特定の評価会社の判定ツール

取引相場のない株式の相続税・贈与税評価では、会社規模を判定する前に確認すべきことがあります。評価会社が「特定の評価会社」に当たると、大会社・中会社・小会社の区分にかかわらず評価方法が変わるからです。本ツールは財産評価基本通達189の6類型を、評価明細書第2表の順序で判定します。入力した数値はブラウザ内で計算され、サーバーに送信されません。

取引相場のない株式の相続税・贈与税評価で、評価会社が「特定の評価会社」に当たるかを、財産評価基本通達189の6類型について判定します。該当すると会社規模にかかわらず評価方法が変わるため、規模判定より先に確認すべき項目です。入力した数値はブラウザ内で計算され、どこにも送信されません。

① 会社の区分

土地保有特定会社の判定でだけ使います。区分が分からない場合は会社規模区分の判定ツールで先に確認してください。

② 課税時期の資産(相続税評価額)

③ 比準要素が0のものの数

配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)のうち、0であるものの数を選びます(評基通183の方法で計算した金額)。

直前期末を基準にした場合
0〜3のうち該当する数
直前々期末を基準にした場合
同じ方法で計算した数

④ 会社の状況

判定結果

判定

一般の評価会社

特定の評価会社には当たりません。会社規模に応じた原則的評価方式によります。

株式等の保有割合

10%

基準 50%以上で該当

土地等の保有割合

40%

基準 90%以上で該当

いずれの割合も1%未満の端数を切り捨てています。分母は相続税評価額による総資産価額(50,000万円)です。

(1)比準要素数1の会社

該当しない

直前期末で0の比準要素は0つなので該当しません。

(2)株式等保有特定会社

該当しない

株式等の保有割合は10%で、基準の50%に満たないため該当しません。

(3)土地保有特定会社

該当しない

土地等の保有割合は40%で、この会社に適用される基準は90%です。基準に満たないため該当しません。

(4)開業後3年未満の会社等

該当しない

開業後3年以上で、比準3要素がいずれも0という状態にも当たらないため該当しません。

(5)開業前または休業中の会社

該当しない

開業前・休業中のいずれにも当たりません。

(6)清算中の会社

該当しない

清算中ではありません。

判定にあたっての注意

判定を免れるための資産構成の変動は、なかったものとされる

評基通189の柱書は、株式等保有特定会社・土地保有特定会社に当たるかどうかを判定する場合において、課税時期前に合理的な理由もなく資産構成に変動があり、その変動がこれらに該当すると判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定を行うとしています。

2以上に該当するときは「後の番号」による

たとえば株式等保有特定会社と清算中の会社の両方に当たる場合は、番号の大きい「清算中の会社」の判定によります。本ツールもこの順序で最終結果を出しています。

保有割合は相続税評価額で見る

株式等保有割合・土地保有割合の分母となる総資産価額も、分子となる株式等・土地等の価額も、帳簿価額ではなく課税時期における相続税評価額です。一方、土地保有特定会社の判定で小会社をどの基準で見るかを決めるときに使う総資産価額は帳簿価額です。同じ「総資産」でも場面によって基準が違います。

割合の端数は1%未満切捨て

株式等保有割合・土地保有割合とも、1%未満の端数を切り捨てて判定します。

比準要素は2期分を見る

比準要素数1の会社は、直前期末を基準にした配当・利益・純資産のうちいずれか2つが0であり、かつ直前々期末を基準にしても2つ以上が0である場合に該当します。直前期だけの一時的な状況では当たりません。

※ 本ツールは財産評価基本通達189の判定基準を実装した概算です。各資産を通達に従って評価する部分や、S1+S2方式の計算そのものは含んでいません。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

なぜ「規模判定より先」なのか

通達178は、取引相場のない株式を大会社・中会社・小会社の区分に応じて評価するとしたうえで、ただし書で「同族株主以外の株主等が取得した株式又は特定の評価会社の株式の価額は、それぞれ188又は189の定めによって評価する」としています。つまり特定の評価会社に当たれば、規模区分の話は出番がありません。

実際、国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」も、第1表で株主と会社規模を判定したあと、第2表で特定の評価会社の判定を行い、その結果に応じて第3表以下に進む構成になっています。一般の評価会社であれば第6表以下は不要、という作りです。

持株会社の形をとっている会社、不動産を多く持つ会社、設立して間もない会社は、当たる可能性が現実にあります。評価を始める前にここを通すのが正しい順序です。全体の流れは取引相場のない株式の評価をご覧ください。

6つの類型

番号・類型判定の基準評価方法
(1) 比準要素数1の会社配当・利益・純資産のうち2つが0で、かつ直前々期末を基準にしても2つ以上が0純資産価額。選択によりL=0.25の併用方式も可
(2) 株式等保有特定会社総資産(相続税評価額)に占める株式・出資・新株予約権付社債の割合が50%以上純資産価額。選択によりS1+S2方式も可
(3) 土地保有特定会社土地等の割合が、大会社70%以上/中会社90%以上(小会社は総資産価額で分岐)純資産価額
(4) 開業後3年未満の会社等開業後3年未満、または比準3要素がいずれも0(比準要素数0の会社)純資産価額
(5) 開業前または休業中の会社純資産価額(80%評価の適用なし
(6) 清算中の会社分配を受ける見込みの金額の複利現価

2以上に当たる場合は「後の番号の判定による」と評価明細書に明記されています。たとえば株式等保有特定会社であり同時に清算中でもあるなら、清算中の会社として評価します。本ツールもこの順序で最終結果を出します。

株式等保有特定会社——持株会社で問題になる

課税時期における各資産を相続税評価額で見たとき、そのうちに占める株式・出資および新株予約権付社債の価額の合計額の割合が50%以上であれば該当します。事業会社の株式を持つだけの持株会社は、当然ながら当たります。

原則は純資産価額による評価ですが、納税義務者の選択により「S1の金額」+「S2の金額」によることもできます。考え方は株式を持っているだけの部分と、自ら事業をしている部分を切り分けて評価するというものです。

S2は、保有する株式等そのものに対応する部分です。株式等の相続税評価額の合計から、含み益に対する法人税額等相当額を控除し、課税時期の発行済株式数で割って求めます。S1は、それ以外の部分について、株式等を除いた資産をもとに通常の評価方法を当てはめたもので、類似業種比準価額を使う場合には評価会社の配当・利益・純資産から受取配当金等収受割合に対応する部分を差し引いて比準します。実際の計算はS1+S2方式 計算ツールで行えます。

グループ再編を考えるときは、この判定への影響を先に確認してください。持株会社の仕組みは持株会社とは、再編の手法は株式交換・株式移転会社分割とはで解説しています。

土地保有特定会社——小会社は総資産で基準が変わる

土地等の保有割合による判定で、基準は会社規模によって変わります。大会社は70%以上、中会社は90%以上。ここまでは単純です。

ややこしいのが小会社です。通達は、小会社のうち総資産価額(帳簿価額)が一定以上のものを、大会社または中会社と同じ基準で判定することにしています。

小会社の総資産価額(帳簿価額)卸売業小売・サービス業それ以外基準
上位20億円以上15億円以上15億円以上70%以上
中位7,000万円以上4,000万円以上5,000万円以上90%以上
それ未満判定の対象外

つまり規模の小さい小会社は、土地をどれだけ持っていても土地保有特定会社には当たりません。評価明細書の第2表にも、この区分に該当しない小会社には判定欄そのものがありません。不動産賃貸業を営む小規模な会社では、ここを知らずに該当すると誤判定しがちです。

なお、分母となる総資産価額は相続税評価額、小会社の基準を決めるときに見る総資産価額は帳簿価額です。同じ「総資産」でも場面で基準が違うので注意してください。規模の判定は会社規模区分の判定ツールで行えます。

資産構成を動かして外すことはできない

通達189の柱書は、株式等保有特定会社・土地保有特定会社に当たるかどうかを判定する場合について、こう定めています。課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動がこれらに該当すると判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定を行う——。

直前に株式を売って割合を50%未満にする、土地を売って割合を下げる、といった動きは通達自身が封じているということです。事業上の合理性がある行為の結果として割合が変わるのと、判定を外す目的で動かすのは別です。個別の判断は税理士にご確認ください。

よくある質問

該当すると評価額は上がりますか

上がることが多い、というのが一般的な傾向です。多くの類型で類似業種比準方式が使えなくなり、純資産価額による評価になるためです。含み益の大きい会社では、類似業種比準価額のほうが低く出ることが多いので差が生じます。ただし会社の状況によっては逆になることもあり、一律には言えません。純資産価額の計算は純資産価額方式 計算ツール、類似業種比準価額は類似業種比準価額 計算ツールで試算できます。

比準要素の数はどう数えますか

評基通183の方法で計算した1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)のうち、0であるものを数えます。無配ならⓑは0、課税所得が負数なら利益金額は0とされます。計算方法は類似業種比準方式とはで解説しています。直前期末だけでなく直前々期末を基準にした数も必要なので、2期分を用意してください。

同族株主以外が取得した場合はどうなりますか

特定の評価会社であっても、同族株主等以外の株主が取得した株式は配当還元方式によります(ただし配当還元価額が本項の金額を超える場合は本項の金額)。まず取得者の立場を判定してください。同族株主の判定ツールをご利用ください。

開業前・休業中だけ80%評価がないのはなぜですか

通達189-5が、純資産価額の本文によることとしており、議決権割合50%以下の場合に80%を乗じるただし書を引いていないためです。他の類型(189-2から189-4)では80%評価が適用されます。条文の作りの違いなので、該当する場合は文言を確認してください。

関連する解説記事

ほかの無料ツール

※ 本ツールは財産評価基本通達189の判定基準を実装した概算です。各資産を通達に従って評価する部分、S1+S2方式の計算、清算中の会社の複利現価の計算は含んでいません。実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。

税務上の評価額と、第三者に売ったときの価格を並べて見る

M&Aバリュークラウドの詳細版レポート(5,500円・税込)は、DCF法・類似会社比較法・時価純資産法を並べた評価レンジをPDFにまとめます。持株会社化や資産の組み替えを考えるとき、両方の数字があると議論が早く進みます。登録と試算は無料です。