同族株主の判定・配当還元価額 計算ツール

同じ会社の同じ株式でも、誰が取得したかによって評価額は何倍も変わります。会社を支配する側なら原則的評価方式、そうでないなら配当還元方式。この分かれ目を、財産評価基本通達188の基準と評価明細書の判定順序にもとづいて判定し、配当還元価額も計算します。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。

取引相場のない株式を相続・贈与で取得した人が、原則的評価方式(類似業種比準価額・純資産価額)によるのか、特例的評価方式(配当還元方式)によるのかを、財産評価基本通達188の定めにもとづいて判定します。配当還元価額もあわせて計算します。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。

① 議決権割合

議決権割合は1%未満の端数を切り捨てます。ただし50%超51%未満の範囲にあるときは切り上げて51%とします(評価明細書の記載方法等)。自己株式に係る議決権は0として計算します。

② 少数株式所有者の判定(議決権割合5%未満のときだけ使います)

判定結果

評価方式

配当還元方式

配当還元方式で評価します。ただし原則的評価方式による価額の方が低いときは、そちらによります。

  1. 1.筆頭株主グループが議決権総数の50%超(60%)を持つ会社なので、同族株主に当たるには議決権割合が50%超であることが必要です。
  2. 2.納税義務者のグループの議決権割合は20%で基準に満たないため、同族株主等以外の株主として配当還元方式によります。

③ 配当還元価額の計算

年配当金額(50円換算)

5.00

1株当たりの資本金等の額

5,000

配当還元価額

5,000

(年配当金額 5.00円 ÷ 10%)×(1株当たりの資本金等の額 5,000円 ÷ 50円)

※ 本ツールは財産評価基本通達188・188-2の定めを実装した概算です。同族関係者の範囲、中心的な同族株主に当たるかどうかの判断、種類株式や投資育成会社が株主である場合の特則などは個別の検討が必要です。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

同じ株式なのに評価額が変わる理由

考え方はこうです。会社を支配している人にとって株式は会社の財産そのものに近い意味を持ちます。配当を決めるのも、資産を処分するのも、自分たちの判断です。だから会社の利益や資産にもとづいて評価する——これが原則的評価方式です。

一方、ごく少数の株式しか持たない人にとって、その株式から得られるのは配当だけです。会社の資産を自由にできるわけでも、買い手を見つけて売れるわけでもありません。そこで、受け取れる配当を一定の利回りで割り戻した金額で評価する——これが配当還元方式です。

結果として、配当還元方式による価額は原則的評価方式より大幅に低くなるのが通常です。この差が大きいため、どちらに当たるかの判定は相続税額を左右します。

判定は2段階で進む

第1段階:グループの議決権割合

まず、取得者が属する同族関係者グループの議決権割合を見ます。基準となる割合は、筆頭株主グループがどれだけ持っているかによって変わります。

筆頭株主グループの割合同族株主等となる基準考え方
50%超50%超過半数を握るグループがある会社では、そのグループでなければ支配しているとは言えない
30%以上50%以下30%以上拮抗している会社では、30%以上あれば影響力を持つ
30%未満15%以上同族株主のいない会社。分散しているため、より低い割合でも影響力を持つ

間違えやすいのは1行目です。筆頭グループが50%超の会社では、30%持っていても同族株主にはなりません。50%超でなければ配当還元方式です。議決権割合そのものの計算は議決権比率 計算ツールをご利用ください。

第2段階:少数株式所有者かどうか

第1段階で同族株主等に当たっても、本人の議決権割合が5%未満なら、もう一段の判定があります。グループとしては支配側でも、本人の持分がごく小さいなら実質は少数株主と変わらないためです。順序は決まっています。

  1. 役員か——課税時期において役員(社長・理事長・代表取締役・専務・常務・監査役など)であれば原則的評価方式。法定申告期限までに役員となる者も含みます
  2. 本人が中心的な同族株主か——本人と配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族等の議決権の合計が25%以上なら原則的評価方式
  3. ほかに中心的な同族株主がいるか——いなければ原則的評価方式、いれば配当還元方式

3段階目の向きが直感と逆なので注意してください。ほかに中心的な同族株主が「いる」場合にだけ配当還元方式になります。ほかに誰も中心的な同族株主がいなければ、本人が実質的な中心と見られるため原則的評価方式です。なお、同族株主のいない会社(筆頭グループが30%未満)では2段階目は行わず、「単独で議決権総数の10%以上を持つ中心的な株主」の有無を見ます。

配当還元価額の算式

価額 =(その株式に係る年配当金額 ÷ 10%)×(1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円)

年配当金額は、直前期末以前2年間の配当金額の合計の2分の1を、資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数で割って求めます。特別配当・記念配当など毎期継続しないものは除きます。

重要な下限があります。年配当金額が2円50銭未満のとき、および無配のときは、2円50銭として計算します。つまり一度も配当したことがない会社でも、配当還元価額は0にはなりません。多くの中小企業は無配なので、実務ではこの下限がそのまま使われる場面が少なくありません。

もう1つ、配当還元価額が原則的評価方式による価額を超える場合は、原則的評価方式による価額で評価します(評基通188-2ただし書)。赤字続きで原則的評価額が低く出ている会社では、この逆転が現実に起こります。上のツールでは原則的評価額を入力して比較できます。

議決権割合の端数処理

評価明細書の記載方法等によれば、議決権割合は1%未満の端数を切り捨てます。ただし50%超から51%未満までの範囲にある場合は、切り上げて「51%」とします。50.4%を切り捨てて50%にしてしまうと「50%超」かどうかの判定が変わってしまうため、切り上げる扱いになっています。

また、自己株式に係る議決権は0として計算します。会社が自己株式を持っている場合、分母となる議決権総数が変わるため、各株主の割合が動きます。自己株式の仕組みは自己株式とはをご覧ください。議決権のない種類株式がある場合の扱いも個別に確認が必要です(種類株式とは)。

よくある質問

名義株がある場合はどうなりますか

名義だけ他人になっている株式は、実質的な所有者で判定するのが原則です。ただし実態の立証が問題になりやすく、判定そのものが争いになることもあります。整理の進め方は名義株の整理をご覧ください。

従業員持株会に譲渡する場合は

取得する側の議決権割合によって判定するという点は同じです。ごく少数の持分であれば配当還元方式によることが多くなります。ただし、譲渡する側の課税関係(所得税・法人税)は別の論点で、評価の考え方も異なります。取得者側の相続税評価と、譲渡者側の課税を混同しないようにしてください。

M&Aで第三者に売る場合にも使えますか

使いません。配当還元方式は相続税・贈与税の課税価格を求めるための特例的な方法であって、第三者間の売買価格の目安ではありません。M&Aの価格は会社売却の相場企業価値の1分診断で考えてください。

中心的な同族株主かどうかの判断が難しいのですが

配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族という範囲は限定されており、いとこや甥姪は含まれません。また、これらの者が議決権の25%以上を持つ会社も範囲に含まれます。親族関係図と株主名簿を突き合わせて機械的に計算するのが確実です。判断に迷う場合は税理士にご確認ください。

関連する解説記事

ほかの無料ツール

※ 本ツールは財産評価基本通達188・188-2の定めを実装した概算です。同族関係者の範囲、中心的な同族株主の判断、種類株式や投資育成会社が株主である場合の特則などは個別の検討が必要です。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

株主構成の整理は、承継とM&Aの両方に効きます

M&Aバリュークラウドの詳細版レポート(5,500円・税込)は、DCF法・類似会社比較法・時価純資産法を並べた評価レンジをPDFにまとめます。税務上の評価額と、第三者に売ったときの価格の両方を把握しておくと、株主構成をどう整理するかの判断がしやすくなります。登録と試算は無料です。