類似業種比準方式とは|算式・比準要素の作り方と、1:3:1が古い理由
最終更新: 2026-09-22
類似業種比準方式は、同じ業種の上場会社の株価を基準にして、配当・利益・純資産の3つを比べ、非上場株式の評価額を出す方法です。相続税・贈与税の世界では、大会社の原則的評価方式であり、中会社でも一定割合を占めます。
考え方そのものは、M&Aで使う類似会社比較法と似ています。ただし細部は通達で細かく決められており、どの数字をどこから持ってくるか、端数をどう処理するかまで定めがあります。本稿はその実務の手順を整理します。
記述は財産評価基本通達180〜184、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の様式と記載方法等、国税庁の改正通達とそのあらましで確認できた範囲に限っています。評価の方法は改正で変わるため、実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。全体の流れは取引相場のない株式の評価をご覧ください。
算式の構造
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| A | 類似業種の株価 |
| B | 類似業種の1株当たりの配当金額 |
| C | 類似業種の1株当たりの年利益金額 |
| D | 類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額) |
| ⓑ | 評価会社の1株当たりの配当金額 |
| ⓒ | 評価会社の1株当たりの利益金額 |
| ⓓ | 評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額) |
ⓑ・ⓒ・ⓓは、いずれも1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額に直してから比べます。資本金の大小という見かけの違いを消して、同じ土俵で上場会社と比較するためです。最後に「1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円」を掛けて、実際の1株当たりの金額に戻します。
たとえば1株当たりの資本金等の額が5,000円の会社なら、50円換算の世界で計算した金額を最後に100倍します。この構造を理解していないと、桁が合わずに混乱します。
比重は1:1:1——1:3:1は平成29年改正前の話
算式の分母が3であることを必ず確認してください。3つの比準要素の比重は現行で1:1:1です。
かつては利益を3倍に重く見る1:3:1(分母5)でした。これが平成29年4月27日付の通達改正で1:1:1に変わっています。改正時に公表された国税庁の説明によれば、平成12年の改正時には上場会社のデータにもとづく検証で1:3:1が最も適正とされたものの、今般あらためて検証した結果、1:1:1という比重が最も実際の株価と評価額との乖離が少なく、適正に時価が算出されると認められたため改正した、とされています。
実務への影響は小さくありません。利益の比重が3分の1に下がったことで、利益が大きく出ている会社の評価額は相対的に下がり、純資産が厚い会社の評価額は相対的に上がる方向に働きます。ところがインターネット上には、1:3:1のまま解説している記事や計算シートがいまも残っています。分母が5になっていたら、その資料は改正前のものです。
同じ改正では、類似業種の株価に「課税時期の属する月以前2年間の平均」が加えられ、類似業種の配当金額・利益金額・純資産価額に連結決算を反映させることも定められました。
株価Aは5つの候補から最も低いものを採れる
通達は、類似業種の株価として課税時期の属する月以前3か月間の各月のうち最も低いものとしたうえで、納税義務者の選択により前年平均株価または課税時期の属する月以前2年間の平均株価によることができる、と定めています。評価明細書は、これを次の5つの欄として整理し、そのうち最も低いものをAとする構成にしています。
- 課税時期の属する月の株価
- その前月の株価
- その前々月の株価
- 前年平均株価
- 課税時期の属する月以前2年間の平均株価
株式相場が上昇している局面では、2年平均や前年平均が最も低くなることが多くなります。5つすべてを確認しないと、本来採れたはずの低い株価を見落とします。面倒でも全部転記してください。類似業種比準価額 計算ツールは、入力した候補から自動で最小値を採ります。
A・B・C・Dはどこから持ってくるか
国税庁が年分ごとに公表している「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」という法令解釈通達に、業種目ごとのA・B・C・Dが掲載されています。年の途中から月ごとの株価が追加されていくため、課税時期によっては最新の一部改正通達を見る必要があります。
重要な注意点があります。前年の数値をそのまま流用することはできません。業種目ごとの標本会社が年分ごとに入れ替わるため、同じ業種目・同じ月でも年分が違えば金額が異なることがあり、国税庁自身がこの点に留意するよう注記しています。課税時期の年分に対応する通達を使ってください。
業種目の決め方
評価会社がどの業種目に当たるかは、直前期末以前1年間の取引金額にもとづいて判定します。2以上の業種目にまたがる場合は、取引金額全体に占める割合が50%を超える業種目によります。50%を超える業種目がない場合の取扱いも、通達が細かく場合分けしています(同じ中分類内の類似する小分類の合計が50%超ならその中分類の「その他の○○業」、類似しない小分類なら中分類そのもの、といった具合です)。
さらに、業種目は2通り計算して低いほうを採るのが原則です。小分類に当たるならその小分類と属する中分類、中分類に当たるなら中分類と属する大分類——この2つを計算し、低いほうを採用します。業種による評価の着眼点の違いは業種別の評価ポイントも参考になります。
評価会社側の3つの数字の作り方
ⓑ 1株当たりの配当金額
直前期末以前2年間の剰余金の配当金額の合計の2分の1を使います。ここは1年を選ぶことができません。特別配当・記念配当など、名称のいかんを問わず将来毎期継続することが予想できない金額は除きます。各事業年度中に配当金交付の効力が発生したものを基に計算し、資本金等の額の減少によるものは除きます。配当の基本は配当とはをご覧ください。
ⓒ 1株当たりの利益金額
出発点は会計上の利益ではなく法人税の課税所得金額です。そこから次のように調整します。
- 固定資産売却益・保険差益などの非経常的な利益を除く
- 所得の計算上益金に算入されなかった剰余金の配当等(所得税額に相当する金額を除く)を加算する
- 損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算する
- 計算結果が負数のときは0とする
そして直前期の1年で見るか、直前期末以前2年間の平均で見るかは納税義務者が選べます。この選択は実務で効きます。直前期がたまたま好調だった会社は2年平均のほうが低く出ますし、逆に直前期が悪かった会社は1年のほうが低く出ます。両方を計算して低いほうを採るのが基本です。正常な収益力という考え方については正常収益力とはもご覧ください。
ⓓ 1株当たりの純資産価額(帳簿価額)
直前期末の資本金等の額と利益積立金額の合計額です。貸借対照表の純資産の部ではなく、法人税申告書別表五(一)の「差引翌期首現在利益積立金額」の差引合計額を使います。利益積立金額がマイナスの場合はその金額を資本金等の額から控除し、控除後も負数になるときは0とします。
端数処理と斟酌率
要素別比準割合(ⓑ/B など)および比準割合は、いずれも小数点以下2位未満を切り捨てます。四捨五入ではありません。切り捨てる分だけ評価額は下がる方向に働きます。
斟酌率は会社規模によって決まります。
| 会社規模 | 斟酌率 |
|---|---|
| 大会社 | 0.7 |
| 中会社 | 0.6 |
| 小会社 | 0.5 |
上場会社と比べて求めた金額から、非上場であることを踏まえて3割から5割を減価する——というのがこの率の意味です。規模が小さいほど減価が大きくなります。規模の判定は会社規模区分の判定ツールで行えます。
業種目が決まらないときの場合分け
取引金額の50%を超える業種目がない会社も珍しくありません。通達はこの場合の扱いを、次のように細かく場合分けしています。
| 状況 | 採る業種目 |
|---|---|
| 1つの中分類の中の、2以上の「類似する」小分類に属し、合計が50%超 | その中分類の中にある類似する小分類の「その他の○○業」 |
| 1つの中分類の中の、2以上の「類似しない」小分類に属し、合計が50%超 | その中分類の業種目 |
| 1つの大分類の中の、2以上の「類似する」中分類に属し、合計が50%超 | その大分類の中にある類似する中分類の「その他の○○業」 |
| 1つの大分類の中の、2以上の「類似しない」中分類に属し、合計が50%超 | その大分類の業種目 |
| いずれにも当たらない | 大分類の業種目の中の「その他の産業」 |
複数の事業を持つ会社では、まず業種目別の取引金額の構成比を出すところから始まります。評価明細書の第1表の1にも業種目番号と取引金額の構成比を記載する欄があります。ここを詰めずに業種目を決めてしまうと、A・B・C・Dの数値が丸ごと変わってしまうので、最初に確定させてください。
配当や株式割当てがあったときの修正
課税時期が配当金交付の基準日の翌日から配当金交付の効力が発生する日までの間にある場合や、株式の割当て・交付の基準日の翌日から効力発生日までの間にある場合には、求めた比準価額を修正します。通達184の定めです。
- 配当の場合:比準価額から1株当たりの配当金額を差し引く
- 株式の割当て等の場合:(比準価額 + 割当株式1株当たりの払込金額 × 1株当たりの割当株式数)÷(1 + 1株当たりの割当株式数または交付株式数)
株主の権利が確定しているのに、まだ株価にその効果が反映されていない期間を調整する趣旨です。該当する期間はそれほど長くありませんが、相続の発生時期によっては当たります。増資の考え方は第三者割当増資とは、希薄化については希薄化(ダイリューション)とはもご覧ください。
平成29年改正では何が変わったか
比重の変更だけが注目されがちですが、同じ改正では次の3点がまとめて手当てされています。
- 類似業種の株価に「課税時期の属する月以前2年間の平均」を加えた。相場の短期的な変動の影響を和らげる選択肢が増えました
- 類似業種の配当金額・利益金額・純資産価額に連結決算を反映させることとした。標本会社がグループ経営をしている実態に合わせたものです
- 3つの比準要素の比重を1:1:1とした
いずれも「上場会社と比べる」という方式の精度を上げる方向の改正です。逆に言えば、改正前の資料をそのまま使うと、株価の選択肢も比重も古いままになります。
比準要素が0のときは方式そのものが変わる
配当・利益・純資産のいずれかが0になること自体は珍しくありません。無配の会社ならⓑは0ですし、赤字ならⓒは0です。要素が1つ0でも、分母は3のままで、その要素別比準割合を0として計算します。
問題は2つ以上が0の場合です。直前々期末を基準にした金額でも2つ以上が0であれば「比準要素数1の会社」に当たり、原則として純資産価額で評価することになります(納税義務者の選択により、Lを0.25とした併用方式も可)。3つとも0なら「開業後3年未満の会社等」として純資産価額によります。
つまり、2つ以上が0になった時点で、類似業種比準価額をそのまま使う道は閉じます。無配で赤字が続いている会社では現実に起こりうるので、計算の前に確認してください。純資産価額の計算は純資産価額方式とはで解説しています。
計算例で流れを追う
数字を入れて一度通してみると、構造が体に入ります。次の前提を置きます。いずれも説明のための仮の数値です。
- 直前期末の資本金等の額 5,000万円、発行済株式数 10,000株(1株当たりの資本金等の額は5,000円)
- 直前期末以前2年間の経常的な配当金額の合計 1,000万円
- 直前期の差引利益金額 1億円(1年で見ることを選択)
- 直前期末の利益積立金額 2億5,000万円
- 類似業種:株価A 400円、B 5円、C 50円、D 300円
- 会社規模は大会社(斟酌率0.7)
まず50円換算の株式数を出します。5,000万円 ÷ 50円 = 100万株。実際の発行済株式数(10,000株)ではなく、この数で割るのがポイントです。
次に評価会社の3要素です。ⓑは 1,000万円 ÷ 2 = 500万円 を100万株で割って5円。ⓒは 1億円 を100万株で割って100円。ⓓは 5,000万円 + 2億5,000万円 = 3億円 を100万株で割って300円です。
要素別比準割合は、ⓑ/B = 5 ÷ 5 = 1.00、ⓒ/C = 100 ÷ 50 = 2.00、ⓓ/D = 300 ÷ 300 = 1.00。比準割合は(1.00 + 2.00 + 1.00)÷ 3 = 1.3333… で、小数点以下2位未満を切り捨てて1.33です。
1株(50円)当たりの比準価額は 400円 × 1.33 × 0.7 = 372.4円。最後に実際の1株に戻します。5,000円 ÷ 50円 = 100倍なので、372.4円 × 100 = 37,240円が1株当たりの比準価額です。
ここで、もし比重が改正前の1:3:1だったとすると、比準割合は(1.00 + 2.00×3 + 1.00)÷ 5 = 1.60 となり、比準価額は 400 × 1.60 × 0.7 × 100 = 44,800円。利益が業種平均を上回っている会社では、1:1:1になったことで評価額が下がるという関係が、この例から読み取れます。
よくある質問
類似業種を自分で選べますか
選べません。直前期末以前1年間の取引金額にもとづいて判定した業種目によります。ただし、小分類に当たる場合にその属する中分類を選ぶ、といった上位分類への選択は認められており、2通りを計算して低いほうを採ります。
なぜ上場会社より低い評価になるのですか
斟酌率で3割から5割を減価しているためです。背景には、非上場株式には市場がなく、売りたいときに売れないという性質があります。この考え方自体はM&Aの世界でも非流動性ディスカウント(DLOM)として議論されますが、相続税評価の斟酌率は通達が一律に定めた率であり、個別に算定するものではありません。
純資産価額方式とどちらが低くなりますか
一概には言えません。含み益の大きい不動産を持つ会社は純資産価額が高く出やすく、利益が小さく純資産も薄い会社は類似業種比準価額が低く出やすい傾向があります。大会社なら純資産価額を選択でき、中会社なら算式中の類似業種比準価額を純資産価額に置き換えられるので、両方を計算してから選ぶのが基本です。
M&Aの価格算定に使えますか
目的が違うため、そのままでは使えません。類似業種比準方式は相続税・贈与税の課税価格を求めるための方法です。M&Aの価格を考えるならDCF法 計算ツールやEV/EBITDA倍率 企業価値計算機のほうが目的に合います。違いは株式評価の3つのアプローチ比較で整理しています。会社の値段の目安を手早く見るなら企業価値の1分診断もご利用ください。
まとめ
類似業種比準方式は、A ×〔(ⓑ/B + ⓒ/C + ⓓ/D)÷ 3〕× 斟酌率 ×(1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円)という算式で求めます。比重は1:1:1で分母は3。1:3:1は平成29年改正前の古い情報です。
株価Aは5つの候補のうち最も低いものを採れます。A・B・C・Dは国税庁が年分ごとに公表する通達から転記し、前年の数値は流用できません。業種目は取引金額で判定し、小分類とその中分類の2通りを計算して低いほうを採ります。
評価会社側は、ⓑが直前期末以前2年間の配当の平均(1年は選べない)、ⓒが法人税の課税所得を調整した金額(1年か2年平均を選べる)、ⓓが資本金等の額と利益積立金額の合計です。要素別比準割合・比準割合はいずれも小数点以下2位未満切捨て、斟酌率は大0.7・中0.6・小0.5。
そして比準要素が2つ以上0なら、この方式をそのまま使う道は閉じます。特定の評価会社の判定に進んでください。実際の計算は類似業種比準価額 計算ツールで確認できます。
本稿で参照した主な公表資料は、国税庁「財産評価基本通達」(180〜184)、同「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の様式および記載方法等、平成29年4月27日付 課評2-12による改正とそのあらまし、「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)」です。いずれも改正される可能性があるため、最新版の確認をおすすめします。