土地保有特定会社とは?判定基準・土地等の範囲と株価の評価方法
最終更新: 2026-10-05
土地保有特定会社とは、相続税・贈与税で取引相場のない株式を評価するときに、会社の資産のうち土地等の占める割合が一定以上あるとして、通常の評価方法(類似業種比準方式や併用方式)を使えなくなる会社のことです。根拠は財産評価基本通達189の(3)と189-4で、該当すると株価は原則として純資産価額方式だけで評価します。
不動産賃貸を主な事業とする会社や、オーナー一族の不動産を持つ資産管理会社では、この判定が株価を大きく左右します。類似業種比準価額が低い会社ほど、土地保有特定会社に当たるかどうかで結果の差が大きくなるためです。
本稿は、国税庁の財産評価基本通達(178・179・185・186-2・188-2・189・189-4)、タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の記載方法等【令和8年4月1日以降用】、質疑応答事例「不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等の取扱い」で確認できた範囲で書いています。評価全体の流れは取引相場のない株式の評価をご覧ください。数値例はすべて仕組みを示すための仮の数字です。実際の評価・申告にあたっては必ず税理士にご確認ください。
土地保有特定会社とは:特定の評価会社の一類型
財産評価基本通達178は、取引相場のない株式を会社規模(大会社・中会社・小会社)に応じて評価するとしたうえで、ただし書で「特定の評価会社の株式」は189の定めによるとしています。189は、資産の保有状況や営業の状態から、通常の評価方法になじまない会社を6つの類型に分けています。土地保有特定会社はその3番目です。
| 189の区分 | 類型 | 評価方法(原則) |
|---|---|---|
| (1) | 比準要素数1の会社 | 純資産価額(Lを0.25とする併用方式も選択可) |
| (2) | 株式等保有特定会社 | 純資産価額(S1+S2方式も選択可) |
| (3) | 土地保有特定会社 | 純資産価額 |
| (4) | 開業後3年未満の会社等 | 純資産価額 |
| (5) | 開業前又は休業中の会社 | 純資産価額 |
| (6) | 清算中の会社 | 清算分配見込額の複利現価 |
各類型には「次の(○)から(6)までのいずれかに該当するものを除く」という除外の定めがあります。土地保有特定会社は「(4)から(6)までのいずれかに該当するものを除く」とされているため、開業後3年未満の会社等・開業前又は休業中の会社・清算中の会社に当たる場合はそちらが優先します。一方、株式等保有特定会社と比準要素数1の会社の定めは土地保有特定会社を除外しているので、土地保有特定会社に当たれば、株式等保有特定会社や比準要素数1の会社の判定には進みません。
類型ごとの判定は特定の評価会社の判定ツールでまとめて確認できます。株式等保有特定会社については株式等保有特定会社の判定と評価で解説しています。
判定基準:会社規模ごとに70%と90%
通達189の(3)は、課税時期において次のいずれかに該当する会社を土地保有特定会社としています。ここでいう土地保有割合は、「その有する各資産をこの通達の定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合」です。
- イ:178により大会社に区分される会社(一定の小会社を含む)で、土地保有割合が70%以上の会社
- ロ:178により中会社に区分される会社(一定の小会社を含む)で、土地保有割合が90%以上の会社
見落としやすいのが、かっこ書きの「一定の小会社」です。小会社であっても、総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)が一定額以上なら、大会社または中会社の基準で判定されます。通達の文言を表にすると次のとおりです。
| 会社規模(178による区分) | 総資産価額(帳簿価額)の条件 | 土地保有特定会社となる土地保有割合 |
|---|---|---|
| 大会社 | 条件なし | 70%以上 |
| 小会社(卸売業) | 20億円以上 | 70%以上 |
| 小会社(卸売業以外) | 15億円以上 | 70%以上 |
| 中会社 | 条件なし | 90%以上 |
| 小会社(卸売業) | 7,000万円以上(上の70%基準に当たらないもの) | 90%以上 |
| 小会社(小売・サービス業) | 4,000万円以上(同上) | 90%以上 |
| 小会社(卸売業、小売・サービス業以外) | 5,000万円以上(同上) | 90%以上 |
| 小会社(上記の金額未満) | — | 土地保有特定会社に該当しない |
大会社基準の小会社は「卸売業」と「卸売業以外」の2区分、中会社基準の小会社は「卸売業」「小売・サービス業」「卸売業、小売・サービス業以外」の3区分で金額が分かれている点に注意してください。いずれも178の会社規模の表で使う総資産価額の基準額と同じ水準です。
なぜ小会社にも基準があるのか
178の会社規模の表では、従業員数が5人以下の会社は、総資産価額がいくら大きくても「総資産価額及び従業員数」の基準では小会社になります(取引金額の基準で中会社・大会社になる場合を除く)。従業員がほとんどいない資産管理会社は、総資産が数十億円あっても小会社に区分されることがあります。通達が小会社にも総資産価額の条件を設けているのは、こうした会社も土地保有割合で判定の対象にするためだと読めます。
逆に、総資産価額(帳簿価額)が中会社基準の金額未満の小会社は、土地保有割合が100%でも土地保有特定会社には当たりません。この場合は、ほかの特定の評価会社に当たらなければ、通常の小会社として評価します(179(3)により純資産価額、または納税義務者の選択でLを0.50とする併用方式)。
会社規模の判定が先になる
このように、70%と90%のどちらを使うか、そもそも判定の対象になるかは会社規模で決まります。したがって、会社規模区分の判定を先に済ませる必要があります。会社規模は、直前期末の総資産価額(帳簿価額)・従業員数・直前期末以前1年間の取引金額で判定し、業種区分(卸売業/小売・サービス業/それ以外)は取引金額にもとづいて判定します(178)。会社規模区分の判定ツールで区分と業種を確認してから、土地保有割合を計算してください。
土地保有割合の計算:相続税評価額で判定する
土地保有割合の分子と分母は、どちらも財産評価基本通達で評価した価額(相続税評価額)です。帳簿価額ではありません。この点は、総資産価額を「帳簿価額によって計算した金額」で見る会社規模の判定と混同しやすいところです。
| 項目 | 使う金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社規模の判定に使う総資産価額 | 直前期末の帳簿価額 | 通達178 |
| 小会社が判定対象になるかの総資産価額 | 帳簿価額(178に定める総資産価額) | 通達189(3)イ・ロのかっこ書き |
| 土地保有割合の分母(総資産価額) | 課税時期の相続税評価額 | 通達189(3)、評価明細書第2表・第5表 |
| 土地保有割合の分子(土地等の価額) | 課税時期の相続税評価額 | 同上 |
評価明細書の記載方法等によると、第2表「特定の評価会社の判定の明細書」の土地保有特定会社欄の「総資産価額」等には、課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した金額(第5表の①の金額等)を記載します。第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」は、純資産価額の計算だけでなく、株式等保有特定会社・土地保有特定会社の判定に必要な「総資産価額」「株式等の価額の合計額」「土地等の価額の合計額」の計算にも使うと明記されています。
また、土地保有割合は1%未満の端数を切り捨てて記載します(第2表の記載方法等)。計算上89.9%なら89%となり、90%基準の会社は該当しません。
判定の時点は課税時期
通達189(3)は「課税時期において」と定めています。ただし記載方法等では、仮決算を行っておらず、直前期末から課税時期までに資産・負債の著しい増減がないため影響が少ないと認められるときは、直前期末の資産・負債をもとに第5表を作ってよいとされ、その場合は第2表の総資産価額等も同様に扱うとしています。特定の評価会社の判定時期と純資産価額の計算時期は同一になる点に留意してください。
課税時期前3年以内に取得した土地等
通達185のかっこ書きにより、評価会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地等・家屋等は、路線価等ではなく課税時期における通常の取引価額で評価します(帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められる場合は帳簿価額によることができます)。第5表ではこの金額で記載するため、第5表の金額を使う土地保有割合の判定にもその価額が反映されます。最近取得した土地が多い会社は、路線価ベースで試算した割合と結果が変わることがあります。
土地等の範囲:借地権や棚卸資産の土地も含む
通達185は、土地等を「土地及び土地の上に存する権利」と定義しています。借地権などの土地の上に存する権利も含まれます。評価明細書の記載方法等では、借地権のように帳簿価額がなくても相続税評価額が算出される資産は、相続税評価額欄にその評価額を、帳簿価額欄に0を記載するとされています。
土地等の価額の合計額は、株式等の価額の合計額に準じて、評価会社が所有している(または所有しているとみなされる)土地等の相続税評価額の合計額を記載します(記載方法等)。株式等については「所有目的又は所有期間のいかんにかかわらず、全ての株式等の相続税評価額を合計」するとされており、土地等もこれに準じます。
国税庁の質疑応答事例「不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等の取扱い」は、この点を具体的に示しています。回答要旨は、たな卸資産として所有する土地等も判定の基礎に含まれるというものです。理由は、判定の基礎となる土地等は所有目的や所有期間にかかわらず評価会社が有している全てのものを含むからで、その価額は通達4-2により132(評価単位)と133(たな卸商品等の評価)で評価するとされています。
| 資産 | 土地等に含まれるか | 確認した根拠 |
|---|---|---|
| 事業用・賃貸用の土地 | 含まれる | 通達185(土地等の定義) |
| 借地権など土地の上に存する権利 | 含まれる(帳簿価額がなくても評価額を計上) | 通達185、記載方法等(第5表) |
| 販売用不動産(棚卸資産)の土地 | 含まれる(133により評価) | 質疑応答事例 |
| 建物・構築物 | 含まれない(土地等ではなく家屋等) | 通達185(家屋等の定義) |
評価方法:純資産価額方式、同族株主以外は配当還元方式
通達189-4により、土地保有特定会社の株式は、185の本文により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)で評価します。通常の会社のように類似業種比準価額を使う方法や、併用方式を選ぶことはできません。株式等保有特定会社の「S1+S2方式」や比準要素数1の会社の「L=0.25の併用方式」のような選択肢も、土地保有特定会社にはありません。
純資産価額は、資産の相続税評価額の合計から負債と「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」を控除し、課税時期の発行済株式数で割って求めます。評価差額に対する法人税額等に相当する金額は、相続税評価額による純資産価額から帳簿価額による純資産価額を控除した残額に一定割合を乗じて計算します(186-2)。
法人税額等相当額の割合は38%(令和8年4月1日以後の取得)
この割合は、令和8年3月25日付の財産評価基本通達の一部改正で37%から38%に改められました。改正通達は「令和8年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用する」としています。新旧対照表では、括弧内の内訳が「法人税(地方法人税を含む。)」から「法人税(地方法人税及び防衛特別法人税を含む。)」に改められています。令和8年3月31日以前の取得は37%で計算します。課税時期によって割合が変わるので、計算の前に必ず確認してください。
議決権割合が50%以下の場合の80%評価
189-4の本文は、株式の取得者とその同族関係者の議決権の合計数が議決権総数の50%以下であるときは、185のただし書により計算した金額(純資産価額の80%)とする旨を定めています。
同族株主以外の株主等は配当還元方式
189-4のなお書きにより、同族株主以外の株主等が取得した株式は、188-2の本文により計算した金額(配当還元価額)で評価します。ただし、その金額が純資産価額による評価額を超える場合は、純資産価額による評価額になります。タックスアンサーNo.4638も、特定の評価会社のうち(1)から(4)の会社の株式を取得した同族株主以外の株主等については配当還元方式で評価すると説明しています。
配当還元価額は、年配当金額(2円50銭未満や無配のときは2円50銭)を10%で還元し、1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍数を乗じて計算します(188-2)。取得者がどちらに当たるかは同族株主の判定で整理しており、同族株主の判定・配当還元価額 計算ツールで確認できます。
計算例:小会社の資産管理会社が90%基準に当たるか
次の仮の会社で、判定から評価までを順に追います。計算はPythonで検算しています。
- 業種:取引金額にもとづく区分が「卸売業、小売・サービス業以外」に当たると仮定
- 従業員数2人、直前期末以前1年間の取引金額(賃貸収入)3,000万円
- 直前期末の総資産価額(帳簿価額)2億円
- 発行済株式数20,000株、課税時期は令和8年4月1日以後
手順1:会社規模と適用する基準
従業員数が5人以下なので「総資産価額及び従業員数」の基準では小会社、取引金額も8,000万円未満なので小会社です。総資産価額(帳簿価額)2億円は、卸売業、小売・サービス業以外の中会社基準5,000万円以上で、大会社基準15億円未満です。したがって189(3)ロにより、土地保有割合90%以上かどうかで判定します。
手順2:土地保有割合(相続税評価額と帳簿価額の比較)
| 資産 | 帳簿価額 | 相続税評価額 |
|---|---|---|
| 土地(賃貸用) | 1億2,000万円 | 5億6,000万円 |
| 建物 | 5,000万円 | 3,000万円 |
| 現預金 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| その他の資産 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 資産合計 | 2億円 | 6億2,000万円 |
| 土地等の割合 | 60.0% | 90.32…% → 90%(1%未満切捨て) |
帳簿価額で計算すると60%で基準に遠く届きませんが、相続税評価額で計算すると90%となり、土地保有特定会社に該当します。古くに取得した土地は帳簿価額が低く、建物は償却が進む一方で固定資産税評価額は帳簿価額を下回ることもあるため、簿価と相続税評価額で割合が大きく変わります。
手順3:純資産価額(負債は借入金1億5,000万円とする)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 相続税評価額による純資産価額(6億2,000万円−1億5,000万円) | 4億7,000万円 |
| 帳簿価額による純資産価額(2億円−1億5,000万円) | 5,000万円 |
| 評価差額 | 4億2,000万円 |
| 法人税額等相当額(評価差額×38%) | 1億5,960万円 |
| 純資産価額(4億7,000万円−1億5,960万円) | 3億1,040万円 |
| 1株当たり(÷20,000株) | 15,520円 |
仮に37%で計算すると法人税額等相当額は1億5,540万円、1株当たりは15,730円です。割合の1ポイントの差で、この例では1株210円の差になります。取得者側の議決権割合が50%以下なら、80%の12,416円です。
土地保有特定会社に当たらなかった場合との比較
この会社が土地保有特定会社に当たらなければ、通常の小会社として、純資産価額のほか、Lを0.50とする併用方式も選択できます(179(3))。仮に類似業種比準価額が3,000円だとすると、併用方式は3,000円×0.5+15,520円×0.5=9,260円です。土地保有特定会社に当たると、この選択肢がなくなり15,520円になります。類似業種比準価額の計算は類似業種比準方式で解説しています。
一方、取得者が同族株主以外の株主等で、1株当たりの資本金等の額が500円、無配の場合、配当還元価額は2円50銭÷10%×500円÷50円=250円となり、純資産価額を下回るので250円で評価します。
自社の数字で試すときは、純資産価額方式 計算ツールが課税時期に応じて37%と38%を切り替えます。株価が決まった後の相続税の目安は相続税の概算ツールで確認できます。
課税時期前の資産構成の変動(189のなお書き)
通達189のなお書きは、株式等保有特定会社と土地保有特定会社の判定について、次のように定めています。課税時期前に合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が特定の評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定する。
たとえば、相続の直前に一時的な借入れで現預金を増やし、土地保有割合を基準の直前まで下げたような場合が想定されます。この定めは比準要素数1の会社や開業後3年未満の会社等には書かれておらず、(2)の株式等保有特定会社と(3)の土地保有特定会社の判定を対象にしています。
「合理的な理由」があるかどうかは、事業上の必要性、資金の使途、変動の時期と継続性などの事実関係で判断されることになり、通達自体に具体的な基準は示されていません。本稿は割合を基準未満に下げる方法を案内するものではなく、資産構成の見直しを検討する場合は、目的と実態を整理したうえで税理士にご相談ください。事業承継全体の税務の論点は事業承継税制や事業承継の株価算定もあわせてご覧ください。
不動産会社・資産管理会社での典型例
土地保有特定会社の判定が問題になりやすいのは、次のような会社です。いずれも「当たりやすい」というだけで、実際の該当・非該当は個別の数字で決まります。
- オーナー一族の不動産を保有する資産管理会社:従業員が少なく小会社になりやすい一方、総資産価額(帳簿価額)が中会社基準以上なら90%基準で判定されます。現預金や建物の比率が低いと90%に達することがあります。
- 土地を長く保有する不動産賃貸業:帳簿価額が取得時のままでも、路線価ベースの相続税評価額が大きく、相続税評価額で見た土地保有割合が高くなりがちです。
- 販売用不動産の多い不動産販売会社:棚卸資産の土地も土地等に含まれるため、在庫の多い時期には割合が上がります。
- 本業を縮小して不動産収入が中心になった会社:事業用資産が減って土地の比重が高まり、会社規模も小さくなるため、判定の前提が以前と変わっていることがあります。
不動産会社の時価評価の考え方(M&A等で用いるNAVなど)は不動産業・賃貸業の企業価値評価で扱っています。相続税評価はあくまで通達に沿った課税上の評価であり、M&Aでの取引価格とは目的も方法も異なります。違いは株価算定と税理士で整理しています。不動産を持株会社でまとめて保有する構成については持株会社(ホールディングス)とはも参考になります。
よくある誤り
帳簿価額で土地保有割合を計算してしまう
もっとも多いのがこの誤りです。会社規模の判定や、小会社が判定対象になるかの総資産基準は帳簿価額ですが、土地保有割合そのものは相続税評価額で計算します。計算例のように、簿価では60%でも相続税評価額では90%を超えることがあります。
会社規模の区分を取り違える
大会社なら70%、中会社なら90%です。中会社の会社に70%基準を当てはめると、該当しないはずの会社を土地保有特定会社と判定してしまいます。また「小会社は対象外」と思い込み、総資産価額(帳簿価額)が基準額以上の小会社を見落とす誤りもあります。さらに、小会社の総資産基準は業種区分で金額が違うため、業種区分の判定(取引金額が最も多い業種)を誤ると基準額もずれます。
棚卸資産や借地権を土地等から外す
販売用の土地は「在庫だから土地ではない」と外しがちですが、質疑応答事例のとおり判定の基礎に含まれます。借地権も帳簿価額がなくても相続税評価額を計上します。
端数処理と判定時期のずれ
土地保有割合は1%未満を切り捨てます。四捨五入して90%とすると判定を誤ります。また、判定を直前期末ベースにしたのに純資産価額は課税時期ベースで計算するなど、時期を混在させないようにしてください。
評価差額に対する法人税額等相当額の割合の取り違え
令和8年4月1日以後の取得は38%、それより前は37%です。古い評価明細書や計算シートを流用すると割合が古いままになることがあります。
よくある質問
土地保有特定会社に当たると、株価は必ず上がりますか
必ずではありません。もともと純資産価額で評価している小会社であれば、評価額は同じになることがあります。差が出るのは、類似業種比準価額が純資産価額より低く、併用方式や類似業種比準方式を選べたはずの会社です。純資産価額方式の詳細は純資産価額方式とはをご覧ください。
株式等保有特定会社と両方の基準を満たしたらどうなりますか
株式等保有特定会社の定め(189(2))は(3)の土地保有特定会社に該当するものを除いているため、土地保有特定会社として扱います。評価明細書の記載方法等でも、土地保有特定会社に該当する場合は株式等保有特定会社欄の記載は不要とされています。
不動産を保有する子会社の株式は土地等に含まれますか
子会社株式は土地等ではなく株式等として扱われ、土地保有割合の分子には入りません。その代わり株式等保有特定会社の判定に影響します。詳しくは株式等保有特定会社をご覧ください。
判定には評価明細書のどの表を使いますか
第1表の2で会社規模を判定し、第5表で各資産の相続税評価額と土地等の価額の合計額を計算し、第2表「特定の評価会社の判定の明細書」の土地保有特定会社欄で割合を判定します。該当すれば、純資産価額(第5表)で評価します。
M&Aで不動産会社の株式を売買するときにもこの判定は使いますか
土地保有特定会社は相続税・贈与税の評価上の区分です。第三者間のM&Aの価格は、通常、時価純資産や収益力をもとに当事者の交渉で決まります。ただし同族間の譲渡では税務上の時価が問題になることがあり、その場面では財産評価基本通達の考え方が参照されることがあります。判断は税理士にご確認ください。M&Aでの評価方法は非上場株式の評価方法や時価純資産法で解説しています。
役員退職金の支給で割合は変わりますか
現預金が減ると総資産が減り、土地保有割合は上がる方向に動きます。退職金の支給が株価に与える影響の考え方は役員退職金と自社株評価で扱っています。
まとめ
土地保有特定会社は、相続税評価額で計算した土地保有割合が、大会社で70%以上、中会社で90%以上の会社です。小会社も、総資産価額(帳簿価額)が大会社基準(卸売業20億円・それ以外15億円)以上なら70%、中会社基準(卸売業7,000万円・小売・サービス業4,000万円・それ以外5,000万円)以上なら90%で判定されます。
土地等には借地権などの権利や、棚卸資産として持つ土地も含まれます。割合は1%未満を切り捨て、判定時期と純資産価額の計算時期は同一にします。課税時期前に合理的な理由なく資産構成を変えた場合は、その変動はなかったものとして判定されます。
該当すると評価は純資産価額方式に限られ、評価差額に対する法人税額等相当額は令和8年4月1日以後の取得から38%です。議決権割合50%以下なら80%評価、同族株主以外の株主等は配当還元方式(純資産価額が上限)になります。
本稿で参照した主な公表資料は、国税庁「財産評価基本通達」(178・179・185・186-2・188-2・189・189-4)、令和8年3月25日付「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」と新旧対照表、タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」記載方法等【令和8年4月1日以降用】、質疑応答事例「不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等の取扱い」です。いずれも改正される可能性があるため、最新版をご確認ください。