純資産価額方式 計算ツール

純資産価額方式は、会社の資産と負債をすべて相続税評価額に洗い替えて、その差額を株式数で割る方法です。小会社の原則的評価方式であり、中会社でも一定割合を占めます。財産評価基本通達185・186-2と評価明細書第5表の順序をそのまま実装しました。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。

1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を、財産評価基本通達185・186-2と「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」第5表の計算順序で求めます。評価差額に対する法人税額等に相当する金額の割合は、課税時期によって37%と38%が切り替わります。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。

相続税評価額による金額

帳簿価額による金額

計算結果

⑤ 純資産価額(相続税評価額)30,000万円
⑥ 純資産価額(帳簿価額)15,000万円
⑦ 評価差額に相当する金額15,000万円
⑧ 評価差額に対する法人税額等相当額(×38%)5,700万円
⑨ 課税時期現在の純資産価額24,300万円

⑪ 1株当たりの純資産価額

24,300

⑫ 80%評価後(該当なし)

24,300

入力前に確認すること

課税時期前3年以内に取得した土地・建物は「通常の取引価額」で入れる

評基通185は、課税時期前3年以内に取得または新築した土地等・家屋等について、課税時期における通常の取引価額によることとしています(帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められる場合は帳簿価額によることができます)。路線価等で評価して入力すると過小評価になります。

引当金は負債に入れない

評基通186は、貸倒引当金・退職給与引当金・納税引当金その他の引当金及び準備金を負債に含めないとしています。一方で、法人税等の期間対応額、未払固定資産税、被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金などは負債に含めます。

80%評価が定められているのは中会社・小会社の算式

評基通185のただし書は、179の(2)の算式(中会社)および(3)の1株当たりの純資産価額(小会社)について、取得者とその同族関係者の議決権の合計数が議決権総数の50%以下である場合に100分の80を乗じるという書き方をしています。大会社が納税義務者の選択により純資産価額によるときの取扱いは、この文言からは直接には読み取れません。適用の可否は税理士にご確認ください。

発行済株式数は「課税時期」のもの

1株当たりの金額を出すときに用いるのは、直前期末ではなく課税時期における発行済株式数です(自己株式を除きます)。

子会社株式を純資産価額で評価するときは法人税額等相当額を控除しない

評基通186-3は、評価会社が保有する取引相場のない株式等を純資産価額で評価する場合、その株式の評価においては評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しないとしています。

現物出資等で受け入れた資産がある場合

現物出資等により受け入れた資産の受入れ差額については別の取扱いがあり、課税時期の相続税評価額による総資産価額に占める現物出資等受入れ資産の割合が20%以下であれば加算しないこととされています。

※ 本ツールは財産評価基本通達185・186-2の算式を実装した概算です。各資産を通達に従って評価する部分(土地の路線価評価、非上場株式の評価など)は含んでいません。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

法人税額等相当額が37%から38%になりました

この方式の要が、評価差額に対する法人税額等に相当する金額の控除です。相続税評価額で見た純資産が帳簿価額で見た純資産を上回っている部分——つまり含み益に対して、「もし会社を清算したら法人税等がかかるはずだ」という考え方で一定割合を差し引きます。

この割合が、令和8年3月25日付の通達改正で37%から38%に引き上げられました。適用されるのは令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した財産の評価からです。国税庁の説明によれば、防衛特別法人税の創設に伴い、法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の税率の合計が37.7316%となったことを受けた改正とされています。

上のツールは課税時期を入力すると自動で37%と38%を切り替えます。1ポイントの差でも、含み益が大きい会社では金額に相応の差が出ます。ネット上の解説や古い計算シートは37%のままのものが多いので、課税時期を確認してください。

計算の順序

内容
純資産価額(相続税評価額)= 総資産 − 負債
純資産価額(帳簿価額)。マイナスのときは0とする
評価差額 = ⑤ − ⑥。マイナスのときは0とする
評価差額に対する法人税額等相当額 = ⑦ × 38%(または37%)
課税時期現在の純資産価額 = ⑤ − ⑧
1株当たりの純資産価額 = ⑨ ÷ 課税時期における発行済株式数
議決権割合50%以下の同族株主グループの場合 = ⑪ × 80%

⑥と⑦でマイナスを0にするのがポイントです。含み損がある会社では評価差額がマイナスになりますが、その場合に法人税額等相当額を「加算」するのではなく、控除しないだけにとどめます。含み損は純資産価額そのものにすでに反映されているためです。

入力前に確かめる4つのこと

課税時期前3年以内に取得した土地・建物

通達は、課税時期前3年以内に取得または新築した土地等・家屋等について、課税時期における通常の取引価額で評価することとしています(帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められる場合は帳簿価額でも可)。路線価や固定資産税評価額で入れてしまうと過小評価になります。直前に不動産を買った会社ほど、ここで結果が変わります。

引当金は負債に入れない

貸倒引当金・退職給与引当金・納税引当金その他の引当金・準備金は負債に含めません。繰延税金負債も同様です。一方で、帳簿に載っていなくても未納公租公課、未払利息、課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税、死亡により支給が確定した退職手当金などは負債に含めます。決算書をそのまま転記すると、ここでずれます。

発行済株式数は「課税時期」のもの

類似業種比準価額では直前期末の株式数を使いますが、純資産価額では課税時期の株式数です。同じ評価の中で基準日が違うので注意してください。自己株式は除きます。自己株式の扱いは自己株式とはをご覧ください。

子会社株式には法人税額等相当額を控除しない

評価会社が別の取引相場のない株式を持っている場合、その株式を純資産価額で評価するときには法人税額等相当額を控除しません(評基通186-3)。親会社の計算で一度控除しているため、二重に引かないという趣旨です。持株会社の評価ではここが効きます。

80%評価が使える場面

取得者とその同族関係者の議決権の合計数が議決権総数の50%以下である場合、1株当たりの純資産価額に80%を乗じます。支配権を持たない立場では会社財産を自由に処分できないことを踏まえた取扱いです。

ただし通達のただし書は、この80%評価を「179の(2)の算式(中会社)及び(3)の1株当たりの純資産価額(小会社)について」と書いています。大会社が納税義務者の選択により純資産価額によるときの取扱いは、この文言からは直接には読み取れません。適用の可否は税理士にご確認ください。

なお議決権割合は1%未満を切り捨てますが、50%超51%未満の範囲にあるときは切り上げて51%とします。つまり50%をわずかに超えるだけで80%評価は使えなくなります。議決権割合の計算は議決権比率 計算ツール、どちらの評価方式によるかの判定は同族株主の判定ツールをご利用ください。

よくある質問

M&Aで使う時価純資産法と同じですか

考え方は似ていますが別物です。M&Aの時価純資産法は資産・負債を時価に洗い替えて株式価値を求めるもので、法人税額等相当額の控除という仕組みはありません。相続税評価では通達に従った評価額を使い、清算を前提とした税負担を控除する——この違いが結果の差になって表れます。M&Aの文脈なら時価純資産 計算ツールをお使いください。

小会社なら純資産価額だけ計算すればよいですか

小会社でも、納税義務者の選択によりLを0.50として類似業種比準価額との併用方式を採ることができます。含み益が大きい会社では併用のほうが低くなることがあるので、両方を計算して比べてください。規模の判定は会社規模区分の判定ツールで行えます。

評価額を下げたいのですが

本稿は節税の方法を案内するものではありません。ただ一般論として、評価額は会社の実態を反映して決まるものであり、実態の伴わない資産構成の変更は通達上も問題とされます。特定の評価会社の判定について、通達は合理的な理由のない資産構成の変動はなかったものとして判定する旨を明記しています。個別の検討は税理士にご相談ください。

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※ 本ツールは財産評価基本通達185・186-2の算式を実装した概算です。各資産を通達に従って評価する部分(土地の路線価評価、取引相場のない株式の評価など)は含んでいません。現物出資等受入れ差額がある場合など、個別の取扱いもあります。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

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