時価純資産の調整シート
簿価純資産を出発点に、土地や有価証券の含み損益、保険の解約返戻金との差額、退職給付債務や未払残業代といった未計上の債務を一つずつ足し引きして、時価純資産(修正純資産)を組み立てるツールです。調整前後の一覧表、1株当たり時価純資産、年買法での参考値までまとめて確認できます。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。
簿価純資産に、資産の含み損益と負債の未計上額を足し引きして時価純資産を組み立てます。すべて任意入力で、金額を入れた項目だけが調整されます。プラスは純資産を増やす調整、マイナスは減らす調整です。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。
資産側の調整(含み損益・評価減)
負債側の調整(未計上・簿外債務)
税効果
簿価純資産
10,000万円
調整の合計
+780万円
資産 +3,000/負債 -1,200/税効果 -1,020
時価純資産
10,780万円
1億780万円
調整の内訳
| 項目 | 区分 | 増減(万円) | 調整後の累計(万円) |
|---|---|---|---|
| 簿価純資産 | 出発点 | — | 10,000 |
| 土地の含み損益 | 資産 | +3,000 | 13,000 |
| 退職給付債務の未計上額 | 負債 | -1,200 | 11,800 |
| 含み益に対する税負担(実効税率 34.0%) | 税効果 | -1,020 | 10,780 |
| 時価純資産 | 調整後 | +780 | 10,780 |
1株当たり時価純資産
1株当たり時価純資産
107,800円/株
時価純資産 10,780万円 ÷ 1,000株
年買法での参考値
時価純資産 + 正常営業利益 × 年数
15,280万円
10,780万円 + 営業権 4,500万円 = 1億5,280万円
※ 不動産・有価証券・保険の時価は、利用者が調べた金額を入れる前提のツールです(路線価・公示地価・鑑定評価・解約返戻金の証明書など)。税効果の取り扱いは実務で幅があり、控除しない前提で計算することもあります。ここに出た金額は目安であり、実際の評価・税務の判断は税理士・不動産鑑定士等の専門家にご確認ください。
時価純資産とは何か
決算書に載っている純資産は、あくまで会計のルールにしたがって計算された「帳簿上の」金額です。土地は原則として買ったときの価格のまま置かれ、何十年も前に取得した不動産であれば、実際の価値と帳簿価額が大きく離れていることも珍しくありません。逆に、退職金の支払い義務や未払いの残業代のように、実際には負担が確定しているのに帳簿には載っていない項目もあります。こうしたズレを一つずつ時価に置き直して純資産を計算し直したものが時価純資産で、修正純資産と呼ばれることもあります。考え方の全体像は時価純資産法とはで解説しています。
時価純資産が重要なのは、これが「会社を今日解散して、資産を売り、負債を返したら手元にいくら残るか」に近い数字だからです。将来の収益力を織り込むDCF法や、同業の上場会社の倍率から逆算する類似会社比較法と違い、時価純資産は現時点の財産の裏付けを示します。買い手にとっては「最低限これだけの財産はある」という下支えになり、売り手にとっては価格交渉の床になります。3つのアプローチの位置づけは株式評価の3つのアプローチで整理しています。
資産側で調整する項目
もっとも金額が動きやすいのが土地です。取得時期が古い会社では含み益が、バブル期に取得した不動産では含み損が出ることがあります。時価の根拠としては、路線価、固定資産税評価額、公示地価、近隣の取引事例、不動産鑑定評価などが使われます。どれを使うかで金額は変わりますので、重要な物件であれば鑑定評価を取ることも検討されます。建物・設備は、税務上の耐用年数で償却が進み帳簿価額がごく小さくなっている一方、実際にはまだ十分使えるというケースでプラスの調整になります。
見落とされやすいのが保険積立金です。全額を損金として処理してきた保険は帳簿上ゼロでも、解約すれば返戻金が入ります。この差額は立派な含み益です。役員退職金の原資として積んでいる保険がある会社では、金額が大きくなることがあります(役員退職金と自社株の関係)。ゴルフ会員権も同様に、相場と帳簿価額の差を反映します。
反対にマイナス方向の調整もあります。長期間動いていない売掛金や、返済の見込みがない役員・関係会社への貸付金は、額面どおりの価値がありません。販売の見込みが立たない在庫、換価価値のない繰延資産も同じです。これらは買い手のデューデリジェンスで必ず指摘される項目なので、先に自分で洗い出しておくほうが交渉はスムーズに進みます(売り手側の事前準備(セルサイドDD))。
負債側で調整する項目
中小企業でとくに影響が大きいのが退職給付債務の未計上額です。従業員の退職金規程があるのに引当金を計上していない会社では、全員が自己都合で退職したと仮定した要支給額が、そのまま将来の負担になります。金額が数千万円規模になることもあり、時価純資産を大きく押し下げます。未払残業代も同様で、労働時間の管理や固定残業代の設計に不備があると、後から支払い義務が顕在化する可能性があります。
このほか、納付が遅れている税金・社会保険料、賃貸借処理しているリースの未経過分、係争中の案件や保証債務、店舗の原状回復義務なども、実質的には負債です。買い手はこれらをデューデリジェンスで洗い出し、見つかれば価格の減額や表明保証の条件として持ち出します。売り手が自分で先に把握しておけば、想定外の減額を避けやすくなります。
税効果をどう扱うか
含み益のある資産を実際に売却すれば、その利益に法人税等がかかります。したがって「含み益をそのまま純資産に加えるのは実態より大きい」という考え方が成り立ちます。これを反映するのが税効果の控除で、本ツールでは資産側の調整の純額がプラスのときに、その金額×実効税率を差し引く方式を採っています。実効税率の目安は実効税率 計算機で試算できます。
ただし、税効果の扱いは実務で幅があります。相続税の財産評価では法人税等相当額を一定割合で控除する取り扱いがあり、M&Aの当事者間の交渉では控除しない前提で話が進むこともあります。売却を予定していない資産(本社の土地など)の含み益に税負担を織り込むべきかという論点もあります。本ツールはチェックのオン・オフで両方の数字を見比べられるようにしていますので、どちらの前提で話しているのかを相手と確認する材料にしてください。最終的な取り扱いは税理士にご確認ください。
使いどころ
- M&Aの価格交渉で、価格の下支えとなる財産の裏付けを示したいとき。買い手は必ず純資産の中身を確認します。
- 年買法(年倍法)の計算をするとき。時価純資産に営業権を上乗せする方式なので、出発点となる時価純資産の精度がそのまま結果に効きます(年買法とは)。
- 親族内承継・役員従業員承継で、株式を移すときの価格の目安を考えるとき(事業承継の株価算定)。
- 資産をたくさん持つ一方で利益が小さい会社、不動産賃貸業など、収益力よりも保有財産のほうが価値の中心になる業態の評価。
- 自社の実力を確認する棚卸しとして。含み損や簿外債務が見つかれば、譲渡の前に手を打つ時間が生まれます。
注意点
- 不動産・有価証券・保険の時価は、利用者が調べた金額を入れる前提のツールです。金額の根拠(路線価図、鑑定評価書、解約返戻金の証明書など)を必ず手元に残してください。
- 時価純資産は現時点の財産の姿を示すもので、将来の収益力は反映されません。稼ぐ力のある会社では、これだけでは価値を過小に見ることになります(のれん・営業権とは)。
- 非上場株式では、市場で売りにくいことによる流動性ディスカウントや、少数株式か支配株式かの違いが別途論点になります。本ツールでは適用していません。
- 時価純資産がマイナスになった場合でも、収益力があれば価格が付くことはあります(赤字・債務超過の会社の売却)。
- 相続税評価(財産評価基本通達)の純資産価額方式とは、時価の取り方も税効果の扱いも異なります。目的に応じて使い分けが必要です。
- 本ツールの計算は目安です。実際の評価・税務・登記の判断は、税理士・不動産鑑定士・弁護士等の専門家にご確認ください。
よくある質問
Q. 土地の時価は何を使えばよいですか?
A. 目的と重要度で使い分けます。ざっくり把握するだけなら、路線価を0.8で割り戻す、固定資産税評価額を0.7で割り戻すといった簡便な方法が使われます。金額が大きく交渉に直結する物件では、不動産鑑定士の評価を取るのが確実です。いずれにしても、どの方法で出した金額かをメモに残しておくと、後の説明が楽になります。相手と前提が違うまま議論すると、価格の話がかみ合いません。
Q. 時価純資産と簿価純資産は、どちらが交渉で使われますか?
A. M&Aの実務では時価純資産が使われるのが一般的です。買い手は帳簿の数字をそのまま信用せず、資産の中身を確認したうえで価値を判断します。ただし、調整の項目や金額の置き方には主観が入るため、双方の時価純資産が一致することはまずありません。差が出た項目について根拠を出し合い、すり合わせていく過程そのものが交渉です。株式価値と企業価値の関係は企業価値と株式価値の違いで整理しています。
Q. 年買法の年数は何年にすればよいですか?
A. 中小企業のM&Aでは1〜5年、なかでも3年前後が使われることが多いといわれますが、決まったルールはありません。収益の安定性、取引先の分散度合い、社長個人への依存度、業界の見通しなどによって上下します。年数を1年変えるだけで金額が大きく動くため、この方式は「精緻な算定」というより「交渉の共通言語」として使われている面があります。考え方は年買法とはと年買法 計算機で確認できます。
Q. 1株当たり時価純資産は何に使いますか?
A. 株主が複数いる会社で、一部の株式だけを買い取る・移転する場合の目安になります。名義株の整理や少数株主からの買い取りでは、この単価が交渉の出発点になることがあります(名義株の整理)。なお、自己株式は議決権も配当請求権もないため、本ツールでは発行済株式数から差し引いて計算しています。少数株式の取引では支配権がない分のディスカウントが議論されることもあります。
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- 正常収益力とは|実力ベースの利益
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- 名義株の整理
- 事業承継の株価算定
ほかの無料ツール
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- 財務指標まとめ計算ツール|自己資本比率・ROICなど12指標
- DCF法 計算ツール
- EV/EBITDA倍率 企業価値計算機
- 実効税率 計算機|税効果の税率の目安に
- 役員退職金 計算ツール
- 減価償却 計算ツール
- 事業承継・M&Aの期限逆算プランナー
※ 本ツールは、利用者が入力した時価情報にもとづく概算です。時価の把握方法や税効果の扱いによって結果は変わります。数値はいずれも目安であり、税務・会計・不動産評価の判断は税理士・不動産鑑定士等の専門家にご確認ください。
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