自社株評価の方法|取引相場のない株式の評価額を無料ツールで計算

最終更新: 2026-11-01・M&Aバリュークラウド(株式会社ベルシャンス)・ 編集方針

登録不要・入力データは送信されません。判定から評価額まで、1画面の無料ツールで計算する →

非上場会社の株式を相続したり贈与したりするとき、その株式にいくらの値段が付くのか。上場株式なら証券取引所の相場を見れば済みますが、取引相場のない株式にはその相場がありません。そこで、国税庁の財産評価基本通達が評価の方法を定めています。

この記事の役割:相続税・贈与税の申告に使う自社株評価(財産評価基本通達の方式)を、判定の順序どおりに無料ツールで計算できるように整理します。M&A・増資・株式の売買など、取引の検討に使う株価算定は株価算定の方法(非上場株式の評価方法)で、目的別に整理しています。

この評価は、手順さえ分かれば筋道は明快です。ところが解説を読むと、類似業種比準方式だの純資産価額方式だの配当還元方式だのが一度に出てきて、どれをいつ使うのか分からなくなる。本稿では「判定の順序」に沿って整理します。実際、国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」も、この順序で書き進める構成になっています。

記述は、財産評価基本通達の本文、同明細書の様式と記載方法等、国税庁の改正通達および改正のあらましなど、公的資料で確認できた範囲に限っています。評価の方法は改正で変わります。本稿でも、令和8年4月1日以後の取得から法人税額等に相当する金額の割合が37%から38%になった点など、更新の入っている論点を明示します。評価方式そのものの見直しの動き(国税庁の有識者会議)は非上場株式の評価の見直しで整理しています。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

判定から評価額までを1画面でまとめて出したい方は、自社株評価 かんたん一括計算をお使いください。本稿の後半では、架空の会社1社の数字を各ツールに順番に入れて、評価額が出るまでを通しで追います。

全体像:3つの問いに順番に答える

評価の方法は、次の3つを順番に決めていけば確定します。

順序問い決まること
① 誰が取得したか取得者は同族株主等か、それ以外か原則的評価方式によるか、配当還元方式(特例的評価方式)によるか
② どんな会社か特定の評価会社に当たるか当たる場合、規模にかかわらず別の評価方法になる
③ どれくらいの規模か大会社・中会社・小会社のどれか類似業種比準方式・純資産価額方式の組み合わせ方

①を最初に置くのが要点です。会社の中身を調べる前に、まず取得者の立場を見る。同族株主等以外の人が取得したのであれば、そもそも会社の利益や資産を細かく計算する必要がなく、配当還元方式で終わるからです。

この順序のまま、無料ツールで確かめられます(登録不要)。①は同族株主の判定・配当還元価額、②は特定の評価会社の判定、③は会社規模区分の判定。そのうえで類似業種比準価額と純資産価額(38%対応)を計算し、特定の評価会社に当たる場合はS1+S2方式・清算中の会社のツールに進みます。

① 誰が取得したか——同じ株式でも評価額が変わる

同じ会社の同じ株式でも、取得した人によって評価額は大きく変わります。会社を支配する側にとって株式は会社財産そのものに近い意味を持ちますが、ごく少数しか持たない人にとっては配当を受け取る権利にすぎない——この違いを評価に反映させるためです。

判定の基準は、取得者が属する同族関係者グループの議決権割合です。基準となる割合は、筆頭株主グループがどれだけ持っているかで変わります。

筆頭株主グループの議決権割合同族株主等となる基準
50%超取得者のグループが50%超
30%以上50%以下取得者のグループが30%以上
30%未満(同族株主のいない会社)取得者のグループが15%以上

間違えやすいのが1行目です。筆頭グループが50%超を握っている会社では、30%持っていても同族株主にはなりません。過半数を握るグループがある以上、それ以外は支配しているとは言えない、という整理です。

さらに、同族株主等に当たる場合でも、本人の議決権割合が5%未満なら二段目の判定があります。役員であるか、本人が中心的な同族株主か、ほかに中心的な同族株主がいるか——この順に見ていきます。詳しい手順と配当還元価額の計算は同族株主の判定と配当還元方式で解説しています。実際に判定してみるなら同族株主の判定ツールが使えます。

② 特定の評価会社に当たらないか

次に確認するのが、評価会社が特定の評価会社に当たらないかです。当たる場合、会社規模にかかわらず別の評価方法によることになります。通達は6つの類型を挙げています。

類型判定の基準評価方法の概要
比準要素数1の会社配当・利益・純資産のうち2つが0で、直前々期末を基準にしても2つ以上が0純資産価額(選択によりLを0.25とした併用方式も可)
株式等保有特定会社総資産(相続税評価額)のうち株式・出資・新株予約権付社債の占める割合が50%以上純資産価額(選択によりS1+S2方式も可)
土地保有特定会社総資産(相続税評価額)のうち土地等の占める割合が一定以上(大会社70%以上、中会社90%以上など)純資産価額
開業後3年未満の会社等開業後3年未満、または3つの比準要素がいずれも0純資産価額
開業前または休業中の会社—純資産価額
清算中の会社—分配を受ける見込みの金額の複利現価

自社がどの類型に当たるかは特定の評価会社の判定ツールで確認できます。2つ以上に当たる場合は後の番号の判定によることとされています。またこの判定について通達は、課税時期前に合理的な理由もなく資産構成に変動があり、その変動が判定を免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定すると明記しています。直前に資産を組み替えて基準を外す、という発想は通達自身が封じているわけです。

持株会社のような形になっている会社では、株式等保有特定会社に当たる可能性があります。グループ再編を考えるときは評価への影響を先に確認してください。仕組みは持株会社とは、株式の移転手法は株式交換・株式移転で解説しています。

③ 会社の規模で組み合わせが決まる

一般の評価会社であれば、最後に会社規模を判定します。考え方は、上場会社に近い規模なら上場会社と比べ、個人事業に近い規模なら持っている財産で評価するというものです。

区分原則的評価方式納税義務者の選択
大会社類似業種比準価額1株当たりの純資産価額によることもできる
中会社類似業種比準価額 × L + 1株当たりの純資産価額 ×(1−L)算式中の類似業種比準価額を純資産価額に置き換えられる
小会社1株当たりの純資産価額Lを0.50として中会社の算式によることもできる

どの区分にも「納税義務者の選択」が用意されている点が実務上とても重要です。含み益の大きい不動産を持つ会社は純資産価額が高く出ますし、赤字続きの会社は類似業種比準価額が低く出ます。両方を計算してから低いほうを選ぶのが基本の進め方になります。

中会社のLの割合は0.90・0.75・0.60の3段階で、総資産価額(帳簿価額)および従業員数による区分と、取引金額による区分のいずれか大きい方を採ります。区分の判定は会社規模区分の判定ツールで確認できます。

判定の順序に癖がある

規模判定の手順は決まっています。まず従業員数が70人以上なら、それだけで大会社。70人未満なら、総資産価額の区分と従業員数の区分のうち下位の区分を採り、それと取引金額の区分のうち上位の区分を採ります。2段階目で「下位」、3段階目で「上位」と向きが入れ替わるので、ここは間違えやすいところです。

従業員数の数え方にも定めがあります。1年間継続して勤務した従業員(1週間の労働時間が30時間未満の人を除く)の数に、それ以外の従業員の年間労働時間の合計を1,800時間で割った数を加えます。社長・理事長など一定の役員は含めません。端数は切り捨てず、5.1人なら「5人超」、4.9人なら「5人以下」です。

類似業種比準方式——上場会社と3つの要素で比べる

同じ業種の上場会社の株価を基準に、配当・利益・純資産の3つを比べて評価額を出す方法です。算式は次のとおりです。

価額 = A ×〔(ⓑ/B + ⓒ/C + ⓓ/D)÷ 3〕× 斟酌率 ×(1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円)

Aは類似業種の株価、B・C・Dは類似業種の1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額(帳簿価額)です。ⓑ・ⓒ・ⓓが評価会社の同じ3つで、いずれも1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額に直してから比べます。斟酌率は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5です。

ここで必ず確認してほしいのが分母の「3」です。3つの要素の比重は現行で1:1:1ですが、かつては利益を3倍に重く見る1:3:1(分母5)でした。平成29年4月の通達改正で1:1:1に変わっており、改正時の国税庁の説明では、検証の結果「1:1:1という比重が最も実際の株価と評価額との乖離が少ない」と認められたためとされています。インターネット上には1:3:1のまま解説している記事がいまも残っています。

類似業種のA・B・C・Dは、国税庁が年分ごとに公表する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」という法令解釈通達に掲載されています。標本会社が年分ごとに入れ替わるため、前年の数値を流用することはできません。詳しくは類似業種比準方式とは、実際の計算は類似業種比準価額 計算ツールをご覧ください。

純資産価額方式——資産と負債を洗い替える

会社の資産と負債をすべて相続税評価額に洗い替え、その差額から評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除して、課税時期の発行済株式数で割る方法です。

この「法人税額等相当額」が要です。相続税評価額で見た純資産が帳簿価額で見た純資産を上回る部分——つまり含み益に対して、会社を清算したら法人税等がかかるはずだという考え方で一定割合を差し引きます。

この割合が、令和8年3月25日付の通達改正で37%から38%に引き上げられました。適用されるのは令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した財産の評価からです。国税庁の説明によれば、防衛特別法人税の創設に伴って法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の税率の合計が37.7316%となったことを受けたものとされています。含み益の大きい会社では、この1ポイントの差が金額に表れます。

もう1つ、取得者とその同族関係者の議決権の合計数が議決権総数の50%以下である場合、80%を乗じるという定めがあります(評基通185ただし書)。ただしこのただし書は、中会社の算式と小会社の1株当たりの純資産価額について書かれており、大会社が選択により純資産価額によるときの扱いは文言から直接には読み取れません。詳しくは純資産価額方式とは、計算は純資産価額方式 計算ツールをご利用ください。

配当還元方式——受け取れる配当から逆算する

同族株主等以外の株主が取得した株式は、次の算式で評価します。

価額 =(その株式に係る年配当金額 ÷ 10%)×(1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円)

年配当金額は直前期末以前2年間の配当金額の合計の2分の1を、資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数で割って求めます。年配当金額が2円50銭未満のとき、および無配のときは2円50銭として計算するため、一度も配当したことがない会社でも評価額は0になりません。中小企業では無配が多く、この下限がそのまま使われる場面が少なくありません。

また、配当還元価額が原則的評価方式による価額を超える場合は、原則的評価方式による価額で評価します。赤字続きの会社では、この逆転が実際に起こります。

計算例:架空のA社を5つのツールに順番に流す

ここまでの手順を、1社の数字で通しで確かめます。以下はすべて説明のための仮の数字で、実在の会社や国税庁の公表値ではありません。各ステップの結果は、本サイトの無料ツールと同じ計算式で求めた目安です。

項目A社の仮の数字
業種製造業(卸売業・小売・サービス業以外)
資本金等の額(直前期末)1,000万円
発行済株式数20,000株(1株当たりの資本金等の額500円)
株主構成(贈与後)父40%・長男(役員)40%・母10%・元役員(親族外)10%
今回の取引父から長男へ6,000株(30%)を贈与
従業員数32人
総資産価額(帳簿価額)4億2,000万円
直前期末以前1年間の取引金額(売上高)6億5,000万円
総資産価額(相続税評価額)5億5,000万円(うち土地等1億2,000万円、株式等1,000万円)
負債(帳簿価額・相続税評価額とも)1億5,000万円
配当金額年200万円(直前期末以前2年間の合計400万円)
差引利益金額直前期3,600万円、直前々期3,200万円
利益積立金額(直前期末)2億6,000万円

ステップ1:同族株主の判定

同族株主の判定ツールに入れると、筆頭株主グループ(父・母・長男の親族グループ)の議決権割合が90%で50%超のため、同族株主に当たる基準は「取得者のグループが50%超」になります。長男のグループは90%で基準を満たし、長男本人の議決権割合も5%以上(40%)なので、長男は原則的評価方式で評価します。

参考までに、親族外の元役員(10%)が株式を取得した場合を同じツールで判定すると、グループの議決権割合10%で基準に満たず、配当還元方式になります。年配当金額は200万円÷(1,000万円÷50円=20万株)=10円、配当還元価額は10円÷10%×(500円÷50円)=1株1,000円が目安です。同じ株式でも、取得者によって評価額がこれだけ変わります。

ステップ2:特定の評価会社の判定

特定の評価会社の判定ツールでは、総資産(相続税評価額)5億5,000万円のうち株式等は1,000万円(約1.8%)、土地等は1億2,000万円(約21.8%)です。株式等保有特定会社の基準50%、中会社の土地保有特定会社の基準90%のいずれにも届かず、比準要素も0のものがないため、一般の評価会社として進みます。株式等の割合が50%以上なら、ここでS1+S2方式の検討に分かれるところです。

ステップ3:会社規模区分の判定

会社規模区分の判定ツールでは、従業員数32人は70人未満なので大会社の自動判定には当たりません。総資産4億2,000万円は「2億5,000万円以上5億円未満」、従業員32人は「20人超35人以下」で、どちらもL=0.75の区分です。下位を採るとL=0.75。一方、取引金額6億5,000万円は「4億円以上15億円未満」でL=0.90の区分です。両者の上位を採り、中会社(L=0.90)になります。斟酌率は0.6です。

ステップ4:類似業種比準価額

類似業種の数値は、仮に株価A=350円、配当B=7.0円、利益C=40円、純資産D=400円とします(実際は国税庁が年分ごとに公表する業種目別株価等から転記します)。A社の50円換算の株式数は20万株なので、類似業種比準価額 計算ツールでは次のようになります。

要素A社(50円換算)比準割合(小数点以下2位未満切捨て)
配当 ⓑ200万円÷20万株=10円10÷7.0=1.42
利益 ⓒ2年平均3,400万円÷20万株=170円(直前期のみなら180円)170÷40=4.25
純資産 ⓓ(1,000万円+2億6,000万円)÷20万株=1,350円1,350÷400=3.37
比準割合(1.42+4.25+3.37)÷33.01

利益は直前期1年と2年平均のどちらかを選べるため、低くなる2年平均を採りました。1株(50円)当たりの比準価額は350円×3.01×0.6=632.1円、これを1株当たりの資本金等の額500円に引き直すと、類似業種比準価額は1株6,321円が目安です。

ステップ5:純資産価額(38%)

純資産価額方式 計算ツールでは、相続税評価額による純資産が5億5,000万円−1億5,000万円=4億円、帳簿価額による純資産が4億2,000万円−1億5,000万円=2億7,000万円で、評価差額は1億3,000万円です。課税時期を令和8年4月1日以後とすると割合は38%で、法人税額等相当額は4,940万円。控除後の純資産3億5,060万円を2万株で割り、1株当たりの純資産価額は17,530円が目安です。長男のグループは議決権50%超なので、80%評価は使えません。

結果:中会社の算式で組み合わせる

計算1株当たりの目安
原則:6,321円×0.90+17,530円×0.107,441円(円未満切捨て)
選択:類似業種比準価額を純資産価額に置き換え17,530円
採用(低い方)7,441円
長男が受け取る6,000株の評価額約4,465万円
発行済株式2万株の全体約1億4,882万円
参考:元役員(配当還元方式)1,000円

A社は利益に比べて純資産が厚く、純資産価額が類似業種比準価額の約2.8倍あります。Lが0.90の中会社では類似業種比準価額の比重が大きいため、評価額は類似業種比準価額に近い水準に収まりました。同じA社でも、規模区分が小会社に下がれば純資産価額の比重が増え、評価額は大きく上がります。従業員数や取引金額の数え方がそのまま税額に響くのはこのためです。相続で株式を引き継ぐ場合の相続税の目安は相続税の計算ツールで確認できます。贈与の場合は暦年課税か相続時精算課税かで税額が変わるため、税額の判断は税理士にご確認ください。

この5ステップを1画面で入力し、判定と評価額をまとめて表示するのが自社株評価 かんたん一括計算です。各論点を1つずつ確かめたいときは個別のツール、全体の目安を早く掴みたいときは一括計算、と使い分けてください。

評価方法は見直しの途中にある(38%改正と有識者会議)

計算例で使った38%は、令和8年3月25日付の通達改正で37%から改められた割合で、令和8年4月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用されています。課税時期が令和8年3月31日以前なら37%で計算します。

これとは別に、国税庁は令和8年4月に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上げ、同年9月16日の第6回まで議論を重ねています。第5回(8月20日)には事務局が、会社規模による区分の廃止や、類似業種比準方式に代えて簿価純資産に数年分の超過収益を加減する「残余利益方式」を主軸とする方向性を示しました。ただし第4回の議事要旨では、事務局は類似業種比準方式の廃止を「現時点で決定しているわけではない」と述べ、見直しは税制改正プロセスを経て行うとしています。算式・水準・適用時期はいずれも決まっていません。本稿の計算は現行の通達によるもので、詳しい経緯と論点は非上場株式の評価見直しにまとめています。

特定の評価会社の中身をもう少し詳しく

株式等保有特定会社

課税時期における各資産を相続税評価額で見たとき、そのうちに占める株式・出資および新株予約権付社債の価額の合計額の割合が50%以上であれば該当します。原則は純資産価額による評価ですが、納税義務者の選択により「S1の金額」+「S2の金額」という方式によることもできます。

S2は、保有する株式等そのものの価額に対応する部分です。株式等の相続税評価額の合計から、含み益に対する法人税額等相当額を控除し、課税時期の発行済株式数で割って求めます。S1は、それ以外の部分について、株式等を除いた資産をもとに通常の評価方法を当てはめたものです。類似業種比準価額を使う場合には、評価会社の配当・利益・純資産から受取配当金等収受割合に対応する部分を差し引いた金額で比準します。

要するに、株式を持っているだけの部分と、自ら事業をしている部分を切り分けて評価するという発想です。実際の計算はS1+S2方式 計算ツールで行えます。持株会社の形をとっている会社では、この判定が評価額を大きく左右します。

土地保有特定会社

土地等の占める割合による判定で、基準は会社規模によって変わります。大会社は70%以上、中会社は90%以上。小会社については、総資産価額(帳簿価額)が一定以上であれば大会社または中会社と同じ基準が当てはまり、それに満たない小規模な会社は土地保有特定会社に該当しません。不動産賃貸業を営む会社では現実に問題になる類型です。

比準要素数1の会社と開業後3年未満の会社等

比準要素数1の会社は、配当・利益・純資産のうち2つが0で、かつ直前々期末を基準にしても2つ以上が0である会社です。直前期だけの一時的な状況ではなく、継続して比準要素が欠けている状態を捉えるため、2期分を見る構成になっています。評価は純資産価額が原則で、納税義務者の選択によりLを0.25とした併用方式も採れます。

3つの比準要素がいずれも0の会社は「開業後3年未満の会社等」に含まれ、純資産価額によります。この場合は併用方式の選択がありません。

清算中の会社

清算の結果、分配を受ける見込みの金額を、課税時期から分配を受けると見込まれる日までの期間に応じた基準年利率による複利現価に引き直して評価します。分配が2回以上に分かれる場合はそれぞれを計算して合計します。1年未満の端数は1年として扱います。計算は清算中の会社の株式評価 計算ツールで行えます。

評価明細書はどの表で何をするのか

実際の申告では「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」に記入していきます。表の構成を知っておくと、本稿で述べた判定の順序がそのまま用紙の並びになっていることが分かります。

表何をするか
第1表の1株主の議決権割合を整理し、同族株主等か配当還元方式かを判定する
第1表の2少数株式所有者の評価方式の判定と、会社規模(Lの割合)の判定
第2表特定の評価会社(6類型)に当たるかの判定
第3表一般の評価会社の株式の価額の計算(原則的評価方式・配当還元方式)
第4表の1・第4表の2類似業種比準価額の計算(比準要素の計算と、比準割合・比準価額)
第5表1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算
第6表以下特定の評価会社に当たる場合の計算(一般の評価会社では不要)

記載方法等は、各欄の金額について表示単位未満の端数を切り捨てるのを原則としています。ただし切り捨てると0になってしまう場合には、分数で記載するか、発行済株式数の桁数に応じた小数で記載する、という特則も置かれています。細かい話ですが、1株当たりの金額が極端に小さい会社では実際に効いてきます。

相続税評価額と、M&Aで売れる価格を並べる

ここは誤解が生まれやすいので、はっきり書いておきます。財産評価基本通達で求めた金額は、相続税・贈与税の課税価格を計算するためのものであって、第三者に売却したときの価格ではありません。

目的が違うため、結果も一致しません。類似業種比準方式は上場会社の株価を基準にしながら斟酌率で3割から5割を減価しますし、純資産価額方式は清算を前提とした税負担を控除します。一方、M&Aの価格は買い手が将来得られる利益をどう見るかで決まり、シナジーが乗ることもあれば、買い手が見つからずに下がることもあります。

承継の方針を決めるときは、税務上の評価額と、第三者に売った場合の価格の両方を把握しておくのが実務的です。片方だけを見て「思ったより高い/安い」と判断すると、選択肢を見誤ります。

先ほどのA社で並べてみます。M&Aの中小企業の実務でよく使われる年買法(時価純資産+正常な営業利益の3〜5年分)で、正常な営業利益を仮に年4,000万円、含み益1億3,000万円にかかる税金を中小法人の実効税率約33.6%で差し引くと、時価純資産は約3億5,600万円です。ここに営業利益3〜5年分を加えると、株式価値の目安は約4億7,600万〜5億5,600万円(1株あたり約23,800〜27,800円)になります。

見方A社全体(2万株)の目安1株当たりの目安
相続税評価額(中会社・L=0.90)約1億4,882万円7,441円
M&Aで売れる価格の目安(年買法・3〜5年)約4億7,600万〜5億5,600万円約23,800〜27,800円

この例では、売れる価格の目安が相続税評価額の3倍を超えます。相続税評価額は斟酌率で上場会社の水準から減価し、類似業種の利益や純資産と比べて機械的に決まる一方、M&Aの価格は会社が稼ぐ力と純資産そのものを見るためです。もちろん仮の数字による一例で、業種や収益の安定性、買い手の事情によって開きは大きく変わります。「相続税評価額が低いから、会社にはその程度の価値しかない」とは限らない、という点だけは押さえておいてください。

自社の数字でM&Aの価格の目安を出すなら、無料で登録して試算することができます。試算と評価レンジの表示は無料、報告書PDFは有料です(簡易版2,200円・詳細版5,500円、いずれも税込)。紙面は簡易版の見本PDFと詳細版の見本PDFで確認できます。詳細版はDCF法と類似会社比較法を併用し、事業計画にもとづく将来の収益力から価格の目安を出します。相続税評価額の側は自社株評価 かんたん一括計算で出しておけば、2つの数字を並べて承継の方針を考えられます。年買法の考え方は年買法とはで解説しています。

M&Aの文脈での評価は株価算定の方法、M&Aで価格が決まるまでの流れはM&Aの価格算定方法、3つのアプローチの違いは株式評価の3つのアプローチ比較、目安の把握は企業価値の1分診断をご覧ください。

なお、事業承継税制(納税猶予)を使う場合も、猶予される税額の計算の基礎になるのはこの通達による評価額です。制度の中身は事業承継税制、前提となる知事認定は経営承継円滑化法で解説しています。

よくある質問

評価の基準日はいつですか

課税時期(相続なら被相続人の死亡の日、贈与なら贈与の日)です。ただし計算に使う数値は項目によって基準日が違い、たとえば類似業種比準方式の発行済株式数は直前期末、純資産価額方式の発行済株式数は課税時期のものを使います。同じ評価の中で基準日が混在するので注意してください。

自社株の評価額を下げたいのですが

本稿は節税の方法を案内するものではありません。一般論として、評価額は会社の実態を反映して決まるものであり、実態の伴わない資産構成の変更は通達上も問題とされます。役員退職金の支給や設備投資など、事業上の合理性がある行為の結果として評価額が動くことはありますが、それは目的ではなく結果です。個別の検討は税理士にご相談ください。役員退職金については役員退職金と自己株式で扱っています。

株主が分散している場合はどうすればよいですか

取得者ごとに判定するため、同じ会社の株式でも人によって評価方式が分かれます。そのうえで、株主が分散していること自体が承継やM&Aの障害になることがあります。整理の考え方は名義株の整理、譲渡制限株式とは、種類株式とはをご覧ください。

税理士に頼まず自分で計算してよいですか

考え方の理解と概算であれば、本稿の計算例のように各ツールで追えます。承継の時期や方法を考える段階で「おおよそいくらになりそうか」を自分で掴んでおくのは有益です。

ただし、申告に使う評価額を自分だけで確定させるのはおすすめできません。計算例では「相続税評価額による総資産」を所与の数字として置きましたが、実際には土地の路線価評価、課税時期前3年以内に取得した土地・建物の扱い、退職給付や未払税金などの負債の計上、従業員数の数え方、比準要素の端数処理など、判断を伴う項目が多数あります。1か所の判断の違いで規模区分やLの割合が変わり、評価額が数倍動くこともあります。ツールの結果は目安として使い、実際の評価と申告は必ず税理士にご確認ください。相談の前に決算書・法人税申告書(別表)・固定資産の明細・株主名簿をそろえておくと話が早く進みます。必要な資料の整理は企業価値評価に必要なデータ、税理士に依頼する場合の流れは株価算定と税理士が参考になります。

評価方法が見直されたら、いま計算した評価額は無駄になりますか

現行の通達で計算した評価額は、現行の通達が適用される期間の相続・贈与ではそのまま基準になります。見直し後の算式や適用時期はまだ決まっていないため、今の評価額を出したうえで、見直しの動向を非上場株式の評価見直しで確認していくのが現実的です。見直しを見越した贈与の前倒しなどは、確定した情報をもとに税理士と検討してください。

本稿は公表資料の整理であり、個別の助言ではありません。財産評価基本通達は毎年のように改正され、個別の事案には通達の定めによらない評価(総則6項)が問題となる場面もあります。実際の評価・申告にあたっては、必ず税理士にご確認ください。

まとめ

取引相場のない株式の評価は、①誰が取得したか → ②特定の評価会社に当たらないか → ③会社の規模はどれか、という順序で決まります。この順番どおりに進めれば、どの方式を使うのかは機械的に確定します。

同族株主等以外が取得したなら配当還元方式。同族株主等が取得し、一般の評価会社であれば、大会社は類似業種比準価額、小会社は純資産価額、中会社はその併用です。いずれの区分でも納税義務者の選択が用意されているので、両方を計算して比べるのが基本になります。

数値で注意すべき点は2つ。類似業種比準方式の比準要素の比重は1:1:1(分母3)で、1:3:1は平成29年改正前の古い情報です。純資産価額方式の法人税額等相当額は、令和8年4月1日以後の取得から38%で、それ以前は37%です。どちらも解説記事が更新されずに残りやすい論点なので、計算前に確認してください。

そして最後にもう一度。ここで求めた金額は税金を計算するための評価額であって、会社を売ったときの値段ではありません。承継を考えるなら、両方の数字を持っておくことをおすすめします。

本稿で参照した主な公表資料は、国税庁「財産評価基本通達」(178〜189-7)、同「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の様式および記載方法等【令和8年4月1日以降用】、同「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(令和8年3月25日付 課評2-28)および同改正のあらまし、平成29年4月27日付 課評2-12による改正とそのあらまし、「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)」、同「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の配付資料・議事要旨(第1回 令和8年4月20日〜第6回 同年9月16日)です。計算例の数字はすべて仮のものです。いずれも改正される可能性があるため、最新版の確認をおすすめします。

自社の価値を、まずは無料で試算

決算書の数字から、評価レンジと計算の内訳を画面に表示します(簡易版は年買法、詳細版はDCF法と類似会社比較法の併用)。試算と評価レンジの表示は無料、報告書PDFは有料です。

評価モデルをご自身で組む方へ

業種別β・株式リスクプレミアム・無リスク利子率などの基礎データを、加工可能なExcelにまとめた「評価用データパック」もご用意しています。