株式等保有特定会社とは?判定基準・S1+S2方式を計算例で解説
最終更新: 2026-10-05
株式等保有特定会社とは、会社の資産を相続税評価額で評価したとき、総資産のうち株式・出資・新株予約権付社債(株式等)の価額が50%以上を占める会社のことです。相続税・贈与税で非上場株式を評価する場面では「特定の評価会社」の一つに当たり、会社規模にかかわらず、通常の類似業種比準方式を使った評価ができなくなります。
子会社株式を多く持つ持株会社や、余剰資金を有価証券で運用してきた会社が該当しやすい類型です。該当すると評価方法が変わり、評価額が大きく上がることがあります。本稿では、判定基準、判定の注意点、評価方法(原則の純資産価額方式と、選択できるS1+S2方式)、同族株主以外の株主が取得した場合の配当還元方式までを、自作の数値例で順に確認します。
記述は、国税庁の財産評価基本通達189・189-3・185・186-2・186-3・188-2、タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」、および「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」(令和8年4月1日以降用)の様式と記載方法等で確認できた範囲に限っています。評価は判断を伴う項目が多いため、実際の申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。全体の流れは取引相場のない株式の評価で整理しています。
株式等保有特定会社の判定基準
財産評価基本通達189(2)は、株式等保有特定会社を次のように定めています。要点を表にまとめます。
| 項目 | 通達の定め(189(2)) |
|---|---|
| 判定の時点 | 課税時期(相続・遺贈なら被相続人の死亡の日、贈与なら贈与により取得した日) |
| 分母 | 評価会社の有する各資産を、財産評価基本通達に定めるところにより評価した価額の合計額(相続税評価額による総資産価額) |
| 分子 | 株式、出資および新株予約権付社債(会社法第2条第22号)の価額の合計額(相続税評価額) |
| 基準 | 分子 ÷ 分母 が50%以上 |
| 除外 | 土地保有特定会社、開業後3年未満の会社等、開業前または休業中の会社、清算中の会社のいずれかに該当する会社は除く |
ポイントは、帳簿価額ではなく相続税評価額で割合を出すことです。上場株式は課税時期の市場価格などで、非上場の子会社株式はその会社の株価をあらためて評価して算入します。帳簿上は株式の割合が低くても、子会社株式の含み益が大きいと相続税評価額では50%を超えることがあります。
また、現行の通達の基準は会社規模(大会社・中会社・小会社)を問わず50%以上です。会社規模の区分は判定には使いませんが、S1の計算では斟酌率とLの割合に使います。規模区分は会社規模区分の判定ツールで確認できます。
他の「特定の評価会社」との優先関係
特定の評価会社は、通達189で(1)比準要素数1の会社、(2)株式等保有特定会社、(3)土地保有特定会社、(4)開業後3年未満の会社等、(5)開業前または休業中の会社、(6)清算中の会社の6つが定められています。それぞれの定めに「次の(○)から(6)までに該当するものを除く」とあるため、番号の大きいほうが優先されます。たとえば株式等の割合が50%以上でも、土地保有特定会社に当たればそちらで評価します。
逆に、比準要素数1の会社の要件と株式等保有特定会社の要件の両方に当たる場合は、株式等保有特定会社として扱われます。このときS1の計算は、会社規模の区分にかかわらず比準要素数1の会社の評価(189-2)に準じます(後述)。各類型の判定を一度に確かめるなら特定の評価会社の判定ツールが便利です。
判定で間違えやすいポイント
「株式等」に含まれるもの・含まれないもの
評価明細書の記載方法等(第5表)は、株式等の価額の合計額を集計するときの留意点として、次の3点を挙げています。
- 所有目的・所有期間を問わず、すべての株式等の相続税評価額を合計する(売買目的か、子会社・関連会社株式かで区別しない)。
- 法人税法第12条により評価会社が信託財産を有するものとみなされる場合、その信託財産に含まれる株式等は評価会社が所有しているものとみなす(評価会社が明らかに収益の受益権のみを有している場合を除く)。
- 「出資」は法人に対する出資をいい、民法上の組合等に対する出資は含まない。
新株予約権付社債は、会社法第2条第22号に規定するものです。これ以外の資産をどう扱うかについて本稿で確認できた一次情報はないため、判断に迷う資産があるときは税理士にご確認ください。
判定の時点と、直前期末の数字を使う場合
判定は原則として課税時期の資産で行います。ただし、評価明細書の記載方法等(第5表)は、課税時期に仮決算をしていない場合で、直前期末から課税時期までに資産・負債の著しい増減がなく評価額への影響が少ないと認められるときは、直前期末の資産・負債を基に計算してもよいとしています。
この方法をとった場合、株式等保有特定会社の判定、純資産価額の計算、S2の計算は同じ時期で行うことに留意するよう求められています(第2表・第5表・第7表の3の記載方法等)。判定だけ課税時期、純資産は直前期末、といった使い分けはできません。
割合は1%未満を切り捨てる
評価明細書第2表の「株式等保有割合」欄は、1%未満の端数を切り捨てて記載します。たとえば株式等が2億4,950万円、総資産が5億円なら、49.9%ではなく49%と記載し、50%に達しないことになります。境界に近い会社ほど、この端数処理を見落とさないことが大切です。
課税時期前の資産構成の変動(189なお書き)
通達189には、次のなお書きがあります。要旨は、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が株式等保有特定会社(または土地保有特定会社)と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定する、というものです。
つまり、相続の直前に株式を売って現金や他の資産に替え、割合を50%未満に下げても、それが判定を免れるためと認められれば、判定上は変動がなかったものとされ得ます。どのような変動が「合理的な理由」のあるものに当たるかについて、通達は具体的な基準を示していません。個別の事情で判断が分かれる部分なので、資産の入替えを検討する場合は事前に税理士へ相談してください。
評価方法:原則は純資産価額方式、選択でS1+S2方式
通達189-3は、株式等保有特定会社の株式を次のように評価するとしています。
| 区分 | 評価方法 |
|---|---|
| 原則 | 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)。取得者とその同族関係者の議決権割合が50%以下なら、その80% |
| 選択 | 納税義務者の選択により、S1の金額とS2の金額の合計額 |
| 同族株主以外の株主等が取得した株式 | 配当還元方式(188-2)。ただし、その金額が上の方法で計算した金額を超える場合は、上の方法による金額 |
原則の純資産価額方式は、一般の評価会社と同じく通達185・186-2で計算します。手順は純資産価額方式の解説と純資産価額方式 計算ツールをご覧ください。評価明細書第7表の3では、純資産価額(㉕)とS1+S2(㉖)のいずれか低いほうを株式等保有特定会社の株式の価額(㉗)として記載する様式になっています。
S1+S2方式の考え方
S1+S2方式は、会社を「株式等を持っている部分(S2)」と「それ以外の、事業を営む部分(S1)」に分けて評価する方法です。S2には株式等そのものの価額を当て、S1には株式等の影響を取り除いたうえで通常の原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式とその併用)を当てます。株式等以外にも実際の事業がある会社では、純資産価額だけで評価するより低くなることがあります。
S1の金額の計算
S1は、通達178本文、179〜184、185本文、186、186-2に準じて計算します。そのうえで、類似業種比準価額と純資産価額のそれぞれを、株式等の影響を除くように修正します。
類似業種比準価額の修正
S1で使う類似業種比準価額の算式は、通常の算式の比準要素から、株式等に由来する部分を差し引く形になっています。
A・B・C・Dは類似業種の株価と比準要素、Ⓑ・Ⓒ・Ⓓは評価会社の1株(50円)当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)で、ここまでは通常の類似業種比準方式と同じです。比重は1:1:1、分母は3です。差し引くⓑ・ⓒ・ⓓは次のとおりです。
| 記号 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|
| ⓑ | Ⓑ × 受取配当金等収受割合 | 配当のうち、受取配当金等から生じたとみなす部分 |
| ⓒ | Ⓒ × 受取配当金等収受割合 | 利益のうち、受取配当金等から生じたとみなす部分 |
| ⓓ | ①+②(Ⓓが限度) | 純資産のうち、株式等に対応する部分 |
| ⓓの① | Ⓓ ×(株式等の帳簿価額の合計額 ÷ 総資産価額(帳簿価額)) | 帳簿上の株式等の割合で按分 |
| ⓓの② | 利益積立金額 ÷ 50円換算の発行済株式数 × 受取配当金等収受割合(利益積立金額が負なら0) | 過去の受取配当金等が積み上がった部分 |
受取配当金等収受割合は、直前期末以前2年間の受取配当金等の額の合計を、その合計と同じ2年間の営業利益の合計との和で割った割合です。受取配当金等の額は、法人から受ける剰余金の配当(株式・出資に係るもので、資本金等の額の減少によるものを除く)、利益の配当、剰余金の分配(出資に係るもの)、新株予約権付社債に係る利息の額です。営業利益に受取配当金等が含まれている場合は控除します。割合が1を超える場合は1が限度で、評価明細書では小数点以下3位未満を切り捨てます(第7表の1)。
要素別比準割合と比準割合は、通常の類似業種比準方式と同じく小数点以下2位未満を切り捨てます(第4表の2の記載方法等に準じる)。
純資産価額の修正
S1の純資産価額は、通達185本文と186-2の「各資産」を「各資産から株式等を除いた各資産」と読み替えて計算します。評価明細書第7表の3では、相続税評価額による純資産価額から株式等の相続税評価額を差し引き、帳簿価額による純資産価額から株式等の帳簿価額を差し引いて、その差額(評価差額)に法人税額等相当額の割合を乗じて控除します。
なお、第7表の3のS1の純資産価額(⑪)は、修正純資産価額を課税時期の発行済株式数で割った金額で、議決権割合50%以下の場合の80%評価の欄はありません。通達189-3(1)も185の「本文」に準じるとしています。
S1の金額の組み合わせ
修正後の類似業種比準価額(⑫)と修正後の純資産価額(⑬)を、会社規模に応じて組み合わせます。第7表の3の算定方法は次のとおりです。
| 区分 | 1株当たりのS1の金額 |
|---|---|
| 比準要素数1の会社にも該当 | ⑬と、⑫×0.25+⑬×0.75のいずれか低いほう |
| 大会社 | ⑫と⑬のいずれか低いほう |
| 中会社 | (⑫と⑬のいずれか低いほう)× L + ⑬ ×(1−L) |
| 小会社 | ⑬と、⑫×0.50+⑬×0.50のいずれか低いほう |
Lの割合は通常の中会社と同じく、総資産価額・従業員数・取引金額から求めます。比準要素数1の会社の要件にも該当する場合は、通達189-3(1)ただし書により、会社規模にかかわらず189-2(Lを0.25とする計算)に準じます。
S2の金額の計算
S2は、株式等そのものの価額から、含み益に対する法人税額等相当額を控除して求めます(通達189-3(2))。
含み益(相続税評価額 − 帳簿価額)がない場合、つまり差額が負数になる場合は、控除額は0で、株式等の相続税評価額をそのまま発行済株式数で割ります。
ここで使う割合は通達186-2に定める割合で、現行の通達では38%です。令和8年3月25日付の通達改正(課評2-28ほか)で37%から38%に改められ、令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した財産の評価に適用されています。それより前に取得した財産の評価では、改正前の37%です。
| 取得の時期 | 法人税額等相当額の割合(186-2) |
|---|---|
| 令和8年3月31日以前 | 37% |
| 令和8年4月1日以後 | 38% |
もう一つ注意したいのが、評価会社が持つ非上場株式を純資産価額で評価するときは、法人税額等相当額を控除しないという点です(通達186-3の注)。評価明細書の記載方法等(第5表)は、S1+S2方式のS2の計算においても、その子会社株式などの評価で法人税額等相当額の控除は行わないとしています。
同族株主以外の株主が取得した場合は配当還元方式
株式等保有特定会社の株式でも、同族株主以外の株主等が取得した株式は、通達188-2の配当還元方式で評価します(189-3なお書き)。算式は次のとおりです。
年配当金額は1株(50円)当たりの金額で、2円50銭未満や無配の場合は2円50銭とします。配当還元価額が、純資産価額またはS1+S2(納税義務者が選択した場合)で計算した金額を超える場合は、その金額が上限です。誰が同族株主に当たるかは同族株主の判定の記事と同族株主の判定・配当還元価額 計算ツールで確認できます。配当の考え方は配当とはでも触れています。
計算例(自作の数値)
架空の会社で一連の計算をたどります。数字はすべて説明用に作ったもので、課税時期は令和8年4月1日以後(法人税額等相当額38%)、直前期末と課税時期の資産・負債は同じとし、比準要素の金額は算出済みとします。
- 会社規模:中会社、Lの割合0.75(斟酌率0.6)
- 発行済株式数1万株、資本金等の額1,000万円(1株当たり1,000円、50円換算の株式数20万株)
- 総資産:相続税評価額5億円(うち株式等2億8,000万円)、帳簿価額3億円(うち株式等1億2,000万円)
- 負債:1億円(相続税評価額・帳簿価額とも)、利益積立金額1億9,000万円
- 直前期末以前2年間:受取配当金等の合計1,600万円、営業利益の合計(受取配当金等を除く)2,400万円
- 評価会社の比準要素(50円当たり):Ⓑ 5.0円、Ⓒ 60円、Ⓓ 1,000円
- 類似業種:A 400円、B 5.0円、C 30円、D 300円
1. 判定
株式等の割合は 2億8,000万円 ÷ 5億円 = 56%。50%以上なので株式等保有特定会社に当たります(他の特定の評価会社には当たらないものとします)。
2. 原則:純資産価額
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 相続税評価額による純資産価額 | 5億円 − 1億円 = 4億円 |
| 帳簿価額による純資産価額 | 3億円 − 1億円 = 2億円 |
| 評価差額 | 4億円 − 2億円 = 2億円 |
| 法人税額等相当額(38%) | 7,600万円 |
| 純資産価額 | 4億円 − 7,600万円 = 3億2,400万円 |
| 1株当たり | 32,400円 |
3. S1の類似業種比準価額(修正後)
受取配当金等収受割合は 1,600 ÷(1,600 + 2,400)= 0.400。これを使ってⓑ・ⓒ・ⓓを求めます。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ⓑ | 5.0円 × 0.400 | 2.0円(Ⓑ−ⓑ=3.0円) |
| ⓒ | 60円 × 0.400 | 24円(Ⓒ−ⓒ=36円) |
| ⓓの① | 1,000円 ×(1億2,000万円 ÷ 3億円) | 400円 |
| ⓓの② | 1億9,000万円 ÷ 20万株 × 0.400 | 950円 × 0.400 = 380円 |
| ⓓ | 400円 + 380円(Ⓓ1,000円以下) | 780円(Ⓓ−ⓓ=220円) |
要素別比準割合は 3.0 ÷ 5.0 = 0.60、36 ÷ 30 = 1.20、220 ÷ 300 = 0.733… → 0.73。比準割合は(0.60 + 1.20 + 0.73)÷ 3 = 0.843… → 0.84です。1株(50円)当たりの比準価額は 400円 × 0.84 × 0.6 = 201.6円、実際の1株に戻すと 201.6円 ×(1,000円 ÷ 50円)= 4,032円です。
4. S1の純資産価額(修正後)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 相続税評価額による純資産価額 − 株式等 | 4億円 − 2億8,000万円 = 1億2,000万円 |
| 帳簿価額による純資産価額 − 株式等 | 2億円 − 1億2,000万円 = 8,000万円 |
| 評価差額 | 4,000万円 |
| 法人税額等相当額(38%) | 1,520万円 |
| 修正純資産価額 | 1億2,000万円 − 1,520万円 = 1億480万円 |
| 1株当たり | 10,480円 |
5. S1・S2と結論
中会社なので、S1 =(4,032円と10,480円のいずれか低いほう)× 0.75 + 10,480円 × 0.25 = 3,024円 + 2,620円 = 5,644円です。
S2は、株式等の含み益 2億8,000万円 − 1億2,000万円 = 1億6,000万円 に38%を乗じた6,080万円を控除し、2億8,000万円 − 6,080万円 = 2億1,920万円。1万株で割って21,920円です。
| 評価方法 | 1株当たり |
|---|---|
| 原則(純資産価額) | 32,400円 |
| 選択(S1+S2) | 5,644円 + 21,920円 = 27,564円 |
| 株式等保有特定会社の株式の価額(低いほう) | 27,564円 |
| 参考:該当しなかった場合の中会社の評価 | 15,696円 |
| 参考:同族株主以外の株主が取得した場合(配当還元) | 1,000円 |
参考欄の「該当しなかった場合」は、修正しない比準要素(5.0/5.0=1.00、60/30=2.00、1,000/300=3.33、比準割合2.11)で類似業種比準価額 400円 × 2.11 × 0.6 × 20 = 10,128円を出し、10,128円 × 0.75 + 32,400円 × 0.25 で計算したものです。株式等保有特定会社に該当すると、この例では評価額が約1.8倍になります。配当還元価額は(5.0円 ÷ 10%)× 20 = 1,000円で、27,564円を超えないためそのまま評価額になります。
この例はS1+S2が原則より低くなりましたが、比較の結果はその会社の数字次第です。両方を計算して比べるにはS1+S2方式 計算ツール、修正前の比準価額は類似業種比準価額 計算ツールが使えます。
よくある誤り
- 帳簿価額で割合を判定してしまう。判定は相続税評価額によります。子会社株式の含み益で割合が上がる会社は特に注意が必要です。
- 1%未満の切捨てを忘れる。第2表の株式等保有割合は1%未満を切り捨てて記載します。
- 判定・純資産・S2の時点をそろえない。直前期末の数字を使うなら三つとも同じ時点にします。
- 子会社株式の評価で法人税額等相当額を控除する。評価会社が持つ非上場株式を純資産価額で評価するときは控除しません(186-3の注)。
- 法人税額等相当額の割合を取り違える。令和8年4月1日以後の取得は38%、それより前は37%です。
- S1の比準価額で修正前のⒷ・Ⓒ・Ⓓをそのまま使う。受取配当金等収受割合によるⓑ・ⓒ・ⓓの控除が必要で、ⓓはⒹが上限です。
- S1+S2を必ず採らなければならないと考える。S1+S2は納税義務者の選択で、原則は純資産価額方式です。評価明細書では低いほうを記載する様式です。
- 判定の順序を誤る。土地保有特定会社や開業後3年未満の会社等に当たる場合は、そちらが優先します。
対策の考え方
株式等保有特定会社に当たるかどうかで評価額が大きく変わるため、資産構成の見直しが話題に上ることがあります。ただし、前述の189なお書きのとおり、合理的な理由のない資産構成の変動が判定を免れるためのものと認められると、変動はなかったものとして判定されます。評価額を下げる目的だけで直前に資産を入れ替えるのは、この定めの対象になり得ます。
一方で、事業上の必要から資産構成が変わることは通常の経営判断として起こり得ます。持株会社の設立や組織再編、子会社株式の整理などを検討する際は、事業上の目的と時期、評価への影響を、税理士と事前に整理しておくことをおすすめします。持株会社の一般的な仕組みは持株会社(ホールディングス)とは、株式交換・株式移転は株式交換・株式移転とはで解説しています。承継全体の設計は事業承継税制とはや事業承継の株価算定もあわせてご覧ください。
どの手当てが適切かは会社ごとに異なり、本稿では特定の方法を推奨しません。相続税評価の実務は事業承継における税理士の役割や株価算定と税理士で触れているとおり、税理士に依頼するのが基本です。
よくある質問
大会社でも50%が基準ですか
現行の通達189(2)は、会社規模による区別を設けず「50%以上」としています。会社規模はS1の計算(斟酌率とLの割合)に影響します。
S1+S2方式は必ず有利になりますか
なりません。株式等以外の資産がほとんどなく事業の実態が小さい会社では、純資産価額とあまり変わらないこともあります。評価明細書では純資産価額とS1+S2のいずれか低いほうを記載する様式なので、両方を計算して比べるのが基本です。
議決権割合が50%以下なら80%評価になりますか
原則の純資産価額方式では、取得者とその同族関係者の議決権割合が50%以下なら80%評価が適用されます(189-3本文)。一方、S1+S2方式のS1の純資産価額は185の本文に準じて計算し、第7表の3にも80%評価の欄はありません。
M&Aで会社を売るときの価格もこの方法で決まりますか
いいえ。株式等保有特定会社の評価は相続税・贈与税の課税価格を求めるためのものです。M&Aの価格は当事者間の交渉で決まり、評価手法も異なります。違いは非上場株式の評価方法や時価純資産法とはで整理しています。
評価明細書のどの表を使いますか
令和8年4月1日以降用の評価明細書では、判定を第2表「特定の評価会社の判定の明細書」、総資産・株式等の価額の集計を第5表、S1+S2の計算を第7表の1〜第7表の3で行い、最終的な価額は第6表「特定の評価会社の株式及び株式に関する権利の価額の計算明細書」にまとめます。様式は改正されることがあるため、課税時期に合った版を国税庁ホームページで確認してください。
まとめ
株式等保有特定会社は、相続税評価額による総資産のうち株式・出資・新株予約権付社債が50%以上の会社です(通達189(2))。判定は課税時期の相続税評価額で行い、割合は1%未満切捨て、合理的な理由のない資産構成の変動は判定上なかったものとされ得ます。
評価は原則が純資産価額方式で、納税義務者の選択によりS1+S2方式も使えます(通達189-3)。S1は受取配当金等収受割合で比準要素を修正した類似業種比準価額と、株式等を除いた純資産価額の組み合わせ、S2は株式等の価額から含み益の38%(令和8年4月1日以後の取得)を控除した金額です。同族株主以外の株主が取得した株式は配当還元方式で評価します。
本稿で参照した主な公表資料は、国税庁「財産評価基本通達」(179、185、186-2、186-3、188-2、189、189-2、189-3)、令和8年3月25日付「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(課評2-28ほか)、タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」(令和8年4月1日現在法令等)、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」(令和8年4月1日以降用)の様式および記載方法等です。いずれも改正される可能性があるため、最新版の確認をおすすめします。