事業承継特別保証制度とは|経営者保証を外して借り換える要件・保証料率・使えない場面

最終更新: 2026-09-22

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事業承継の相談で、税金の話と同じくらい高い頻度で出てくるのが経営者保証です。「息子に継がせたいが、あの保証まで背負わせるのは忍びない」「引退したのに、自分の保証だけが銀行に残っている」——実際に手が止まる理由として、これは株価の問題より切実なことがあります。

この詰まりに対して、国は複数の手を打ってきました。そのうち実際に借入を組み替えて保証を外しにいくための道具が、本稿で扱う事業承継特別保証制度です。信用保証協会の保証制度のひとつで、令和2年4月から取扱いが始まりました。考え方の枠組みである「経営者保証に関するガイドライン」やその事業承継特則については経営者保証に関するガイドラインで扱っているので、本稿は制度そのものの使い方——誰が使えて、いくらまで借りられて、どの借入を組み替えられて、どういう場面では使えないのか——に絞って整理します。

記述は、各地の信用保証協会が公表している制度案内、中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」のページ、経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月公表、令和5年4月改定)、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)、金融庁の公表資料で確認できた範囲に限っています。保証制度の細部は協会ごと・時期ごとに運用が異なりますので、実際の申込みの前には必ず申込先の信用保証協会の最新の案内をご確認ください。

この制度がやっていることは「保証を外すための借換え」

経営者保証を外す方法は、大きく2つに分かれます。ひとつは、いま借りている融資について金融機関と交渉し、保証契約そのものを解除してもらう方法。もうひとつが、保証の付いている既存の借入を、保証の付かない新しい借入で借り換えてしまう方法です。事業承継特別保証は後者にあたります。

ここが理解の勘所です。交渉で外してもらう場合、金融機関には応じる義務がありません。ガイドラインは法令ではなく、金融機関・中小企業・保証人が自発的に尊重する自主的・自律的な準則として位置づけられているためです。これに対して借換えは、要件を満たして保証が承諾されれば、新しい借入は最初から無保証で実行されます。手続として決着がつきやすい、という違いがあります。

もっとも、借換えにも審査があります。要件を満たしていれば自動的に通るわけではなく、信用保証協会と金融機関の判断を経る点は変わりません。「この制度を使えば必ず保証が外れる」とは言えないことは、先に押さえておいてください。

使えるのは2つのルート

対象となるのは、次のいずれかに当てはまる法人です(個人事業主は対象外です)。

ルート内容実務での位置づけ
① これから承継する保証申込受付日から3年以内に事業承継を予定する、事業承継計画を有する法人承継の前に保証を整理しておく使い方。事業承継計画を先に作る必要がある
② すでに承継した一定期間内に事業承継を実施した法人であって、事業承継日から3年を経過していないもの承継したのに前経営者の保証が残っている、という状態を解消する使い方

②の「一定期間」について、各地の信用保証協会は現在も令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した法人という文言で案内しています。この期間要件が延長されているかどうかは、公表資料からは確認できませんでした。一方で①のルートには期限の定めがなく、現在も受け付けられています。②で申し込めるかどうかは、申込先の協会に直接確認するのが確実です。

①を使う場合、前提として事業承継計画が必要になります。誰に、いつ、どういう段取りで引き継ぐのかを書いたものです。計画づくりの考え方は事業承継ガイドラインで整理していますが、後継者が決まっていない段階であれば、そもそも承継の選択肢を広げるところから始めることになります。その場合は後継者不在のときの選択肢もあわせてご覧ください。

財務の4要件——ここで落ちることが多い

ルートに当てはまっても、次の4つをすべて満たす必要があります。実務上、ここが関門です。

要件内容見るべき数字
資産超過であること純資産がプラスであること貸借対照表の純資産合計
EBITDA有利子負債倍率が10倍以内(借入金・社債 − 現預金)÷(営業利益 + 減価償却費)が10倍以内有利子負債、現預金、営業利益、減価償却費
法人と経営者の資産・経理が明確に分離されていること会社の資金と経営者個人の資金が混ざっていないこと役員貸付金・仮払金、オーナー所有不動産の賃料など
返済緩和中の借入金がないことリスケジュール中でないこと既存借入の条件変更の有無

2つめのEBITDA有利子負債倍率は、平たく言えば「いまの利益水準で、実質的な借金を何年で返せるか」を見る指標です。ここで注意が必要なのは、この倍率が一時的に15倍まで緩和されていた時期があり、その緩和は令和6年8月末で終了していることです。現在の基準は10倍です。ネット上には15倍と書かれた情報がいまも残っているため、自社で試算するときは10倍で確認してください。指標の計算そのものは財務指標 計算ツールEBITDA 計算ツールでも確認できます。

3つめの法人と経営者の分離は、中小企業でもっとも引っかかりやすい要件です。役員貸付金が残っている、社長個人の支出が会社の経費に混ざっている、オーナー所有の不動産の賃料が相場からかけ離れている——こうした状態は、そのまま「分離されていない」と評価されます。これらは企業価値評価の場面でも調整対象になる項目で、考え方は正常収益力(実態EBITDA)とは実態EBITDA調整シートと共通しています。保証を外す準備と、会社の価値を上げる準備は、実はかなりの部分が重なっています。

要件を満たさない場合でも、すぐに諦める必要はありません。役員貸付金の整理、非事業用資産の処分、利益体質の改善といった作業は、数期かけて取り組めば結果が変わりうるものです。承継の実行日から逆算して、いつまでに何を整えるかを決めるところから始めるのが現実的です。磨き上げの進め方はセルサイドDDと売り手の磨き上げも参考になります。

限度額・期間・保証料率

各地の信用保証協会が公表している内容は、おおむね次のとおりで共通しています。

  • 保証限度額:2億8,000万円(うち無担保8,000万円を含む)。組合等についてこれと異なる額を案内している協会もあります
  • 保証期間:一括返済は1年以内、分割返済は10年以内(据置期間は1年以内)
  • 保証人:不要。これが制度の目的そのものです
  • 保証料率:年0.45%〜1.90%(9区分)
  • 専門家の確認を受けた場合:年0.20%〜1.15%に引き下げ

最後の保証料率の引下げは、金額としても小さくありません。仮に1億円を10年で借りるなら、料率が1%違えば負担は大きく変わります。確認を行う主体は、令和5年4月以降の運用では中小企業活性化協議会事業承継・引継ぎ支援センターです。いずれも公的な支援機関で、相談自体に費用はかかりません。

ここで補足しておくと、かつてこの確認を担っていた「経営者保証コーディネーター」という仕組みは令和5年3月末で廃止されています。中小企業庁の事業承継ガイドライン(第3版・令和4年3月改訂)にはコーディネーターの記述が残っていますが、これは改訂時点の記述です。古い資料を見て窓口を探すと行き止まりになるので、注意してください。

プロパー融資まで借り換えられる

この制度で見落とされがちな、しかし実務的に大きい点があります。借り換えられる対象が、信用保証付きの借入に限られないことです。

前掲の特則は、経営者保証が提供されている借入(事業承継前のものに限る)を借り換えて無保証とする制度として本制度を紹介したうえで、その借換えについては信用保証付借入のみならず、いわゆる「プロパー借入」(他金融機関扱い分を含む)も対象とすると明記しています。各地の保証協会も、経営者保証付きのプロパー借入の借換えが可能である旨を案内しています。

中小企業の借入は、信用保証付きとプロパーが混在しているのが普通です。保証協会の枠だけを組み替えても、プロパー側に経営者保証が残っていれば、保証人としての立場は消えません。本制度が「一本にまとめて無保証にする」経路を用意しているのは、この現実に対応するためです。なお、すでに承継を終えている②のルートについては、対象を事業承継前の借入金に限る旨を明示している協会もあります。

なぜこの制度が要るのか——前経営者の保証は約4割が残っている

「最近は保証を取らない流れなのだから、放っておいても外れるのでは」と考える方もいます。公的な統計を見ると、そう単純ではありません。

金融庁が毎年公表している「経営者保証に関するガイドライン」等の活用実績によれば、民間金融機関の新規融資件数に占める経営者保証に依存しない融資の割合は、2025年度で55.7%でした。2015年度が12.2%、2020年度が27.6%、2023年度が47.6%ですから、10年で大きく変わったのは事実です。

ところが、代表者が交代したときの扱いを見ると別の姿が浮かびます。旧経営者が保証を提供している先で代表者交代が行われたことを金融機関が把握した際の対応について、2025年度の内訳は次のとおりです。

対応2017年度2025年度
前経営者・後継者の双方から徴求(二重徴求)36.9%3.0%
前経営者なし・後継者あり34.6%40.6%
前経営者あり・後継者なし18.6%39.7%
どちらからも徴求しない9.9%16.7%

二重徴求は36.9%から3.0%へ、劇的に減りました。特則が掲げた「原則として前経営者、後継者の双方から二重には保証を求めない」という方針が実際に浸透したことを示しています。

しかし同じ表の3行目——前経営者の保証が残り、後継者からは取っていない事案が39.7%あります。2017年度の18.6%から、むしろ倍増しています。経営から退いた人の保証だけが残るという状態が、統計上はっきり見えているわけです。引退したはずの前経営者にとっては、これがもっとも納得しづらい形でしょう。事業承継特別保証は、まさにこの状態を解消するための制度です。

数字を読むときの注意点を1つ。特則がいう「二重徴求」は、同一の債権について双方から保証を取っている場合を指します。代表者交代前の既存債権は前経営者、交代後の新規債権は後継者のみ、という状態は二重徴求に当たりません。したがって「二重徴求3.0%」を「前経営者の保証はほぼ外れている」と読み替えるのは誤りです。実態は上の表の3行目が示すとおりです。

二重徴求が例外的に認められる場合もある

特則は「原則として前経営者、後継者の双方から二重には保証を求めない」としていますが、例外を4つ明示しています。原則だけを読んで「二重に求められるのはおかしい」と決めつけると、話が噛み合わなくなります。挙げられているのは次の場合です。

  • 前経営者が死亡し、相続確定までの間、暫定的に二重徴求となる場合
  • 法人から前経営者に対する多額の貸付金等が残存しており、前経営者から保証を解除することが著しく公平性を欠く場合
  • 金融支援を実施中であったり、返済が延滞していたりして、当初見込んだ保証の効果が大きく損なわれる場合
  • 前経営者・後継者の双方から、専ら自らの事情により保証提供の申出があり、自署・押印された書面の提出がある場合

2つめは中小企業でよくあります。会社から社長個人への貸付金が積み上がっている状態では、「法人と経営者の分離」ができていないとみなされるだけでなく、保証を外すこと自体が公平性を欠くと評価されうるわけです。役員貸付金の整理は、保証を外すための実務上もっとも優先度の高い作業のひとつだと考えてください。

また、前経営者との保証契約を継続するかどうかを判断する際に勘案される事情として、特則は株式保有状況(議決権の過半数を保有しているか等)、代表権の有無、実質的な経営権・支配権の有無、既存債権の保全状況、法人の資産・収益力による借入返済能力を挙げています。代表権を外れただけで株式を持ったままであれば、実質的には経営権を握っていると評価される余地が残ります。議決権の考え方は議決権比率 計算ツール議決権とはで確認できます。

なお特則は、後継者との保証契約について、ガイドライン本体の要件の多くを満たしていない場合でも総合的な判断として経営者保証を求めない対応ができないかを真摯かつ柔軟に検討することを求めており、その検討事項として停止条件付保証契約、中小企業活性化協議会の確認結果の尊重、事業承継特別保証制度の活用、政府系金融機関の制度の活用を列挙しています。制度は1本ではなく、組み合わせて考えるものだという位置づけです。

似た名前の制度と混同しない

経営者保証まわりは、近年立て続けに新しい制度ができたため、名前が紛らわしくなっています。目的が違うので、整理しておきます。

制度何のための制度か押さえどころ
事業承継特別保証事業承継に伴い、経営者保証付きの既存借入を無保証の借入に借り換える承継が前提。財務4要件あり。専門家の確認で保証料率が下がる
事業者選択型経営者保証非提供制度承継の有無にかかわらず、事業者の選択で経営者保証を提供しないことを選べる保証料率の上乗せと引き換えに保証を外す仕組み。限度額は事業承継特別保証より小さい
プロパー融資借換特別保証制度経営者保証付きのプロパー融資を、保証付きの無保証借入に借り換える時限的に創設された制度。承継を前提としない点が事業承継特別保証と異なる
スタートアップ創出促進保証創業期の無保証融資承継とは無関係。創業者向け

いずれも信用保証協会の制度ですが、要件・限度額・保証料率の扱いはそれぞれ異なります。取扱期限が設けられているものもあるため、制度名を特定したうえで、申込先の協会の最新の案内で条件を確認してください

また、信用保証協会の制度とは別に、政府系金融機関のルートもあります。日本政策金融公庫が公表している実績によれば、令和7年度の無保証融資の割合は法人・個人企業の合計で70.9%、法人向けに限ると48.1%です。経営者保証を不要とする制度として、経営者保証免除特例制度などが用意されています。民間金融機関と公庫では数字の水準も制度の立て付けも違うので、どの統計の話をしているのかを取り違えないことが大切です。

M&A(第三者承継)では話が変わる

ここまでは親族内承継・社内承継を念頭に置いた説明です。第三者に会社を譲渡するM&Aの場面では、経営者保証の扱いは別の難しさを持ちます。譲り渡す側から見れば、会社を手放したあとも自分の保証だけが残るのは受け入れがたい。一方で保証を外すかどうかを決めるのは、売り手でも買い手でもなく金融機関です。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)は、この問題を正面から取り上げています。同ガイドラインは、譲り渡し側の経営者保証を譲り受け側に移行させる想定だったのに移行されず、トラブルが発生している事例があることを指摘したうえで、解除または移行の実施は最終的には金融機関等の判断によるものであると明記しています。

さらに、正式な解除・移行はクロージングを経て登記簿上の代表者が変更された後に行う必要があるため、秘密保持の観点から相談がクロージング後になる場合があり、その場合は譲り受け側の信用力が著しく低いときなどに円滑に解除・移行できないリスクや、そもそも譲り受け側に解除・移行の意思が希薄な場合に相談が滞るリスクがあるとしています。順番の問題として、構造的に危ういのです。

そのうえで同ガイドラインは、確実に解除・移行したい場合の対応として次の3つを挙げています。

  • 士業等専門家(特に弁護士)や事業承継・引継ぎ支援センターへの相談
  • 金融機関等への事前相談。秘密保持を徹底したうえで行い、相談先と秘密保持契約を締結することが望ましいとされます。ただし事前相談をしても経営者保証の扱いが確定的とならない可能性がある点にも触れています
  • 最終契約における位置づけの検討。譲り受け側の義務として解除・移行を位置づけ、クロージング条件として設定したり、解除・移行がなされなかった場合を想定した契約解除条項・補償条項を盛り込むことが重要だとしています

3つめが実務的にもっとも効きます。クロージング条件の具体例として、譲り受け側が最終契約締結後・クロージング前に金融機関等から解除・移行が実行できる旨の組織的な意向表明を取得すること、万全を期す場合はクロージング日に代表者変更登記と保証解除手続を同時に実施することが挙げられています。さらに、クロージング時に保証の対象となっている債務を譲り受け側の資力で返済し、別途借り換える方法も示されています。契約条項の組み立て方は株式譲渡契約書(SPA)の要点、M&Aの場面での保証解除はM&Aにおける個人保証(経営者保証)の解除で詳しく扱っています。

同ガイドラインは仲介者・FAの側にも義務を課しており、経営者保証の扱いについて譲り渡し側経営者と方針を相談したうえで対応を検討しなければならないとしています。また、相談のために秘密保持条項の対象から相談先を除外する必要があることから、譲り受け側はその実施を拒むべきではないとも述べています。ガイドライン全体の構成は中小M&Aガイドラインをご覧ください。

2026年に変わったこと

経営者保証をめぐる規制環境は、いまも動いています。2022年12月に経済産業省・金融庁・財務省が公表した「経営者保証改革プログラム」以降の流れを、時系列で押さえておきます。

時期内容
2023年4月適用監督指針の改正。金融機関が経営者保証を求める場合、どの部分が十分でないために保証が必要なのか等を個別具体的に説明し、その結果を記録することを求める
2024年10月適用監督指針の改正。経営者保証がM&A・事業承継の支障となるという指摘を踏まえ、主たる株主等の変更を把握した場合の既存保証契約の見直し・説明について態勢整備を明確化
2026年4月施行監督指針の改正。2023年3月以前に締結された個別の保証契約についても、新規契約と同様に説明・記録を求めることを監督上の着眼点として明確化。あわせてM&A時の経営者保証の適切な取扱い(事前相談の推奨と丁寧な対応、最終契約に向けた調整・支援の態勢整備)を明確化
2026年5月開設金融庁が「M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク」を開設。ただし個別案件の仲介を行うものではなく、対応を確約するものではない旨が明記されている

2026年4月施行の改正は、実務的にとくに意味があります。過去に締結した保証契約についても、金融機関に説明と記録が求められることが監督上の着眼点として明確化されたためです。「昔からの保証だから」という理由で話が進まなかった案件について、あらためて相談する余地が広がったと言えます。

なお、金融庁の公表資料によれば、2025年度上半期の時点で、民間金融機関全体の新規融資のうち「無保証融資件数」と「有保証融資で適切な説明を行い記録した件数」の合計は99.8%に達しています。説明を受けずに保証を求められているのであれば、それ自体が例外的な状態だということです。

よくある誤解

「この制度を使えば必ず保証が外れる」

外れません。信用保証制度である以上、要件審査を経た保証承諾が前提です。またM&Aの場面では、前掲のとおり解除・移行の判断は最終的に金融機関等が行います。制度は可能性を上げるための道具であって、結果を約束するものではありません。

「ガイドラインがあるのだから、金融機関は従う義務がある」

ガイドラインおよび特則は法令ではなく、関係者が自発的に尊重し遵守することが期待される自主的・自律的な準則です。ただし監督指針で説明・記録が求められている以上、説明を受ける立場としては「なぜ必要なのか、どう改善すれば外れるのか」を具体的に聞く正当な根拠があります。特則も、法人の資産・収益力について可能な限り定量的な目線を示すことが望ましいとしています。

「EBITDA有利子負債倍率は15倍以内でよい」

現在は10倍です。15倍は時限的な緩和措置で、令和6年8月末に終了しています。

「補助金で経営者保証を外せる」

事業承継・M&A補助金の公募要領・FAQには、経営者保証の解除そのものを直接の補助対象とする記載は見当たりません。補助金で賄えるのは専門家費用やデューデリジェンス費用などです。制度の全体像は事業承継・M&A補助金をご覧ください。

よくある質問

どこに申し込むのですか

取引のある金融機関、または信用保証協会に相談するところから始めます。保証料率の引下げを受けたい場合は、事前に中小企業活性化協議会または事業承継・引継ぎ支援センターの確認を受ける流れになります。公的な相談窓口の全体像はM&Aの公的支援で整理しています。

経営承継円滑化法の認定は必要ですか

事業承継特別保証について、経営承継円滑化法にもとづく都道府県知事の認定は不要とされています。同法にも金融支援(経営承継借換関連保証など)の枠組みがあり、両者は併用が可能である旨が公表資料に示されています。同法の全体像は経営承継円滑化法をご覧ください。

債務超過でも使えますか

資産超過が要件なので、そのままでは使えません。債務超過の状態にある会社の選択肢は赤字・債務超過会社の売却で整理しています。また、再生局面であれば中小企業の事業再生等に関するガイドラインの枠組みのほうが適切な場合があります。

承継のどのタイミングで動くべきですか

①のルートは「3年以内に承継を予定する」ことが要件なので、承継の3年前から視野に入ります。財務要件を整えるには時間がかかることが多いため、実行日から逆算して早めに着手するのが現実的です。承継全体のスケジュール感は事業承継タイムラインで確認できます。

会社の価値の話とは関係がありますか

関係します。保証を外すための財務要件(資産超過、EBITDA有利子負債倍率、法人と個人の分離)は、そのまま買い手や後継者が会社を評価するときに見る項目と重なります。純資産、正常収益力、非事業用資産の整理——どれも評価の土台です。自社の現在地を数字で確認したい場合は、事業承継における株価算定企業価値の1分診断から始めるとよいでしょう。企業価値と株式価値の関係は企業価値と株式価値の違いで整理しています。

本稿で触れた保証の解除・借換え、承継の進め方、契約条項の設計は、いずれも個別性が高く、税務・法務の取扱いが結論を左右します。実際の判断にあたっては、金融機関・信用保証協会および弁護士・税理士等の専門家に必ずご確認ください。本稿は公表資料の整理であり、個別の助言ではありません。

まとめ

事業承継特別保証制度は、令和2年4月に始まった信用保証協会の保証制度で、経営者保証の付いた既存借入を、保証の付かない借入に組み替えるための道具です。保証限度額は2億8,000万円(うち無担保8,000万円を含む)、保証期間は分割返済で10年以内、保証料率は年0.45%〜1.90%で、中小企業活性化協議会または事業承継・引継ぎ支援センターの確認を受ければ年0.20%〜1.15%に下がります。

使えるのは、3年以内に承継を予定する計画を持つ法人か、一定期間内に承継を実施して3年を経過していない法人。そのうえで、資産超過・EBITDA有利子負債倍率10倍以内・法人と経営者の分離・返済緩和なしという4つの財務要件をすべて満たす必要があります。借換えの対象にはプロパー借入も含まれる点が、実務上大きな意味を持ちます。

制度が必要とされる理由は、統計にはっきり表れています。代表者交代時の二重徴求は2017年度の36.9%から2025年度の3.0%まで減った一方、前経営者の保証だけが残る事案は39.7%あり、むしろ増えています。放っておけば外れるものではない、ということです。

そしてM&Aの場面では、解除・移行の判断は最終的に金融機関等が行うため、最終契約の中にクロージング条件や補償条項として書き込んでおくことが要になります。保証を外す準備は、財務要件を整える作業という意味でも、会社の価値を上げる作業と重なります。承継の3年前から、逆算して動き始めてください。

本稿で参照した主な公表資料は、中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」、各地の信用保証協会が公表する事業承継特別保証の制度案内、経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月公表・平成26年2月1日適用開始)および「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月公表、令和2年4月1日適用、令和5年4月改定)、経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」(2022年12月23日)、金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績について」および監督指針の改正に関する公表資料、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)です。いずれも改定される可能性があるため、最新版の確認をおすすめします。

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