経営力向上計画とは|M&A・事業承継で使える支援措置と申請の実務(中小企業等経営強化法)

最終更新: 2026-09-22

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設備投資の話をしていると税理士から、M&Aの話をしていると仲介会社から、「まず経営力向上計画の認定を取りましょう」と言われることがあります。言われるままに書類を書き始めてみたものの、その計画で結局なにが得られるのかは最後まで説明されない——そういう場面は珍しくありません。

経営力向上計画は、中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)にもとづく認定制度です。名前からは「経営をよくする計画」としか分かりませんが、実務上の正体はもっと即物的で、税制・金融・法的支援の入口をまとめて開ける鍵です。とくにM&A・事業承継の場面では、これを取っていないと使えない措置がいくつもあります。

本稿は逐条解説ではなく、「どの場面で、何のために取るのか」という順番で整理します。記述は、法令本文(e-Gov法令検索で確認できる法)、中小企業庁の公表ページ、国税庁のタックスアンサー、財務省の税制改正の大綱、各地方経済産業局・農林水産省・中小機構の公表資料で確認できた範囲に限っています。税制措置は期限と要件が改正のたびに変わりますので、実際の判断の前には必ず最新の公表資料をご確認ください。

まず結論:何が得られるのか

認定を受けると使えるようになる支援は、大きく4つに分かれます。

区分主な内容M&A・事業承継での使いどころ
税制中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除)、中小企業事業再編投資損失準備金、事業承継等に係る不動産取得税の特例株式取得型のM&Aで取得価額の一部を損金算入できる。承継後の設備投資で即時償却が使える
金融支援日本政策金融公庫の低利融資、信用保険法の特例(別枠保証)、投資育成会社の特例、スタンドバイ・クレジット、中小機構の債務保証ほかM&A等による事業承継(デューデリジェンスを含む)の資金が別枠保証の対象になる
法的支援許認可の承継の特例、組合の発起人数の特例、事業譲渡の際の免責的債務引受の特例、事業承継資金の信用保証における経営者保証の不要化許認可が必要な業種で、事業譲渡・会社分割のときに許認可を引き継げる
補助金各補助金の審査時の加点公募回ごとに基準が異なるため、その回の公募要領で確認が必要

重要な前提を先に書いておきます。認定を受けたことをもって、融資や債務保証、補助金の採択が約束されるわけではありません。この点は複数の地方経済産業局が明記しています。計画は「使える可能性のある扉を開ける」ものであって、中身の審査は別にあります。

法律が言う「経営力向上」とは何か

制度を理解するうえで、法律の定義を一度見ておくと腑に落ちます。同法第2条第10項は「経営力向上」を、人材育成、財務内容の分析結果の活用、需要動向に関する情報の活用、経営能率の向上のための情報システムの構築といった方法であって、現に有する経営資源または事業承継等により他の事業者から取得・提供された経営資源を高度に利用するものを導入して事業活動を行い、経営能力を強化して経営の向上を図ること、と定めています。

ポイントは後半です。「いま持っている経営資源」と「M&Aなどで手に入れた経営資源」が、条文上ならんで書かれている——つまりこの制度は、設備投資による自力の成長と、事業承継等による外部資源の取り込みを、はじめから同列に扱う設計になっています。M&A向けの措置が後から付け足されたように見えて、実は法律の骨格に組み込まれているわけです。

なお同法は平成11年に制定された法律で、平成17年に「中小企業新事業活動促進法」として3法が統合され、平成28年7月1日に現在の「中小企業等経営強化法」へ改題・施行されました。第1条は法律の目的として、新たに設立された企業の事業活動と、中小企業等の経営革新・経営力向上・先端設備等導入・事業継続力強化の支援を挙げています。後で触れる「よく混同される3つの計画」が、いずれもこの法律の中に同居しているのはこのためです。

申請先は中小企業庁ではない

最初につまずきやすいのがここです。経営力向上計画は事業分野ごとの主務大臣、つまり事業を所管する省庁に提出します。中小企業庁は申請を受け付けません。

たとえば製造業の一般的なケースなら各地方経済産業局、食料品・飲料の卸売業・小売業なら各地方農政局、といった具合です。中小企業庁が「事業分野と提出先」の一覧を公表しているので、自社の事業がどの分類に当たるかを確認してから動くのが確実です。分類は日本標準産業分類にもとづきます。

あわせて、事業分野ごとに事業分野別指針が定められています。製造業、卸・小売業、外食・中食、旅館業、医療、保育、介護、障害福祉、貨物自動車運送業、建設業、不動産業、農業など21分野に指針があり、指針のない分野は基本方針によることになります。指針は計画に書く目標や指標の置き方を規定するので、自社の分野の指針を読んでから申請書を書くのが手戻りを防ぐ順番です。

標準処理期間

  • 単独の省庁が所管する場合:30日程度
  • 複数の省庁の所管にまたがる場合:45日程度
  • 経済産業局宛てのみの電子申請:約14日(土日祝等を除く)
  • 税制のB・D・E類型で必要な経済産業大臣(経済産業局)の確認書:30日

電子申請は専用のプラットフォームから行い、GビズIDプライムが必要です。経済産業部局宛ての申請は2022年4月から原則として完全電子化されています。設備投資の時期やクロージングの日程から逆算すると、この処理期間が意外と効いてきます。

計画に何を書くのか

法律(第17条第2項)が求める記載事項は、①経営力向上の目標、②経営の向上の程度を示す指標、③経営力向上の内容及び実施時期、④必要な資金の額及びその調達方法、⑤経営力向上設備等の種類、の5つです。これに加えて、特定許認可等に基づく地位事業承継等事前調査を任意で記載できます(同条第4項)。後者がM&Aで効いてくる項目です。

実際の申請書(様式第1の別紙)は11項目の構成になっており、そのうち「4 現状認識」ではローカルベンチマークの算出結果を使って経営状況を記載する構成になっています。ローカルベンチマークについてはローカルベンチマーク(ロカベン)とはで詳しく解説しているので、先にそちらで自社の数字を出しておくと書きやすくなります。

計画期間は3年・4年・5年のいずれかで、12か月単位です。指標は事業分野別指針に定めがあればそれに従い、たとえば製造業では労働生産性・売上高経常利益率・付加価値額から1つを選びます。基本方針による場合は労働生産性です。

労働生産性の計算式は、申請書では(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量とされています。ローカルベンチマークの計算式とは異なるので、数字を流用するときは式を取り違えないよう注意してください。減価償却費の把握は減価償却 計算ツール、利益指標の整理は財務指標 計算ツールもご利用ください。

中小企業経営強化税制——期限が迫っている

認定を取る動機としてもっとも多いのが、この税制です。対象設備を取得した場合に、即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)を選択できます。税額控除の上限は中小企業投資促進税制と合計で調整前法人税額の20%で、控除しきれない額は1年間繰り越せます。

適用期限は2027年(令和9年)3月31日です。本稿執筆時点(2026年9月)で残りは半年ほどしかありません。しかも令和8年度税制改正の大綱で行われたのは、工具及び器具備品の取得価額要件を30万円以上から40万円以上に引き上げるという縮減であって、期限の延長ではありませんでした。2027年4月以降どうなるかは、現時点では決まっていません。「どうせ延長されるだろう」という前提で計画を後ろ倒しにするのは危険です。

対象設備の4類型

類型名称主な要件確認者
A類型生産性向上設備生産性が旧モデル比で平均1%以上向上すること。販売開始時期の要件あり(機械装置10年以内など)工業会等の証明書
B類型収益力強化設備年平均の投資利益率が7%以上税理士・公認会計士の事前確認を経て経済産業局の確認書
D類型経営資源集約化設備計画終了年次の修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上向上すること。事業承継等事前調査の記載があり、事業承継等の後に取得するもの同上
E類型経営規模拡大設備投資利益率7%以上に加え、売上高100億円超を目指すロードマップ、売上高成長率、最低投資額、賃上げ率などの要件同上

ここで古い情報に注意が必要です。C類型(デジタル化設備)は2025年4月1日をもって廃止されています。またB類型の投資利益率要件は5%から7%に引き上げられており、「5%以上」と書かれた資料は改正前のものです。E類型は令和7年度税制改正で新設された類型で、2024年以前の資料には存在しません。

設備の取得時期にもルールがあります。原則として認定を受けた後に取得する必要があり、例外として申請書が到達した日から遡って60日以内の取得までは認められます。ただし事業承継等を伴う設備取得とE類型は、この遡及が使えません。M&A絡みで使う場合は、順番を間違えると適用できなくなります。

最低取得価額と対象外のもの

対象となる設備には最低取得価額が定められています。機械装置は160万円以上、工具・器具備品は令和8年度税制改正で30万円以上から40万円以上に引上げ、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上です。E類型でのみ対象となる建物およびその附属設備は1,000万円以上とされています。

一方で対象外となるものもあります。貸付用の資産は除かれ、コインランドリー業(主要事業以外で管理の概ね全部を委託する場合)や暗号資産マイニング業も除外されます。また、娯楽業(映画業を除く)、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業などは指定事業から外れています。設備を買う前に「そもそも自社の業種が対象か」を確認するところから始めてください。

国税庁のタックスアンサーNo.5434は、本稿執筆時点で「令和7年4月1日現在法令等」として工具・器具備品の要件を30万円以上と記載しています。令和8年度税制改正による引上げは反映されていないため、資料の基準日を必ず確認してください。公的な資料であっても、更新のタイミングによって内容が食い違うことがあります。

M&Aで使う:事業再編投資損失準備金とD類型

株式取得によるM&Aを行う中小企業にとって、経営力向上計画の最大の用途がこれです。中小企業事業再編投資損失準備金は、事業承継等事前調査(実施予定のデューデリジェンスの内容)を記載した経営力向上計画の認定を受けたうえで株式取得によるM&Aを実施した場合に、株式等の取得価額(取得価額+手数料)の70%を準備金として積み立て、その事業年度の損金に算入できる制度です。対象は取得価額10億円以下のM&Aに限られ、据置期間5年の後、5年で均等に取り崩して益金に算入します。

さらに拡充枠があり、過去5年間にM&Aを実施した中堅・中小企業が産業競争力強化法の特別事業再編計画の認定を受けて株式取得を行う場合は、認定後1回目が90%、2回目以降が100%の積立・損金算入となり、据置期間は10年です。この通常枠についても、適用期限は2027年3月31日です。税制全体の位置づけは中小M&Aで使える税制で整理しています。

手続の順番が独特なので、整理しておきます。

  • 相手方が決まった段階(基本合意後など)で計画を申請する。株式取得を含む内容と、事業承継等事前調査に関する事項を記載する
  • 事業承継等事前調査チェックシートを添付する。法務デューデリジェンスは弁護士、財務・税務デューデリジェンスは税理士または公認会計士が有資格者とされ、有資格者でない場合は調査報告書とチェックシートの対応表の添付が必要になる
  • 株式取得を実行した後、主務大臣に事業の承継報告書を提出し、確認書の交付を受ける
  • 税務申告に認定書・確認書の写しを添付する
  • 準備金を積み立てた場合やD類型を使った場合は、最大5年間、毎事業年度「事業承継等状況報告書」を提出する義務が続く

デューデリジェンスの中身についてはデューデリジェンスとは、知的財産に関する調査は知財デューデリジェンスをご覧ください。買収価格そのものの検証は買収価格の妥当性の検証で扱っています。

なお法律上の「事業承継等」は9類型と定義されています(第2条第10項)。吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転、株式交付、事業または資産の譲受け、他の特定事業者等の株式・持分の取得(関係事業者となる場合に限る)、事業協同組合等の設立です。スキームごとの違いは合併とは会社分割とは株式交換・株式移転株式譲渡と事業譲渡の違いで解説しています。

金融支援の中身

税制ほど話題になりませんが、金融支援も7つのメニューが用意されています。資金調達の選択肢として押さえておく価値があります。

支援内容
日本政策金融公庫による低利融資中小企業事業は基準利率(設備資金のうち土地分を除く部分は5億4,000万円を限度に特別利率)、国民生活事業は基準利率(設備資金は特別利率)
中小企業信用保険法の特例普通保険等とは別枠での追加保証・保証枠の拡大。新事業活動に該当する事業に加え、M&A等による事業承継(デューデリジェンスを含む)が対象。一定の財務要件を満たす場合は事業承継資金の信用保証で経営者保証が不要
中小企業投資育成株式会社法の特例通常は資本金3億円以下が投資対象のところ、資本金3億円超の企業も対象に
スタンドバイ・クレジット海外支店・子会社の現地通貨建て融資について公庫が信用状を発行。補償限度額は1法人あたり最大4億5,000万円
クロスボーダーローン海外子会社への直接融資。4億円を限度に特別利率
中小企業基盤整備機構による債務保証従業員2,000人以下の特定事業者等が対象。最大25億円(保証割合50%)
食品等流通合理化促進機構による債務保証食品製造業者等。大型資金の場合など

2つめの信用保険法の特例は、M&Aとの関係でとくに意味があります。デューデリジェンス費用を含む事業承継の資金が、通常の保証枠とは別枠の対象になるという建て付けだからです。買収資金の調達で保証枠が足りないという場面では、検討の価値があります。もっとも、繰り返しになりますが認定を受ければ融資・保証が受けられるわけではなく、審査は別にあります。

見落とされがちな法的支援

税制の陰に隠れていますが、許認可の承継の特例は場面によっては税制より重要です。認定計画に特定許認可等に基づく地位を記載し、計画に従って事業承継等を行ったときは、根拠法令にかかわらずその地位を承継できます。対象となるのは、旅館業、建設業、火薬類製造業・火薬類販売業、一般旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、一般ガス導管事業です。

許認可が必要な業種では、事業譲渡や会社分割で事業を移したときに許認可を取り直す必要があるかどうかが、そのままスキームの選択を左右します。運送業や建設業のM&Aで、取り直しに時間がかかるために株式譲渡を選ぶ、という判断はよくあります。この特例はその制約を緩めるものです。業種ごとの論点は建設業の企業価値評価なども参考になります。

ほかに、認定の日から2か月を経過する日までに事業協同組合等を設立する場合に発起人数を4人以上から3人以上に緩和する特例、事業譲渡の際の免責的債務引受についての債権者異議手続の特例、そして事業承継等に必要な資金について一定の財務要件のもとで信用保証の経営者保証を不要とする措置があります。最後の点は事業承継特別保証制度経営者保証に関するガイドラインとあわせて検討する領域です。

よくある混同を3つ

①「経営力向上計画で固定資産税が減免される」

現行制度ではできません。固定資産税の課税標準の特例は先端設備等導入計画にもとづくもので、認定するのは市区町村です。同じ中小企業等経営強化法にもとづく制度(第52条)ですが、まったく別の計画です。賃上げ方針を計画に位置づけた場合に課税標準を3年間2分の1、賃上げ率が高い場合は5年間4分の1に軽減する内容で、こちらも特例の適用期限は2027年3月31日です。

②「認定計画に基づく登記の登録免許税が軽減される」

この措置は令和6年度税制改正で、適用期限の到来をもって廃止されています。地方経済産業局の資料などに「登録免許税、不動産取得税の軽減」と併記された古い記述が残っているため、そのまま信じると計算が狂います。不動産取得税の特例は現行制度として残っており、令和8年度税制改正の大綱で適用期限が2年延長されています。

③「経営力向上計画と経営革新計画は同じようなもの」

同じ法律にもとづきますが、条文も手続も相手方も違います。

経営力向上計画経営革新計画先端設備等導入計画
根拠条文第17条第14条第52条
手続認定承認認定
相手方事業分野別の主務大臣都道府県知事等特定市町村
目的経営資源の高度利用による経営力の向上新事業活動による経営の相当程度の向上設備投資を通じた労働生産性の向上
主な支援経営強化税制、事業再編投資損失準備金、金融・法的支援政府系金融機関の特別貸付、信用保険法の特例ほか固定資産税の課税標準の特例

経営革新計画には、計画期間に応じた付加価値額の伸び率(3年で9%、4年で12%、5年で15%以上)と給与支給総額の伸び率(3年で4.5%、4年で6%、5年で7.5%以上)という数値要件があります。経営力向上計画にはこの形の要件はありません。「成長を約束できるか」で選ぶなら経営革新計画、「設備投資やM&Aの税制を使いたい」なら経営力向上計画、という整理がいちばん実務に近いと思います。

どれくらい使われているのか

中小企業庁が公表している認定状況によれば、累計の認定件数は203,100件(令和8年7月31日現在)です。所管省庁別では経済産業省が90,327件、国土交通省が66,809件、農林水産省が20,093件、厚生労働省が11,737件と続きます。

業種別では製造業が70,347件で最多、次いで建設業が55,758件、卸・小売業が18,717件です。地域別では関東が67,246件、近畿が41,250件、中部が28,527件となっています。製造業と建設業だけで全体の6割を超えており、設備投資と許認可の承継という2つの動機が数字にそのまま表れていると読めます。

よくある質問

M&Aのどのタイミングで申請しますか

相手方が決まった段階、実務的には基本合意の後あたりが目安とされています。株式取得の実行前に認定を受けておく必要がある点が要です。標準処理期間が30日程度(複数省庁なら45日程度)かかることを踏まえると、スケジュールは早めに引いておくべきです。全体の流れは会社売却の流れ、基本合意の作り方は基本合意書(LOI)の書き方をご覧ください。

認定を取れば必ず税制が使えますか

いいえ。計画の認定対象は法律上の「特定事業者等」(従業員2,000人以下の法人等)ですが、中小企業経営強化税制を使うには租税特別措置法上の「中小企業者等」の要件も同時に満たす必要があります。資本金1億円以下であること、大規模法人の子会社でないことなどが含まれ、適用除外事業者も対象外です。対象範囲が制度ごとに違う点は見落とされやすいので注意してください。

誰に相談すればよいですか

計画の作成は認定経営革新等支援機関(税理士・会計事務所・金融機関など)の支援を受けるのが一般的です。事業承継が絡む場合は事業承継・引継ぎ支援センター、公的支援の全体像はM&Aの公的支援で整理しています。税理士の関わり方は事業承継における税理士の役割もご覧ください。

補助金の加点は何点もらえますか

補助金ごと、公募回ごとに基準が異なります。公表されているのは「各補助金等における基準を満たす場合は審査時に加点」という枠組みまでで、点数を一般論として示すことはできません。応募する回の公募要領で確認してください。事業承継・M&A補助金の枠組みは事業承継・M&A補助金で解説しています。

承継した後の統合作業とは関係しますか

します。計画では経営力向上の内容として「事業承継等により取得した経営資源を利用する取組」を記載し、実行後も最大5年間の状況報告が続きます。計画に書いた取組を実際に進める必要があるということです。統合の進め方はPMIの進め方、公的なガイドラインは中小PMIガイドラインをご覧ください。

本稿で触れた税制・金融・法的支援は、いずれも要件や期限が改正で変わります。とくに中小企業経営強化税制と中小企業事業再編投資損失準備金は2027年3月31日が適用期限で、それ以降の取扱いは本稿執筆時点では決まっていません。個別の適用可否の判断は、必ず税理士・公認会計士等の専門家および申請先の所管省庁にご確認ください。本稿は公表資料の整理であり、個別の助言ではありません。

まとめ

経営力向上計画は、中小企業等経営強化法第17条にもとづく認定制度です。申請先は中小企業庁ではなく事業分野ごとの主務大臣で、処理には30日程度(複数省庁なら45日程度、経済産業局宛ての電子申請なら約14日)かかります。事業分野別指針は21分野に定められており、自社の分野の指針を先に読むのが近道です。

得られるのは税制・金融支援・法的支援・補助金加点の4つ。M&Aの場面では、株式取得価額の70%を損金算入できる中小企業事業再編投資損失準備金と、承継後の設備投資に使えるD類型、そして許認可の承継の特例が中心になります。いずれも事業承継等事前調査を計画に記載し、実行前に認定を受けておくことが前提です。

注意すべきは期限と、古い情報です。中小企業経営強化税制と事業再編投資損失準備金は2027年3月31日まで。C類型は2025年4月に廃止、B類型の投資利益率は7%に引き上げ、工具・器具備品の取得価額要件は40万円以上に引上げ、登録免許税の軽減措置は令和6年度改正で廃止——世の中に残る解説の多くは、このどれかが古いままです。固定資産税の特例は先端設備等導入計画のものであることも、あわせて押さえておいてください。

そして、計画は認定がゴールではありません。書いた取組を実行し、準備金やD類型を使った場合は最大5年間の報告が続きます。承継した会社の価値をどう伸ばしていくかという話と地続きです。自社や対象会社の現在地を数字で確認するところからであれば、企業価値の1分診断事業承継における株価算定もあわせてご活用ください。

本稿で参照した主な公表資料は、e-Gov法令検索で確認できる中小企業等経営強化法の法令本文、中小企業庁「経営力向上支援」「中小企業経営強化税制」「中小企業事業再編投資損失準備金」「事業分野別指針及び基本方針」「経営力向上計画の認定状況について」(令和8年7月31日現在)、国税庁タックスアンサーNo.5434(令和7年4月1日現在法令等)、財務省「令和8年度税制改正の大綱」および「令和6年度税制改正の大綱」、各地方経済産業局・農林水産省・中小企業基盤整備機構の公表資料です。いずれも改定される可能性があるため、最新版の確認をおすすめします。

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