WACC・株主資本コスト(CAPM)計算ツール
DCF法の割引率として使うWACC(加重平均資本コスト)と、CAPMによる株主資本コストを、無料・登録不要で自動計算します。アンレバードβとリレバードβの相互変換、WACCの内訳、そしてWACCが±1%動いたときに評価額がどれだけ振れるかまで、まとめて確認できます。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。
無リスク利子率・株式リスクプレミアム・β・負債コスト・実効税率・資本構成を入力すると、CAPMによる株主資本コストとWACC、アンレバードβとリレバードβ、WACCが±1%動いたときの評価額の変化を計算します。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。
類似上場会社のβから負債の影響を除いたアンレバードβを入力すると、下の資本構成(D/E)でリレバードしてから使います。
D/E比率:50%
E/(D+E):66.7%/ D/(D+E):33.3%
株主資本コスト(CAPM)
10.88%
1.5% + βL 1.064 × 6.0% + 3.0%
WACC(加重平均資本コスト)
7.70%
DCF法の割引率として使う数字です
計算の内訳
| 項目 | 値 | 計算 |
|---|---|---|
| アンレバードβ(βU) | 0.800 | βL ÷ (1 + (1−t) × D/E) |
| リレバードβ(βL) | 1.064 | βU × (1 + (1−t) × D/E) |
| 株主資本コスト | 10.88% | rf + βL × ERP + サイズプレミアム |
| 負債コスト(税引後) | 1.32% | 負債コスト × (1 − t) |
| 株主資本のウェイト | 66.7% | E ÷ (D + E) |
| 負債のウェイト | 33.3% | D ÷ (D + E) |
| WACC | 7.70% | E/(D+E) × 株主資本コスト + D/(D+E) × 負債コスト × (1−t) |
WACCが1%動くと評価額はどれだけ変わるか
| ケース | WACC | 評価額(万円) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| WACC −1% | 6.70% | 52,669 | +17.6% |
| 現在の試算 | 7.70% | 44,803 | — |
| WACC +1% | 8.70% | 38,981 | −13.0% |
価値 = FCF ÷ (WACC − g) の一定成長モデルで計算した目安です(現在の試算は4億4,803万円)。WACCがわずかに動くだけで評価額が大きく振れることが確認できます。
※ βや株式リスクプレミアムは、ご自身で調べた値を入力する前提のツールです。数値はいずれも目安であり、前提の置き方でWACCは大きく変わります。当サービスの詳細版レポートでは、類似上場会社のβからWACCを自動算定しています。
WACCと株主資本コストの計算式
WACCは「その会社が資金を調達するのに、平均していくらのコストがかかっているか」を表す率です。会社の資金は株主から預かったお金(株主資本)と、金融機関などから借りたお金(有利子負債)に分かれます。それぞれに求められる利回りを、金額の構成比で加重平均したものがWACCです。
WACC = E/(D+E) × 株主資本コスト + D/(D+E) × 負債コスト × (1 − 実効税率)
負債コストにだけ (1 − 実効税率) が付くのは、支払利息が損金になり、その分だけ法人税が減るためです。実際の負担は表面の金利より軽くなり、これを「負債の節税効果(タックスシールド)」と呼びます。実効税率そのものの計算は実効税率 計算ツールで確認できます。
一方、株主資本コストは「株主がこの会社に期待している利回り」です。借入金利のように契約書に書かれているわけではないので、市場のデータから推定します。もっとも広く使われているのがCAPM(資本資産価格モデル)で、本ツールもこの式を使っています。
株主資本コスト = 無リスク利子率 + β × 株式リスクプレミアム + サイズプレミアム
無リスク利子率は長期国債の利回りを使うのが一般的です。株式リスクプレミアムは「株式市場全体が国債よりどれだけ高い利回りを要求されているか」で、βはその市場全体の動きに対して、その会社の株価がどれだけ大きく動くかを表します。βが1なら市場並み、1より大きければ市場よりも振れ幅が大きい=リスクが高いと見なされ、株主資本コストは高くなります。サイズプレミアムは、規模の小さい会社ほど要求される利回りが高くなる傾向を反映した上乗せ分で、中小企業の評価では使われることが多い項目です。考え方の詳細はCAPM・株主資本コストとはとWACCとはで解説しています。
アンレバードβとリレバードβ
非上場会社には株価がないため、βを直接観測できません。そこで実務では、同じような事業をしている上場会社のβを借りてきます。ただし、そのまま使うわけにはいきません。βは事業そのもののリスクだけでなく、その会社がどれだけ借金をしているか(財務レバレッジ)の影響も受けているからです。借入が多い会社ほど、同じ事業をしていても株主のリターンは大きく振れ、βは高く出ます。
そこで、いったん借金の影響を取り除いて「事業リスクだけのβ」に戻し(アンレバード)、次に評価対象会社の資本構成を当てはめて付け直します(リレバード)。この変換にはハマダ式と呼ばれる次の式を使い、本ツールも両方向を計算できるようにしています。
βU = βL ÷ (1 + (1 − t) × D/E) / βL = βU × (1 + (1 − t) × D/E)
tは実効税率、D/Eは有利子負債と株主資本の比率です。無借金(D/E=0)ならβUとβLは一致し、借入が増えるほどβLはβUより大きくなります。複数の類似上場会社のβをそれぞれアンレバードして中央値や平均をとり、それを評価対象会社のD/Eでリレバードする、というのが標準的な手順です。類似会社の選び方は類似会社比較法(EV/EBITDA)の考え方と共通しています。
WACCが1%動くと評価額はどれだけ動くか
WACCはDCF法の割引率として使われ、企業価値に強く効きます。上のツールでは、一定成長モデル(価値 = FCF ÷ (WACC − g))を使って、WACCを±1%ずらしたときの評価額の変化率を表示しています。たとえばWACC8%・g1%なら分母は7%ですが、WACCが9%になると分母は8%となり、価値は約12%下がります。逆にWACCが7%なら分母6%で、価値は約17%上がります。分母が小さいほど1%の重みは大きく、低成長・低WACCの前提ほど数字は敏感に動きます。
つまり「WACCを何%に置くか」は、DCF法の結論をほとんど決めてしまうほど重要な前提です。だからこそ、WACCは一点で示すのではなく、レンジで見るのが実務の作法です。実際の企業価値への影響はDCF法 計算ツールで、明示期間のFCFと継続価値(ターミナルバリュー)まで含めて確認してください。求めた企業価値から純有利子負債を差し引くと株式価値になります(企業価値と株式価値の違い)。
使うときの注意点
- βと株式リスクプレミアムは、ご自身で調べた値を入力する前提のツールです。本ツールは市場データを内蔵していません。当サービスの詳細版レポートでは、類似上場会社のβから自動でWACCを算定しています。
- 資本構成は、現状の簿価ではなく時価ベースの目標資本構成で置くのが理論的とされます。中小企業では類似上場会社の平均的な資本構成を使うこともあります。
- 非上場株式は市場で売却しにくいため、流動性ディスカウントを株式価値の側で調整するのが一般的です(WACCに上乗せする方法をとる場合もあります)。本ツールでは適用していません。
- 創業間もない会社や赤字会社では、CAPMの前提がそもそも当てはまりにくくなります。スタートアップの評価では別の考え方も併用します。
- WACCは投資判断のハードルレートとしても使われます。資本効率の指標との関係はROE・ROICとはを参照してください。
よくある質問
Q. サイズプレミアムは必ず入れるべきですか?
A. 必須ではありません。小規模な会社ほど要求される利回りが高くなる傾向を反映するために使われる項目で、中小企業の評価では加えることが多い一方、加えない立場もあります。使う場合は「なぜその水準にしたか」を説明できるようにしておき、加えた場合と加えない場合の両方でレンジを示すと議論がしやすくなります。
Q. 中小企業のWACCはどのくらいになりますか?
A. 前提の置き方で大きく変わるため、一律の目安を示すことはできません。無リスク利子率・株式リスクプレミアム・β・サイズプレミアム・資本構成のどれを動かしても結果は変わります。上のツールで自分の前提を入れ、±1%の幅を持って捉えてください。
Q. 借入を増やすとWACCは下がりますか?
A. 節税効果がある分、負債の税引後コストは株主資本コストより低いのが通常なので、一定の範囲では下がる方向に働きます。ただし借入が増えればβLが上がって株主資本コストも上がり、さらに財務リスクが高まれば負債コスト自体も上昇します。単純に借りるほど有利になるわけではありません。
Q. 非上場会社の評価でDCF法は本当に使えますか?
A. 使われますが、DCF法だけで結論を出すことは少なく、非上場株式の評価方法にあるとおり、類似会社比較法や時価純資産法と並べて評価レンジで捉えるのが一般的です。事業計画の精度が低い場合はDCF法の重みを下げる、といった判断も行われます。税務上の評価はまた別の基準になるため、税理士など専門家にご確認ください。
あわせて読みたい
- WACC(加重平均資本コスト)とは
- CAPM・株主資本コストとは
- DCF法とは|企業価値評価の基本
- フリー・キャッシュ・フロー(FCF)とは
- 継続価値(ターミナルバリュー)とは
- 企業価値と株式価値の違い
- 類似会社比較法(EV/EBITDA倍率)とは
- 流動性ディスカウント(DLOM)とは
- 非上場株式の評価方法
- ROE・ROICとは
- 株式評価の3つのアプローチ比較
ほかの無料ツール
- DCF法 計算ツール|FCFとWACCから企業価値・株式価値を試算
- EV/EBITDA倍率 企業価値計算機
- 実効税率 計算ツール
- 運転資本・CCC 計算ツール
- 年買法(年倍法)計算機
- EBITDA 計算ツール
※ 本ツールは単純化した概算です。数値はいずれも目安であり、前提の置き方によってWACCも評価額も大きく変わります。税務・会計・法務の判断は専門家にご確認ください。
βを調べるところから自分でやらずに評価する
M&Aバリュークラウドの詳細版レポート(5,500円・税込)は、類似上場会社のβから算定したWACCでDCF法を計算し、類似会社比較法・時価純資産法と並べた評価レンジをPDFにまとめます。要点だけを押さえた簡易版レポートは2,200円(税込)です。登録と試算は無料でお試しいただけます。