企業価値評価(バリュエーション)とは?方法と手順を解説
最終更新: 2026-10-04
企業価値評価(バリュエーション)とは、会社や事業、株式がいくらの価値を持つのかを、決算書や事業計画などの数字をもとに、根拠を示して見積もることです。M&Aで会社を売る・買う、親族や役員に株式を引き継ぐ、増資で新しい株主を迎えるといった場面では、「この会社はいくらか」という問いに、説明できる数字で答える必要があります。その答えを出す作業が企業価値評価です。
・企業価値評価=会社・株式の値段を、数字の根拠つきで見積もること。「バリュエーション」「株価算定」「株式価値評価」もほぼ同じ意味で使われます。
・評価方法は、将来の収益から見るインカム・アプローチ(DCF法など)、似た会社の相場から見るマーケット・アプローチ(類似会社比較法など)、資産から見るコスト・アプローチ(時価純資産法など)の3つに大別されます。
・1つの方法で1つの答えを出すのではなく、複数の方法で出した結果を並べてレンジ(幅)で捉えるのが基本です。
・目安をつかむだけなら、無料の計算ツールで自分で試せます。相続・贈与など税務上の株価は別のルールで計算するので、税理士に確認してください。
本稿では、企業価値評価の意味と関連する用語の違い、評価が必要になる場面、3つのアプローチと代表的な評価方法、同じ会社を3つの方法で評価した計算例、評価の進め方、依頼先と費用の目安、自分でできる範囲までを一通り解説します。各評価方法の詳しい計算は個別の記事で扱っているので、本稿は全体の地図として読み、必要なところから個別の記事に進んでください。記載した数値はすべて仕組みを説明するための例・目安です。
企業価値評価(バリュエーション)とは
上場企業の株式には、毎日の取引で決まる株価があります。一方、上場していない会社の株式には市場の値段がありません。そのため、売買や引き継ぎの場面では、会社の収益力・資産・同業他社の相場といった材料から、値段を組み立てる必要があります。これが企業価値評価です。上場企業でも、M&Aで買収価格を決めるときや、株価が実態を反映しているかを確かめるときには、同じ考え方で価値を算定します。
企業価値評価で求める値段は、「誰が見ても1つに決まる正解」ではありません。将来の収益をどう見込むか、どの会社を比較対象にするか、リスクをどれだけ見込むかといった前提によって、結果は変わります。だからこそ評価では、どの方法を使い、どの前提を置いたのかを説明できることが、数字そのものと同じくらい重要になります。前提が説明できる評価は、交渉や社内の意思決定で使える材料になり、説明できない評価は「言い値」と変わりません。
バリュエーション・株価算定・株式価値評価の違い
企業価値評価の周辺では、似た言葉がいくつも使われます。実務ではほぼ同じ意味で使われることも多いのですが、ニュアンスには次のような違いがあります。
| 用語 | 主な意味・使われ方 | よく使われる場面 |
|---|---|---|
| 企業価値評価 | 会社や事業の価値を算定すること全般。最も広い言い方 | M&A、事業承継、経営管理 |
| バリュエーション(valuation) | 企業価値評価の英語。投資・ファイナンスの分野でよく使われる | M&A、スタートアップの資金調達、株式投資 |
| 株価算定 | 非上場株式の1株あたりの価格を算定すること。結果を書面にしたものが株価算定書 | 株式の譲渡、増資、自己株式の取得 |
| 株式価値評価 | 会社全体の価値のうち、株主に帰属する部分(株式価値)を評価すること | M&Aの価格検討、株式の売買 |
| 相続税評価(財産評価) | 相続・贈与の税額計算のために、国税庁の通達に従って株価を計算すること。上の4つとは別の体系 | 相続、贈与、親族への株式の移転 |
注意したいのは最後の相続税評価です。相続や贈与で使う株価は、財産評価基本通達に定められた方法(類似業種比準方式・純資産価額方式など)で計算する税務上の評価で、M&Aで語られる「時価」とは別のルールです。同じ会社でも、相続税評価額とM&Aの取引価格が大きく違うことは珍しくありません。税務上の評価の考え方は取引相場のない株式の評価方法で解説しています。
企業価値・事業価値・株式価値の違い
企業価値評価では、「何の価値を求めているのか」を区別することが欠かせません。本業が生み出す価値が事業価値、それに余剰資金などの事業に使っていない資産を足したものが企業価値、企業価値から借入金などの有利子負債を引いて、株主の取り分として残るのが株式価値です。株式を売買するときの値段は株式価値です。
たとえば事業価値が5億円、余剰資金が1億円、借入金が2億円の会社なら、企業価値は6億円、株式価値は4億円です。「この会社は5億円」と言うとき、それが事業価値なのか株式価値なのかで、手取りは1億円以上変わります。詳しい計算と間違えやすい点は企業価値・事業価値・株式価値の違いにまとめています。
企業価値評価が必要になる場面
企業価値評価は、株式や事業の持ち主が変わる場面、あるいは会社の値段を説明する必要がある場面で行われます。目的によって、重視される方法や求められる水準が変わります。
| 場面 | 評価で知りたいこと | よく使われる方法 | 求められる水準 |
|---|---|---|---|
| M&Aで会社を売る | いくらで売れそうか、手取りはいくらか | 類似会社比較法、DCF法、年買法、時価純資産法 | 社内の目安から、交渉で根拠を示せる資料まで |
| M&Aで会社を買う | 提示価格は妥当か、いくらまでなら出せるか | DCF法、類似会社比較法 | 稟議・取締役会で説明できる資料 |
| 親族・役員への事業承継 | 株式の移転にいくらかかるか | 税務上の評価(相続税評価)、場合によりM&A的な評価 | 税理士の関与が前提 |
| 増資・資金調達 | 新株の発行価格をいくらにするか | DCF法、類似会社比較法 | 既存株主・投資家に説明できる資料 |
| 自己株式の取得・株主間の売買 | 買い取り価格は妥当か | 目的により税務上の評価とM&A的な評価を使い分け | 税務・法務の確認が必要 |
| 経営管理・資本政策 | 自社の価値はいくらで、何が価値を動かしているか | DCF法、類似会社比較法 | 社内の目安 |
場面ごとに、どの程度の書面が必要になるかは株価算定書が必要な場面で整理しています。M&Aの売却価格の考え方は会社の売却相場はいくら?、資金調達での考え方は増資時のバリュエーションの相場観が参考になります。
企業価値評価の3つのアプローチと主な評価方法
企業価値評価の方法は数多くありますが、どこに価値の根拠を求めるかによって、次の3つのアプローチに大別されます。
| アプローチ | 価値の根拠 | 代表的な評価方法 | 向いている会社 | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| インカム・アプローチ | 将来その会社が生み出す収益・キャッシュフロー | DCF法、収益還元法、配当還元法 | 成長している会社、事業計画がある会社 | 将来の見込み次第で結果が大きく動く |
| マーケット・アプローチ | 似た上場会社や過去の取引の相場 | 類似会社比較法(マルチプル法)、類似取引比較法、市場株価法 | 比較できる上場会社がある業種 | ぴったり似た会社が見つかりにくい |
| コスト・アプローチ | 会社が持っている資産から負債を引いた正味の財産 | 時価純資産法、簿価純資産法 | 資産の多い会社、清算も視野に入る会社 | 稼ぐ力やブランドなど、貸借対照表にない価値が反映されない |
3つのアプローチの違いを7つの観点で比べた詳しい解説は株式評価の3つのアプローチ比較に、非上場株式の評価方法の全体像は非上場株式の評価方法にまとめています。ここでは、実務でよく使われる代表的な方法を押さえておきます。
DCF法(インカム・アプローチ)
会社が将来生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)を、リスクに見合った割引率(WACC)で現在の価値に直して合計する方法です。「これから稼ぐ現金」を価値の源泉と考えるので、成長性や事業計画を評価に織り込めます。一方、事業計画・割引率・永久成長率の置き方で結果が大きく動くため、前提の根拠を示すことが欠かせません。計算の手順と数値例はDCF法とはで解説しています。
類似会社比較法(マーケット・アプローチ)
事業内容や規模が近い上場会社の株価が、利益などの何倍になっているか(倍率=マルチプル)を調べ、その倍率を評価対象の会社に当てはめる方法です。よく使われるのは、事業価値がEBITDAの何倍かを示すEV/EBITDA倍率です。市場の相場観を反映できるので説明しやすい反面、本当に似た会社を選べるかで結果が変わります。倍率の選び方は類似会社比較法とはで扱っています。
時価純資産法(コスト・アプローチ)
貸借対照表の資産と負債を時価に置き直し、その差額(正味の財産)を株式価値とする方法です。土地の含み益や回収できない売掛金などを反映するので、帳簿上の純資産よりも実態に近い値になります。計算が分かりやすく客観性が高い一方、会社の稼ぐ力は反映されません。修正貸借対照表の作り方は時価純資産法とはで解説しています。
年買法(中小企業のM&Aでよく使われる簡便法)
時価純資産に、営業利益などの数年分を「のれん(営業権)」として足す方法です。理論的な裏付けは弱いものの、計算が簡単で売り手・買い手が感覚的に理解しやすいため、中小企業のM&Aの現場ではよく目安として使われます。何年分を足すかや、使えるケース・使えないケースは年買法とはを参照してください。
計算例:同じ会社を3つの方法で評価する
方法によって結果がどのくらい違うのかを、仮の会社で確かめてみます。直近期の売上高5億円・営業利益4,000万円・減価償却費1,450万円、余剰資金5,000万円・有利子負債1億5,000万円の会社を想定します。以下の数値はすべて仕組みを示すための仮定です。
| 方法 | 主な前提(仮定) | 株式価値の計算 | 株式価値 |
|---|---|---|---|
| DCF法 | 5年分の事業計画、WACC 8%、永久成長率1% | 事業価値 約4億4,164万円 + 余剰資金5,000万円 − 有利子負債1億5,000万円 | 約3億4,200万円 |
| 類似会社比較法 | EBITDA 5,450万円(営業利益+減価償却費)、EV/EBITDA倍率6倍 | 事業価値 3億2,700万円 + 余剰資金5,000万円 − 有利子負債1億5,000万円 | 約2億2,700万円 |
| 時価純資産法 | 簿価純資産2億円、土地の含み益など+3,000万円 | 2億円 + 3,000万円(含み益にかかる税金の扱いは考慮していない) | 約2億3,000万円 |
同じ会社でも、方法によって2億2,700万円から3億4,200万円まで、1億円以上の幅が出ました。DCF法の結果が高いのは、今後の成長を見込んだ事業計画を織り込み、割引率8%という比較的低いリスクを前提にしているためです。逆に、類似会社比較法で使う倍率を5倍にすれば株式価値は約1億7,250万円、7倍にすれば約2億8,150万円になり、倍率1倍の違いで5,000万円以上動きます。
この幅こそが企業価値評価の実態です。実務では、1つの方法の数字を「答え」とするのではなく、複数の方法の結果を並べ、どの方法を重視するか、なぜその前提を置くのかを説明したうえで、価格のレンジとして示します。売り手は高い側の根拠を、買い手は低い側の根拠を持って交渉に臨むことになり、最終的な取引価格は交渉で決まります。また非上場株式では、自由に売買できないことを理由に非流動性ディスカウントを考慮したり、経営権を取得する場合にコントロールプレミアムを加味したりすることもあります。
評価額を左右する主な要因
どの方法で評価しても、結果を大きく動かす要因はおおむね共通しています。自社の評価額を上げたい、あるいは買収候補の評価額が妥当かを確かめたいときは、次の要因がどう効いているかを見ると全体像がつかめます。
| 要因 | 評価額への効き方 | 評価方法での現れ方 |
|---|---|---|
| 実態の収益力 | 毎年安定して出せる利益・キャッシュフローが大きいほど高い | DCF法のFCF、類似会社比較法のEBITDA、年買法の営業利益 |
| 成長性 | 売上・利益の伸びが見込めるほど高い | DCF法の事業計画と永久成長率、倍率の高い比較会社の選定 |
| リスク | 収益の振れ幅や事業の不確実性が大きいほど低い | DCF法の割引率(WACC)、規模の小ささへの上乗せ |
| 資産と負債 | 含み益のある資産や余剰資金があれば高く、借入や簿外の負債があれば低い | 時価純資産法、事業価値から株式価値への調整 |
| 業種の相場 | 同業の上場会社が高い倍率で評価されている業種ほど高い | 類似会社比較法の倍率 |
| 経営者への依存 | 社長がいないと回らない会社は、引き継ぎ後の収益が不安視され低くなりやすい | 事業計画の見直し、価格の減額や支払いの分割 |
| 取引先の集中 | 売上の大半を少数の取引先に頼っていると、失ったときの影響が大きく低くなりやすい | 割引率の上乗せ、事業計画の保守的な見直し |
表の下の2つ(経営者への依存と取引先の集中)は、決算書の数字には直接表れないものの、中小企業のM&Aでは価格交渉の大きな論点になります。評価額を上げたいなら、利益を増やすことに加えて、業務を社長以外でも回せるようにする、取引先を分散させるといった取り組みが効いてきます。逆に買い手の立場では、決算書の数字が良くても、こうした要因がないかを確かめることが、払いすぎを防ぐことにつながります。
また、評価額は「誰が買うか」によっても変わります。同じ業界の会社が買えば、販路の共有や仕入れの統合などの効果(シナジー)を見込めるため、単独の会社として評価した額より高い価格を提示できることがあります。企業価値評価で出すのは、まずその会社が単独で持つ価値であり、シナジーをどこまで価格に反映するかは交渉で決まる、という順序で考えると整理しやすくなります。
企業価値評価の進め方(7つの手順)
企業価値評価は、いきなり計算から始めるのではなく、次の順序で進めると手戻りが少なくなります。
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 目的を決める | 売却・買収・承継・増資・税務のどれに使うか、誰に見せるかを決める | 目的によって使う方法と必要な書面の水準が変わる。税務目的なら税理士へ |
| 2. 資料を集める | 決算書(3期分程度)、勘定科目内訳書、事業計画、固定資産・借入の明細など | 何を用意するかは目的と方法で決まる |
| 3. 実態の収益力をつかむ | 役員報酬の調整、一時的な損益の除外など、毎年続く利益の水準に直す | オーナー企業では調整の幅が大きくなりやすい |
| 4. 評価方法を選ぶ | 会社の特徴と目的に合う方法を2〜3つ選ぶ | 1つの方法だけに頼らない |
| 5. 計算する | 各方法で事業価値・株式価値を計算する | 事業価値と株式価値を混同しない |
| 6. レンジと感応度を見る | 前提を動かしたときに結果がどれだけ動くかを確認し、価格の幅を決める | 結果を大きく動かす前提が、交渉や説明の論点になる |
| 7. 結果をまとめる | 採用した方法・前提・結果を、見せる相手に合わせて書面にする | 前提を明記しておくと、後から検証・修正しやすい |
手順2で何を用意するかは企業価値評価に必要なデータ一覧に、手順3の考え方は正常収益力とはにまとめています。決算書から自分で手を動かして計算する流れは自分で企業価値を計算する方法で順を追って解説しています。
依頼先と費用の目安
企業価値評価は、目的と求められる水準によって、依頼先と費用が大きく変わります。一般に、社内検討用の簡易な算定であれば数十万円程度から、対外的な根拠資料となる本格的な算定書では数百万円程度、上場会社の開示や裁判に使う水準ではさらに高額になることもあります。
| 依頼先・方法 | 向いている目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 公認会計士・FAS(財務アドバイザリー) | M&Aの交渉、上場会社の開示、第三者算定 | 独立した立場の算定書を作れる。費用は高め |
| 税理士 | 相続・贈与・自己株式の取得など税務目的 | 税務上の評価に強い。M&A的な評価は事務所により得意不得意がある |
| M&A仲介会社・金融機関 | 売却の検討初期 | 無料査定として行われることが多い。支援業務の提案とセットになりやすい |
| オンラインの評価サービス・ツール | 社内の目安、複数案の比較、専門家に依頼する前の整理 | 安く早い。税務・裁判・開示など第三者性が求められる場面には向かない |
費用の内訳と依頼先ごとの違いは株価算定書の費用相場、依頼先の選び方は企業価値評価の依頼先で詳しく解説しています。
自分でできる範囲と、専門家に任せる範囲
「まず自社がどのくらいの値段になりそうか知りたい」という段階なら、専門家に依頼する前に自分で目安をつかめます。当サイトでは、登録不要で使える無料の計算ツールを公開しています。
- DCF法の計算ツール:FCF・WACC・永久成長率から事業価値と株式価値を計算
- WACC計算ツール:CAPMによる株主資本コストから割引率を計算
- EV/EBITDA倍率の計算ツール:EBITDAと倍率から事業価値・株式価値を計算
- 時価純資産の計算ツール:資産・負債の時価から純資産を計算
- 年買法の計算ツール:時価純資産と営業利益の年数分から目安を計算
決算書の数字を入れて複数の方法の結果を並べたい場合は、当サービス「M&Aバリュークラウド」の評価レポートも使えます。会員登録と試算までは無料で、報告書は有料です。簡易版(2,200円(税込))は直近期の実績から収益還元法・類似会社比較法(業種平均倍率)・時価純資産法の3つの方法で、詳細版(5,500円(税込))は事業計画をもとにDCF法・類似会社比較法(個社選定)・純資産法で株式価値を算定します。どちらを選ぶかは簡易版と詳細版の選び方を参照してください。
一方、税務申告に使う株価、裁判や株主間の争いで使う評価、上場会社の開示で求められる第三者算定は、オンラインのツールやレポートでは足りません。独立した専門家(税理士・公認会計士など)に依頼してください。無料で分かる範囲と有料に切り替える判断の目安は企業価値は無料で試算できる?にまとめています。
企業価値評価でよくある間違い
事業価値と株式価値を取り違える
DCF法や類似会社比較法でまず出てくるのは事業価値です。そこから有利子負債を引き、余剰資金を足さないと株式価値になりません。借入の多い会社でこれを忘れると、株式の値段を大きく見誤ります。
1つの方法の結果を「答え」にする
計算例で見たとおり、方法によって結果には大きな幅があります。都合のよい方法の数字だけを示すと、相手から別の方法の数字を突きつけられたときに説明できません。複数の方法を並べ、どれを重視するかの理由を持っておくことが大切です。
決算書の利益をそのまま使う
オーナー企業では、役員報酬の水準、経営者個人に近い経費、一時的な特別損益などで、決算書の利益が実態とずれていることがよくあります。調整しないまま倍率を掛けると、評価額が実態から離れます。
相続税評価額とM&Aの価格を同じものと考える
相続税評価額は税額を計算するためのルールに従った値で、買い手が払ってもよいと考える値段とは別物です。「相続税評価額がこのくらいだから、売ってもこのくらい」とは言えません。
前提を書き残さない
どの倍率を使ったのか、割引率をいくつにしたのかを記録しておかないと、後から数字を見直したり、相手に説明したりできません。結果の数字だけでなく、採用した前提を一緒に残しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 企業価値評価とバリュエーションは違うものですか?
A. 基本的に同じ意味です。バリュエーション(valuation)は「評価」を意味する英語で、日本語では企業価値評価と訳されます。投資やスタートアップの資金調達の文脈ではバリュエーション、M&Aや事業承継の文脈では企業価値評価・株価算定と呼ばれることが多い、という程度の違いです。
Q. 赤字の会社でも企業価値評価はできますか?
A. できます。ただし、利益に倍率を掛ける方法は赤字だと使えないので、時価純資産法を中心にしたり、黒字化を見込む事業計画をもとにDCF法を使ったりします。赤字の原因が一時的なものか、構造的なものかによって、評価の考え方が変わります。創業間もない会社の考え方はスタートアップのバリュエーションも参考になります。
Q. 決算書は何期分あればよいですか?
A. 実務では直近3期分程度を見ることが多いです。1期分だけでは、その年がたまたま良かった・悪かったのかが分からないためです。DCF法を使う場合は、これに加えて今後3〜5年程度の事業計画があると評価の精度が上がります。
Q. 評価額で必ず売れますか?
A. いいえ。企業価値評価で出すのは、交渉の根拠となる価格の目安やレンジです。実際の取引価格は、買い手がその会社をどう活かせるか、競合する買い手がいるか、交渉の条件などで決まり、評価額より高くも低くもなります。
Q. 用語が多くて分かりにくいのですが。
A. 企業価値評価で使う主な用語は企業価値評価・M&A用語集にまとめています。分からない言葉が出てきたら、あわせて参照してください。
まとめ
企業価値評価(バリュエーション)は、会社や株式の値段を、数字の根拠を示して見積もることです。評価方法は、将来の収益を見るインカム・アプローチ、似た会社の相場を見るマーケット・アプローチ、資産を見るコスト・アプローチの3つに大別され、実務では複数の方法の結果を並べてレンジで捉えます。目的によって使う方法と必要な書面の水準が変わるので、まず「何のために、誰に見せる評価なのか」を決めるところから始めてください。
目安をつかむ段階なら、無料の計算ツールや当サービスの試算で、自分で数字を確かめられます。交渉や稟議で根拠が必要になったら評価レポートを、税務や第三者性が求められる場面では専門家への依頼を検討する、という順序で進めると、費用をかけすぎず、必要な資料が足りないという事態も避けられます。