事業譲渡の価格(譲渡対価)の決め方|算定方法・税務・交渉の実務

最終更新: 2026-10-25

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事業の一部を切り出して売る、あるいは他社の事業部門だけを買う。こうした場面で使われるのが事業譲渡です。ところが、いざ価格の話になると「決算書のどの数字を見ればいいのか」「株式を売るときの株価算定と何が違うのか」で手が止まる方が少なくありません。

結論から言うと、事業譲渡の価格(譲渡対価)は、引き継ぐ資産・負債の時価に、のれん(営業権)を上乗せした金額として決まるのが基本です。会社をまるごと売る株式譲渡と違い、何を引き継ぐかを一つずつ決めるため、「範囲の決め方」がそのまま価格を動かします。さらに、のれんや設備には消費税がかかり、買い手はのれんを税務上5年で損金にできるなど、税務が価格交渉に直接影響する点も特徴です。

本稿では、事業譲渡の価格が株式価値とどう違うのか、切り出した事業の損益をどう作るのか、年買法・DCF法・類似会社比較法でどう算定するのか、資産ごとの対価配分と消費税、買い手・売り手の税務、従業員・許認可・契約の引継ぎが価格に与える影響、交渉で揉めやすい点までを、1つの計算例を通して整理します。事業譲渡と株式譲渡の制度面の違いは事業譲渡と株式譲渡の違いで詳しく解説しています。

事業譲渡の価格は「株式価値」ではなく「事業価値」ベースで決まる

株式譲渡で売買されるのは会社の株式です。株式の価値は、事業が生み出す価値(事業価値・企業価値)から、借入金などの有利子負債を差し引き、現預金などの非事業資産を加えて求めます。一方、事業譲渡では会社そのものは売り手に残り、売買されるのは事業を構成する資産・負債・契約の集合です。

中小企業の事業譲渡では、現預金と借入金は引き継がない形が一般的です。借入金は売り手の会社に残して譲渡代金で返済し、現預金も売り手に残ります。そのため事業譲渡の価格は、ネットデット(有利子負債−現預金)を調整する前の事業価値(EV)に近い概念になります。企業価値・事業価値・株式価値の関係は企業価値・事業価値・株式価値の違いで整理しています。

観点株式譲渡の価格事業譲渡の価格
売買の対象株式(会社全体)指定した資産・負債・契約
価格の基本形事業価値−ネットデット+非事業資産承継する資産・負債の時価+のれん
現預金・借入金会社に含まれたまま移る通常は引き継がない(売り手に残る)
簿外債務会社ごと引き継ぐリスクがある契約で指定しない限り原則引き継がない
代金の受取人株主(オーナー個人など)売り手の会社
消費税株式の譲渡は非課税課税資産の部分に課税
買い手の税務上ののれん原則として計上されない要件を満たせば資産調整勘定として5年で損金算入

もう一つの大きな違いは、価格の対象範囲を交渉で動かせることです。たとえば「工場の土地建物は売り手が保有したまま賃貸する」「売掛金は売り手が回収し、在庫と設備だけを譲る」といった線引きができます。範囲が変われば価格も変わるため、事業譲渡では「いくらか」の前に「何を売るか」を固めることが出発点になります。

価格を決める前に固める3つのこと

1. 承継する資産・負債の範囲

事業譲渡契約では、引き継ぐ資産・負債・契約を個別に特定します。価格に影響が大きいのは次のような項目です。

  • 運転資本:売掛金・棚卸資産・買掛金・未払金を引き継ぐか。引き継ぐなら、その分だけ価格は上がります(負債は下がる方向)。
  • 固定資産:設備・車両・ソフトウェア・土地建物。不動産を引き継ぐと価格が大きくなるうえ、買い手に不動産取得税や登録免許税の負担が生じます。
  • 引当金・従業員関連の負債:賞与や退職金の支払いを買い手が引き受けるか。引き受けるなら、その分を価格から差し引くのが通常の考え方です。
  • 知的財産・顧客契約・ブランド:商標やノウハウ、主要顧客との契約。のれんの中身そのものになる部分です。

2. 価格の基準日と調整の仕組み

売掛金や在庫は日々変動します。基準日の残高で価格を決め、クロージング日までの増減を精算する「価格調整条項」を置くのが一般的です。運転資本の基準水準(ペッグ)の考え方は運転資本ペッグの計算ツールで試せます。

3. 切り出した事業単体の損益

価格算定の土台になるのが、その事業が独立して運営された場合の利益です。事業部門の損益は社内管理会計の数字であることが多く、そのままでは使えません。次の章で作り方を説明します。

切り出し事業の損益の作り方:共通費配賦とスタンドアロンコスト

会社の一部門を売る場合、部門損益には本社の経理・人事・総務・システム・家賃などの共通費の配賦が含まれていたり、逆にまったく含まれていなかったりします。どちらも、買い手が引き継いだ後の実際のコストとは一致しません。

そこで実務では、次の順で「独立運営した場合の利益」を組み立てます。

  • 直接損益を確定する:その事業に直接ひもづく売上・原価・人件費・販売費を集計します。他部門と共用している人員や設備は、従事割合などの根拠を残して按分します。
  • 配賦された共通費を外す:社内ルールによる配賦額(売上比など)は、買い手にとっての実コストではないため、いったん除きます。
  • スタンドアロンコストを加える:事業が独立したときに新たに必要になる経理・労務・システム・保険・監査などの費用を見積もって差し引きます。買い手の既存の管理部門で吸収できるなら、買い手から見たコストは小さくなります。
  • 一時的・非経常的な損益を除く:特別な受注、訴訟費用、オーナー関連の経費など、継続しない項目を正常化します。

この考え方は、会社全体の評価で行う「正常収益力」の調整と同じです。調整項目の考え方は正常収益力(実態収益力)とは、EBITDAベースでの調整は実態EBITDAの計算ツールも参考になります。

なお、切り出し直後は売り手のシステムや物流を一定期間使い続けることが多く、その対価を定める移行期間サービス契約(TSA)を結ぶことがあります。TSAの料金をどう設定するかも、実質的には価格の一部です。

事業譲渡の価格の算定方法

事業譲渡の価格を算定する方法は、会社の評価と基本的に同じ3つの考え方を使います。違いは、対象が「切り出した事業」であることと、結果がそのまま事業価値(EV)として価格の目安になることです。

年買法:時価純資産+営業利益×年数

中小企業の事業譲渡でよく使われる簡便法です。承継する資産・負債を時価で評価した純資産に、正常な営業利益の数年分(目安として2〜5年)をのれんとして上乗せします。事業譲渡は「資産の時価+のれん」という価格の構造と相性が良く、売り手・買い手の双方が理解しやすいのが利点です。

注意したいのは、時価純資産を「承継する資産・負債だけ」で計算することです。会社全体の純資産を使うと、引き継がない現預金や借入金まで価格に混ざってしまいます。年数の決め方や計算の注意点は年買法(年倍法)とは、試算は年買法の計算ツールで確認できます。

DCF法:事業の将来キャッシュフローから求める

切り出した事業の将来の事業計画をもとに、フリーキャッシュフローを割引率で現在価値に直して事業価値を求めます。事業譲渡では有利子負債を引き継がないため、DCF法で出る事業価値がそのまま価格の目安になりやすいのが特徴です。成長投資が必要な事業や、統合後の収益構造が大きく変わる事業では、年買法よりも根拠を説明しやすくなります。手順はDCF法とはで解説しています。

類似会社比較法:EV/EBITDA倍率から求める

同業の上場会社などのEV/EBITDA倍率を、切り出し事業のEBITDAに掛けて事業価値を求めます。上場会社の倍率は規模や流動性の違いから非上場の小規模事業にそのまま当てはめにくいため、参考値として使うのが一般的です。倍率の選び方は類似会社比較法とは、EBITDAの定義はEBITDAとはをご覧ください。

DCF法や類似会社比較法で求めた事業価値には、引き継ぐ運転資本や設備の価値が含まれていると考えます。この事業価値から「承継する資産・負債の時価」を差し引いた残りが、のれん相当額です。逆に、引き継がない資産(売り手に残す不動産など)を使って稼いでいる利益があるなら、その資産の使用料(賃料など)を費用として織り込んでから評価します。

のれん(資産調整勘定)と買い手の税務

事業譲渡の価格のうち、承継する資産・負債の時価純資産を超える部分が、のれんにあたります。のれんの意味はのれん(営業権)とは、金額の求め方は営業権(のれん)の計算方法で解説しています。

税務上、法人が非適格の事業の譲受けにより資産・負債の移転を受け、支払った対価が移転を受けた資産・負債の時価純資産価額を超える場合、その超える部分は資産調整勘定とされます(法人税法第62条の8第1項)。資産調整勘定は、当初の計上額を60で割った額に事業年度の月数を掛けた金額ずつ減額し、その分を損金の額に算入します(同条第4項・第5項)。つまり、5年(60か月)で均等に損金算入されます。

ただし、この取扱いの対象になる事業の譲受けは、譲渡した法人の事業と、その事業に係る主要な資産または負債のおおむね全部が移転するものとされています(法人税法施行令第123条の10第1項)。資産の一部だけを買う取引では要件を満たさないこともあります。また、独立した資産として取引される慣習のある営業権は、資産調整勘定とは別に取得資産として扱われる定めがあります(同条第3項)。

反対に、支払った対価が時価純資産価額に満たない場合、その差額は差額負債調整勘定として、同じく60か月で益金に算入されます(法人税法第62条の8第3項・第7項)。買い手が従業員の退職給与の支払いを引き受けた場合の退職給与債務引受額なども負債調整勘定として扱う定めがあります(同条第2項)。なお、国税庁の質疑応答事例では、時価純資産価額を算定する際の「負債」は税務上の負債であり、会計上の引当金は原則として含まれないと説明されています。

買い手にとって、のれん部分が5年で損金になることは、実質的な取得コストを下げる効果があります。このため買い手は、株式譲渡よりも事業譲渡のほうが高い価格を出せる場合があります。会計上ののれん償却との違いはのれんの償却とは、税効果の試算はのれん償却の計算ツールで確認できます。

売り手の税務:譲渡益は会社の所得になる

事業譲渡の売り手は会社です。譲渡対価から、譲渡した資産・負債の帳簿価額(純額)を差し引いた譲渡益は、その事業年度の益金として法人税等の対象になります。のれん部分は売り手の帳簿上ゼロであることが多いため、のれんの金額がほぼそのまま譲渡益になりやすい点を押さえておきましょう。

また、代金は会社に入るため、オーナー個人の手取りにするには役員退職金や配当、清算などもう一段階が必要です。株式譲渡との手取りの比較は株式譲渡・事業譲渡の手取り比較ツール、中小M&Aで使える税制はM&Aの減税措置・税制優遇とはをご覧ください。

消費税:資産ごとの対価配分が必要

事業譲渡は資産の売買なので、譲渡する資産のうち課税資産の部分に消費税がかかります。国税庁の質疑応答事例「営業の譲渡をした場合の対価の額」では、営業権・土地・建物・債権債務を一括して譲渡する場合、課税資産と非課税資産を一括して譲渡するものとして、対価の額を合理的に区分して課税すると説明されています。事例では、非課税である土地を除いた営業権と有形固定資産の合計額が課税対象とされています。

対価が資産ごとに合理的に区分されていない場合は、譲渡時の資産の価額の比率で按分する定めがあります(消費税法施行令第45条第3項)。契約書では、譲渡価額を資産ごとに配分して明記しておくのが実務上の基本です。主な資産の扱いは次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.6201などによる一般的な整理)。

譲渡する資産消費税の扱い
棚卸資産、機械設備、車両、備品、建物課税
のれん(営業権)、商標権などの無形資産課税
土地(借地権などを含む)非課税
売掛金などの金銭債権、有価証券非課税

価格の中で大きな割合を占めるのれんが課税対象であるため、買い手は税込みで決済資金を用意する必要があります。買い手は通常、仕入税額控除により最終的な負担を取り戻せますが、課税売上割合が低い事業者や免税事業者などでは控除できない部分が残る可能性があります。提示価格が税抜か税込かは、意向表明の段階から明記しておきましょう。意向表明書の記載項目はLOI(意向表明書)・基本合意書の書き方で整理しています。

資産ごとの対価配分の考え方

対価配分は、消費税だけでなく、買い手の将来の損金計上のペースにも影響します。たとえば同じ総額でも、土地に多く配分すれば償却できない資産が増え、のれんや設備に多く配分すれば損金化が早まります。このため買い手は償却できる資産への配分を、売り手は自社の税負担を踏まえた配分を望むことがあり、利害がぶつかることがあります。

ただし、配分は各資産の時価を基礎に合理的に行う必要があり、税負担を減らす目的で恣意的に配分すると、税務上認められないリスクがあります。不動産や大型設備がある場合は、不動産鑑定や設備の時価評価を取り、その根拠をもとに配分するのが安全です。配分の妥当性は、税理士などの専門家に確認しながら決めてください。

低額譲渡・高額譲渡の税務リスク

第三者間で交渉して決めた価格は、通常は時価として扱われます。問題になりやすいのは、親族が経営する会社やグループ会社など、利害が一致しやすい当事者の間で、時価から離れた価格で事業を譲渡する場合です。

  • 低額譲渡(売り手側):資産を時価より低い対価で譲渡した場合、その差額のうち実質的に贈与したと認められる金額は寄附金の額に含まれます(法人税法第37条第8項)。寄附金には損金算入の限度があるため、売り手の税負担が増える可能性があります。
  • 低額譲渡(買い手側):時価より低く資産を取得した場合、時価との差額が受贈益として益金に算入される可能性があります(無償による資産の譲受けなどを益金とする法人税法第22条第2項の考え方)。
  • 高額譲渡(買い手側):時価を超える対価を払った場合、その超える部分が売り手への寄附金と認定されるリスクがあります。資産調整勘定の計算でも、寄附金に相当する金額は対価から除く定めがあります(法人税法第62条の8第1項)。

100%の資本関係があるグループ内の取引などでは、さらに別の取扱いが定められています。関係会社間・親族間の事業譲渡では、第三者が算定した評価書を用意し、価格の根拠を説明できるようにしておくことが重要です。具体的な判断は必ず税理士にご確認ください。

従業員・許認可・契約の引継ぎが価格に与える影響

事業譲渡では、会社がそのまま移る株式譲渡と違い、従業員・許認可・契約を個別に移す必要があります。この手間とリスクは、そのまま価格に反映されます。

引き継ぐもの事業譲渡での扱い価格への影響
従業員雇用契約を移すには従業員本人の承諾が必要(民法第625条第1項)キーパーソンが転籍に同意しないと事業価値が下がる。退職金債務の引受け分は価格から差し引くのが通常
許認可多くの業種で買い手が新たに取得し直す必要がある取得までの空白期間や取得できないリスクは減額要因。取得をクロージングの前提条件にすることが多い
取引先との契約契約上の地位の移転には相手方の承諾が必要主要顧客の承諾が得られない場合の売上減少リスクを価格や条件に織り込む
不動産所有権移転登記が必要不動産取得税・登録免許税などの移転コストは買い手の負担になり、提示価格を下げる方向に働く

株式会社が事業の全部、または重要な一部を譲渡する場合は、原則として株主総会の承認決議が必要です(会社法第467条第1項)。譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えない場合は「重要な一部の譲渡」から除かれるなど、例外もあります。手続きにかかる時間とコストも、スケジュールと価格の両面で考慮しておきましょう。

許認可や契約の引継ぎが特に重い事業では、事業を新設会社に切り出してから株式を譲渡する会社分割のスキームが検討されることもあります。違いは会社分割とはで解説しています。

計算例:製造部門を事業譲渡する場合

ここでは、ある製造業の会社が一部門を第三者に事業譲渡するケースを想定し、価格の算定から税務までを通して試算します。数字はすべて説明用の仮定です。

ステップ1:切り出し事業の正常な営業利益

項目金額説明
部門の直接損益(営業利益)5,000万円直接ひもづく売上・原価・人件費・販売費を集計
社内ルールによる共通費配賦(1,800万円)売上比で配賦された本社費。買い手の実コストではないため除く
スタンドアロンコスト−1,000万円独立運営で新たに必要な経理・労務・システム等の見積り
正常な営業利益4,000万円5,000万円−1,000万円
減価償却費600万円承継する設備にかかるもの
EBITDA4,600万円4,000万円+600万円

ステップ2:承継する資産・負債の時価純資産

現預金と借入金は売り手に残し、運転資本と設備を引き継ぐ前提です。工場は賃借物件で、土地は含みません。

項目帳簿価額時価
売掛金6,000万円6,000万円
棚卸資産3,000万円3,000万円
機械設備2,500万円4,000万円
買掛金(3,000万円)(3,000万円)
未払金(500万円)(500万円)
純資産8,000万円9,500万円

ステップ3:複数の方法で価格の幅を出す

方法計算結果(目安)
年買法(2〜3年)9,500万円+4,000万円×2〜3年1億7,500万〜2億1,500万円
年買法(2.5年)9,500万円+4,000万円×2.5年1億9,500万円
EV/EBITDA倍率(仮に4〜4.5倍)4,600万円×4〜4.5倍1億8,400万〜2億700万円

2つの方法の結果はおおむね1億8,000万〜2億1,000万円の範囲に重なります。交渉の結果、譲渡価格2億円(税抜)で合意したとします。

ステップ4:資産ごとの対価配分と消費税

資産・負債配分額消費税
売掛金6,000万円非課税
棚卸資産3,000万円課税
機械設備4,000万円課税
のれん1億500万円課税
資産合計2億3,500万円課税対象は1億7,500万円
引き受ける負債(買掛金・未払金)(3,500万円)—
譲渡価格(差引)2億円—

のれんは、2億円−時価純資産9,500万円=1億500万円です。課税対象となる資産は棚卸資産・機械設備・のれんの合計1億7,500万円で、消費税等(10%)は1,750万円になります。買い手が決済時に用意する金額は、2億円+1,750万円=2億1,750万円です。

ステップ5:買い手・売り手の税務

  • 買い手:資産調整勘定の要件を満たす場合、のれん1億500万円を60か月で損金算入します。1か月あたり175万円、12か月の事業年度なら年2,100万円です。実効税率を目安30%とすると、法人税等の軽減効果は年630万円程度、5年で3,150万円程度になります。
  • 売り手:譲渡益は2億円−帳簿上の純資産8,000万円=1億2,000万円です。実効税率を目安30%とすると、法人税等は3,600万円程度になります。オーナー個人の手取りにするには、さらに退職金や配当などの段階で課税があります。
上の計算例は、仕組みを理解するための単純化した試算です。実効税率は所得規模や自治体によって変わり、資産調整勘定の計算では税務上の負債の範囲や資産の時価の算定など、個別の確認が必要です。実際の取引では税理士・弁護士等の専門家に確認してください。

価格交渉で揉めやすい点

  • スタンドアロンコストの見積り:売り手は小さく、買い手は大きく見積もりがちです。管理部門を吸収できる買い手ほどコストは小さくなるため、買い手ごとに提示価格が変わる要因にもなります。シナジーの扱いはM&Aのシナジーとはをご覧ください。
  • 在庫・売掛金の評価:滞留在庫や回収が遅れている債権を時価でいくらと見るか。デューデリジェンスで確認されるポイントです(デューデリジェンスとは)。
  • 共用資産の扱い:他部門と共用しているシステム、倉庫、人員をどう切り分けるか。TSAの料金と期間も含めて交渉します。
  • 従業員の承継範囲と退職金:誰が転籍するか、過去の勤続期間を通算するか、退職金債務を価格からいくら差し引くか。
  • 税込・税抜と対価配分:消費税の扱いと資産ごとの配分を最終段階まで詰めずに進めると、決済直前に資金計画が狂うことがあります。
  • 表明保証と補償:事業譲渡でも、承継資産の権利関係や契約の有効性などについて表明保証を置くのが一般的です。考え方は株式譲渡契約書(SPA)の要点が参考になります。

将来の業績に見方の差が大きいときは、価格の一部を業績達成に連動させるアーンアウトで折り合いをつける方法もあります。試算はアーンアウトの計算ツールで確認できます。提示された価格が妥当かどうかの検証方法は買収価格の妥当性検証でまとめています。

まとめ

  • 事業譲渡の価格は、承継する資産・負債の時価にのれんを上乗せした金額が基本で、現預金・借入金は通常含まないため、事業価値(EV)に近い概念です。
  • 土台になるのは、共通費配賦を外してスタンドアロンコストを加えた、切り出し事業単体の正常な利益です。
  • 算定は年買法を中心に、DCF法や類似会社比較法で幅を確認するのが実務的です。
  • のれんや設備には消費税がかかるため、資産ごとの対価配分と税込・税抜の区別を契約に明記します。
  • 買い手は要件を満たせば資産調整勘定を5年で損金算入でき、売り手は譲渡益に法人税等がかかります。
  • 関係者間で時価から離れた価格にすると、寄附金・受贈益の税務リスクがあります。税務・法務は税理士・弁護士等の専門家に確認してください。

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