M&A支援機関登録制度とは? 登録の意味・確認方法と、補助金との関係

最終更新: 2026-09-12

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M&Aの相談先を探していると、支援機関のウェブサイトに「M&A支援機関登録制度 登録済」「中小M&Aガイドライン遵守宣言」といった表示を見かけます。この表示は何を意味するのか、登録があれば安心してよいのか、逆に登録のない会社に頼むと問題があるのか。ここを誤解したまま依頼先を決めてしまうと、期待していた保護が実際には働かないということが起こります。

本稿では、中小企業庁および同制度事務局が公表している資料にもとづいて、M&A支援機関登録制度が何をする仕組みで、何を担保し、何を担保しないのかを整理します。制度の内容や公募の条件は年度ごとに改訂されるため、実際に手続を進める際は必ず最新の公募要領・公表資料をご確認ください。

制度の目的と経緯

M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が令和3(2021)年8月に創設した仕組みです。中小企業庁「M&A支援機関登録制度について」(令和8年5月、中小企業庁財務課)によれば、その出発点は令和3(2021)年4月28日に取りまとめられた「中小M&A推進計画」にあります。同計画では、中小企業におけるM&A支援機関に対する信頼感の醸成に向けて、次の2つに取り組むこととされました。

  • 事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)において、M&A支援機関の登録制度を創設し、M&A支援機関の活用に係る費用の補助については、あらかじめ登録された機関の提供する支援に係るもののみを補助対象とすること。
  • 登録したM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口を創設すること。

同資料は、この制度の目的を「『中小M&Aガイドライン』の理解及び普及を促すとともに、M&A支援機関に係る一定の規律の下で中小M&A市場の環境整備を図ること」と説明しています。加えて、令和7(2025)年8月5日に取りまとめられた「中小M&A市場改革プラン」において、中小M&A市場の健全性を高めていく必要性が示されたことにも言及があります。

「中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した機関を登録・公表する」仕組み

制度の中身を一言でいえば、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言し、所定の要件を満たしたFA・仲介業者を登録し、その一覧をデータベースで公表する仕組みです。中小企業庁の公表資料でも、登録制度は「中小M&Aガイドラインの遵守の宣言等を登録要件として、M&A支援を行うフィナンシャル・アドバイザー(FA)又は仲介業者を登録するもの」と説明されています。

ベースとなる中小M&Aガイドラインは、中小企業庁が公表している行動指針で、現行は第3版(2024年8月30日公表)です。同ガイドラインは、M&Aの基本的な事項や手数料の目安を示すとともに、M&A業者等に対して適切なM&Aのための行動指針を提示するものと位置づけられています。仲介とFAという立場の違いについてはM&A仲介とFAの違いで解説しています。

登録数は公表資料で確認する

登録件数は毎月更新されます。中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表(令和8年度公募(7月分))について」(2026年8月20日公表)によれば、令和8(2026)年8月20日時点で登録されているFA及び仲介業者は3,287件(内訳:法人2,531件、個人事業主756件)です。同じ制度の公表資料である「令和7年度公募(2月分)」(2026年3月9日公表)では、令和8(2026)年3月9日時点で3,399件(法人2,606件、個人事業主793件)とされていました。

件数が半年で減っているのは、登録が毎年度の継続申請を前提としているためです。登録を継続するには前年度の報告を期限内に提出する必要があり、提出のなかった機関は継続されません。つまり登録件数は単純に積み上がるものではなく、増減します。最新の数値は中小企業庁が毎月公表する資料でご確認ください。

登録の対象になる支援機関・ならない支援機関

前掲の制度概要資料によれば、対象は中小M&Aガイドラインにおける「支援機関」のうち、中小企業に対してFA業務又は仲介業務を行う者です。具体的には、中小企業とFA業務又は仲介業務に係る契約(名称や形態は問わない)を締結し、相談料・着手金・中間金・成功報酬等の手数料を受け取ってマッチング支援や手続進行に関する総合的な支援を行う者とされています。専業に限られず、仲介業務を行う金融機関等も対象になります。

一方で、次のような支援機関は登録の対象外である旨が明記されています。

  • デュー・ディリジェンス(DD)のみを提供する支援機関:DDはマッチング支援や手続進行に関する総合的な支援には当たらないため、登録の必要はありません。DDの内容はデューデリジェンスとはで解説しています。
  • M&Aマッチングサイトの提供のみを行う事業者(M&Aプラットフォーマー)、およびマッチングサイトの登録代行を請け負う支援機関も、登録の必要はありません。プラットフォームの使い方はM&Aマッチングサイトの選び方を参照してください。

重要なのは、これらの費用も登録の有無にかかわらず事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の補助対象となると資料に明記されている点です。登録が問題になるのは、あくまでFA業務・仲介業務に係る手数料の部分です。

売り手・買い手にとって登録は何を意味するか

登録の有無を確認する方法

確認方法は明確で、M&A支援機関登録制度事務局のホームページで公開されている登録支援機関データベースを検索するのが基本です。中小企業庁の公表資料でも「M&A支援機関登録制度事務局ホームページにおいて、中小企業者等が、登録M&A支援機関の検索が可能なデータベースを提供しています」「登録M&A支援機関の手数料体系も併せて公表しております」と案内されています。手順としては次のとおりです。

  • データベースで社名を検索する:登録は原則として1事業者(法人・個人事業主)につき1登録です。グループ会社の場合は、FA業務又は仲介業務を行う事業会社ごとに登録が必要とされているため、親会社が登録されていても、契約相手となる子会社が登録されているとは限りません。契約の当事者になる法人名で確認するのが確実です。
  • 登録の区分を見る:登録は提供する業務に応じて「FA業務のみ」「仲介業務のみ」「FA・仲介業務両方」の種別ごとに行われます。自分が受けようとしている支援の形と一致しているかを確認します。
  • 公表されている手数料体系を見る:登録機関は、普段顧客へ提示している標準的な手数料体系と料金算定根拠を報告し、その一部が公表されます。面談で提示された条件と公表内容が食い違う場合は、その理由を尋ねる材料になります。
  • 自社ホームページの遵守宣言を見る:登録要件として、中小M&Aガイドラインを遵守している旨の宣言を自社ホームページに掲載することが求められています(ホームページがない場合は会社概要やパンフレット等に追記して顧客に宣言)。事務局のQ&Aでは、会員専用サイトなど外部から確認できない場所ではなく、一般に閲覧可能な状態にするよう案内されています。

中小企業庁が公表しているリーフレット「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」(中小企業庁事業環境部財務課)でも、最初のチェック項目として「『M&A支援機関登録制度』の登録機関から選定しましょう」「支援機関の登録状況は『M&A支援機関登録制度』HPのデータベースで確認できます」と案内されています。

登録があることで担保されること

登録があることで確認できるのは、おおむね次の範囲です。

  • その事業者が中小M&Aガイドラインの遵守を宣言していること、そしてその宣言を自社ホームページ等で公表していること。
  • FA・仲介契約の締結に際して、顧客に対して中小M&Aガイドラインの遵守について事前に(資料をもって)説明することが遵守事項として課されていること。
  • 標準的な手数料体系が公表されていること。相場観の突き合わせに使えます。手数料の水準についてはM&A仲介手数料の相場、計算の仕組みはレーマン方式の計算方法で解説しています。
  • 秘密保持義務条項の規定内容にかかわらず、顧客が情報提供受付窓口へ情報提供したり、事業承継・引継ぎ支援センター等へ相談したりする行動を制約しないことが登録要件とされていること。
  • 事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)において、FA・仲介手数料が補助対象になりうること。
  • 不適切な対応があった場合に、情報提供受付窓口を通じて事務局・中小企業庁に情報が届く経路があること。

登録が担保しないこと(登録=品質保証ではない)

ここが本稿で最も重要な点です。登録は支援の品質を保証するものではありません。前掲の中小企業庁リーフレット「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」には、登録機関から選定することを勧める記述に続けて、次の注記が明記されています。「登録支援機関であっても支援の質は異なりますので、登録支援機関の具体的な説明を踏まえて支援を受けるか決定しましょう」。

制度の設計上も、登録は書面審査によるものです。事務局のQ&Aでは「登録いただいた情報およびご提出いただいた資料の審査のみで、別途追加で対面審査等は実施いたしません」と説明されています。つまり登録は、ガイドラインを守ると宣言し、所定の報告に応じる枠組みに乗っているかを確認するものであって、担当者の力量、買い手ネットワークの厚み、価格算定の妥当性、交渉の巧拙を評価したものではありません。

実際に、登録機関に関する不適切な事案は公表されています。中小企業庁財務課およびM&A支援機関登録制度事務局「不適切な営業行為に係るトラブルの発生を踏まえた対応について」(令和8年9月1日)では、不適切な広告・営業行為を行ったとして過去に注意を発出した登録M&A支援機関1社について、再度中小M&Aガイドラインの趣旨に反する行為が認められたため改めて注意を発出した旨が公表されました。同資料では、当該支援機関の名称は公表せず所在地(都道府県名)のみを公表するとしたうえで、同様の事案が再度確認された場合には社名公表や登録の取消しを含めた対応を検討すると記載されています。登録されていても問題が生じうることを、制度の運営側自身が前提としているわけです。

登録の有無は「入口の足切り」として使い、実際の判断は担当者の説明の具体性、契約条件、価格算定の根拠で行う——これが公表資料の趣旨に沿った使い方です。比較の進め方はM&A仲介会社の選び方で詳しく整理しています。

事業承継・M&A補助金との関係

登録制度が実務上いちばん効いてくるのが、補助金との関係です。中小企業庁の公表資料では、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)において、FA業務又は仲介業務に係る手数料については、本登録制度にあらかじめ登録されたFA・仲介業者によるもののみを補助対象とすると明記されています。事務局のQ&Aでも、登録のメリットとして挙げられているのはこの点です。

したがって、補助金の利用を視野に入れているなら、依頼先を決める前に登録の有無を確認する必要があります。契約を締結してから登録がないと分かっても、その手数料は補助対象になりません。あわせて押さえておきたい点を整理します。

  • DD費用・マッチングサイト利用費用は登録の有無を問わない:前述のとおり、DD費用やM&Aマッチングサイトの登録等に係る費用は、支援機関の登録の有無にかかわらず補助対象となると資料に明記されています。
  • 顧問契約に基づく支援は対象外:事務局のQ&Aでは、顧問契約とは別にFA契約・仲介契約を締結して業務を行う場合はあらかじめ登録がないと補助対象経費とならないこと、また顧問契約に基づく支援は専門家活用枠の対象外であることが説明されています。
  • 複数の事業者が連携する場合は全社の登録が必要になりうる:制度概要資料の参考例では、仲介業者Aと連携してM&A支援機関Bが中小企業Cと三者間契約し、AとBがそれぞれ費用を請求する場合、AとBの支払いを補助対象経費とするためにはAとBのいずれも登録が必要とされています。

なお、補助率・上限額・対象経費・スケジュールは公募回ごとに異なります。金額や要件をここで断定することはできませんので、必ず最新の公募要領で確認してください。補助金そのものの概要は事業承継・M&A補助金、無料で使える相談窓口を含む支援制度の全体像はM&Aの公的支援制度で解説しています。

支援機関側に課される義務

登録は「一度取れば終わり」ではありません。制度概要資料(令和8年5月)に記載されている登録後の遵守事項は、確認できた範囲で次のとおりです。

区分内容
遵守宣言の掲載中小M&Aガイドラインを遵守している旨の宣言を自社ホームページに掲載し続けること。ホームページがない場合は会社概要や事業概要パンフレット等に追記し、顧客に対して宣言すること。登録期間中に顧客への説明状況の報告等を求められることがある
契約前の事前説明FA業務又は仲介業務の契約締結に際して、顧客となる中小企業者等に対し、中小M&Aガイドラインの遵守について事前に説明すること。説明は資料をもって行う(紙・電子は問わない)
手数料体系の報告・変更報告普段顧客へ提示している標準的な手数料体系と料金算定根拠を報告すること。内容が変更された場合はマイページの変更申請フォームからすみやかに報告すること
支援業務の報告・変更報告M&Aのプロセス(バリュエーション、マッチング、基本合意の交渉・締結、DD、最終契約の交渉・締結、クロージング)ごとに提供する主な業務と、PMIを見据えた支援の実施状況を報告すること。変更時は同様に報告
年次の共通報告・実績報告/活動報告毎年度、前年度(前年4月1日〜当年3月31日)の中小M&Aに係る報告を提出すること。報告に基づく登録機関ごとの実績・支援等の公表に異議を申し立てないこと。虚偽の報告があった場合、特段の事情がない限り登録を取消すとされている
調査・報告への協力公募要領に基づく報告の対象となった場合、報告の実施を拒まないこと。虚偽の報告や資料提出をしないこと

実績報告のしくみ

年次報告は、成約実績の有無で提出物が分かれます。制度概要資料によれば、成約(最終契約の決済)の実績がある機関は共通報告+実績報告を、実績がない機関は共通報告+活動報告を提出します。ここでいう成約とは、最終契約に基づく契約が履行され、株式等の譲渡や譲渡対価の支払いが行われたことを指し、報告対象となる中小M&Aは資本金1億円以下の法人又は個人事業主を当事者とするM&Aとされています。令和8年度の継続申請の提出期間は令和8(2026)年5月29日から同年7月31日までと案内されていました。

この報告は、制度の運営だけでなく市場の実態把握にも使われます。報告された情報は、個人情報や個別企業情報を識別・特定できない形態に加工したうえで、中小M&A市場の実態把握と健全な市場環境の整備に貢献する目的で公表されることに同意することが登録要件に含まれています。集計結果の読み方は中小企業のM&A件数の統計もあわせてご覧ください。

登録の取消し

制度概要資料には、登録の取消し等についても記載があります。不正な方法で登録申請した場合、正当な理由なく共通報告・実績報告/活動報告を行わない場合、自社ホームページ等でガイドライン遵守の宣言の公表を行わない場合、情報提供受付窓口に不適切な対応に係る相談等が多く寄せられている場合などで、登録を継続することが適切でないと判断されたときは、中小企業庁又は事務局が登録を取消すことができるとされています。

さらに、取消しを行った場合には、あわせて2年以内の期間を定めて登録をしない措置を講じることができ、その旨を公表するとともに、事業承継・M&A補助金において当該事業者を利用していることが確認された中小企業者等に対して、取消し等の事実の情報提供を行うことができるとされています。判断にあたって第三者委員会に諮ることがある旨も記載されています。

情報提供受付窓口(不適切な対応があったときの相談先)

制度創設と同時に整備されたのが情報提供受付窓口です。M&A支援機関登録制度事務局のサイトでは、2021年11月12日に「M&A支援機関に係る情報提供受付窓口を設置しました」と告知されています。中小企業庁の公表資料では、登録M&A支援機関によるM&A支援を巡る問題等を抱える中小企業者等からの情報提供を受け付ける窓口と説明され、受付フォームから情報を寄せる形になっています。

公表資料に例示されている事例は、実務でつまずきやすい論点そのものです。

  • 仲介とFAの違いについての説明がなかった:双方と契約して双方に助言する仲介者なのか、一方のみと契約して一方に助言するFAなのかの説明を受けていなかった、というもの。
  • 手数料について十分な説明を受けていなかった:成功報酬は売却代金の5%と聞いていたが、最低報酬金額が適用され想定より高い手数料を払うことになった、というもの。実際の負担額はレーマン方式の手数料計算ツールで事前に概算しておくと比較しやすくなります。
  • 譲渡金額の根拠についての説明がなかった:株式の譲渡金額等の評価手法や前提条件について事前説明がなかった、というもの。
  • 適切なDDが実施されなかった:仲介者である支援機関が自らDDを実施していたこと等でDDが不十分だった、また弁護士や会計士等の専門家の意見を求めることができることを知らされなかった、というもの。
  • 不誠実な対応によりトラブルになった:サービスの履行が不十分、契約で定められた条件や約束を遵守しないなど。

窓口を使ううえで、公表資料に明記されている前提を2つ押さえておいてください。1つは、この窓口は紛争解決や助言を目的とするものではないということです。情報提供の内容に関して、要望する対応や質問への回答はできない旨が明記されています。受け付けた情報は、情報提供者等が特定されないよう留意しながら、支援機関へのヒアリングや他の中小企業者への注意喚起など、制度の運営に用いられます。

もう1つは、秘密保持義務を理由に不利益な取扱いをされないという点です。公表資料には、アドバイザリー契約・仲介契約に秘密保持義務条項が規定されていることがあるものの、登録M&A支援機関は「情報提供受付窓口に相談等をしたことのみをもって秘密保持義務違反として不利益な取扱いを行わないことを登録時に誓約しています」と記載されています。匿名による情報提供も受け付けているとされています。秘密保持契約そのものの読み方は秘密保持契約(NDA)とはで解説しています。

紛争解決や個別の助言が必要な場合は、窓口とは別の相談先が必要です。各都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継に関する相談に対応する公的窓口として案内されています。相談先の選び方は事業承継の相談先の選び方を参考にしてください。契約条件そのものの争いになる場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。

依頼する側のチェックリスト

登録の有無は入口の確認にすぎません。中小企業庁のリーフレット「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」が挙げる確認事項も踏まえ、依頼前に押さえておきたい項目を表に整理します。

確認項目何を見るか確認の仕方
登録の有無契約当事者となる法人・個人事業主が登録されているか。登録区分(FAのみ/仲介のみ/両方)が受けたい支援と合っているか。補助金の利用を考えるなら契約前の確認が必須登録支援機関データベースを契約名義で検索する。自社ホームページの遵守宣言の掲載も見る
得意分野自社と同じ業種・規模・地域の案件を日常的に扱っているか。累計件数ではなく「自社に似た案件の数」で見る「当社と同じ業種で直近1年に何件関与しましたか」と件数で聞く
報酬体系報酬率だけでなく、最低手数料、報酬を算定する基準額(譲渡額・総資産額等)、発生タイミング。公表されている手数料体系と提示内容が一致しているか想定価格を当てはめた総額シミュレーションを書面でもらい、データベースの公表内容と突き合わせる
専任条項・テール条項・直接交渉の制限専任義務の範囲と期間、自動更新の有無、契約終了後に報酬が発生するテール条項の対象範囲と期間、直接交渉が制限される範囲契約書ドラフトを受け取り、持ち帰って条文を自分で読む
担当者の経験会社の実績ではなく、実際に担当する人の保有資格・経験年数・成約実績。上位者がレビューする体制があるか「担当者の関与実績と社内のチェック体制を教えてください」と聞く
セカンドオピニオンの可否他の専門家に意見を求めることを契約上・運用上制限していないか。制限する条項があるなら範囲と理由「他の専門家に相談してもよいですか」と聞き、契約書の該当条項を確認する
プロセスごとの支援内容バリュエーション、マッチング、基本合意、DD、最終契約、クロージングの各段階で具体的に何をしてもらえるか。PMIを見据えた支援の有無登録機関が報告している支援業務の内容と、面談での説明を突き合わせる

リーフレットでは、手数料や提供される支援等について疑問がある場合の対応として、事業承継・引継ぎ支援センターや士業等専門家への相談(セカンド・オピニオン)が有効であること、場合によっては他の支援機関への依頼や手数料の交渉といった対応も検討すべきことが示されています。価格の妥当性を独立して検証する方法はM&A価格のセカンドオピニオンで解説しています。

譲渡規模が小さい案件では、そもそもFA・仲介を使うかどうかから検討の余地があります。小規模案件特有の進め方はスモールM&Aとは、売却全体の流れはM&Aによる会社売却の流れを参照してください。

士業・支援者向け:登録するかどうかの判断

税理士・会計士・金融機関など、支援する側の立場から見た場合の整理も押さえておきます。事務局のQ&Aで明確にされているのは、この制度は許認可制度ではないという点です。「本登録制度に登録しないと、M&A仲介業務やフィナンシャル・アドバイザー業務を行うことができない、といった許認可制度ではありません」と説明されています。

そのうえで、登録のメリットとして資料に挙げられているのは、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)でFA・仲介手数料が補助対象になることです。顧問先が補助金の活用を希望する可能性があるなら、登録の有無が受任の前提条件になりえます。要件と手続の概要は、確認できた範囲では次のとおりです。

  • 登録の単位:法人であれば会社単位、個人は個人単位。所属事務所が法人格で、法人としてFA・仲介業務を提供する場合は個人での登録は不要。事務所が法人格でない場合や、個人事業主として仲介・FA契約の当事者となる場合は、その個人が登録を要する。
  • 主な登録要件:中小M&Aガイドラインの遵守を宣言すること、その宣言を自社ホームページに掲載すること(HPがなければ会社概要等に追記し顧客に宣言)、登録後の遵守事項を履行することを誓約すること、法人又は個人事業主として継続的に事業活動を行っていること、秘密保持義務条項の内容にかかわらず顧客が情報提供受付窓口や事業承継・引継ぎ支援センター等へ相談する行動を制約しないこと、反社会的勢力に該当しないこと、など。
  • 提出物:新規登録は「登録申請フォーム」「手数料体系報告フォーム」「支援業務報告フォーム」の3つをすべて提出して受理される。継続は「共通報告・実績報告/活動報告フォーム」の提出が必要。
  • 手続の流れ:Web申請のみ(メール・郵送不可)。gBizIDは不要。審査は提出資料の書面審査で、対面審査は行われない。公募期間中、毎月月末までに申請があり不備がないと確認されたものが、翌月中旬頃を目途に登録機関として公表される。
  • HPへの遵守宣言掲載のタイミング:Q&Aでは「必ず登録申請前に行ってください」とされている。

なお、M&Aを直接支援せず他社に紹介するだけのビジネスモデルや、DDのみを担う立場であれば登録は不要とされています。士業事務所がM&A支援に関わる際の役割整理は税理士のM&A支援会計事務所のM&A業務で解説しています。公募期間や提出期限は年度ごとに変わるため、実際の申請時には必ず当年度の公募要領をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 登録がない会社に頼んではいけないのですか?

A. 制度上、そうした制約はありません。M&A支援機関登録制度事務局のQ&Aでは、この制度は許認可制度ではなく、登録しなければ仲介業務やFA業務を行えないというものではないと明記されています。したがって未登録の事業者に依頼すること自体は可能です。ただし、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)でFA・仲介手数料の補助を受けたい場合は、あらかじめ登録された事業者による支援でなければ補助対象になりません。補助金の利用を検討しているなら、登録の有無は契約前に必ず確認してください。また、未登録の場合、ガイドライン遵守の宣言や年次報告といった枠組みの外にあることになるため、契約条件や説明内容をより丁寧に自分で確認する必要があります。

Q. 登録は誰でもできるのですか?

A. 誰でも自動的に登録されるわけではありませんが、審査は提出書類の書面審査で、対面審査は実施されないと事務局のQ&Aで説明されています。要件は、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言し自社ホームページに掲載すること、登録後の遵守事項の履行を誓約すること、法人又は個人事業主として継続的に事業活動を行っていること、反社会的勢力に該当しないことなど、公募要領に列挙された事項を満たすことです。成約実績や在籍年数といった実務能力の基準は、確認できる範囲では登録要件に含まれていません。また、現時点でM&A業務を行っていなくても今後行う予定があれば登録は可能とされています。この設計を踏まえると、登録の有無から読み取れる情報には限りがあると考えるのが妥当です。

Q. 登録機関なら安心と考えてよいですか?

A. そう考えるのは適切ではありません。中小企業庁のリーフレット「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」には、登録機関から選定するよう勧める記述に続けて「登録支援機関であっても支援の質は異なりますので、登録支援機関の具体的な説明を踏まえて支援を受けるか決定しましょう」と注記されています。実際、令和8年9月1日付の公表資料では、登録支援機関1社に対して不適切な広告・営業行為を理由に注意を発出した旨が公表されています。登録は「ガイドライン遵守を宣言し、報告や調査に応じる枠組みに入っている」ことの確認であり、品質保証ではありません。担当者の説明の具体性、契約条件、価格算定の根拠を自分で確かめてください。

Q. 補助金を使うには何が必要ですか?

A. FA・仲介手数料を事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の補助対象とするには、その支援を提供する事業者があらかじめ本制度に登録されていることが必要とされています。複数の事業者が連携して支援する場合は、それぞれの費用を補助対象とするために各社の登録が必要になりうる旨も制度概要資料に例示されています。一方、DD費用やM&Aマッチングサイトの登録等に係る費用は、登録の有無にかかわらず補助対象になると記載されています。ただし、補助率・上限額・対象経費・申請スケジュールは公募回ごとに異なり、登録以外にも満たすべき要件があります。最新の公募要領で必ず確認してください。補助金の概要は事業承継・M&A補助金で解説しています。

Q. 登録の確認はどうやってすればよいですか?

A. M&A支援機関登録制度事務局のホームページで公開されている登録支援機関データベースを検索します。中小企業庁の公表資料では、最新の登録機関を検索する際はこのデータベースを参照するよう案内されており、登録機関の手数料体系も併せて公表されているとされています。確認の際は、実際に契約する法人名・個人名で検索することが重要です。登録は原則として1事業者につき1登録で、グループの場合もFA・仲介業務を行う事業会社ごとに登録が必要とされているためです。あわせて、その事業者の自社ホームページに中小M&Aガイドライン遵守の宣言が掲載されているかも確認できます。事務局のQ&Aでは、会員専用サイトのように外部から確認できない場所ではなく一般に閲覧可能な状態にするよう案内されています。

Q. 支援機関の対応に問題を感じたら、どこに相談すればよいですか?

A. 登録M&A支援機関に関する不適切な対応については、M&A支援機関登録制度事務局内に設置された「情報提供受付窓口」が受付フォームで情報提供を受け付けています。匿名での情報提供も可能とされ、登録機関は情報提供受付窓口に相談等をしたことのみをもって秘密保持義務違反として不利益な取扱いを行わないことを登録時に誓約している旨が公表資料に明記されています。ただし、この窓口は紛争解決や助言を目的とするものではなく、要望する対応や質問への回答はできないと明記されています。個別の解決を求める場合は、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターや弁護士等の専門家への相談が必要です。契約上の争いに関わる判断は、必ず専門家にご確認ください。

まとめ

M&A支援機関登録制度は、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言し所定の要件を満たしたFA・仲介業者を中小企業庁が登録・公表する仕組みで、令和3(2021)年8月に創設されました。中小企業庁の公表資料によれば、令和8(2026)年8月20日時点の登録件数は3,287件(法人2,531件、個人事業主756件)です。登録は毎年度の継続申請と前年度の報告提出を前提としており、件数は増減します。

依頼する側にとっての意味は3つに整理できます。第一に、登録支援機関データベースで登録の有無と公表された手数料体系を確認できること。第二に、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)でFA・仲介手数料を補助対象とするには登録が前提となること。第三に、不適切な対応があった場合に情報提供受付窓口という経路があることです。

同時に、登録は品質保証ではありません。中小企業庁自身が「登録支援機関であっても支援の質は異なります」と注記しており、審査は書面審査で、実務能力の基準は登録要件に含まれていません。登録の有無は入口の確認として使い、得意分野、報酬体系(最低手数料・算定基準額・発生タイミング)、専任条項とテール条項、担当者の経験、セカンドオピニオンの可否といった項目を、自分の目で確かめてください。制度の内容は改訂されるため、数値や要件は最新の公表資料・公募要領でご確認ください。

依頼先を選ぶ前に、自社の価値の目安を持っておくと、提示された価格の根拠を尋ねる材料になり、手数料の重さも実感として判断できます。税引後に手元に残る金額の概算は株式譲渡の手取り計算ツールで試せます(実際の税額は取得費や個別事情で変わるため、最終的には税理士にご確認ください)。

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