非上場株式の買取価格|少数株主・株式買取請求・裁判での決まり方
最終更新: 2026-11-01・M&Aバリュークラウド(株式会社ベルシャンス)・ 編集方針
非上場会社の株式を、会社や他の株主(多くはオーナー一族)が少数株主から買い取る場面は少なくありません。株式を手放したい少数株主が譲渡の承認を求めたが会社が承認しなかった、相続で株式を取得した親族に会社が売渡しを求めた、合併や株式併合に反対した株主が買取りを請求した——いずれも「いくらで買い取るか」が最大の争点になります。
非上場株式には市場価格がないため、価格は当事者の協議で決めるのが出発点です。ただし協議がまとまらないときに備えて、会社法は場面ごとに裁判所に価格の決定を申し立てる手続と期限を用意しています。本稿では、買取りが問題になる主な場面と根拠条文、協議から裁判所の価格決定までの流れ、一次資料で確認できた最高裁判所の判断、税務上の時価との関係、実務の進め方を順に整理します。
非上場株式の買取りが問題になる主な場面
会社や他の株主による買取りは、大きく分けて「株主の側から求める場面」と「会社や支配株主の側から求める場面」があります。どの手続かによって、価格を決める基準の言葉、裁判所に申し立てられる期間、申し立てなかったときの効果が違うため、まず自分がどの場面にいるのかを特定することが出発点です。
| 場面 | 主な根拠条文(会社法) | 誰が買い取るか | 協議が調わないとき |
|---|---|---|---|
| 譲渡承認の拒否に伴う買取り | 136条〜145条(売買価格の決定は144条) | 会社または会社が指定した指定買取人 | 会社による買取りの通知(141条1項)があった日から20日以内に裁判所へ売買価格の決定を申し立てられる |
| 相続人等に対する売渡しの請求 | 174条〜177条(売買価格の決定は177条) | 会社(定款の定めが必要) | 売渡しの請求があった日から20日以内に申し立てられる |
| 反対株主の株式買取請求(定款変更・組織再編・株式併合など) | 116条・117条、182条の4・182条の5、785条・786条など | 会社 | 効力発生日から30日以内に協議が調わないとき、その期間満了の日後30日以内に価格の決定を申し立てられる |
| 特別支配株主の株式等売渡請求(スクイーズアウト) | 179条以下(売買価格の決定は179条の8) | 議決権の90%以上を持つ特別支配株主 | 取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に売買価格の決定を申し立てられる |
| 全部取得条項付種類株式の取得(スクイーズアウト) | 171条・172条 | 会社 | 取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に取得の価格の決定を申し立てられる |
| 合意による自己株式の取得 | 155条・156条・160条など | 会社 | 合意による取得のため、裁判所が価格を決める手続はない(価格は当事者の合意) |
いずれの場面でも、会社が自己株式として買い取る場合には、交付する金銭の帳簿価額の総額が分配可能額を超えてはならないという財源規制がかかります(会社法461条1項。譲渡承認の拒否に伴う買取り、相続人等への売渡請求に基づく買取り、合意による取得などが列挙されています)。価格に合意できても、会社に財源がなければ買い取れないことがある点に注意が必要です。財源規制の考え方は自己株式(金庫株)とはで整理しています。
譲渡承認の拒否に伴う買取り(会社法136条〜145条)
譲渡制限株式の株主は、株式を他人に譲り渡そうとするとき、会社に対して譲渡の承認を請求できます(136条)。請求の際に「承認しないなら会社または指定買取人が買い取ること」も求めておくと、会社が承認しない決定をした場合、会社は自ら買い取るか(140条1項)、指定買取人を指定しなければなりません(140条4項)。
会社は買い取る旨などを通知する際、1株当たり純資産額(法務省令で定める方法で算定)に対象株式の数を掛けた額を供託所に供託し、その書面を株主に交付する必要があります(141条2項)。売買価格はまず協議で定め(144条1項)、通知があった日から20日以内であれば会社・株主のどちらも裁判所に売買価格の決定を申し立てられます(144条2項)。期間内に申立てがなく、協議も調わなかった場合は、1株当たり純資産額に株式数を掛けた額が売買価格になると定められています(144条5項)。株主側から見ると、純資産額より高い価格を主張したいなら20日の期限を落とせない、ということです。
なお、会社が請求の日から2週間以内に承認するか否かの決定内容を通知しなかった場合や、承認しない旨の通知の日から40日以内に会社による買取りの通知をしなかった場合などには、会社は承認をしたものとみなされます(145条。定款でこれを下回る期間を定めることもできます)。会社側にとっても期限の管理は重要です。
相続人等に対する売渡しの請求(会社法174条〜177条)
会社は、相続その他の一般承継で譲渡制限株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すよう請求できる旨を定款で定めることができます(174条)。実際に請求するには、その都度、株主総会の決議で株式の数と相手方を定め(175条1項。相手方の相続人等は原則としてこの決議で議決権を行使できません〔同条2項〕)、会社が相続などがあったことを知った日から1年以内に請求する必要があります(176条1項)。
売買価格は協議で定め、請求の日から20日以内であれば裁判所に売買価格の決定を申し立てられます(177条1項・2項)。譲渡承認の場面と違い、期間内に申立てがなく協議も調わなかった場合は、売渡しの請求そのものが効力を失うとされています(177条5項)。相続で分散した株式を集約するための制度ですが、価格によっては会社の財源を大きく使うことになるため、事前に評価の目安をつかんでおくことが大切です。分散した株式の整理は名義株の整理もあわせてご覧ください。
反対株主の株式買取請求(会社法116条・785条など)
株式の譲渡制限を設ける定款変更、合併・会社分割・株式交換などの組織再編、端数が生じる株式併合などに反対した株主は、会社に対して自己の株式を「公正な価格」で買い取るよう請求できます(116条1項、182条の4第1項、785条1項など)。価格は協議で決め、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、その期間満了の日後30日以内に、株主・会社のどちらも裁判所に価格の決定を申し立てられます(117条2項、182条の5第2項、786条2項)。
ここで使われる「公正な価格」という言葉は、譲渡承認の場面の「売買価格」とは異なります。組織再編の手続の流れは合併とはや株式交換・株式移転で解説しています。
スクイーズアウト(株式等売渡請求・株式併合・全部取得条項付種類株式)
支配株主が少数株主から株式を強制的に取得して100%子会社にする手続を、一般にスクイーズアウトと呼びます。会社法では、議決権の10分の9以上を持つ特別支配株主が他の株主全員に株式の売渡しを請求する方法(179条1項)、株式併合で少数株主の株式を1株未満の端数にする方法(180条以下)、全部取得条項付種類株式を使う方法(171条以下)があります。
いずれも少数株主の側には裁判所に価格の決定を申し立てる手段が用意されています。株式等売渡請求では取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に売買価格の決定を申し立てられ(179条の8第1項)、株式併合では反対株主の株式買取請求(182条の4)、全部取得条項付種類株式では取得の価格の決定の申立て(172条1項)が使えます。議決権の割合と行使できる権利の関係は議決権とはで整理しています。
協議から裁判所の価格決定までの流れ
場面は違っても、価格が決まるまでの大まかな流れは共通しています。
- 1. 手続の開始:譲渡承認の請求、売渡しの請求、組織再編の効力発生、売渡請求の通知など、それぞれの手続で期限の起算点が決まります。最初に、どの条文の手続で、いつから何日以内かを確認します。
- 2. 当事者間の協議:会社(または指定買取人・特別支配株主)と株主が価格を話し合います。この段階で双方が算定書を用意し、根拠を示して交渉することが一般的です。
- 3. 裁判所への申立て:協議がまとまらないときは、法定の期間内に、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に価格の決定を申し立てます。期間を過ぎると、場面によっては純資産額で価格が決まったり、請求が失効したりします。
- 4. 審理と鑑定:裁判所は当事者の主張と資料を踏まえて審理し、必要に応じて専門家による鑑定を実施します。鑑定費用の負担や、鑑定人がどの手法を採るかが、結論に大きく影響します。
- 5. 決定と不服申立て:裁判所が価格を決定し、不服があれば抗告などで争うことになります。
裁判所の手続は時間がかかることがあります。たとえば後述する最高裁判所の令和5年5月24日決定の事案では、決定文によれば譲渡承認の請求は平成28年2月で、最高裁の決定までに7年あまりを要しています。時間と費用の負担を考えると、協議の段階で根拠のある価格を示し、合意を目指すことに大きな意味があります。
裁判所は何を考慮して価格を決めるのか
条文が裁判所に示している基準は、場面によって書き方が違います。譲渡承認の拒否に伴う買取りと相続人等への売渡請求では、裁判所は価格の決定にあたり、請求の時における「株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない」とされています(144条3項、177条3項)。反対株主の株式買取請求では、条文は「公正な価格」で買い取ることを定めています(116条1項、785条1項など)。
どちらの場合も、条文は特定の評価手法を指定していません。そのため、裁判所は事案ごとに、会社の事業の状況、資産の内容、収益力、配当の実績、株主の立場(支配株主か少数株主か)などを踏まえ、鑑定の結果を参考にして価格を決めることになります。評価手法には、将来のキャッシュフローや利益に着目するインカム・アプローチ(DCF法・収益還元法など)、純資産に着目するネットアセット・アプローチ(時価純資産法など)、類似の上場企業の株価に着目するマーケット・アプローチ(類似会社比較法など)があり、配当に着目する配当還元法が議論になることもあります。各手法の考え方は株式評価の3つのアプローチと非上場株式の評価方法で解説しています。
最高裁判所の判断:非流動性ディスカウントは手続によって扱いが違う
価格決定で特に争われやすいのが、非上場株式に市場性がないことを理由とする減価、いわゆる非流動性ディスカウント(DLOM)を行うかどうかです。この点について、最高裁判所は手続の違いに応じて異なる判断を示しています。以下は裁判所ウェブサイトに掲載された判示事項・裁判要旨・決定文で確認した内容です。
| 決定 | 手続 | 評価手法 | 非流動性ディスカウント |
|---|---|---|---|
| 最高裁判所第一小法廷 平成27年3月26日決定(平成26年(許)第39号、民集69巻2号365頁) | 吸収合併に反対した株主の株式買取請求(会社法785条1項) | 収益還元法 | 非上場会社で収益還元法を用いて買取価格を決定する場合に、非流動性ディスカウントを行うことはできないとした |
| 最高裁判所第三小法廷 令和5年5月24日決定(令和4年(許)第8号) | 譲渡制限株式の売買価格の決定(会社法144条2項) | DCF法 | 評価額の算定過程で市場性がないことが考慮されていることはうかがわれないなどの事情の下で、DCF法の評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとした |
令和5年決定のポイント
令和5年決定は、譲渡承認の拒否に伴う売買価格の決定の手続を、会社が譲渡を承認しない場合に、譲渡を希望する株主に譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障するために設けられたものと位置づけました。そのうえで、市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、任意に譲渡される場合と同様に非流動性ディスカウントを行うことができ、このことは評価方法としてDCF法が用いられても変わらない、と述べています。
この事案では、鑑定人がDCF法で1株当たりの評価額を算定する際に類似する上場会社の株式に係る数値を用い、そこから30%の非流動性ディスカウントを行う鑑定意見を述べ、原審がこれに依拠しました。最高裁はこれを是認する一方、評価額の算定過程で市場性のなさがすでに十分に考慮されている場合には、さらに減価することは二重の減価となり相当でないとも述べています。また、平成27年決定については「事案を異にし、本件に適切でない」としています。30%という率はこの事案の鑑定での数字であり、一般的な水準を示したものではありません。
実務への示唆
- 手続の種類で論点が変わる:同じ非流動性ディスカウントでも、反対株主の株式買取請求(収益還元法)と譲渡承認の拒否に伴う売買価格の決定(DCF法)とで、最高裁の結論は異なります。自分の案件がどの手続にあたるかを先に確認します。
- 算定過程の説明が重要:上場会社の数値を使ったのか、すでに市場性のなさを織り込んだ前提なのかによって、減価の可否の判断が変わり得ます。算定書には、どの段階で何を考慮したかを明記しておくことが大切です。
- 個別の事情で結論は変わる:最高裁の判断はいずれも事案に即したもので、どの事案にも同じ率や手法が当てはまるわけではありません。具体的な主張の組み立ては弁護士に相談してください。
非流動性ディスカウントの考え方と水準の目安はDLOM(非流動性ディスカウント)とはで、想定保有期間とボラティリティから目安をレンジで試算する方法はDLOM計算ツールで確認できます。少数株主であることによる支配権の欠如の論点はコントロールプレミアムとはで扱っています。
参考:上場会社のスクイーズアウトに関する判断
非上場会社の事案ではありませんが、スクイーズアウトの価格に関しては、最高裁判所第一小法廷 平成28年7月1日決定(平成28年(許)第4号、民集70巻6号1445頁)がよく参照されます。公開買付けの後に全部取得条項付種類株式で残りの株式を取得する取引について、独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど、利益相反による恣意的な意思決定を排除する措置が講じられ、一般に公正と認められる手続で公開買付けが行われた場合には、特段の事情がない限り、取得価格を公開買付けの価格と同額とするのが相当であると判断しています。市場株価と公開買付けがある上場会社を前提とした判断であり、非上場会社の価格決定にそのまま当てはまるものではありませんが、手続の公正さが価格の判断に影響するという考え方は、非上場会社で支配株主が少数株主から買い取る場面でも参考になります。
税務上の時価との関係:合意価格と税金は別に確認する
裁判所が決めた価格や当事者が合意した価格と、税務上の「時価」は、必ずしも一致しません。税務では、取引の相手(個人か法人か、同族関係にあるか)や取得する側の立場によって時価の考え方が異なり、合意価格が税務上の時価より低い・高い場合に、思わぬ課税が生じることがあります。主な注意点は次のとおりです(具体的な適用は必ず税理士に確認してください)。
| 場面 | 注意点 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 個人が法人に時価より著しく低い価額で譲渡する | 時価の2分の1に満たない金額での譲渡は、譲渡所得の計算上、時価で譲渡したものとみなされる | 所得税法59条1項2号、所得税法施行令169条 |
| 個人が著しく低い価額で株式を譲り受ける | 対価と時価との差額について、贈与により取得したものとみなされることがある(みなし贈与) | 相続税法7条 |
| 会社が個人株主から自己株式として買い取る | 交付金額のうち資本金等の額を超える部分は配当とみなされ、譲渡所得ではなく配当所得として課税されることがある(みなし配当) | 所得税法25条1項5号 |
| 相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡する | 相続税額がある個人が一定の期間内(申告期限の翌日以後3年を経過する日まで)に発行会社へ譲渡した場合、みなし配当課税の特例がある | 租税特別措置法9条の7 |
とくに、少数株主から会社が買い取る場面では、同じ価格でも「会社が買う(自己株式の取得)」か「オーナー個人が買う」かで、売り手の税金の種類と金額が変わることがあります。また、税務上の評価で使われる配当還元方式などの価格は、M&Aや裁判での価格とは目的が違うため、そのまま交渉の基準になるとは限りません。税務上の評価との違いは取引相場のない株式の評価、株式を譲渡したときの税金は非上場株式の譲渡と税金、同族株主の判定は同族株主の判定で解説しています。
実務の進め方:少数株主側・会社側それぞれのポイント
少数株主(売り手)側
- 定款・株主名簿・手続の種類を確認する:譲渡制限の有無、相続人等への売渡請求の定め、承認機関(株主総会か取締役会か)を確認し、どの条文の手続になるかを特定します。
- 期限を最優先で管理する:譲渡承認の拒否に伴う買取りでは、通知から20日以内に申し立てないと、協議が調っていない限り1株当たり純資産額で価格が決まります。期限は条文ごとに違うため、受け取った通知の日付を記録します。
- 根拠のある価格を先に用意する:会社から提示された価格が、どの手法・どの前提で計算されたものかを確認し、自分の側でも複数の手法による評価のレンジを持っておきます。
- 税引後の手取りで比べる:会社に売るか、オーナー個人に売るかで税金が変わることがあるため、提示価格を税引後の手取りに直して比べます。
会社・支配株主(買い手)側
- 財源規制を確認する:会社が買い取る場合は分配可能額の範囲でしか買い取れません。決算の状況によっては、オーナー個人や指定買取人が買い取る方法も検討します。
- 手続の公正さを意識する:価格の算定を独立した専門家に依頼する、算定の前提を開示して説明する、といった対応は、協議をまとめやすくするだけでなく、裁判になった場合の説明にも役立ちます。
- 算定書に考慮事項を明記する:非流動性や少数株主であることをどの段階でどう反映したかを明記し、二重の減価と受け取られないようにします。
- 社内の決議と期限を管理する:株主総会の決議(140条2項・175条1項など)、通知・供託の期限、みなし承認となる期間を確認し、手続の瑕疵を作らないようにします。
算定を外部に依頼する場合の費用の目安は株価算定の費用相場、依頼先の選び方は企業価値評価の依頼先でまとめています。将来のキャッシュフローから評価するDCF法の考え方はDCF法とは、計算はDCF法計算ツールで確認できます。
よくある質問
Q. 少数株主は、会社に株式を買い取ってもらう権利がありますか?
A. いつでも買い取ってもらえる一般的な権利があるわけではありません。譲渡制限株式の譲渡承認を請求し、承認しない場合の買取りを求める(会社法136条・138条・140条)、組織再編などに反対して株式買取請求をする(116条・785条など)といった、法律が定める場面で買取りを求めることになります。それ以外は、会社や他の株主との合意による売買です。
Q. 会社から提示された買取価格に納得できない場合はどうすればよいですか?
A. まず提示価格の算定方法と前提を確認し、自分の側でも根拠のある評価を用意して協議します。協議が調わない場合は、法定の期間内に裁判所へ価格の決定を申し立てることを検討します。期間は手続ごとに違い、過ぎると不利な結果になることがあるため、早めに弁護士に相談してください。
Q. 裁判所はどの評価方法を使いますか?
A. 条文は特定の評価方法を定めておらず、事案ごとに、鑑定の結果などを踏まえて判断されます。DCF法や収益還元法などの収益に着目する手法、純資産に着目する手法などが用いられ、非流動性ディスカウントの扱いは、最高裁の判断を見ても手続によって異なります。どの手法が採られるかは事案の事情によるため、一律には言えません。
Q. 期限内に裁判所へ申し立てなかったらどうなりますか?
A. 場面によって効果が違います。譲渡承認の拒否に伴う買取りでは、協議が調っていない限り1株当たり純資産額に株式数を掛けた額が売買価格になります(144条5項)。相続人等への売渡請求では、請求そのものが効力を失います(177条5項)。反対株主の株式買取請求では、効力発生日から60日以内に申立てがないと、株主はその後いつでも買取請求を撤回できます(117条3項など)。
Q. 裁判所が決めた価格なら、税務上も問題はありませんか?
A. 裁判所の価格と税務上の時価は、目的も考え方も異なるため、必ずしも一致しません。買い手が個人か会社か、当事者が同族関係にあるかなどによって課税関係が変わることがあるため、税理士に確認してください。
まとめ:場面と期限を特定し、根拠のある価格で協議する
非上場株式の買取価格は、①譲渡承認の拒否、相続人等への売渡請求、反対株主の株式買取請求、スクイーズアウトなど、どの場面の手続かで条文・期限・申し立てなかったときの効果が違い、②協議が調わなければ裁判所が「資産状態その他一切の事情」や「公正な価格」を基準に、鑑定などを踏まえて決め、③非流動性ディスカウントの扱いは最高裁の判断でも手続によって異なり、④合意価格と税務上の時価は別に確認が必要——という構造になっています。数字はどの段階でも目安であり、法務・税務の判断は専門家に確認しながら進めてください。
協議の土台として評価の目安をつかみたい場合、M&Aバリュークラウドの詳細版(5,500円・税込)は、決算書と事業計画の数字からDCF法と類似会社比較法を併用して株式価値のレンジを示し、純資産法を参考として添えるA4・10ページの報告書です。試算と評価レンジの表示は無料、報告書PDFは有料です。裁判所の鑑定や専門家の意見に代わるものではありませんが、協議の前に論点を整理する材料として使えます。内容は詳細版の見本PDFで確認でき、簡易版との違いは簡易版と詳細版の選び方で説明しています。