役員退職金 計算ツール
役員退職金(役員退職慰労金)の支給額の目安と、受け取る側の税金・手取りの目安を、無料・登録不要で自動計算します。会社側は功績倍率法(最終報酬月額×勤続年数×功績倍率)で金額の目安を確認でき、個人側は退職所得控除・課税退職所得・所得税・住民税をふまえた手取りを概算できます。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。
最終報酬月額・勤続年数・功績倍率を入力すると、功績倍率法による役員退職金の目安と、受け取る側の税金・手取りの目安を計算します。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。
1. 支給額の目安(功績倍率法)
功績倍率法による支給額の目安
7,500万円
100万円 × 25年 × 3倍 = 7,500万円
※ 功績倍率法は実務でよく使われる考え方であり、法令で決まった率ではありません。同業・同規模の会社の支給実績などと比べて過大と判断された部分は、損金にならない可能性があります。支給額は株主総会の決議や役員退職慰労金規程にもとづき、税理士等に確認したうえで決めてください。
2. 受け取る側の手取りの目安(退職所得課税)
手取りの目安
6,171万円
= 6,171万円(税額合計 1,329万円・退職金に対して約17.7%)
※ 税額は執筆時点の一般的な計算(所得税の速算表・復興特別所得税2.1%・住民税10%)にもとづく概算です。同一年中のほかの退職手当、過去に受け取った退職金がある場合の調整、障害退職の加算、社会保険料の取扱い、税制改正などにより実際の税額は変わります。実際は税理士に確認してください。本計算機は税務の助言を行うものではありません。
役員退職金は「支給額」と「税金」の2つを分けて考える
役員退職金の話がややこしくなるのは、まったく性質の違う2つの論点が同時に出てくるからです。1つ目は「会社がいくら払えるか・払った額が損金として認められるか」という会社側(法人税)の論点。2つ目は「受け取った役員個人の税金がいくらになるか」という個人側(所得税・住民税)の論点です。同じ金額でも、会社にとっての意味と個人にとっての意味は違います。このツールでは、上段で支給額の目安、下段で手取りの目安と、順番に確認できるようにしています。
事業承継やM&Aの場面では、この2つに加えて「株価への影響」という3つ目の論点が入ります。役員退職金を支給すると純資産が減るため、時価純資産法で見た株価は下がります。オーナーが受け取る対価の一部を株式の譲渡代金ではなく退職金の形にすることで、全体の手取りが変わるケースもあります。株価そのものの考え方は事業承継の株価算定や非上場株式の評価方法で解説しています。組み合わせ方は必ず税理士等と一緒に検討してください。
計算1:功績倍率法による支給額の目安
役員退職金の適正額を考えるとき、実務でもっともよく使われるのが功績倍率法です。式はシンプルで、
役員退職金 = 最終報酬月額 × 役員としての勤続年数 × 功績倍率
となります。最終報酬月額は退任直前の役員報酬(月額)、勤続年数は役員として在任した年数(1年未満は切上げで扱うことが多い)、功績倍率は役職や会社への貢献度に応じた係数です。功績倍率は、代表取締役で3.0倍、専務で2.5倍、常務で2.0倍、平取締役で1.5倍、監査役で1.0〜1.5倍といった数字が例として挙げられることが多いのですが、これはあくまで実務でよく使われる考え方であり、法令で決まった率ではありません。国税庁の通達に「この倍率なら安全」と書かれているわけではなく、最終的には同業・同規模の会社の支給実績などと比べて「不相当に高額」でないかどうかで判断されます。
このツールでは、功績倍率法の本体に加えて功労加算を%で上乗せできるようにしています。創業者である、業績を大きく伸ばした、長期にわたり無報酬に近い時期があったなど、功績倍率だけでは表しきれない事情を織り込むための調整です。実務では本体額の30%以内とされることが多いものの、これも法定の上限ではありません。加算を大きくするほど「不相当に高額」と判断されるリスクは高まるため、根拠となる資料(議事録、業績推移、規程)を残しておくことが重要です。
注意したいのは、過大と判断された部分は損金にならない可能性があるという点です。損金算入が否認されると、会社側では法人税の負担が増える一方、受け取った個人側では退職所得として課税されたままになり、二重に不利になりかねません。また、支給には株主総会の決議(または定款の定め)が必要で、役員退職慰労金規程を整備しておくのが一般的です。退任の事実(実質的に経営から退いているか)も問われます。分掌変更で退職金を支給する場合は、報酬が概ね50%以上減っているか、経営の主要な地位から外れているかなど、より慎重な検討が必要です。
計算2:受け取る側の税金と手取り
退職金は、給与や賞与とは別枠の退職所得として、ほかの所得と分離して課税されます。長年の勤労に対する報酬をまとめて受け取るという性質から、税制上かなり優遇されているのが特徴です。計算は次の3ステップで進みます。
- 退職所得控除を引く:勤続20年以下は「40万円 × 勤続年数」(最低80万円)、20年超は「800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)」。たとえば勤続30年なら 800万円+70万円×10年=1,500万円が控除されます。
- 1/2にする:課税退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)× 1/2。ただし勤続5年以下の役員等(特定役員退職手当等)は 1/2 の適用がありません。短期間だけ役員に就いて多額の退職金を受け取る形での税負担の軽減を防ぐための取扱いです。ツールではチェックボックスで切り替えられます。
- 税額を計算する:課税退職所得に所得税の累進税率(5%〜45%の速算表)を適用し、算出した所得税額の2.1%を復興特別所得税として加算します。これに住民税10%を加えた合計が税額です。
具体例を挙げます。勤続30年、退職金5,000万円のケースでは、退職所得控除が1,500万円、差額3,500万円の1/2で課税退職所得は1,750万円。所得税は速算表で1,750万円×33%−153.6万円=約423万円、復興特別所得税が約8.9万円、住民税が175万円で、税額合計はおよそ607万円。手取りは約4,392万円、退職金に対する実効税率は約12%です。同じ5,000万円を役員報酬として受け取った場合と比べると、負担はかなり軽くなります。この差が、事業承継の場面で退職金が使われる大きな理由です。
一方で、勤続5年以下の役員のケースは様相が変わります。同じ5,000万円でも、勤続4年なら控除は160万円、1/2の適用もないので課税退職所得は4,840万円。累進税率の上のほうが適用され、税額は一気に膨らみます。役員在任が短い場合は、支給のタイミングそのものを含めて検討が必要です。
なお、このツールの税額は執筆時点の一般的な計算にもとづく概算です。同一年中に他の退職手当を受け取っている場合の調整、過去に退職金を受け取っている場合の勤続期間の重複調整、障害退職による加算、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合の源泉徴収(20.42%)など、実際にはさまざまな調整が入ります。税制も改正されます。実際は税理士に確認してください。
どんな場面で使うか
- 親族内承継・従業員承継:先代が退任するタイミングで退職金を支給し、株価を引き下げてから株式を移転する、という組み立てを検討する場面。税制の全体像は事業承継の税制を参照してください。
- M&Aでの売却:譲渡対価の一部を役員退職金として受け取る設計を検討する場面。買い手との交渉材料にもなります。M&Aに関わる税金は中小企業M&Aの税制にまとめています。
- 自社株の買取り資金:退職金と役員退職金と自己株式の取得を組み合わせて、後継者の資金負担を抑える設計を検討する場面。自己株式とはもあわせてご覧ください。
- 役員退職慰労金規程の見直し:規程に定めた倍率で試算し、実際に支給できる水準か(資金繰り・利益への影響)を確認する場面。
使うときの注意点
- 功績倍率は法定の率ではありません。倍率の妥当性は、同業・同規模の会社の支給実績との比較で判断されます。
- 支給には株主総会の決議が必要です。議事録・規程・支給根拠の資料を残してください。
- 多額の退職金は、その期の利益を大きく押し下げます。金融機関の格付けや借入への影響、資金繰りも同時に確認が必要です。
- 分掌変更(代表取締役から非常勤取締役へ、など)に伴う支給は、実質的に退職したといえるかがより厳しく問われます。
- 本ツールは社会保険料や、退職金の支給に伴う会社側の法人税の減少額までは計算していません。全体の設計は専門家と行ってください。
よくある質問
Q. 功績倍率は3.0倍までなら大丈夫ですか?
A. 「3.0倍までなら安全」という基準は法令にはありません。代表取締役で3.0倍前後という数字は実務でよく参照されますが、判断されるのは倍率そのものではなく、支給額が同業・同規模の会社と比べて不相当に高額でないか、という点です。最終報酬月額が実態よりかなり高く設定されている場合は、倍率が低くても過大と見られる可能性があります。逆に、長年の貢献が明確で根拠資料が整っていれば、説明できる余地は広がります。事前に顧問税理士と水準をすり合わせておくのが安全です。
Q. 勤続年数に1年未満の端数があるときはどうしますか?
A. 退職所得控除の計算では、勤続年数の1年未満の端数は切り上げて1年として扱うのが原則です(たとえば20年3か月なら21年)。本ツールも切上げで計算しています。一方、功績倍率法の勤続年数をどう数えるか(月割りにするかどうか)は、会社の役員退職慰労金規程の定めによります。規程がある場合はその定めが優先されます。
Q. 退職金を出すと株価はどれくらい下がりますか?
A. 単純化すると、支給額から法人税等の減少分を差し引いた金額だけ純資産が減るため、純資産をベースにした株価はその分下がります。加えて、支給した期の利益が落ちるため、利益をベースにした評価にも影響します。ただし影響の出方は評価方法によって違い、3つのアプローチのどれを使うかで結論は変わります。実際の金額は税理士による株価算定で確認してください。
Q. 会社にお金がない場合、現金以外で支給できますか?
A. 不動産や保険契約などの現物で支給する方法(現物支給)もありますが、時価評価や消費税の取扱いなど論点が増えます。分割支給も可能ですが、損金算入の時期の考え方が変わるため注意が必要です。いずれも設計を誤ると想定外の課税が生じるため、実行前に必ず税理士に確認してください。
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※ 本ツールの金額はすべて目安です。功績倍率法は法令で率が定められた計算方法ではなく、税額は執筆時点の一般的な計算にもとづく概算です。実際の損金算入の可否、税額、必要な手続きは個別の事情によって変わります。実行前に必ず税理士等の専門家にご確認ください。本ツールは税務・法務に関する助言を行うものではありません。
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