ローカルベンチマーク(ロカベン)とは? 6つの財務指標と非財務の見方、M&A・事業承継での使い方

最終更新: 2026-09-12

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「自社の状態を整理してから、承継やM&Aの相談に行きたい」。そう考えたときに、まず手を付ける価値があるのがローカルベンチマーク(通称:ロカベン)です。経済産業省が提供している無料のツールで、同省のウェブページでは「企業の経営状態の把握、いわゆる『企業の健康診断』を行うツール」と説明されています。

本稿は、ロカベンの逐条解説ではなく、「何が分かるツールなのか」と「M&A・事業承継の実務でどう使うか」を結び付けて整理したものです。出典は、経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」および「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート」「ローカルベンチマーク作成ガイド」の各ウェブページ(最終更新日:2026年1月16日)、経済産業省産業資金課「ローカルベンチマーク 財務分析データ更新による変更点」(2022年11月)、同「財務指標の評価付与方法について」(2022年度版シート関連資料)、および中小企業政策審議会 基本問題小委員会 金融ワーキンググループ(第14回・2021年〈令和3年〉2月8日開催)配付資料「ローカルベンチマークの概要と取組について」です。制度・様式は改定されるため、実際に使う際は必ず最新の公表資料をご確認ください。

ロカベンの位置づけ:対話のための「共通言語」

ロカベンの目的は、点数を付けて企業を格付けすることではありません。経済産業省の説明では、企業の経営者と金融機関・支援機関等がコミュニケーション(対話)を行いながらロカベン・シートを使用し、企業経営の現状や課題を相互に理解することで、個別企業の経営改善や地域活性化を目指すものとされています。

前掲の金融ワーキンググループ配付資料では、この点がさらに踏み込んで説明されています。ロカベンに掲載されている項目は企業の状態を把握するために押さえておくべき基礎的項目が中心であり、関係者が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組み、あるいは事業性評価の「入口」として活用されることが期待される、という位置づけです。一度作っておけば、企業・金融機関・支援者の全員が同じシートを見て話せる、というのが狙いです。

もう一つ押さえておきたいのが、ロカベンが2段階の構成になっている点です。経済産業省は、RESAS(地域経済分析システム)を活用した地域実態の把握を第一段階、ロカベンシートを使った個別企業実態の把握を第二段階と呼んでいます。地域の産業構造や人口動態を先に把握してから個社分析を行うことで、企業実態をより正確に把握できる、という考え方です。実務でも、「なぜこの会社の売上が伸びない(伸びた)のか」を説明するとき、地域の需要動向が効いてくる場面は少なくありません。

ロカベンは政府の各種施策と連携しており、補助金等の申請にも活用されています。前掲の金融ワーキンググループ配付資料では、連携済みの国の施策として、中小企業等経営強化法、地域未来投資促進法、事業承継ガイドライン、早期経営改善計画策定支援、IT導入補助金、経営者保証ガイドライン、経営デザインシート(内閣府)、RESAS、ミラサポplusなどが挙げられています。承継の進め方そのものは事業承継ガイドラインの要点で整理しています。

シートは3枚組:財務1枚+非財務2枚

経済産業省の「ロカベンシート」ページによれば、ロカベンシートは「6つの指標」(財務面)、「商流・業務フロー」(非財務面)、「4つの視点」(非財務面)の3枚組で構成されています。同ページからExcel形式(.xlsm)のファイルを無料でダウンロードでき、本稿執筆時点の最新公表版は2022年度版です。過去版として2018年度版・2017年度版も掲載されています。なお同ページには、日本標準産業分類の改定(令和6年4月1日施行)にともないロカベン業種分類の見直しを行った旨(2024年4月1日)の注記もあります。

Excelが苦手な方向けには、中小企業庁が運営するウェブサイト「ミラサポplus」上でもロカベンを作成できます。入力フォームなどの作成補助機能があり、非財務シートを任意の相手に共有できる「共有機能」も実装されている(令和3年4月)と案内されています。利用にはミラサポplusへの会員登録が必要です。

書き方の手引きとしては、経済産業省が「ローカルベンチマーク・ガイドブック SDGs/DX対応版(企業編・支援機関編)」を公開しています(2023年4月10日掲載)。企業編は経営者自らが取り組む場合、支援機関編は金融機関・支援機関が企業支援に使う場合を想定した内容です。あわせて、中小企業診断士と経営者の対話形式による取組・対話動画(全10本)も公開されています。

財務分析の6指標:何を見ているか、買い手も見るか

財務シートは、決算書の数値を入力すると6つの指標が計算され、業種・規模別の基準値と比較した評点が表示される仕組みです。前掲の金融ワーキンググループ配付資料には、各指標の算式と意味が明記されています。それをそのまま踏まえたうえで、M&Aの買い手が同じ数字をどう見るかを並べたのが次の表です。

指標(対応する切り口)算式・ロカベン資料上の位置づけM&Aの実務での見られ方
① 売上高増加率(売上持続性)(売上高/前年度売上高)-1。キャッシュフローの源泉であり、企業の成長ステージの判断に有用な指標とされる買い手が最初に見る数字の一つ。単年ではなく3期の傾き、増減の理由(数量か単価か、新規か既存か)まで説明できるかが問われる
② 営業利益率(収益性)営業利益/売上高。事業性を評価するための収益性分析の最も基本的な指標であり、本業の収益性を測る重要指標とされる役員報酬や一時的費用を調整した「正常収益力」に引き直して見られる。考え方は正常収益力の記事を参照
③ 労働生産性(生産性)営業利益/従業員数。成長力・競争力等を評価する指標。本来は従業員の単位労働時間あたりの付加価値額等で計測すべき指標とも注記されている人手不足業種では特に重視される。属人性が高い会社は、社長個人の稼働に依存していないかまで確認される
④ EBITDA有利子負債倍率(健全性)(借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費)。有利子負債がキャッシュフローの何倍かを示し、有利子負債の返済能力を測る指標の一つとされる本サイトで扱うネット有利子負債÷EBITDAと同じ発想。事業価値から純有利子負債を差し引いて株式価値を出す考え方に直結する
⑤ 営業運転資本回転期間(効率性)(売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商。回収や支払等の取引条件の変化による必要運転資金の増減を把握するための指標とされる買い手は「運転資本が正常水準か」を見る。過大な在庫や滞留債権は価格調整の論点になりやすい
⑥ 自己資本比率(安全性)純資産/総資産。返済義務のない自己資本が占める比率を示す、安全性分析の最も基本的な指標の一つとされる債務超過かどうかは前提条件を大きく変える。純資産の中身(実質価値のある資産か)まで見られる

6指標のうち、④EBITDA有利子負債倍率は、企業価値評価の実務と最も直接につながります。分子の「借入金-現預金」はネット有利子負債(純有利子負債)、分母の「営業利益+減価償却費」は簡易的なEBITDAです。M&Aでは、EV/EBITDA倍率などで事業価値を求めたうえで、そこからネット有利子負債を差し引いて株式価値に落とすのが一般的な手順ですから、この指標が高い会社は「事業としては回っていても、株主に残る金額は小さくなりやすい」ということになります。EBITDAそのものの定義はEBITDAとは、倍率法の考え方は類似会社比較法とEV/EBITDAで解説しています。

②営業利益率については、ロカベンは決算書の数値をそのまま使いますが、M&Aではオーナー企業特有の費用を調整した後の利益で見られます。役員報酬の水準、家族への給与、社用車や保険、一時的な費用などを引き直したものが正常収益力です。ロカベンの数字が低くても、調整後は違う姿になることは珍しくありません。詳しくは正常収益力とはをご覧ください。資本効率という別角度の指標についてはROEとROICで整理しています。

評点はどう付くのか

経済産業省「財務指標の評価付与方法について」によれば、評点は業種・規模別の中央値を基準値として、各指標の上位7%を5点、続く24%を4点、続く38%を3点、続く24%を2点、下位7%を1点というように、閾値を定めて付与されます。基準値の母集団は、2022年度版では2019年4月〜2022年2月の期間中に3期連続で決算書が収録されている企業 約37,000社で、2018年度版(2014年4月〜2017年3月、約100,000社)から更新されています。この更新により、財務分析の評点付与は新型コロナウイルス感染症による影響を考慮したものになった、と同資料に明記されています。

規模区分は「01_中規模(中堅含)」と「02_小規模」の2つで、小規模は製造業・その他は従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下と定義され、中規模は上場企業と小規模を除いた企業とされています。業種は農業・建設業・製造業・卸売業・小売業・飲食業・不動産業・運輸業・エネルギー・サービス業・医療業・保健衛生/廃棄物処理業・観光業・その他の区分が用いられています。

重要な留意点として、ロカベンシート自身に、各項目の評点および総合評価点は各項目の業種基準値からの乖離を示すものであり、点数の高低が必ずしも企業の評価を示すものではない、非財務指標も含めた総合的な判断が必要である、という趣旨の注記があります(前掲・金融ワーキンググループ配付資料の掲載例より)。点数は「対話のきっかけ」であって、結論ではありません。

6指標を自分で計算してみたい場合は、当サイトの財務指標計算ツール、運転資本の水準を確認したい場合は運転資本計算ツールが使えます。いずれも無料です。

非財務シート①:商流・業務フロー

ロカベンの特徴は、財務よりむしろ非財務にあります。1枚目の非財務シートは「商流・業務フロー」で、前掲資料では商流及び業務フローを整理できるヒアリングシート。顧客提供価値について考えると説明されています。記入欄は大きく3つに分かれます。

  • 業務フローと差別化ポイント:製品製造・サービス提供の流れを業務①〜⑤に分解し、それぞれについて「実施内容」と「差別化ポイント」を記入します。
  • 提供内容/顧客提供価値:「製品・商品・サービスの内容」と「どのような価値を提供しているか」を書きます。ここが業務フローの終着点として置かれているのが、このシートの設計思想です。
  • 商流把握:仕入先・協力先・当社・得意先・エンドユーザーという並びで、それぞれ「社名・取引金額・内容等」「属性(消費者・企業等)」を記入し、あわせて「選定理由」(自社がなぜそこを選んでいるか)「選ばれている理由」(自社がなぜ選ばれているか)を書きます。

M&Aの目線で見ると、この1枚は企業概要書(IM)の事業説明パートの下書きそのものです。買い手が知りたいのは、「何を作っているか」より「なぜこの会社から買うのか」であり、それを言語化する欄が最初から用意されています。IMの構成は企業概要書(IM)の作り方、社名を伏せた最初の資料についてはノンネームシートとIMノンネームシートの作り方で解説しています。

非財務シート②:4つの視点

2枚目の非財務シートは「4つの視点」です。前掲資料では4つの着目点に関して整理できるヒアリングシートと説明され、①経営者への着目、②事業への着目、③企業を取り巻く環境・関係者への着目、④内部管理体制への着目、という4区分が示されています。シート上の記入項目は次のとおりです。

視点シート上の主な記入項目M&A・承継での意味合い
① 経営者経営理念・ビジョン、経営哲学・考え・方針等、経営意欲(成長志向・現状維持など)、後継者の有無、後継者の育成状況、承継のタイミング・関係後継者不在かどうか、社長がいつまで関与できるかは、承継方法の選択そのものを決める。M&Aでは引継期間の条件交渉に直結する
② 事業企業及び事業沿革(ターニングポイントの把握)、強み(技術力・販売力等)、弱み(技術力・販売力等)、ITに関する投資・活用の状況、1時間当たり付加価値(生産性)向上に向けた取り組み買い手が評価するのは「引き継いだ後も続く強み」。社長個人に紐づく強みか、組織に残る強みかが分かれ目になる
③ 企業を取り巻く環境・関係者市場動向・規模・シェアの把握、競合他社との比較、顧客リピート率・新規開拓率、主な取引先企業の推移、顧客からのフィードバックの有無、従業員定着率、勤続年数・平均給与、取引金融機関数・推移、メインバンクとの関係取引先の集中度、従業員の定着、金融機関との関係は、ビジネスDDと人事DDで必ず確認される領域
④ 内部管理体制組織体制、品質管理・情報管理体制、事業計画・経営計画の有無、従業員との共有状況、社内会議の実施状況、研究開発・商品開発の体制、知的財産権の保有・活用状況、人材育成の取り組み状況・仕組み「社長がいなくても回るか」を測る欄。ここが薄いと、買い手はPMIの負担を織り込んで条件を保守的に見る

さらにこのシートには、4つの視点の記入欄とは別に、「現状認識」「将来目標」「現状と目標のギャップ」「課題」「対応策」を書く「対話内容の総括」欄が置かれています。単なる項目チェックで終わらせず、対話を通じて課題と打ち手まで落とす、という設計です。

この4枚の視点は、そのままデューデリジェンスで聞かれる質問リストの縮小版になっています。買い手側のDDで何が確認されるかはデューデリジェンスとは、売り手が先回りして自己点検する進め方はセルサイドDDと磨き上げで扱っています。

M&A・事業承継での5つの使い方

① 売り手の「磨き上げ」の自己診断として

事業承継ガイドライン(第3版)が示す5ステップのうち、ステップ2が「経営状況・経営課題等の把握(見える化)」、ステップ3が「事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)」です。ロカベンは、このステップ2をひとまとまりの様式で行うための道具として使えます。財務6指標で自社の位置を確認し、4つの視点で「社長がいなくても回るか」を点検すれば、磨き上げの優先順位が具体的に見えてきます。前掲の金融ワーキンググループ配付資料でも、ロカベンと連携済みの国の施策として事業承継ガイドラインが挙げられています。

② 企業概要書(IM)の下書きとして

M&Aを検討する段階になると、仲介会社やFAから事業内容・強み・取引先構成・組織図といった情報を求められます。ロカベンの非財務2枚を先に埋めておけば、その素材がほぼ揃います。逆に言えば、ロカベンが埋まらない項目は、IMでも埋まらない項目です。何を用意すべきかは評価に必要なデータにまとめています。

③ 金融機関・支援機関との対話の土台として

経済産業省産業資金課「企業の多様な資金調達手法に関する実態調査」(2019年度)では、ロカベンを「活用している」と回答した金融機関は39.7%で、業態別では地方銀行・第二地方銀行・信用金庫等において活用度合いが高い、と紹介されています(前掲・金融ワーキンググループ配付資料より)。相手が使っている枠組みで自社を説明できれば、話は早く進みます。公的な相談窓口や支援制度はM&Aの公的支援で整理しています。

④ 買い手が対象会社を理解する枠組みとして

ロカベンは売り手専用のツールではありません。買い手にとっても、初めて見る中小企業を短時間で把握するためのチェックリストとして機能します。特に、商流シートの「選ばれている理由」と、4つの視点の「内部管理体制」は、買収後に何が残り何が失われるかを考える材料になります。

⑤ 承継の「見える化」を毎年の習慣にするために

経済産業省産業資金課「経営診断ツールの認知・活用状況及び、決済・資金調達の実態に関する調査」(2018年度)では、ロカベンを活用した中小企業のうち「活用後のメリットがあった」との回答が94.8%、具体的な効果としては「自社の経営分析・把握ができた」が61.7%で最多、次いで「補助金や助成金の申請に活用できた」33.9%、「事業計画の作成につながった」13.9%などが挙げられています(前掲・金融ワーキンググループ配付資料に掲載された調査結果より)。後継者不在の場合に取り得る選択肢は後継者がいない会社の選択肢で整理しています。

ロカベンの限界:価値の「金額」は出ない

ここが実務上いちばん誤解されやすい点です。ロカベンは、企業価値や株式価値の金額を算定するツールではありません。財務シートが出すのは業種・規模別の基準値と比べた5段階の評点であり、「この会社はいくらか」という問いには答えません。前述のとおり、シート自身にも「点数の高低が必ずしも企業の評価を示すものではない」旨の注記があります。

金額の目安が必要な場面——たとえば、承継のタイミングを検討する、譲渡を打診された価格の妥当性を確かめる、株式を後継者に移す前に水準感を知る——では、別途、評価手法による試算が必要です。代表的なのは、将来キャッシュフローを割り引くDCF法、上場会社の倍率を用いる類似会社比較法、資産と負債の時価から求める時価純資産法で、3つのアプローチの違いは株式評価3アプローチの比較で比較しています。相場観のつかみ方は会社売却の相場はいくらか、自分で計算してみる手順は自分で企業価値を計算するをご覧ください。

整理すると、ロカベンは「健康診断」、企業価値評価は「値付け」です。健康診断の結果が良いほど値付けが有利に働きやすい、という関係はありますが、両者は別の作業です。順番としては、ロカベンで現状と課題を把握し、磨き上げの方向を決めたうえで、金額の目安を評価手法で確認する、という流れが実務的です。

記入のコツ

  • 財務は決算書からそのまま拾う:財務シートは入力欄に決算書の数値を入れれば計算されます。ここで数字を「良く見せる」意味はありません。基準値との乖離を知ることが目的だからです。
  • 非財務は経営者以外にも聞く:強み・弱み・選ばれている理由は、社長の認識と現場や顧客の認識がずれていることがよくあります。経済産業省の作成ガイドのページでも、記載に悩む場合は社内の複数人で取り組んだり、金融機関・支援機関などの経営の専門家に相談することが勧められています。
  • 「選ばれている理由」を具体的に書く:「品質が良い」で止めず、どの工程の何が競合と違うのかまで落とすと、そのままIMの材料になります。
  • 毎年更新する:3期分の推移がレーダーチャートで見えるのがロカベンの利点です。決算のたびに更新し、変化した指標の理由を非財務シートで説明できるようにしておくと、対話の質が上がります。
  • 先に地域を見る:経済産業省はRESASでの地域分析を第一段階と位置づけています。自社の数字を地域の動向とセットで語れると、説明の説得力が変わります。

ざっと自社の状態を確認したいだけであれば、当サイトのかんたん診断ツールから始めることもできます。

よくある質問

Q. 誰でも使えるツールですか?

A. 経済産業省のウェブページでは、企業・経営者向けに「無料で、自社の経営の現状把握や経営分析ができます」と案内されており、金融機関・支援機関向けには「事業性評価・事業計画策定・事業承継・補助金申請など企業支援の場で活用いただけます」と案内されています。企業規模や業種による利用制限は示されていません。Excelシートは経済産業省のサイトから、フォーム形式は中小企業庁のミラサポplusから利用できます(ミラサポplusの利用には会員登録が必要です)。

Q. 費用はかかりますか?

A. シート自体は経済産業省が無料で提供しています。ただし、金融機関や支援機関、士業に伴走支援を依頼する場合、その支援に対する費用が発生することはあります。費用の有無や水準は依頼先によって異なりますので、事前にご確認ください。

Q. 金融機関に提出する義務はありますか?

A. ロカベンは法令で提出が義務づけられた書類ではなく、対話のためのツールとして位置づけられています。もっとも、前掲の金融ワーキンググループ配付資料では、金融庁「金融仲介機能のベンチマーク」(平成28年公表)の選択ベンチマークの一つにロカベンの活用状況が入っていることや、中小企業等経営強化法(経営力向上計画)、IT導入補助金など各種施策で活用されていることが紹介されています。個別の補助金・計画申請で様式の一部として求められる場合はありますので、募集要領をご確認ください。

Q. M&Aの買い手候補に見せてもよいものですか?

A. 内容は自社の情報ですので、見せること自体に制約はありません。ただし実務上は、社名や取引先名、取引金額が入った状態のシートを初期段階で渡すことは避けるのが通例です。秘密保持契約(NDA)を締結した後に、必要な範囲で開示する流れが一般的です。初期段階では社名を伏せた資料を使います。順序はノンネームシートとIMを参照してください。

Q. ロカベンを作れば、自社の評価額が分かりますか?

A. 分かりません。ロカベンが出すのは業種・規模別の基準値と比較した評点と、非財務の整理であり、金額ではありません。評価額の目安を知るには、DCF法・類似会社比較法・時価純資産法といった評価手法による試算が別途必要です。なお、M&Aにおける評価額と相続税等を計算するための株価評価は目的が異なり、一般に異なる金額になります。税務上の評価が必要な場合は税理士にご確認ください。

まとめ

ローカルベンチマーク(ロカベン)は、経済産業省が無料で提供する「企業の健康診断」ツールです。「6つの指標」(財務面)、「商流・業務フロー」(非財務面)、「4つの視点」(非財務面)の3枚組で構成され、最新公表版は2022年度版。財務6指標は、売上高増加率(売上持続性)、営業利益率(収益性)、労働生産性(生産性)、EBITDA有利子負債倍率(健全性)、営業運転資本回転期間(効率性)、自己資本比率(安全性)で、業種・規模別の中央値を基準に5段階で評点が付きます。

M&A・事業承継の文脈で見ると、ロカベンの価値は非財務2枚にあります。商流・業務フローは企業概要書の事業説明の下書きになり、4つの視点はデューデリジェンスの質問リストの縮小版として機能します。事業承継ガイドラインのステップ2「見える化」を、決まった様式で一気に進められるのが実務上の利点です。

一方で、ロカベンは価値の金額を出すツールではありません。健康診断で現状と課題を把握したうえで、値付けは評価手法で別途確認する——この2段構えが現実的な進め方です。

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