のれん償却 計算ツール

M&Aで発生するのれんの金額と、日本基準の定額償却による年間償却額を、無料・登録不要で自動計算します。のれん償却後の営業利益、営業赤字になる償却年数の閾値、税務上の資産調整勘定(5年均等)とのズレまで一度に確認できます。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。

取得価額・時価純資産・取得割合・償却年数を入力すると、のれんの金額、日本基準の定額償却による年間償却額、営業利益への影響を計算します。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。

取得価額30,000 万円
時価純資産 × 取得割合10,000万円 × 100%10,000 万円

のれん

20,000万円

2億円

年間のれん償却額(定額法・10年)

2,000万円/年

販売費及び一般管理費に計上され、営業利益を押し下げます

営業利益への影響

のれん償却前の営業利益3,000 万円
のれん償却額2,000 万円
のれん償却後の営業利益1,000 万円

のれん 20,000万円 ÷ 償却前営業利益 3,000万円 = 6.7。償却年数が6.7年を下回ると、のれん償却後の営業利益はマイナスになります(赤字にしないための最短の償却年数は 7)。

償却年数を変えたときの比較(万円)

償却年数年間償却額償却後の営業利益
36,667-3,667
54,000-1,000
102,0001,000
151,3331,667
201,0002,000

会計と税務のズレ

区分期間年間の金額
会計上ののれん償却(日本基準)10年・定額2,000 万円
税務上の資産調整勘定(事業譲渡等の場合)5年・均等4,000 万円

※ 会計と税務は同じにはなりません。株式取得の場合、個別財務諸表にのれんは計上されず(連結財務諸表で認識)、連結上ののれん償却費は損金になりません。一方、事業譲渡や非適格の組織再編などで生じる差額は税務上「資産調整勘定」として原則5年(60か月)で均等に損金算入されるため、会計の償却年数(上の例では10年)とズレます。どの取扱いになるかはスキームや適格判定によって変わるため、必ず税理士等にご確認ください。

※ 本計算機は目安です。実際の会計処理では、取得原価を識別可能な資産・負債(顧客関連資産や商標権などの無形資産を含む)に配分したうえで残額をのれんとするため、ここでの単純計算より、のれんの額は小さくなることがあります。償却年数の決定や減損の判定を含め、会計監査人・税理士等の専門家にご確認ください。

のれんはどう計算するか

のれんは、買収の対価が、買った会社の純資産(時価)を上回った差額です。式にすると次のとおりです。

のれん = 取得価額 −(時価純資産 × 取得割合)

たとえば時価純資産1億円の会社を100%、3億円で買収したなら、のれんは2億円です。60%だけ取得して1.8億円を払ったなら、対応する時価純資産は6,000万円なので、のれんは1.2億円になります。ここで使うのは簿価ではなく時価の純資産です。土地や有価証券の含み損益、退職給付の未計上分、回収見込みのない売掛金などを反映させたうえで差額を計算します。この考え方は時価純資産法と共通です。

この差額は、貸借対照表に載っていない価値に対して払った金額です。ブランド、顧客基盤、技術やノウハウ、優秀な人材、地域での信用、許認可――こうしたものが「のれん」として資産計上されます。のれんそのものの意味はのれん・営業権とはで、金額の考え方は営業権の計算方法で詳しく解説しています。償却の仕組みそのものはのれんの償却もあわせてご覧ください。

なお、厳密な会計処理では、取得原価をまず識別可能な資産・負債(顧客関連資産や商標権などの無形資産を含む)に配分し、そのうえで残った額をのれんとします。この配分を行うと、本ツールの単純計算よりのれんの額は小さくなるのが普通です。中小企業のM&Aでは配分まで行わないことも多いため、まずは単純な差額で規模感をつかむ、という使い方が現実的です。

償却期間は何年にするか

日本基準(日本の会計基準)では、のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法などにより規則的に償却することとされています。「20年」は上限であって標準ではありません。実務では5年、10年といった期間が選ばれることも多く、投資回収の見込み期間、対象事業の製品ライフサイクル、顧客との取引継続年数、キーパーソンの在籍見込みなどから合理的に決めます。根拠なく最長の20年を選ぶ、という決め方はできません。

償却期間を長くすれば年間の償却負担は軽くなり、買収後の利益は見た目上きれいになります。ただしその分、のれんが長く貸借対照表に残り続けるため、業績が想定を下回ったときの減損のリスクを長く抱えることになります。減損は一度に多額の損失が出るため、インパクトは償却よりはるかに大きくなります。逆に短期間で償却すれば、償却中は利益が圧迫されますが、早くリスクを抜けられます。どちらが良いという話ではなく、事業の実態に合わせて選ぶことになります。

ちなみに、IFRSや米国基準ではのれんの規則的な償却を行わず、毎期の減損テストで評価します。日本基準を採用する会社と国際的な基準を採用する会社とで、同じ買収をしても買収後の利益の見え方が変わるのはこのためです。基準の違いが評価に与える影響はIFRSと日本基準の評価の違いで整理しています。

営業利益への影響と「赤字になる年数」

日本基準では、のれん償却額は販売費及び一般管理費に計上されます。つまり営業利益の段階で引かれるため、買収後の営業利益は償却額の分だけ小さく見えます。買い手が「この買収は利益にどう効くのか」を判断するときに、まず見るのがこの点です。

本ツールでは、のれん償却前の営業利益を入力すると、償却後の営業利益に加えて営業赤字になる償却年数の閾値を表示します。計算は単純で、「のれん ÷ 償却前営業利益」がその閾値です。たとえばのれん2億円、償却前営業利益3,000万円なら、閾値は約6.7年。7年以上で償却すれば営業黒字を保てますが、5年で償却すると年4,000万円の償却費となり、営業利益は1,000万円の赤字になります。買収スキームを検討する初期段階で、「この価格で買うと何年償却なら黒字を維持できるか」を押さえておくと、価格交渉の判断材料になります。

もっとも、のれん償却費はキャッシュの支出を伴わない費用です。そのため、買収後の実力を見るときは償却前の利益(EBITDAに近い概念)で見る、という考え方もあります。EBITDAとはで解説しているとおり、EBITDAは償却の影響を除いた収益力を表す指標で、M&Aの世界で広く使われます。会計上の利益と、キャッシュを生む力を分けて見ることが大切です。買収によって見込む収益改善分についてはシナジーとはもあわせてご覧ください。

会計と税務は一致しない

ここが実務で最も誤解の多いところです。会計上ののれん償却費が、そのまま税金の計算で経費(損金)になるとは限りません。スキームによって扱いが変わります。

  • 株式取得の場合:買い手の個別財務諸表にのれんは計上されず、子会社株式が資産に載るだけです。のれんが出てくるのは連結財務諸表上で、その償却費は損金になりません。つまり会計上は利益が減っても、税負担は変わりません。
  • 事業譲渡や非適格の組織再編の場合:税務上、差額は「資産調整勘定」として認識され、原則5年(60か月)で均等に損金算入されます。会計で10年償却としていても、税務は5年。この期間差が税効果会計(一時差異)の論点になります。

本ツールでは、会計上の年間償却額と、税務上の資産調整勘定(5年均等)の年間額を並べて表示しています。両者が一致しないことを目で見て確認できるようにするためです。株式譲渡と事業譲渡でどう違うかは事業譲渡と株式譲渡の違いに、M&Aに関わる税金の全体像は中小企業M&Aの税制にまとめています。適格・非適格の判定を含め、実際の取扱いは必ず税理士等の専門家にご確認ください。

負ののれんになる場合

取得価額が時価純資産を下回ると、差額はマイナス、つまり負ののれんになります。日本基準では、まず取得原価の配分に誤りがないか(把握できていない負債や偶発債務がないか)を見直し、それでもなお生じる負ののれんは、原則として発生した事業年度の特別利益(負ののれん発生益)として一括計上します。毎期の償却は行いません。

負ののれんが出るのは、業績不振や簿外債務のリスクを織り込んで安く買った場合、後継者不在で売り急ぎがあった場合などです。会計上は利益が計上されますが、キャッシュが増えるわけではなく、「安く買えた」ことがそのまま得だとは限りません。安さの理由はデューデリジェンスで必ず確かめてください(デューデリジェンスとは)。価格の妥当性の検証は買収価格の妥当性の検証が参考になります。

よくある質問

Q. のれんの償却期間は自由に決められますか?

A. 自由ではありません。日本基準では20年以内で、かつ「その効果の及ぶ期間」にわたって規則的に償却する必要があります。投資回収の見込み期間、対象事業の顧客との取引継続年数、契約期間などから合理的に説明できる年数を選びます。決めた年数は継続して適用するのが原則で、後から都合よく変えることはできません。年数の設定は会計監査人・税理士等にご確認ください。

Q. のれん償却費は税金の計算で経費になりますか?

A. スキーム次第です。株式取得の場合、連結上ののれん償却費は損金になりません。事業譲渡や非適格の組織再編で生じた資産調整勘定は、原則5年均等で損金算入されます。会計と税務のどちらの話をしているのかを、社内でも明確に分けて議論することが大切です。

Q. のれんが大きすぎると何が問題ですか?

A. 毎期の償却負担が重くなり営業利益を圧迫すること、そして業績が計画を下回ったときに減損損失を計上するリスクを抱えることの2点です。減損は一度に大きな損失となるため、自己資本や金融機関の評価にも影響します。のれんが大きいということは、純資産を大きく超える価格で買ったということなので、価格の根拠を類似会社比較法(EV/EBITDA)などで多面的に検証しておくことをおすすめします。

Q. 中小企業でものれんを計上しますか?

A. 株式取得なら、買い手の個別財務諸表には子会社株式が計上されるだけで、のれんは出てきません。連結財務諸表を作らない中小企業では、のれんが帳簿に現れないこともあります。一方、事業譲渡で事業を買った場合は、個別財務諸表にのれん(営業権)が計上されます。どの処理になるかはスキームによって変わるため、顧問税理士に確認してください。

関連する無料ツール

※ 本ツールの金額はすべて目安です。実際の会計処理では取得原価を識別可能な資産・負債に配分したうえでのれんを算定し、償却期間は効果の及ぶ期間にもとづいて決定します。税務上の取扱いはスキームや適格判定によって変わります。実行前に必ず会計監査人・税理士等の専門家にご確認ください。本ツールは会計・税務に関する助言を行うものではありません。

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