBITDAを整理し、年買法とEV/EBITDA倍率法でレンジを出します。そのうえで、未払残業代や退職金の積立不足、返還リスクなど差し引かれる可能性のある項目を確認すると、現実的な水準に近づきます。手順は会社売却シミュレーションのやり方で解説しています。

まとめ

介護事業の売却相場は、実質的な収益力と純資産をもとに、年買法(時価純資産+営業権)やEV/EBITDA倍率法で目安を出すのが基本です。そのうえで価格を左右するのは、稼働率と利用者構成、加算を要件どおりに取得できているか、人員基準を安定して満たせているか、そして労務と運営基準が整っているかという点です。さらに介護事業に固有の重要論点として、指定の承継があります。株式譲渡なら原則そのまま継続しますが、事業譲渡では譲受側が新たに指定を受ける必要があり、行政への事前相談とスケジュール設計が不可欠です。事業所別損益・稼働率・加算根拠・人員配置という4点の資料を整えておくことが、評価レンジの上側と円滑な成約につながります。評価手法をより詳しく知りたい方は介護・福祉事業のバリュエーション医療法人のバリュエーションをあわせてご覧ください。

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