M&Aの価格算定方法|4手法の計算例で見る価格の決め方と目安
最終更新: 2026-11-01・M&Aバリュークラウド(株式会社ベルシャンス)・ 編集方針
「M&Aの価格はどうやって決まるのか」「提示された金額は妥当なのか」。会社を売る側も買う側も、最初に知りたいのはここです。ところが解説を読むと、DCF法・類似会社比較法・年買法・純資産法といった手法の名前は並んでいても、同じ会社に当てはめると結局いくらになるのか、手法ごとに違う数字をどうまとめて1つの価格の目線にするのかは、なかなか見えてきません。
この記事では、架空の会社「A社」を1社だけ用意し、4つの手法すべてに同じ数字を流します。そのうえで、手法ごとの結果から結論レンジをどう作るか、算定した株式価値が交渉・デューデリジェンス・価格調整を経て成約価格になるまでに何が起きるかを順に見ていきます。
結論:算定額は交渉の土台で、成約価格は交渉と価格調整で決まる
先に要点をまとめます。
- 算定は「一点」ではなく「レンジ」で出す。手法ごとに見ているもの(将来の収益・市場の評価水準・保有資産)が違うため、結果は必ずずれます。そのずれを前提に、幅として価格の目線を持ちます。
- 中心になるのはDCF法と類似会社比較法。将来の収益力(DCF法)と市場の評価水準(類似会社比較法)の両方から見て、重なる範囲を結論の目線にする考え方が分かりやすく、説明もしやすい方法です。小規模な案件では、年買法で手早く目線を作ることも多くあります。
- 純資産法は下限の目安。収益力のある会社では、純資産だけで見ると価値を低く見積もりやすくなります。
- 成約価格は算定額そのものではない。買い手が見込むシナジー、デューデリジェンス(DD)で見つかった事項、運転資本などの価格調整、役員退職金や分割払いといった支払い方で、最終的な金額は動きます。
以下、A社の数字で具体的に確かめていきます。
通しの計算例に使う会社:A社の前提
A社は、地方で部品加工を営む非上場の中小企業という設定です。数字はすべて架空で、計算を追いやすいように丸めています。
| 項目 | A社の数字(仮) | メモ |
|---|---|---|
| 売上高 | 8億円 | 直近期 |
| 営業利益(決算書) | 4,000万円 | 直近期 |
| 役員報酬の調整 | +1,000万円 | オーナーの報酬が同規模の会社の水準より1,000万円多いとみる |
| 正常営業利益 | 5,000万円 | 4,000万円+1,000万円。手法の共通の土台 |
| 減価償却費 | 1,500万円 | EBITDAの計算に使う |
| EBITDA(調整後) | 6,500万円 | 5,000万円+1,500万円 |
| 簿価純資産 | 1億5,000万円 | 貸借対照表の純資産 |
| 含み損益(純額) | +2,000万円 | 土地の含み益3,000万円、在庫・保険積立の含み損1,000万円 |
| 現預金 | 1億5,000万円 | うち事業に必要な運転資金を5,000万円とみる |
| 有利子負債 | 2億円 | 借入金・リース債務 |
| 負債に準じる項目 | 2,000万円 | 未払法人税等・退職給付に関する負債 |
ここで大事なのは、どの手法でも同じ「正常営業利益」を土台にすることです。決算書の営業利益には、オーナーの報酬の多寡、一度きりの費用や収益、私的な経費などが混ざっています。これを整えた数字が正常営業利益で、手法をまたいで比べるための共通の物差しになります。調整の考え方は正常収益力とはで詳しく解説しています。
手法1:年買法で手早く目線を作る
年買法(年倍法)は、時価純資産+正常営業利益×年数で株式価値を求める方法です。年数の部分がのれん(営業権)にあたり、中小企業のM&Aでは3〜5年が目安としてよく使われます。決算書だけで計算できるため、最初の目線づくりに向いています。
時価純資産を求める
簿価純資産1億5,000万円に、含み損益の純額+2,000万円を加えます。ただし含み益は、実際に実現すると税金がかかります。税効果をおよそ30%(目安)とみて600万円を差し引くと、時価純資産は1億6,400万円です。
のれんを加える
| 年数 | 計算 | 株式価値(目安) |
|---|---|---|
| 3年(下限) | 1億6,400万円+5,000万円×3 | 3億1,400万円 |
| 4年(参考) | 1億6,400万円+5,000万円×4 | 3億6,400万円 |
| 5年(上限) | 1億6,400万円+5,000万円×5 | 4億1,400万円 |
年買法によるA社の株式価値は、約3.1億〜4.1億円が目安です。年買法では時価純資産の中に現預金も借入金もすでに含まれているので、あとで有利子負債を差し引く必要はありません。手順を自分で確かめたい方は無料の年買法 計算機で同じ数字を入れてみてください。年数の決まり方は年買法とはで整理しています。
手法2:DCF法で将来の収益力から求める
DCF法は、事業が将来生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)を、割引率(WACC)で現在の価値に引き直して足し合わせる方法です。結果はまず事業価値(企業価値)として出てくるため、最後に有利子負債などを調整して株式価値に直します。考え方はDCF法とは、割引率の作り方はWACCとはで解説しています。
事業計画のFCFを割り引く
A社の事業計画から、5年間のFCFを次のように置きます。割引率(WACC)は9%、6年目以降の永久成長率は1%とします。いずれも説明用の仮の数字です。
| 年度 | FCF | 割引係数(9%) | 現在価値 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 3,000万円 | 0.9174 | 2,752万円 |
| 2年目 | 3,200万円 | 0.8417 | 2,693万円 |
| 3年目 | 3,400万円 | 0.7722 | 2,625万円 |
| 4年目 | 3,600万円 | 0.7084 | 2,550万円 |
| 5年目 | 3,800万円 | 0.6499 | 2,470万円 |
| 合計(5年分) | 1億3,091万円 |
継続価値を加え、株式価値に直す
6年目以降の価値(継続価値)は、5年目のFCFが毎年1%ずつ伸び続けるとみて、3,800万円×1.01÷(9%−1%)=約4億7,975万円。これを5年分割り引くと約3億1,180万円です。5年分の現在価値と合わせた事業価値は約4億4,272万円になります。
ここから株式価値へ直します。事業に使っていない余剰の現預金1億円(1億5,000万円−運転資金5,000万円)を加え、有利子負債2億円と負債に準じる項目2,000万円を差し引くと、調整額は−1億2,000万円。株式価値は約3億2,272万円です。企業価値と株式価値の橋渡しは企業価値と株式価値の違いで詳しく扱っています。
前提を振ってレンジにする
DCF法の結果は、割引率と成長率のわずかな違いで大きく動きます。そこで、WACCを±0.5%、永久成長率を±0.5%動かした範囲で株式価値を計算し直します(感応度分析)。
| WACC \ 永久成長率 | 0.5% | 1.0% | 1.5% |
|---|---|---|---|
| 8.5% | 3億3,018万円 | 3億5,303万円 | 3億7,914万円 |
| 9.0% | 3億292万円 | 3億2,272万円 | 3億4,515万円 |
| 9.5% | 2億7,871万円 | 2億9,599万円 | 3億1,542万円 |
DCF法によるA社の株式価値は、約2.8億〜3.8億円が目安です。なお、事業価値に占める継続価値の割合は約7割に達しています。DCF法では珍しくない水準ですが、それだけ「6年目以降の前提」が結果を左右するということでもあります(ターミナルバリューとは)。数字を動かしてみたい方はDCF法 計算機とWACC計算機が使えます。
手法3:類似会社比較法で市場の評価水準から求める
類似会社比較法は、事業内容の近い上場会社が「利益の何倍で評価されているか」(倍率)を調べ、対象会社の利益に当てはめる方法です。代表的な倍率は、営業利益に対するEV/EBIT倍率と、EBITDAに対するEV/EBITDA倍率です。倍率は1社ではなく複数社の分布で見て、ばらつきの中心部分(第1四分位〜第3四分位)を使うと、極端な値に引っ張られにくくなります。
A社の類似会社として選んだ上場会社群の倍率が、EV/EBITで6.0〜9.0倍、EV/EBITDAで4.5〜6.5倍だったと仮定します。
| 倍率 | 当てはめる利益 | 事業価値(目安) | 株式価値(調整額−1億2,000万円) |
|---|---|---|---|
| EV/EBIT 6.0〜9.0倍 | 正常営業利益 5,000万円 | 3億〜4億5,000万円 | 1億8,000万〜3億3,000万円 |
| EV/EBITDA 4.5〜6.5倍 | EBITDA 6,500万円 | 2億9,250万〜4億2,250万円 | 1億7,250万〜3億250万円 |
2つの倍率の結果を合わせると、類似会社比較法によるA社の株式価値は約1.7億〜3.3億円が目安です。DCF法と同じく、倍率で出てくるのは事業価値なので、同じ調整額で株式価値に直しています。倍率の読み方は類似会社比較法(EV/EBITDA倍率)、EBITDAの定義はEBITDAとはをご覧ください。手元で試すならEV/EBITDA倍率 計算機が手軽です。
手法4:純資産法で下限の目安を確かめる
純資産法は、貸借対照表の純資産から株式価値を見る方法です。帳簿の金額をそのまま使う簿価純資産法なら1億5,000万円、含み損益と税効果を反映した時価純資産法なら1億6,400万円です。
A社のように利益が出ている会社では、純資産法の結果は他の手法よりかなり低くなります。会社が将来稼ぐ力(のれん)が入っていないためです。M&Aでは純資産法を結論に使うことは少なく、「少なくともこの水準はある」という下限の目安として参照するのが一般的です。逆に、収益方式や市場方式の結論が純資産を下回る場合は、「事業を続けるより資産を処分したほうが価値が出る状態ではないか」を確かめるサインになります。時価への直し方は時価純資産法とはで解説しています。
4手法の結果を並べ、結論レンジを作る
ここまでの結果を並べます。
| 手法 | A社の株式価値(目安) | 見ているもの | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| DCF法 | 約2.8億〜3.8億円 | 将来の収益力 | 主たる手法 |
| 類似会社比較法 | 約1.7億〜3.3億円 | 市場の評価水準 | DCF法と突き合わせる |
| 年買法 | 約3.1億〜4.1億円 | 純資産+利益の数年分 | 小規模案件の目線づくり |
| 純資産法(簿価) | 1.5億円 | 保有資産 | 下限の目安(参考) |
DCF法と類似会社比較法の重なりを結論にする
結論のまとめ方にはいくつかの流儀がありますが、分かりやすく説明しやすいのは、DCF法のレンジと類似会社比較法のレンジが重なる範囲を結論にする方法です。将来の収益力から見ても、市場の評価水準から見ても成り立つ範囲、という意味を持たせられます。
A社の場合、DCF法は約2億7,871万〜3億7,914万円、類似会社比較法は約1億7,250万〜3億3,000万円なので、重なるのは約2億7,871万〜3億3,000万円。結論レンジは約2.8億〜3.3億円です。純資産(簿価1.5億円)は上回っているので、下限の目安とも矛盾しません。
重ならないとき・大きく離れるとき
2つのレンジがいつも重なるとは限りません。たとえば類似会社の倍率がもっと低く、類似会社比較法の結果が1.0億〜2.0億円だったとします。この場合はDCF法のレンジ(約2.8億〜3.8億円)と重なる部分がありません。そのときは主たる手法であるDCF法のレンジを結論にします。
あわせて、2つのレンジの中央値を比べます。DCF法の中央値は約3.29億円、類似会社比較法の中央値は1.5億円で、2倍以上離れています。この水準の乖離は、事業計画が強気すぎる、類似会社の選び方が合っていない、一時的な利益の増減が直近期に入っている、といった原因が隠れていることが多いため、結論とあわせて乖離していることを注記し、原因を点検します。
手法の早見表:どれを主役にするかの目安
会社の性格と、手元にある資料によって、主役にしやすい手法は変わります。あくまで目安です。
| 手法 | 必要な資料 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| DCF法 | 決算書+事業計画 | 成長や投資の計画がはっきりしている会社 | 計画が強気だと高く出る。継続価値の比重が大きい |
| 類似会社比較法 | 決算書+類似する上場会社の倍率 | 上場会社に近い事業モデルの会社 | 上場会社の水準は小規模会社より高めに出やすい |
| 年買法 | 決算書 | 小規模で、利益が安定している会社 | 成長・設備投資を織り込まない。年数の根拠が薄くなりやすい |
| 純資産法 | 決算書(時価なら資産の明細) | 資産保有型の会社、赤字の会社 | のれんが入らないため、収益力のある会社では低く出る |
赤字の会社や債務超過の会社は、倍率法や年買法の利益部分が機能しにくくなります。その場合の考え方は赤字・債務超過の会社の売却で扱っています。
算定額と提示額・成約額がずれる理由
A社の結論レンジは約2.8億〜3.3億円でした。しかし実際のM&Aで、この範囲にそのまま決まるとは限りません。ずれる主な理由は3つあります。
1. シナジーと買い手ごとの事情
買い手が自社の販路に乗せて売上を伸ばせる、仕入れや拠点を統合して費用を減らせる、といったシナジーを見込める場合、買い手はその一部を価格に上乗せしてでも買いたいと考えることがあります。逆に、シナジーの乏しい買い手しかいなければ、算定レンジの下のほうでしか話がまとまらないこともあります。同じ会社でも、買い手によって払える金額が違うのはこのためです(M&Aのシナジーとは)。経営権を取得することへの上乗せの議論はコントロールプレミアムとはで解説しています。
2. デューデリジェンスで見つかる事項
基本合意のあと、買い手は財務・税務・法務・労務などの調査(DD)を行います。未払いの残業代、計上されていない退職金債務、税務上の指摘を受けそうな処理、主要取引先との契約の解除条項などが見つかると、その分は価格の引き下げや、契約での補償(表明保証)の対象になります。調査の中身はデューデリジェンスとはをご覧ください。
3. 価格調整と支払い方
株式価値は評価の基準日時点の数字です。実際に株式を引き渡す日(クロージング)までに、運転資本や借入金の残高は変わります。そこで、契約で「基準となる運転資本との差額を価格に反映する」といった調整の仕組みを決めておくのが一般的です。また、価格の一部を将来の業績に応じて後から払うアーンアウトや、オーナーへの役員退職金として支払う部分を設けると、株式の対価そのものの金額は変わります。
株式価値から成約価格まで:A社の価格調整の例
A社で、交渉の結果、株式価値3億円(結論レンジの中)で基本合意したとします。そこから最終契約・クロージングまでに、次のような調整が入った場合を考えます。いずれも仮の数字です。
| 項目 | 金額(目安) | 内容 |
|---|---|---|
| 基本合意の株式価値 | 3億円 | 結論レンジ約2.8億〜3.3億円の中で合意 |
| 運転資本の調整 | −1,000万円 | 基準とした運転資本1億円に対し、クロージング時は9,000万円だった |
| DDで見つかった債務 | −800万円 | 未払いの残業代の見積額を負債に準じる項目として控除 |
| 調整後の株式価値 | 2億8,200万円 | 3億円−1,000万円−800万円 |
| うち役員退職金として支払う額 | 5,000万円 | 会社から退職金として支給し、その分だけ株式の対価が減る |
| 株式の譲渡対価 | 2億3,200万円 | 2億8,200万円−5,000万円 |
役員退職金を会社から支給すると、会社の現預金が減るため、株式の対価はその分小さくなります。売り手から見た受取総額は大きく変わらなくても、退職金と株式譲渡では税金のかかり方が違うため、手取り額は変わりえます。どちらがよいかは個別の事情で変わるので、税理士などの専門家に確認してください。手取りの概算は手取り額 計算機、退職金と株式対価の配分は譲渡対価と役員退職金の配分シミュレーター、運転資本の調整は運転資本ペグ計算ツール、分割払いはアーンアウト・シミュレーターで試算できます。価格調整の仕組みそのものはM&Aの価格調整で詳しく解説しています。
売り手と買い手で、同じ数字の見え方が違う
同じ結論レンジを見ても、売り手と買い手では注目する場所が違います。
| 売り手(オーナー) | 買い手 | |
|---|---|---|
| 注目するレンジの位置 | 上限側。将来の成長やシナジーの分も評価してほしい | 下限側。単独での価値に、払ってよいシナジーの一部を足した額が上限 |
| 重視する手法 | 将来性を映すDCF法、のれんが乗る年買法 | DCF法の前提の厳しさ、類似会社の倍率の妥当性 |
| 気にする調整 | 退職金・手取り額、従業員の雇用 | DDで見つかる債務、運転資本、表明保証 |
| よくある誤解 | 「純資産+α」で決まる、相場の倍率で決まる | 算定した上限まで払ってよい |
売り手は、提示された金額がどの手法・どの前提で出た数字なのかを確かめることが大切です。提示額が妥当かを第三者の目で確かめたいときはM&A価格のセカンドオピニオン、売却全体の流れの中で価格がいつ決まるかはM&Aによる会社売却の流れ、規模ごとの相場感は会社売却の相場はいくらかが参考になります。買い手が上限価格を決める考え方は買収価格の決め方で整理しています。
価格算定を誰に頼むか
価格算定の依頼先は、目的と、その数字を誰に見せるかで選びます。
- 自社で目線を持ちたい・仲介会社の提示額を確かめたい … まず自分で概算し、必要なら根拠をまとめた報告書を用意する段階です。オンラインの評価ツールや簡易な報告書で足りることが多くあります。
- 取締役会や金融機関に説明する … 手法と前提が明記された算定書が必要になります。社内稟議の資料としての考え方は稟議に使う株価算定書をご覧ください。
- 税務申告・裁判・上場会社の開示 … 独立した第三者による算定が求められるのが通例で、会計士・評価専門会社への依頼が基本です。
依頼先の違いは企業価値評価の依頼先、費用の目安は株価算定の費用相場で整理しています。目的別にどの手法を主役にするかの全体像は株価算定の方法をご覧ください。
M&Aバリュークラウドの詳細版はどこに当たるか
本サイトを運営する「M&Aバリュークラウド」の報告書は、この記事で見た算定の流れをPDFにまとめるものです。事実のみを記載します。
| 詳細版 | 簡易版 | |
|---|---|---|
| 結論の手法 | DCF法と類似会社比較法の併用法 | 年買法(時価純資産+正常営業利益×3〜5年) |
| 結論レンジの決め方 | DCF法と類似会社比較法のレンジが重なる範囲。重ならなければDCF法のレンジ(中央値が2倍以上離れる場合は注記) | 3年分を下限、5年分を上限(4年分は参考) |
| DCF法のレンジ | WACC±0.5%×永久成長率±0.5%の範囲 | — |
| 類似会社比較法 | 個社で選んだ上場類似会社の倍率(第1四分位〜第3四分位)。EV/EBITとEV/EBITDA | 業種平均倍率による参考値(結論には含めない) |
| 参考として表示 | 純資産法(簿価) | 類似会社比較法(上場企業水準) |
| 主な掲載内容 | WACCの内訳、事業計画のFCF、継続価値、感応度分析、株式価値への調整 | 時価純資産の内訳(含み損益・税効果)、正常営業利益の調整 |
| 価格(税込) | 5,500円(税込) | 2,200円(税込) |
A社の計算例でいえば、手法2〜4と結論レンジの作り方が詳細版、手法1の年買法が簡易版に当たります。交渉や社内説明で「なぜこの価格なのか」を将来の収益力と市場の評価水準の両面から示したい場合は詳細版、まず規模感をつかみたい場合は簡易版、という使い分けが目安です。どちらを選ぶかは簡易版と詳細版の選び方で詳しく比べています。
試算と評価レンジの表示は無料、報告書PDFは有料です。紙面は詳細版の見本PDFと簡易版の見本PDFで確認でき、読み方は評価レポートの見本と読み方で解説しています。計算式と前提値の出所は算定方法の公開説明にまとめています。なお、報告書は独立した第三者による意見書ではなく、税務申告に使う評価(財産評価基本通達による評価)とは目的も計算方法も異なります。
よくある質問
Q. M&Aの価格に「業種ごとの相場の倍率」はありますか?
A. 業種ごとの倍率の傾向はありますが、それだけで価格は決まりません。同じ業種でも、規模、成長性、設備投資の負担、顧客の集中度によって倍率は大きく変わります。倍率は目線の出発点として使い、DCF法など別の手法と突き合わせるのが安全です。
Q. 事業計画がなくても算定できますか?
A. 年買法・類似会社比較法・純資産法は実績の決算書だけで計算できます。DCF法には将来のFCFが必要なので、事業計画を用意するか、「直近の水準が続く」といった単純な仮定を置きます。仮定を置いた場合は、それを前提として明記してください。
Q. 算定した上限の金額で売れますか?
A. 上限で売れるとは限りません。成約価格は、買い手が見込むシナジー、競合する買い手の数、DDの結果、価格調整や支払い方で決まります。算定レンジは「この範囲なら説明がつく」という交渉の土台と考えてください。
Q. 年買法とDCF法の結果が違うときは、どちらを信じればよいですか?
A. どちらかが正しいというより、違いが会社の性格を表しています。年買法が高ければ「資産が厚い」「将来の投資負担が年買法に入っていない」、DCF法が高ければ「事業計画で利益が伸びる前提になっている」可能性があります。差の理由を説明できる状態にしておくことが、交渉の場で役に立ちます。
Q. 自分で概算してから専門家に相談してもよいですか?
A. むしろおすすめです。自分の数字を持っていると、専門家や仲介会社の説明のどこが前提の違いなのかを質問しやすくなります。登録せずに規模感だけつかむなら企業価値の1分診断から始められます。
まとめ:手法の結果を並べ、レンジと前提をセットで持つ
M&Aの価格算定は、1つの手法で1つの金額を出す作業ではありません。A社の例のように、年買法で約3.1億〜4.1億円、DCF法で約2.8億〜3.8億円、類似会社比較法で約1.7億〜3.3億円、純資産法で1.5億円と、手法ごとに違う数字が出るのが普通です。そのうえで、DCF法と類似会社比較法の重なる範囲(A社では約2.8億〜3.3億円)を結論の目線にし、重ならなければDCF法を軸に、大きく離れていれば原因を点検します。
そして、結論レンジは交渉の土台です。シナジー、DD、運転資本の調整、退職金や分割払いといった要素を経て、成約価格が決まります。レンジと前提をセットで持っておけば、相手の提示額を受け止めるときにも自分の判断軸を保てます。まずは手元の決算書で試算し、必要に応じて報告書や専門家の算定に進んでください。